1
現代数学解説
文献あり

Andrewsによる相互関係式の作用素による証明

51
0

前の記事 で, 以下のAndrewsによる相互関係式を示したが, 今回はそれを作用素によって示す. それはLiuの2003年の論文で得られた証明である.

Andrews(1981)

d0n(q/bc,acdf;q)n(ad,df;q)n+1(bd)nc0n(q/bd,acdf;q)n(ac,cf;q)n+1(bc)n=(dc)(q,dq/c,cq/d,abcd,acdf,bcdf;q)(ac,ad,cf,df,bc,bd;q)

aの関数に対し, 作用素θ
θf(a):=f(a/q)f(a)a/q
によって定義し,
E(bθ):=0n(bθ)nq(n2)(q;q)n
とする. まず, 以下の作用素についての定理を示す.

E(bθ)(as,at;q)=(as,at,bs,bt;q)(abst/q;q)
が成り立つ.

まず,
θ(as,at;q)=(as/q,at/q;q)(as,at;q)a/q=(as,at;q)a/q((1asq)(1atq)1)=(as,at;q)(s+tastq)=t(as,at;q)s(as,at/q;q)
である. よって, これを繰り返し適用すると, nに関する帰納法によって
θn(as,at;q)=(1)nk=0nsktnk(as,atqk;q)(q;q)n(q;q)k(q;q)nkqk(nk)
を得る. これより, q二項定理を用いて,
E(bθ)(as,at;q)=0n(b)nq(n2)(q;q)nk=0nsktnk(as,atqk;q)(q;q)n(q;q)k(q;q)nkqk(nk)=0n,k(b)n+kq(n+k2)(q;q)n(q;q)ksktn(as,atqk;q)qkn=(as,at;q)0n,k(b)nq(n2)(q/at;q)k(q;q)n(q;q)k(abstq)ktn=(as,at;q)(bt;q)(bs;q)(abst/q;q)
となって示される.

定理1において特に, s=0の場合,
E(bθ)(at;q)=(at,bt;q)
となる.

定理1の証明

Rogers-Fineの恒等式
(1t)0n(x;q)n(y;q)ntn=0n(x,xtq/y;q)n(y,tq;q)n(yt)n(1xtq2n)qn2n
において, x=q/bd,y=acq,t=bcとすると,
(1bc)0n(q/bd;q)n(acq;q)n(bc)n=0n(q/bd,q/ad;q)n(acq,bcq;q)n(abc2q)n(1cq2n+1/d)qn2n
左辺はa,bに関して対称であるから,
(1bc)0n(q/bd;q)n(acq;q)n(bc)n=(1ac)0n(q/ad;q)n(bcq;q)n(ac)n
を得る. これと, Ramanujanの1ψ1和公式 より,
d0n(q/bc;q)n(ad;q)n+1(bd)nc0n(q/bd;q)n(ac;q)n+1(bc)n=d0n(q/bc;q)n(ad;q)n+1(bd)nc1ac0n(q/bd;q)n(acq;q)n(bc)n=d0n(q/bc;q)n(ad;q)n+1(bd)nc1bc0n(q/ad;q)n(bcq;q)n(ac)n=d1adnZ(q/bc;q)n(adq;q)n(bd)n=(dc)(q,dq/c,cq/d,abcd;q)(ac,ad,bc,bd;q)
これは
d0n(q/bc;q)n(bd)n(ac,adqn+1;q)c0n(q/bd;q)n(bc)n(ad,acqn+1;q)=(dc)(q,dq/c,cq/d;q)(bc,bd;q)(abcd;q)
と書き換えられるので, 両辺にE(fθ)を作用させて, 定理2を用いると,
d0n(q/bc;q)n(bd)n(ac,fc,adqn+1,dfqn+1;q)(acdfqn;q)c0n(q/bd;q)n(bc)n(ad,fd,acqn+1,fcqn+1;q)(acdfqn;q)=(dc)(q,dq/c,cq/d;q)(bc,bd;q)(abcd,bcdf;q)
を得る. これを整理して定理を得る.

証明の途中過程で導出した等式
d0n(q/bc;q)n(ad;q)n+1(bd)nc0n(q/bd;q)n(ac;q)n+1(bc)n=(dc)(q,dq/c,cq/d,abcd;q)(ac,ad,bc,bd;q)
は定理1においてf=0とした場合になっている. つまり, 作用素を用いることによって, 実は定理1を示すにはf=0の場合を示せば十分であることが分かったのである.

参考文献

[1]
Zhi-Guo Liu, Some operator identities and q-series transformation formulas, Discrete Mathematics, 2003, 119-139
投稿日:53
更新日:53
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

Wataru
Wataru
821
54172
超幾何関数, 直交関数, 多重ゼータ値などに興味があります

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中