𝕏(旧Twitter)でよく算数の問題で、教師が合ってるのにバツを付けたとして、繰り返し話題になることとしてかけ算の順番があってそのどちらかだけが正しいとか(関連過去記事→「
自然数のかけ算の交換法則を図で説明してみる | Mathlog
」 )、$0$での割り算が$0$だとかの話(関連過去記事→「
0÷0=0がなぜダメなのか説明を考える | Mathlog
」 )に続いて、「長方形を選べ」という問題で、「正方形を選んだ」だらバツをもらうというのがある。
自分は、正方形はどの辺の長さも同じ特殊な長方形なので、「正方形は長方形である。」は正しいと考えている。
長方形の「長」の字が一つの要因かもしれないが、「正方形は長方形でない」と主張する投稿が毎回話題になる。また、「〇〇は△△である」が「=」(等しい)の場合と「⊂」(包含される)の場合とがあるのが要因なのかもしれない。「正方形は長方形である。」の場合は、「⊂」の意味である。「正方形は長方形である。」は「正方形は長方形の一種である」と言い換えれば良いのかもしれない。
この話題を見ていて、面白いクイズを思いついたので、𝕏(旧Twitter)に何度か投稿したが、あまり注目・共感されなかった。面白さあると確信していて、𝕏(旧Twitter)では流れて行ってしまうので、こちらにも投稿することにした。
「正方形は長方形である。」とは
「長方形で成り立つ全ての命題$P$について、正方形でも$P$が成り立つ」ことである。
これは例えば、
「長方形の全ての角が直角である」
「長方形の面積は隣り合う辺の長さの積で与えられる」
「長方形の対辺は平行である」
が成り立ち、「長方形」を「正方形」に取り換えた、
「正方形の全ての角が直角である」
「正方形の面積は隣り合う辺の長さの積で与えられる」
「正方形の対辺は平行である」
も成り立つ。
集合$S$の任意の要素$x \in S$で成り立つ命題$P(x)$は、
部分集合$T \subset S$の要素$y \in T$でも$P(y)$成り立つ。
実際、$T \subset S $は$\forall t \in T; t \in S$の事なので、
$y \in S$よって$P(y)$が成り立つ。
「長方形の縦横比(隣り合う辺の長さの比)を変更しても長方形」
この命題は明らかに成り立つ。
「長方形」を「正方形」に変更した命題
「正方形の縦横比(隣り合う辺の長さの比)を変更しても正方形」
この命題は明らかに成り立たない。正方形の縦横比は$1:1$の時に限られるからである。
「長方形で成り立つ全ての命題$P$について、正方形でも$P$が成り立つ」ことに矛盾しそうに見えるが、実際には矛盾していない。
これはいったいどういう事なのかを説明せよ。
「長方形の全ての角が直角である」
「長方形の面積は隣り合う辺の長さの積で与えられる」
「長方形の対辺は平行である」
等は、ある特定の長方形$r \in \{長方形\}$に対する命題であるが、
「長方形の縦横比(隣り合う辺の長さの比)を変更しても長方形」は、
最初に出てきた長方形と後に出てきた長方形は別ものである。
ある特定の長方形の命題ではなく、集合$\{長方形\}$のある要素の縦横比を変化させたものも集合$\{長方形\}$の要素に含まれることを言う命題である。
「長方形の集合が縦横比変化作用で閉じている」とも言い換えられる。
これは正方形の集合では成り立たない。「正方形の集合が縦横比変化作用で閉じていない」
集合の要素$x \in S$で成り立つ命題$P(x)$は部分集合の要素$y \in T \subset S$でも$P(y)$成り立つが、
集合$S$で成り立つ命題$Q(S)$でも、部分集合$T \subset S$では$Q(T)$が成り立つとは限らない。
「部分集合はもとの集合で成り立つ性質を受け継ぐわけではない。」
「長方形集合は隣り合う辺の長さが異なるものも含む」は成り立つが、
「正方形集合は隣り合う辺の長さが異なるものも含む」は明らかに成り立たない。
偶数全体も奇数全体も整数全体に含まれる。
「整数全体は奇数全体を含む」は成り立つが、
「偶数全体は奇数全体を含む」は成り立たない。
よく非可換な積の例として、行列の積が例として挙げられる。
$n \geq 2$として、集合$\{n次対角行列\} \subset \{n次正方行列\}$を考える。
$n$次正方行列で成り立つことはもちろん、$n$次対角行列でも成り立つが、
「$n$次正方行列の積は一般に非可換である。」は成り立つが、
「$n$次対角行列の積は一般に非可換である。」は成り立たない。$n$次対角行列の集合の任意の$2$要素で可換になるので。これも正方行列の集合ではある$2$つの要素で積が非可換な組が存在するが、その部分集合の対角行列の集合ではそのような要素がないという事である。
以前に「正方形は長方形である。」が𝕏(旧Twitter)で話題になった時に、可視化を思いついた。ここで考える長方形は全て左下頂点は原点に固定されていて、右下頂点も$x$軸上にあるとする。
$xy$平面上の第一象限$\{(x,y)|x>0,y>0\}$に点$B:(x,y)$があるとする。
この時、$x$軸と$y$軸に$B$から垂線をおろして、足をそれぞれ$C:(x,0),A:(0,y)$、原点を$O:(0,0)$とすると、長方形$ABCO$ができる。この$B$の頂点を動かすと、$ABCO$は様々な長方形にできる。そして、第一象限$\{(x,y)|x>0,y>0\}$上の点$B$と長方形$ABCO$は$1:1$に対応している。
そして次が成り立つ。
点$B$が半直線(対角線)$\{(x,x)|x>0\}$($y=x$のグラフ)上にある
$\Longleftrightarrow$
$ABCO$は正方形
($\Longrightarrow$)
$|OA|=y=x=|OC|$なので、隣り合う$2$辺の長さが等しい。$ABCO$は正方形である。
($\Longleftarrow$)
$ABCO$が正方形の時、$y=|OA|=|OC|=x$つまり$y=x,|OA|$は長さなので$x>0$
正方形ではない長方形と正方形
GeoGebraで実際に点$B$を動かせるものを作成した。
[Link]「
長方形 - GeoGebra
」
動かしている様子→
https://x.com/IIJIMAS/status/1830829456946274576
このようにすると、左下の頂点が原点、下の辺が$x$軸上である長方形の集合は第一象限$\{(x,y)|x>0,y>0\}$であり、そのうちの正方形である集合はその部分集合の半直線$\{(x,x)|x>0\}$である様子がわかる。
縦横比が同じ長方形に対応する点は、原点を通るある直線上にあり、特に$1:1$(正方形)になるのは$y=x$のグラフ上である。縦横比を変える操作は、異なるこのような直線に移動する事であり、移動前が正方形に対応する点の場合、移動後は正方形でない長方形に対応する点になることがわかる。
𝕏で繰り返し話題になる各種算数の議論は、複数の主張者が合意には至らないからこそ繰り返されていていかにも不毛に見えるが、少し視点を変えて考えるだけで面白いと思える事実が眠っている。その事実を題材に一人遊び的に、問題を考えてその回答を考える事で新たな気づきを得ることができる。
このような楽しみ方ができるのも数学の深遠で面白いところであると思う。