本稿は位数7の群を力技で求めることが目的である。同様の方法で位数が素数の群も調べることができる。
以降、$G$を位数$7$の群として$e$をその単位元とする。
$G$に関しては以下の$2$通りを考えることができる。
$0\leq i< j <7\Rightarrow a^i \neq a^j \dots $(A)であることを示す。
もし、$a^i=a^j$であったとすると$a^{j-i}=e$となり$a^i$の形で書ける元は高々$j-i<7$個になってしまう。これは①の仮定に矛盾である。よって$a^0=e,a^1,a^2,a^3,a^4,a^5,a^6$はいずれも異なる。これは$G=\{ a^0,a^1,a^2,a^3,a^4,a^5,a^6 \}$であることを意味する。群の演算について考える。$a^7$のみを考えたら良い。上の主張よりある$0\leq i <7$となる$i$が存在して$a^7=a^i$となる。$a^{7-i}=a^0$となる。(A)より$i=0$であることがわかる。よって$0\leq i <7$なる任意の$i,j$について$a^i \cdot a^j=a^{i+jを7で割った余り}$ という演算が入ることがわかる。これが群の条件を満足することは頑張って求めることもできるが省略する。
$a$を単位元でない$G$の元とする。仮定より$a^i$ の形で表されないような$G$の元が存在する。このような元を一つ取り$b$とする。ある$i \in \mathbb{Z}^{+}$が存在して$a^i=e$となることを示す。もし任意の$i \in \mathbb{N}=\{0,1, \dots ,\}$について$a^i\neq e$であると仮定すると$i\neq j \Rightarrow a^i\neq a^j$となる。というのも$i\neq j$で$a^i=a^j$であるとすると$a^{|i-j|}=e$となり$|i-j|=0$すなわち$i=j$を得るからである。また任意の元$n\in \mathbb{N}$について$a^n \in G$であることは$G$が演算について閉じていることから従う。すると、$\{a^0,a^1,\dots a^n,\dots \}\subseteq G\dots $(B)となる。$i\neq j \Rightarrow a^i\neq a^j$より左辺は無限集合となるが右辺は有限集合なので矛盾である。($G$の位数は7であった!)
よってある$i \in \mathbb{Z}^{+}$が存在して$a^i=e$となる。そのような最小の$i$が何か求める。$G$が演算について閉じていることから(B)式が成立する。(B)の式において左辺の元の個数は$i$である。よって$1\leq i\leq 7$であることがわかる。$a$は単位元ではないので$i\neq 1$である。
また②の仮定より$i\neq 7$である。よって$i=2,3,4,5,6$のいずれかである。
$i=2$であると仮定する。元$b\in G\setminus \{ e,a\}$をとる。$ab \notin \{ e,a,b\}$であることが群構造よりわかる。元$c\in G\setminus \{ e,a,b,ab\}$をとる。$ac \notin \{ e,a,b,ab,c\}$であることが同様にわかる。(例えば$ac=b$であるとすると両辺に左から$a$を掛けて$c=ab$を得てしまう。)元$d\in G\setminus \{ e,a,b,ab,c,ac\}$をとる。$ad \notin \{ e,a,b,ab,c,ac,d\}$であることが同様にわかる。これは$G$の位数が$7$であることに矛盾である。$i=3,4,5,6$でも同様のことが起こる。これは3,4,5,6が7の約数ではないことに起因する。実際は$\{e,a,a^2\} \rightarrow \{e,a,a^2,b,ab,a^2b\} \rightarrow \{e,a,a^2,b,ab,a^2b,c,ac,a^2c\}$で矛盾
のように考えたらよく、詳細を述べるほどの難しさでもない。
以上で位数$7$の群の分類が完成した。結果をまとめておく。
$G$を位数7の群とする。このとき、ある元$a\in G$が存在して、$G=\{a^0,a^1,a^2,a^3,a^4,a^5,a^6\}$である。演算としては$a^i \cdot a^j=a^{i+jを4で割った余り}$である。
位数7の群は$\mathbb{Z}/\mathbb{7Z}$と同型である。つまり、整数問題でいうところの$\mod7$を考えている状況である。
有限群$G$において任意の元$a \in G$について$a^i=e$となるような$i$は必ず存在することが分かったと思う。さらに今回の証明で分かったようにその$i$は$G$の位数の約数にならないといけないことも分かった。よって、位数が素数$p$の群では$i=1,p$のどちらかであり、②のようなパターンはありえないことも分かった。つまり、①のパターンしかないので次のような結果を得る。
$p$を素数、$G$を位数pの群とする。このとき、ある元$a\in G$が存在して、$G=\{a^0,a^1,\dots ,a^{p-1}\}$である。演算としては$a^i \cdot a^j=a^{i+jをpで割った余り}$である。
大学数学的にいうと次のようになる。(群論はすでに大学数学であったが)
位数が素数の群は巡回群である。
今回は位数が素数の群が非常に簡単な構造を持つことを$p=7$という例を用いて示した。一般の有限群を分類することは難しいが21世紀に入りついに完全な分類が達成された。