こんにちは、Nappleです。
前回の記事( 絡分 (連続な総乗) )の最後に、
$x$の絡分$(\frac{x}{e})^x$が$x!$と一致していない……ので多分何かがおかしい。
ということを書きました。
今回は絡分して$x!$になる関数を求めることで疑問を解消したいと思います。
前回の復習として絡分の定義を置いておきます。
総乗に対応する連続な変換である絡分とは、
実数関数$f(x)$に対して次の関数$\mathcal{F}(x)$を得る変換である。ここで絡分の底$p$は任意の1でない正の実数とする。
$$
\mathcal{F}(x) = p^{\Large{\int_{a}^{b}\log_p{f(x)}dx}}
$$
$x$の絡分が$x!$に一致しないならば、どんな$f(x)$を絡分すれば$\mathcal{F}(x) =x!$となるのでしょうか。
そのような$f(x)$を求めるには、絡分の逆演算を考える必要があります。
$$ \begin{align} \mathcal{F}(x) &= p^{\Large{\int_{a}^{b}\log_p{f(x)}dx}}\\ \log_p{\mathcal{F}(x)} &= \int_{a}^{b}\log_p{f(x)}dx\\ \frac{d}{dx}\log_p{\mathcal{F}(x)} &= \log_p{f(x)}\\ p^{\Large{\frac{d}{dx}\log_p{\mathcal{F}(x)}}} &= f(x)\\ \end{align} $$
これをまとめます。
絡分の逆演算である解分とは、
実数関数$\mathcal{F}(x)$に対して次の関数$f(x)$を得る変換である。ここで解分の底$p$は任意の1でない正の実数とする。
$$
f(x) = p^{\Large{\frac{d}{dx}\log_p{\mathcal{F}(x)}}}
$$
$\int$がそのまま$\frac{d}{dx}$に置き換わっただけなのでわかりやすいですね!
解分の底は$e$とし、$x!$を解分していきます。
$$
f(x)=\exp(\frac{d}{dx}\ln{x!})
$$
待ってください???
$\ln{x!}$の微分ってなんですか……?
実はこの$\frac{d}{dx}\ln{x!}$は、ディガンマ関数と名付けられた特殊関数で表せるみたいです。対数微分というよく知られた手段もあるんですね。
定義を置いておきます。
ガンマ関数は以下で定義される複素関数である。
$$
\Gamma(z):=\int{t^{z-1}e^{-t}}dt
$$
自然数$n$については$\Gamma(n+1)=n!$が成り立つ。
また、ガンマ関数$\Gamma(x)$に対し、その対数微分
$$
\psi(z):=\frac{d}{dz}\ln{\Gamma(z)}=\frac{\Gamma^{\prime}(z)}{\Gamma(z)}
$$
をディガンマ関数と呼ぶ。
$$ \psi(z+1)=\psi(z)+\frac{1}{z} $$
これを用いれば、$x!$の解分は
$$
f(x)=\exp(\frac{d}{dx}\ln{x!})=e^{\psi(x+1)}=e^{\psi(x)+\frac{1}{x}}
$$
と表せることがわかりました。
$f(x)=e^{\psi(x+1)}$
図1を見ると、$f(x)\sim{}x+\frac{1}{2}$であることがわかります。
この近似で絡分を計算すると、
$$
\begin{align}
\mathcal{F}(x) &= e^{\Large{\int_{0}^{x}\ln{(t+\frac{1}{2})}dt}}\\
&=e^{\Large{[(t+\frac{1}{2})(\ln(t+\frac{1}{2})-1)]_0^x}}\\
&=e^{\Large{(x+\frac{1}{2})(\ln(x+\frac{1}{2})-1)-\frac{1}{2}(\ln\frac{1}{2}-1)}}\\
&=e^{\Large{(x+\frac{1}{2})\ln(2x+1)-x(\ln2+1)}}\\
&=\sqrt{2x+1}(\frac{2x+1}{2e})^x\\
\end{align}
$$
という式が得られました。
前回のコメントにスターリングの公式との比較を話題にいただきましたが、
スターリングの公式の近似$x!\sim{}\sqrt{2\pi{}x}(\frac{x}{e})^x$とも、オーダーはかなり近い近似となりました。
$x!$とその近似
絡分して$x!$になる関数を求めることができて一件落着です。
$x$の絡分$(\frac{x}{e})^x$もある意味で$x!$に近いものだったっぽいと考えると、この絡分・解分という概念もある程度正当性があるのではないかと思います。
ちなみに今回記載はしていませんが、近似に関してはディガンマ関数の漸近展開を用いるとより厳密に行えると考えています。
今回も適当な記事でしたが一旦このへんで
ではまた~