こんにちは、Nappleです。
前回までは、絡分という連続な総乗に相当する変換を定義して、$x$の絡分がほぼ$x!$であることなどを調べてきました。
今回は絡分の基本的な性質を調べて、総乗や他の演算との比較をおこないます。
すると、嬉しい性質が見つかります。
と、その前に記号の整理と定義を行っておきます。
総乗に対応する連続な変換である絡分とは、
実数関数$f(x)$に対して次の関数$\mathcal{F}(x)$を得る変換である。
ここで、$T^{-1}$は絡分を意味する作用素(絡分作用素)である
$$
T^{-1}f(x) = \mathcal{F}(x) = \exp(\int\ln{f(x)}dx)
$$
定絡分とは、実数関数$f(x)$が正の範囲$(a,b)$について、$f(x)$を絡分する操作であり、以下の式が成り立つ。
$$
\mathcal{F}(x) = \exp(\int_a^b\ln{f(x)}dx)
$$
絡分の逆演算である解分とは、
実数関数$\mathcal{F}(x)$に対して次の関数$f(x)$を得る変換である。
ここで、$T$は解分を意味する作用素(解分作用素)である。
$$
T\mathcal{F}(x) = f(x) = \exp(\frac{d}{dx}\ln{\mathcal{F}(x)})
$$
これまで$f(x)$と$\mathcal{F}(x)$という言い方しかできなかったので、演算子を使って簡単に表せるようにしました。
$$ T T^{-1} f(x) = f(x) $$
$$ \begin{align} T T^{-1} f(x) &= \exp(\frac{d}{dx}\ln{\exp(\int\ln{f(x)}dx)})\\ &= \exp(\frac{d}{dx}\int{}\ln{f(x)}dx) \\ 微分積分学の第一基本定理より\\ &= \exp(\ln{f(x)}) \\ &= f(x) \\ \end{align} $$
$$ \exp(\int_a^b\ln{f(x)}dx) = \frac{T^{-1}f(b)}{T^{-1}f(a)} $$
$$ \begin{align} 微分積分学の第二基本定理より\\ \exp(\int_a^b\ln{f(x)}dx) &= \exp(\int\ln{f(b)}dx - \int\ln{f(a)}dx)\\ &=\frac{\exp(\int\ln{f(b)}dx)}{exp(\int\ln{f(a)}dx)}\\ &=\frac{T^{-1}f(b)}{T^{-1}f(a)} \end{align} $$
$f,g$は実数関数
$$
T^{-1} (fg) = T^{-1}f \cdot{}T^{-1}g
$$
$$ \begin{align} T^{-1} (fg) &= \exp(\int\ln{(fg)}dx)\\ &= \exp(\int(\ln{f}+\ln{g})dx)\\ &= \exp(\int\ln{f}dx+\int\ln{g}dx)\\ &= \exp(\int\ln{f}dx)\cdot{}\exp(\int\ln{g}dx)\\ &= T^{-1}f \cdot{}T^{-1}g \end{align} $$
$n$:整数
$$
T^{-1} ((f)^n) = (T^{-1}f)^n
$$
$$ \begin{align} T^{-1} ((f)^n) &= \exp(\int\ln{((f)^n)}dx)\\ &= \exp(n\int\ln{(f)}dx)\\ &= (\exp(\int\ln{(f)}dx))^n\\ &= (T^{-1}f)^n \end{align} $$
※公式1からも導出できます。
公式2から特に
$$
T^{-1} \frac{1}{f} = \frac{1}{T^{-1} f}
$$
であることがわかります。
$\lambda$:実数, $A$:絡分定数(正の実数)
$$
T^{-1} (\lambda{}f) = A\lambda{}^xT^{-1}f
$$
$$ \begin{align} T^{-1} (\lambda{}f) &= \exp(\int\ln{(\lambda{}f)}dx)\\ &= \exp(\int\ln{\lambda{}}dx)\cdot{}\exp(\int\ln{f}dx)\\ &= \exp(xln{\lambda{}}+C)\cdot{}\exp(\int\ln{f}dx)\qquad (Cは実数)\\ &= A\lambda{}^xT^{-1}f\\ \end{align} $$
微積分と比較すると嬉しい
微積分 | 絡分 |
---|---|
$D D^{-1} f(x) = f(x)$ | $T T^{-1} f(x) = f(x)$ |
$\int_a^bf(x)dx = D^{-1}f(b) - D^{-1}f(a)$ | $\exp(\int_a^b\ln{f(x)}dx) = \frac{T^{-1}f(b)}{T^{-1}f(a)}$ |
総乗と比較するとすごく嬉しい
総乗 | 絡分 |
---|---|
$\prod_i{a_ib_i} = \prod_i{a_i} \cdot{} \prod_i{b_i}$ | $T^{-1} (fg) = T^{-1}f \cdot{}T^{-1}g$ |
$\prod_i{\frac{1}{a_i}}=\frac{1}{\prod_i{a_i}}$ | $T^{-1} \frac{1}{f} = \frac{1}{T^{-1} f}$ |
$\prod_{i=1}^n{\lambda{}a_i}=\lambda{}^n\prod_{i=1}^n{a_i}$ | $T^{-1} (\lambda{}f) = A\lambda{}^xT^{-1}f$ |
嬉しくなったので終わりです
なんか他にも有用な公式がありそうななさそうなという感じ……
また気が向いたら続きを書きます
ではまた~