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の定義を思い出します.
随伴(1)
を圏,とを関手とします.
この時,二つのhom関手
と
が自然同型であるとき,はの左随伴(またははの右随伴)であるといい,記号ではと書く.
随伴(2)
を圏,とを関手とします.
この時,二つの自然変換とが存在し,これらが三角等式
を満たすとき,を随伴と呼ぶ.また,を単位(unit),を余単位(counit)と呼ぶ.
(1),(2)の同値性は
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で調べました.
コンマ圏
を圏,,を関手とします.
(1) 対象は(はの対象,はの対象,はからへの射)である.
(2) からへの射はとの組で,次の図式を可換にするものである.
こうしてできた圏をコンマ圏と呼び,と書く.
随伴(3)
を圏,とを関手とします.
このとき,次のような自然変換が存在するならば,はの左随伴(またははの右随伴)であるという:任意のについてはの始対象である
ここで,における関手とは,を関手と見立てたものです(は対象がただ1つの離散圏).
任意にの対象を取ってくる.
からへの射は次の可換図式を満たす:
ここで,
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の証明で述べたように,なので,.つまり,.よっては始対象である.
条件を満たすような余単位を構成する.
:余単位の一意性
とがどちらも三角等式を満たすものとする.よって,
が可換.これは,コンマ圏における
という射を表している.同様にして,
という射も得られる.ここで,における始対象はであるので,よって余単位は存在すれば一意.
:余単位の構成
をコンマ圏における始対象からの一意的な射
から得られるものとする.定義より,これは片方の三角不等式を満たす.
:の自然性
自然変換であることを見る.つまり,に対して,
が満たされればよい.これを見るために,この図式にを作用させたものをまず考える.
一方,三角不等式より
であった.すると,次のような図式が書ける.
よって, とが分かる.ここで,が始対象であることから,への射は一意的.よってが分かった.
:もう一方の三角等式の確認
が成り立つことを見たい.これにを作用させて
とする.の自然性から
が可換になる.なので,図式は次のようになる:
よって
が得られる(で得られている三角等式を使った).よってと同様にである.