はじめに
この記事では
前回の記事
に引き続き保型形式の基礎理論について要所を掻い摘んで解説していきます。
保型形式
上の関数に対しの作用を
によって定める。ただしは
前の記事
で定めた保型因子とした。
準保型形式
Fuchs群と整数に対し、上の有理型関数であって任意のに対してつまり
を満たすもの全体をとおく。
のときはが成り立つので奇数に対してが成り立つことに注意する。
尖点における挙動
いま
が成り立つことに注意するとに対し
がわかる。
またの尖点に対しなるを取ると、あるによって
が成り立つので、が偶数のときに対し
と周期的になる、つまりあるにおける有理型関数によって
と表せる。
こののにおける挙動によっての尖点における挙動を次のように定める。
が尖点において有理型であるとは、が偶数のとき上のがにおいて有理型であることを言う。が奇数のときはがにおいて有理型であることを言う。また尖点における正則性や零点/極の位数についても同様に定める。
第一種のFuchs群に対し
とおく。これらの元のことをそれぞれ重さの有理型保型形式、正則保形形式、カスプ形式と言う(有理型/正則保形形式を単に保型形式と言うことも多い)。
特にのことを保型関数体、その元のことを保型関数という。
フーリエ展開
が尖点において有理型であるとき、が偶数ならのローラン展開を考えることで
と展開することができる。
またが奇数でならが成り立つので同様に
と展開することができる(が正則な尖点か非正則な尖点かによっての偶奇が変わる)。
これらの展開をのにおけるフーリエ展開と言う。この展開は十分大きいに対しで絶対一様収束し、特にが上正則ならこの展開も上で成り立つこととなる。
ちなみに以下の命題よりのフーリエ展開はある程度に依らない、例えば展開係数の比の比などはの取り方に依らず一定となることがわかる。
の尖点における零点/極の位数はの取り方に依らずに定まる。
なるに対し、はを固定するのであるによって
と表せる。このときより
が成り立つことから主張を得る。
保型関数
からへの自然な写像をとおく。
保型関数は任意のに対してを満たすのである上の有理型関数があって
が成り立つ。特にが尖点において有理型であることはがの尖点において有理型であることと言い換えられる。すなわちこれによって保型関数と上の有理型関数を同一視することができる。
そしてこの対応から次のような重要な事実を導出することができる(は第一種のFuchs群としていたことに注意する)。
この事実は保型形式の等式を示すのに非常に有用な定理となる。例えば重さの保型形式についての等式を示したいとき
・の極はの極となること
・の零点はの零点となること
・ある点においてが成り立つこと
を示せば十分となる。実際は極を持たない保型関数となるので定数であり、またにおいてとなることからが得られる。
保型形式と微分形式
上のように保型関数は上の有理型関数と同一視することができたが、より一般に重さの保型関数は上の微分-形式と同一視することができる。
微分-形式とはある座標近傍系に対して
を満たす関数の族あるいは微分-形式の族のことを言う。
重さの保型形式はの座標変換に対して
を満たすのでは微分-形式となる。
この対応を考えることでやの-線形空間としての次元を求めることなどができるが、少し込み入った話となるのでこの記事では扱わない。興味があれば
このPDF
のp.24-などを参照されたい。