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微分方程式 y' + P y = Q の解法

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はじめに

ここでは ライプニッツ記法の正しい扱い方 でみた古い微分法を使います。まあ大学に行くとしれっと復活するのですが。いま学校で習うのは例えばy=x2の微分はdy/dx=2xで、左辺は微分を意味する記号で分数ではないという扱いです。しかし昔は普通にdx,dyも一種の量として扱っていました。
yの微分はdy
x2の微分は2xdx
y=x2の両辺を微分してdy=2xdx
というふうに考えます。この記法のいいところは複数の変数が混ざっていても普通に微分を考えれることです。例えばx2+y2の微分は2xdx+2ydyです。
またここではCは積分定数とします。

微分方程式

y,P,Qxの関数とします。微分方程式
dy+Pydx=Qdx     (  y+Py=Q)
の解は
y=ePdx(QePdx+C)

定数変化法

dy+Pydx=Qdx
とりあえず、右辺が0だったら解けるのでまずそれを解いてみます。
dy+Pydx=0dyy+Pdx=0dyy+Pdx=Clny+Pdx=Cy=CePdx
さてこれをヒントにして元の式を解きます。ここで出てきた積分定数Cxの関数 uとして元の式に代入します。
y=uePdxdy=ePdx(duuP)
より
dy+Pydx=Qdx

ePdx(duuP)+uPePdx=QdxePdxdu=Qdxdu=QePdxdxu=QePdxdx+C
よって
y=ePdx(QePdx+C)

積分因子法

N,M,Zx,y の関数として
Ndx+Mdy=dZ
の形になるときこれを完全微分式といいます。例えば
xdy+ydx=d(xy)ydxxdyy2=d(xy)
完全微分式の解Ndx+Mdy=dZ=0は明らかにZ=Cです。なので例えば xdy+ydz=0 の解は xy=Cです。
Ndx+Mdy が完全微分式ではなくても、ある関数 Lを両辺にかけることで完全微分式になることがあります。このようなLを積分因子と呼びます。
元の式に戻ります。
dy+Pydx=Qdx
とりあえずまず右辺を0の場合を考えます。
dy+Pydx=0
L=1y
を両辺にかけると
dyy+Pdx=0
となり左辺は
d(lny+Pdx)
なので
lny+Pdx=C
または
yePdx=C
よって
dy+Pydx
は積分因子L=1/yにより
L(dy+Pydx)=dZ
という形にできることがわかりました。ここで積分因子L=1/yが唯一のものかというとそうではありません。これに定数倍をかけたものも同じようにdZの形にできます。一般にどのようなものがdZの形にできるかというと dZ=0 の積分 Z=CZを使ってLφ(Z)と表せます。L(Ndx+Mdy)=dZ の両辺にφ(Z) をかけると
(Ndx+Mdy)Lφ(Z)=φ(Z)dZ
となり右辺のZについての積分をFとすれば、右辺はdFと表せるのでLφ(Z) も積分因子になります。今回の場合はL=1/yφ(Z)=φ(yePdx)なので
1yφ(yePdx)
が一般の積分因子です。元の式に戻って
dy+Pydx=Qdx
を考えます。左辺は積分因子L=1yφ(yePdx)をかけることで完全微分形にできます。なので積分因子のφを適切に選び、右辺に積分因子がかかったものも積分可能にできれば、この微分方程式が解けます。ここでは
L=ePdx
という積分因子が正解です。これはxの関数なので右辺にかけても、右辺はすべてxにの関数なので解けます。
(dy+Pydx)ePdx=QePdxdxd(yePdx)=QePdxdxyePdx=QePdxdx+Cy=ePdx(QePdx+C)

なぜはじめに右辺を0とおくのか

微分方程式を解く基本は変数分離形です。
dy+Pydx=Qdx
の右辺はxだけの関数であり、「もう解ける状態」なわけです。ややこしいやつを分離して、まずそれを解ける状態にすることを優先するという方針です。

投稿日:330
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17世紀の数学を学び始めました。 https://www.17centurymaths.com/ このサイト素晴らしい。

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