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ディリクレのベータ関数、イータ関数が関係する、とある積分

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ディリクレのベータ関数、イータ関数を
β(s)=n=0(1)n(2n+1)s
η(s)=n=1(1)n1ns=(121s)ζ(s)
とする。

非負整数nに対し、
In=0(lnx)nx(1x1sinhx)dx
とすると、
In=k=0n(nk)Aklnnk(π)
が成り立つ。ただし、
Ak=4πj=0k/2k!(k2j)!β(2j+1)η(k2j)(1)
ここで、
η(k2j)(1)=dk2jdsk2jη(s)|s=1=l=1(1)l1(lnl)k2jl
である。

I0=A0=η(1)=ln(2)
I1=A1+A0ln(π)=η(1)+ln(2)ln(π)=γln(2)12ln2(2)+ln(2)ln(π)
I2=A2+2A1ln(π)+A0ln2(π)=2γ1ln2+(ln2)33γln2(2)+π24ln(2)2γln(2)ln(π)+ln2(π)ln(2)+ln(π)ln2(2)
ただしγ1=0.07281... スティルチェス定数

n=1(1)nn2+x2=12x(πsinhπx1x)

三角関数の部分分数展開より、
πsin(πx)=1x+n=1(1)n2xx2n2
である。xixとして両辺を2ixで割ると得られる。

非負整数kについて、
0ln2k(x)1+x2dx=2(2k)!β(2k+1)

便利 氏の 記事 参照のこと。

非負整数kについて、
0ln2k+1(x)1+x2dx=0

0ln2k+1(x)1+x2dx=0(1)2k+1ln2k+1(u)1+u2duu=1/x
より示される。

非負整数n,実数x>0について、
0lnn(t)x2+t2dt=2xk=0n/2n!(n2k)!β(2k+1)lnn2k(x)

0lnn(t)x2+t2dt=1x0lnn(xu)u2+1dut=xu=1x011+u2k=0n(nk)lnk(u)lnnk(x)du=1xk=0n(nk)lnnk(x)0lnk(u)1+u2du=1xk=0n/2(n2k)lnnk(x)2(2k)!β(2k+1)3,4=2xk=0n/2n!(n2k)!β(2k+1)lnn2k(x)

数列{an},{bn}が、定数cについて関係式
bn=k=0n(nk)(1)kckank
を満たすとき、
an=k=0n(nk)bkcnk
である。

記事 参照のこと。

以下、これらの定理、補題を用いて定理1の証明をする。

定理1の証明

定理5より、
0lnn(t)x2+t2dt=2xk=0n/2n!(n2k)!β(2k+1)lnn2k(x)
x=kとして、両辺に(1)kを掛け、k=1,2,3,で足し合わせると、
k=1(1)k0lnn(t)k2+t2dt=k=1(1)k2kj=0n/2n!(n2j)!β(2j+1)lnn2j(k)
ここで、左辺について、優収束定理から極限と積分の交換が可能で、
k=1(1)k0lnn(t)k2+t2dt=0lnn(t)k=1(1)kk2+t2dt=0lnn(t)12t(πsinh(πt)1t)dt(2)=π20lnn(u/π)u(1u1sinh(u))duπt=u=π2k=0n(nk)(1)k(lnπ)k0lnnk(t)t(1t1sinht)dt
また、右辺について、
k=1(1)k2kj=0n/2n!(n2j)!β(2j+1)lnn2j(k)=2j=0n/2n!(n2j)!β(2j+1)k=1(1)klnn2j(k)k=2j=0n/2n!(n2j)!β(2j+1)ηn2j(1)=2k=0n/2n!(n2k)!β(2k+1)ηn2k(1)
であるから、
π2k=0n(nk)(1)k(lnπ)k0lnnk(t)t(1t1sinht)dt=2k=0n/2n!(n2k)!β(2k+1)ηn2k(1)
つまり
4πk=0n/2n!(n2k)!β(2k+1)ηn2k(1)=k=0n(nk)(1)k(lnπ)k0lnnk(t)t(1t1sinht)dt
が成り立つ。ここで、
an=0lnn(t)t(1t1sinht)dtbn=4πk=0n/2n!(n2k)!β(2k+1)ηn2k(1)c=ln(π)
とすれば、
bn=k=0n(nk)(1)kckank
を満たし、補題6より、
an=k=0n(nk)bkcnk
つまり
0lnn(x)x(1x1sinhx)dx=k=0n(nk)lnnk(π)4πj=0j/2k!(k2j)!β(2j+1)ηk2j(1)
となり、定理1が示される。

完走した感想

η(n)(1)の値を求めるにはζ(s)のローラン展開から導くしかおそらく方法はなく、手計算でn=2,3,4,...と求めるのは骨が折れる(実際n=2の例もWolfram alphaを使った)。値それ自身はln2のべき乗とγnの積・和で表されると予想される。
n=10までの計算結果から、以下の式が成り立つと予想される。
η(n)(1)=(ln2)nn+1k=1n(nk)γnk(ln2)k
一方でベータ関数の奇数の値についてはこの 記事 のように(有理数)×(πのべき乗)の形で表される。
よって、一般のInについてはγn,ln(2),ln(π),πのべき乗の積・和で表されると予想される。

おまけ

η(n)(1)の値

ln2γln(2)+12ln2(2)2γ1ln(2)γln2(2)+13ln3(2)3γ2ln(2)3γ1ln2(2)γln3(2)+ln4(2)44γ3ln(2)6γ2ln2(2)4γ1ln3(2)γln4(2)+ln5(2)55γ4ln(2)10γ3ln2(2)10γ2ln3(2)5γ1ln4(2)γln5(2)+ln6(2)66γ5ln(2)15γ4ln2(2)20γ3ln3(2)15γ2ln4(2)6γ1ln5(2)γln6(2)+ln7(2)77γ6ln(2)21γ5ln2(2)35γ4ln3(2)35γ3ln4(2)21γ2ln5(2)7γ1ln6(2)γln7(2)+ln8(2)88γ7ln(2)28γ6ln2(2)56γ5ln3(2)70γ4ln4(2)56γ3ln5(2)28γ2ln6(2)8γ1ln7(2)γln8(2)+ln9(2)99γ8ln(2)36γ7ln2(2)84γ6ln3(2)126γ5ln4(2)126γ4ln5(2)84γ3ln6(2)36γ2ln7(2)9γ1ln8(2)γln9(2)+ln10(2)1010γ9ln(2)45γ8ln2(2)120γ7ln3(2)210γ6ln4(2)252γ5ln5(2)210γ4ln6(2)120γ3ln7(2)45γ2ln8(2)10γ1ln9(2)γln10(2)+ln11(2)11

これより、次のように簡潔に表されると予想される。

η(n)(1)=(ln2)n+1n+1k=1n(nk)γnk(ln2)k

これを用いると、Inは次のように閉じた式で(?)表される。

In=4πk=0n(nk)lnnk(π)j=0k/2k!(k2j)!β(2j+1)[lnk2j+1(2)k2j+1l=1k2j(k2jl)γk2jllnl(2)]

投稿日:38
更新日:39
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