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7777777さんの「超微分とテトレーションの関係性」から無限テトレーションの超微分を考える

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超微分の記事まとめ

超微分が初耳の方向けにここのリンクから相関図が見られます。
https://mathlog.info/articles/Q7KACeNr9oiYUEvORNSI , 7777777

はじめに

「超微分の記事を何か書きたいな~」と思って, 題材を探していたのですが, 超微分の創造主である7777777さんの 超微分とテトレーションの関係性 に登場する漸化式がもう少し計算を進められると思ったので, それの計算と無限テトレーションの超微分について書きます.

まとめ記事の並べ順の立ち位置的には, $22+\alpha$くらいに当たる記事になるかなと思っています.

定義, 定理

超導関数

関数$f:[a,\,b]\to\mathbb{R}$は任意の$x\in[a,\,b]$について, $f(x)>0$を満たす.
$$ \lim_{h\to1} \log_{\frac{hx}{x}}\frac{f(hx)}{f(x)}=\lim_{h\to1} \log_h\frac{f(hx)}{f(x)} $$
$f$の超導関数といい, $f^`(x)$と表す.

超導関数の変換公式

$$ f^`(x)=\frac{xf'(x)}{f(x)} $$

超微分可能性

$f(a)>0,\,a\neq0$のとき, $(f\text{が}a\text{で微分可能})\Leftrightarrow(f\text{が}a\text{で超微分可能})$

定理2の証明はLagu様の 超微分で微分っぽいことをする にて解説しています.

目的1: テトレーションの超微分

$n\in\mathbb{N}\cup\{0\}$に対して, 関数$f_n(x)$
$$ f_n(x): =\begin{cases} 1 & (n=0)\\ x^{f_{n-1}(x)} & (x>0,\,n>0) \end{cases} $$
と定める. このとき, $f_n^`(x)$を求めたい.

7777777さんの記事の復習とその先の計算

$f_n'(x)$の漸化式を求める

$n=0$のとき

$f_n'(x)=0,\,f_n^`(x)=\frac{xf'(x)}{f(x)}$より$f_n^`(x)=0$となる.

$n>0$のとき

$f_n(x)=x^{f_{n-1}(x)}$の対数を取ります.
$$ \log f_n(x)=f_{n-1}(x)\log x $$
両辺を微分して
$$ \dfrac{f_n'(x)}{f_n(x)}=f_{n-1}'(x)\log x+\frac{f_{n-1}(x)}{x} $$
$$ f_n'(x)=f_n(x)\left\{f_{n-1}'(x)\log x+\frac{f_{n-1}(x)}{x}\right\} $$

$f_n'(x)$$f_n^`(x)$で表す

$f_n'(x)=\dfrac{f_n(x)f_n^`(x)}{x}$を代入すると
$$ \dfrac{f_n(x)f_n^`(x)}{x}=f_n(x)\left\{\dfrac{f_{n-1}(x)f_{n-1}^`(x)}{x}\log x+\frac{f_{n-1}(x)}{x}\right\} $$
式を整理して
$$ f_n^`(x)=f_{n-1}(x)(1+f_{n-1}^`(x)\log x) $$

テトレーションの超微分

$$ f_n(x): =\begin{cases} 1 & (n=0)\\ x^{f_{n-1}(x)} & (x>0,\,n>0) \end{cases} $$
と表されるとき,
$$ f_n^`(x): =\begin{cases} 0 & (n=0)\\ f_{n-1}(x)(1+f_{n-1}^`(x)\log x) & (x>0,\,n>0) \end{cases} $$

漸化式を解く(ここから本題)

次の漸化式を解きます.
$$ f_n^`(x): =\begin{cases} 0 & (n=0)\\ f_{n-1}(x)(1+f_{n-1}^`(x)\log x) & (x>0,\,n>0) \end{cases} $$

階差数列を作る

漸化式$f_n^`(x)=\{f_{n-1}(x)\log x\}f_{n-1}^`(x)+f_{n-1}(x),\,f_0^`(x)=0$$\{f_n^`(x)\}$について解きたいので, $f_n^`(x),\,f_{n-1}^`(x)$の係数で階差数列を作ります.

