この記事は、先日私が公開した
【Mathlog】放物線上をはね続けるボールの研究①フィボナッチ数が生えた話
【Mathlog】放物線上をはね続けるボールの研究②はね続ける条件の話
の記事や、子葉さんが公開した
と関連のある内容となっています。
時間のある方はこの記事と合わせてお読みいただくとよりいっそう楽しめると思います。
これまでの記事では、
「放物線上を、その放物線の焦点を通る軌道で発射した質点は永久にはね続ける」
という現象を取り扱っていましたが、この記事では主に
「放物線上を、その放物線の焦点を通らない軌道で発射した質点が描く軌道」
を取り扱います。
まずは実際に、「下に凸な放物線の上を、その放物線の焦点を通らない軌道で発射した質点が描く軌道」を
包絡線のパターンA
包絡線のパターンB
質点がはね続けると、質点の通り得る領域を囲む包絡線が現れるのが見えますね。
@aoki_taichi さんは現れる包絡線が、ベースとなる放物線と焦点を同じくする放物線になるのではないかと予想されましたが……
複素変換でグニャリと曲げて長方形にしてみた。
— Taichi AOKI (@aoki_taichi) February 9, 2024
ここから何が言えるのかはまだよくわからないけど、オレンジの曲線同士の交点が水平垂直に整列しているようにも見えますね… pic.twitter.com/AK5ndulB68
……結論から言うと、その予想が正しかったことを証明できました!
実際に動かせるDesmosファイルを用意しましたので、よろしければ実際に動かして体感してみてください。
この記事ではこれらの包絡線について主に取り上げます。
これまでの記事と同様、直感的に理解しやすいように、
座標平面上に重力加速度が一様に下向きに大きさ
なお、これまでの記事とは違い、ベースとなる放物線は上に凸なものだけでなく、下に凸なものも含めて考えます。
まず、結果から書きます。
質点の描く放物線の「焦点の原点からの距離」及び「準線の
原点焦点で
では実際の様子を、「①下に凸な放物線上、
①下に凸な放物線上、
原点焦点で
②下に凸な放物線上、
原点焦点で
③上に凸な放物線上、
原点焦点で
なお、ベースとなる放物線が
④上に凸な放物線上、
原点焦点で
ベースとなる放物線の位置によっては、右向きに発射した質点が途中で左向きになったりします。
なお、
それではここから、これらの性質が成り立つことを数式で確認していきたいと思います。
と書くことができます。
このとき、
逆に、
すると、
また、
ここからは、平面全体に下向きに
場合分けを減らすため、
記号の説明
次に、
ベクトルの成分を比較することで
原点を焦点に持つ放物線
両辺に
これを
ここで
つぎに、
などを使って
赤字の部分を抜き出して変形していく。
元の式に戻すと
ここで、
つまり、
符号を逆にする
質点の描く放物線の焦点を
まず頂点の座標を求めます。
と変形できるので頂点は
とわかります。
つぎに、
つまり、
実はこのパート、変数を書き換えなくても不変量であることが証明できるのですが、記事の他の部分とのバランスを考えて変数を書き換えてから証明しています。
また、よくみると
つまり、準線の位置は「運動エネルギーが全て位置エネルギーとなる高さ」と解釈することができます。
つまり、
それでは、ここまでに得られた
明らかに次の関係があることがわかりますね!
これで冒頭の性質を数式から確かめたことになります。
質点の描く放物線の「焦点の原点からの距離」及び「準線の
原点焦点で
これで今回の記事はおしまいです。
実は、先にご紹介したDesmosファイルですが、隠し機能がありまして
画像の名前
「焦点・準線」フォルダの表示をオンにすることで、軌道の焦点・準線を確認することができますので、いろいろと試してみていただければと思います。
当初、不思議な模様にみえていたものが、放物線の焦点と準線に注目してみると、背景にある実にシンプルで美しい関係が現れてきて、実に感動的でありました。
また、この記事では数式で証明する流れでしたが、幾何的に証明することもできるのではないかと思います。
例えば、衝突点を
これらの現象を、力学的エネルギーとからめて物理的に解釈することも楽しそうです。
もし何か面白い性質や新しい解釈を見つけたら教えていただければ幸いです!