0
大学数学基礎解説
文献あり

中間被覆について

75
0

中間被覆

 この記事は参考文献 [1] 第 2 章 Fundamental groups in topology を参考にさせていただきました。

 以下、X を局所連結位相空間、Y, Z を連結位相空間とします。

 (Y, p)X 上の被覆とする。(Z, q)Y/X の中間被覆であるとは、次の条件 (1), (2) を満たすことをいう:
(1) (Z, q)X 上の被覆である。
(2) qf=p となるような連続写像 f:YZ が存在する。

YfpZqX

 (Y, p)X 上の被覆、(Z, q)Y/X の中間被覆、f:YZqf=p となるような連続写像とする。このとき f は開写像である。

 UY の開集合とする。任意の f(u)f(U) をとる。p(u)=q(f(u))X における被覆近傍を VVY におけるシートを {Ui}iIVZ におけるシートを {Vj}jJ とすると、uUi, f(u)Vj となる iI, jJ が存在する。f は連続であるから f(T)Vj となるような uY における開近傍 T が存在する。 W:=TU とおき、次を示す:
f(W)=q1(p(W))Vj   ()
()
 まず f(W)Vj である。次に、任意の f(w)f(W) に対して q(f(w))=p(w)p(W) であるから f(w)q1(p(W)) である。
()
 任意の zq1(p(W))Vj をとる。q(z)p(W) より、ある wW が存在して q(z)=p(w)=q(f(w)) となる。qVj への制限は V への単射であるから z=f(w) となる。よって zf(W) である。

 () より f(W)f(u)Z における開近傍であり、f(W)f(U) となるから f(U)Z の開集合である。

 中間被覆では次の補題 2 が重要です。補題 2 と補題 3 はいずれも参考文献 [1] Lemma 2.2.11 を参考にさせていただきました。

 (Y, p)X 上の被覆、(Z, q)Y/X の中間被覆、f:YZqf=p となるような連続写像とする。このとき、次が成り立つ:
 () 任意の zZ に対して、q(z)X における連結な被覆近傍 V と、VY におけるシートの族 {Ui}iI と、VZ におけるシートの族 {Vj}jJ が存在して、{f(Ui)}iI{Vj}jJ となる。

 x:=q(z) とおく。(Y, p)(Z, q)X 上の被覆であるから、xX における連結な被覆近傍 VVY におけるシートの族 {Ui}iI 、および VZ におけるシートの族 {Vj}jJ が存在する。任意の iI に対して q(f(Ui))=V より
f(Ui)jJVj となる。各 jJ に対して Wj:=f(Ui)Vj とおき、J:={jJWj} とおくと、補題 1 より q(Wj)X の開集合であり
V=jJq(Wj), q(Wj)q(Wk)= (j,kJ, jk) となるから、V の連結性よりただ一つの jJ が存在して V=q(Wj) となる。よって f(Ui)Vj である。一方、任意の kJ, kj に対して Wk= であるから f(Ui)Vj となる。したがって f(Ui)=Vj である。

 (Y, p)X 上の被覆、(Z, q)Y/X の中間被覆、f:YZqf=p となるような連続写像とする。このとき、f は全射である。

 Z の連結性を使って示す。補題 1 より f(Y)Z の開集合である。任意の zZf(Y) をとる。q(z) の被覆近傍とシートについて、() にあるような V{Ui}iI{Vj}jJ を考える。zVj とすると f(Y)Vj= である。そうでないと仮定すると f(y)Vj となるような yY が存在する。yUi とすると f(Ui)=Vj となり zf(Y) に矛盾する。したがって Zf(Y)Z の開集合である。

Note

 補題 3 より f は全射であるから、補題 2 の () は次の () のようにもう少し強い形で述べることができる:
 () 任意の zZ に対して、q(z)X における連結な被覆近傍 V と、VY におけるシートの族 {Ui}iI と、VZ におけるシートの族 {Vj}jJ が存在して、{f(Ui)}iI={Vj}jJ となる。

 簡単に言うと Y のシートで Z のシートを覆うことができる。これは次の命題 4 で厳密な形で述べられる。

 次の命題 4 は参考文献 [1] Theorem 2.2.10 を参考にさせていただきました。この命題はガロア拡大 L/K の中間体 M に対して L/M もガロア拡大であることとの類似です。

 (Y, p)X 上の被覆、(Z, q)Y/X の中間被覆、f:YZqf=p となるような連続写像とする。このとき、次が成り立つ:
(1) (Y, f)Z 上の被覆である。
(2) (Y, p)X 上のガロア被覆ならば、(Y, f)Z 上のガロア被覆である。

(1)
 任意の zZ をとる。q(z) の被覆近傍とシートについて、() にあるような V{Ui}iI{Vj}jJ を考える。zVj とし
I:={iIf1(Vj)Ui}={iIf(Ui)=Vj}
とおくと f1(Vj)=iIUi となる。さて、任意の iI に対して fUi への制限は Ui から Vj への同相写像であることを示す。まず f(Ui)=Vj より fUi への制限は Vj への全射である。次に qfUi から V への単射であることより fUi への制限は単射である。最後に WUi の開集合とすると p(W)=q(f(W))V の開集合であり、よって f(W)Vj の開集合であるから fUi への制限は開写像である。

(2)
 zZ とし、任意の y1, y2f1(z) に対して σ(y1)=y2 となるような σAut(Y/Z) が存在することを示す( ガロア被覆について の命題 1)。y1, y2p1(q(z)) であり、(Y, p)X 上のガロア被覆であるから σ(y1)=y2 となるような σAut(Y/X) が存在する。f(σ(y1))=f(y2)=f(y1) であるから、 被覆の自己同型について の命題 3 より fσ=f となる。よって σAut(Y/Z) である。

Note

 Y/X をガロア被覆、G:=Aut(Y/X)(Z, q)Y/X の中間被覆、f:YZp=qf となる連続写像とする。可換図式中の πZ, πX はそれぞれ Y から各軌道空間への標準全射である。命題 4 (2) より f は軌道空間(商位相空間)から Z への同相写像
f:Y/Aut(Y/Z)Z を誘導するが、この f によって G の部分群 Aut(Y/Z) から中間被覆 Z への対応が生じている。被覆から群へ、そして群から同じ被覆へと戻っている。

{ idY }YπZfpπXAut(Y/Z)Y/Aut(Y/Z)q  ff  ZqGXY/Gp  

参考文献

[1]
Tamás Szamuely, Galois Groups and Fundamental Groups, Cambridge University Press, 2009
投稿日:2023520
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

pha
25
5220
初めまして!ファ♪です☺️ よろしくお願いします🤲🐹

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中
  1. 中間被覆
  2. 参考文献