$n\geq 1$に対して, 総積$\pi(n)$$\displaystyle \pi(n):=\prod_{k=1}^n f_{k-1}(x)\log x$と定めて, 漸化式を$\pi(n)$で割ると
$$ \dfrac{f_n^`(x)}{\pi(n)}=\dfrac{f_{n-1}^`(x)}{\pi(n-1)}+\dfrac{f_{n-1}(x)}{\pi(n)}\quad(n\geq2) $$

$\left\{\dfrac{f_n^`(x)}{\pi(n)}\right\}$は階差数列となり,

$$ \dfrac{f_n^`(x)}{\pi(n)}=\dfrac{f_1^`(x)}{\pi(1)}+\sum_{k=2}^n \dfrac{f_{k-1}(x)}{\pi(k)} $$
を得る.

各数値を計算する

右辺の式を整理するために各値を計算して
$$ f_1^`(1)=f_0(x)(1+f_0^`(x)\log x)=1\cdot(1+0\cdot\log x)=1 $$
$$ \pi(1)=f_0(x)\log x=\log x $$
$$ \dfrac{f_{k-1}(x)}{\pi(k)}=f_{k-1}(x)\prod_{i=1}^k \dfrac{1}{f_{i-1}(x)\log x} $$
これらをそれぞれに代入して
$$ \dfrac{f_n^`(x)}{\pi(n)}=\dfrac{1}{\log x}+\sum_{k=2}^n f_{k-1}(x)\prod_{i=1}^k \dfrac{1}{f_{i-1}(x)\log x}=\sum_{k=1}^n f_{k-1}(x)\prod_{i=1}^k \dfrac{1}{f_{i-1}(x)\log x} $$
となる.

より簡単に

さらに計算を進めると

$$ f_n^`(x)=\pi(n)\sum_{k=1}^n f_{k-1}(x)\prod_{i=1}^k \dfrac{1}{f_{i-1}(x)\log x} $$
$$ =\left(\prod_{j=1}^n f_{j-1}(x)\log x\right)\left(\sum_{k=1}^n f_{k-1}(x)\prod_{i=1}^k \dfrac{1}{f_{i-1}(x)\log x}\right) $$
$$ =\sum_{k=1}^n f_{k-1}(x) \dfrac{\prod_{j=1}^n f_{j-1}(x)\log x}{\prod_{i=1}^k f_{i-1}(x)\log x} $$
$$ =\dfrac{1}{\log x}\sum_{k=1}^n \prod_{i=k}^n f_{i-1}(x)\log x $$
$$ =\sum_{k=1}^n (\log x)^{n-k}\prod_{i=k}^n f_{i-1}(x) $$
となる. この式は$1\leq n$のとき成り立ち, $n=0$のときは$f_n^`(x)=0$となる.

テトレーションの超微分

$$ f_n(x): =\begin{cases} 1 & (n=0)\\ x^{f_{n-1}(x)} & (x>0,\,n>0) \end{cases} $$
と表されるとき,
$$ f_n^`(x): =\begin{cases} 0 & (n=0)\\ \sum_{k=1}^n (\log x)^{n-k}\prod_{i=k}^n f_{i-1}(x) & (x>0,\,n>0) \end{cases} $$

目的2: 無限テトレーションの超微分

定義, 定理

$x$の無限テトレーションは$0< x\leq\dfrac{1}{e^e}$の区間では取り方によって, 関数が変わります. 簡単な説明としては, $\displaystyle \lim_{x\downarrow0}f_{2n+1}(0)=0,\,\lim_{x\downarrow0}f_{2n}(0)=1$となるからです. 次の超微分で求まる関数を$0< x\leq\dfrac{1}{e^e}$で考えた場合は$\displaystyle f_\infty(x)=\lim_{n\to\infty} f_{2n+1}(x)$として, 定義してください.

無限テトレーションの超微分

$f_\infty(x)=x^{x^{x^\cdots}} \left(\dfrac{1}{e^e}\leq x\leq e^{\dfrac{1}{e}}\right)$とする.
$f_\infty(x)=e^{-W(-\log x)},\,f_\infty^{-1}(x)=x^{\dfrac{1}{x}}$と表せる.
$$ f_\infty^`(x)=\dfrac{f_\infty(x)}{1-f_\infty(x)\log x} $$
$$ f_\infty^`(x)=\begin{cases} \dfrac{e^{-W_0(-\log x)}}{1-e^{-W_0(-\log x)}\log x} & \left(\dfrac{1}{e}\leq f_\infty(x)\leq e\right) \\ \dfrac{e^{-W_{-1}(-\log x)}}{1-e^{-W_{-1}(-\log x)}\log x} & (e\leq f_\infty(x)) \end{cases} $$
$$ f_\infty^`(f_\infty^{-1}(x))=f_\infty^`(x^{\frac{1}{x}})=\dfrac{x}{1-\log x} $$

ランベルトのW関数

$-1\leq x$における$xe^x$の逆関数を主枝$W_0: \left[-\frac{1}{e},\,\infty\right)\to[-1,\,\infty)$とし, $x\leq -1$における$xe^x$の逆関数を分枝$W_{-1}: \left[-\frac{1}{e},\,0\right)\to(-\infty,\,-1]$と定義する.

Lambert's W function Lambert's W function

$f_\infty(x)$を残した形で$f_\infty^`(x)$を表す

$x$の無限テトレーションは$y=f_\infty(x)=x^{x^{x^\cdots}}$である.
$$ y=x^{x^{x^\cdots}}\Leftrightarrow y=x^y\Leftrightarrow \log y=y\log x$$
両辺を$x$で微分して
$$ \frac{y'}{y}=y'\log x+\frac{y}{x}\Leftrightarrow y'=\frac{y^2}{x(1-y\log x)} $$
$f^`(x)=\dfrac{xf'(x)}{f(x)}$より, $f_\infty^`(x)=\dfrac{x}{f_\infty(x)}\cdot\dfrac{f_\infty^2(x)}{x(1-f_\infty(x)\log x)}=\dfrac{f_\infty(x)}{1-f_\infty(x)\log x}$

$f_\infty(x)$をランベルトの$W$関数で表す

$$ y=x^{x^{x^\cdots}}\Leftrightarrow y=x^y\Leftrightarrow \log y=y\log x\Leftrightarrow\frac{1}{y}\log y=\log x $$
両辺を$-1$倍して
$$ \frac{1}{y}\log\frac{1}{y}=\left(\log\frac{1}{y}\right)e^{\log\frac{1}{y}}=\log\frac{1}{x} $$
ランベルトの$W$関数で両辺を取ると
$$W\left(\left(\log\dfrac{1}{y}\right)e^{\log\frac{1}{y}}\right)=\log\dfrac{1}{y}=W\left(\log\frac{1}{x}\right)$$
$$-\log y=W(-\log x)$$
$y=e^{-W(-\log x)}=f_\infty(x)$となる.

$f^`(x)=\dfrac{f_\infty(x)}{1-f_\infty(x)\log x}$に代入して
$$ f^`(x)=\dfrac{e^{-W(-\log x)}}{1-e^{-W(-\log x)}\log x} $$

逆関数を使って表す

$$ y=x^{x^{x^\cdots}}\Leftrightarrow y=x^y\Leftrightarrow \log y=y\log x\Leftrightarrow x=y^{\frac{1}{y}} $$
$$ \therefore f_\infty^{-1}(x)=x^{\frac{1}{x}} $$

逆関数の概形から$f_\infty(x)$の収束半径は$0\leq x\leq e^{\frac{1}{e}}$と分かる.

合成関数の微分の性質から, $f_\infty(f_\infty^{-1}(x))=x$を微分すると
$$ \frac{d}{dx}f_\infty^{-1}(x)\cdot f'_\infty(f_\infty^{-1}(x))=1 $$

$\log f_\infty^{-1}(x)=\dfrac{1}{x}\log x$を微分すると
$\dfrac{\frac{d}{dx}f_\infty^{-1}(x)}{f_\infty^{-1}(x)}=\dfrac{1-\log x}{x^2}\Leftrightarrow \dfrac{d}{dx}f_\infty^{-1}(x)=\dfrac{(1-\log x)x^{\frac{1}{x}}}{x^2}$となるから
$$ f'_\infty(f_\infty^{-1}(x))=\dfrac{x^2}{(1-\log x)x^{\frac{1}{x}}} $$

$f^`(x)=\dfrac{xf'(x)}{f(x)}$より
$$ f_\infty^`(f_\infty^{-1}(x))=\frac{f_\infty^{-1}(x)}{f_\infty(f_\infty^{-1}(x))}\cdot\dfrac{x^2}{(1-\log x)x^{\frac{1}{x}}}=\dfrac{x}{1-\log x} $$
となる.

おわりに

テトレーションの超微分を考えましたが, 超微分の使い道がいまいち思いつかないのでどうにもこういった計算ばかりになりますね. また, 暇になったら書くつもりなのでよろしくお願いします.

投稿日:20241214
更新日:20241216
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