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大学数学基礎解説
文献あり

距離空間のあいだの固有写像の特徴づけ

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$$\newcommand{id}[0]{\mathrm{id}} \newcommand{supp}[1]{\mathrm{supp}(#1)} $$

Intuitively, a proper map [from $X$ into $Y$] is one that maps points "near infinity" in $X$ to points "near infinity" in $Y$.
── Victor Guillemin and Alan Pollack, "Differential Topology".

復習:点列コンパクト

$X$を位相空間とし$K \subset X$とする.$K$の任意の点列が$K$の点に収束する部分列を持つとき,$K$点列コンパクトであるという.

$X$を距離空間とする.このとき次は同値である:

  1. $X$はコンパクトである;
  2. $X$は点列コンパクトである.

(i)$\implies$(ii)

$(x_{n})_{n}$$X$の点列とする.各$n \in \mathbb{N}$に対して
$$ F_{n} = \overline{\{x_{k}\ |\ k \geq n\}}$$
とおく.これらは空でない$X$の閉集合であり$F_{n+1} \subset F_{n}$を満たす.したがって$\bigcap F_{n} \neq \varnothing$が成り立つ.そこで$x \in \bigcap F_{n}$を取る.このとき次のようにして$x$に収束する部分列$(x_{n_{k}})_{k}$が得られる:

  • $n_{0} := 1$;
  • $n_{k} := \min \{m \ |\ m > n_{k-1},\ d(x,x_{m}) < \frac{1}{k}\}\ (k > 0)$.
    • $x \in F_{n_{k-1}+1}$より$B(x;1/k) \cap \{x_{m}\ |\ m > n_{k-1}\} \neq \varnothing$に注意する.)

(ii)$\implies$(i)

$(U_{\lambda})_{\lambda \in \Lambda}$$X$の開被覆とする.

まづ
$$ \exists r > 0, \forall x \in X, \exists \lambda(x) \in \Lambda, B(x;r) \subset U_{\lambda(x)}$$
を示す.

  • この主張が成り立たないとすると,各$n > 0$に対して$x_{n} \in X$であって$\forall \lambda, B(x_{n};1/n) \not\subset U_{\lambda}$となるものが存在する.
  • 仮定より$x_{n} \to \exists x \in X$としてよい.
  • このとき$\lambda \in \Lambda$および$r > 0$であって$B(x;r) \subset U_{\lambda}$となるものが存在する.
  • $x_{n} \to x$より,$\exists N > 0, \forall n > N, x_{n} \in B(x;r/2)$.
  • $n > \max \{N,2/r\}$とすると,
    $$ d(y,x_{n}) < \frac{1}{n} \Rightarrow d(y,x) \leq d(y,x_{n}) + d(x_{n},x) < \frac{r}{2} + \frac{r}{2} = r$$
    より$B(x_{n};1/n) \subset B(x;r) \subset U_{\lambda}$を得るが,これは$x_{n}$の定め方に反する.

つぎに
$$ \exists x_{1},\ldots, x_{n} \in X,\ X = \bigcup B(x_{i};r)$$
を示す.

  • この主張が成り立たないとすると,つぎのようにして$X$の点列$(x_{n})_{n}$が得られる:
    • $x_{0} \in X$を任意に取る;
    • $n > 0$に対しては$x_{n} \in X \smallsetminus \bigcup_{i = 0}^{n-1} B(x_{i};r)$を任意に取る.
  • このとき任意の$n > m$に対して($x_{n} \notin B(x_{m};r)$より)$d(x_{n},x_{m}) \geq r$が成り立つ.したがって$(x_{n})_{n}$は収束部分列を持ち得ず仮定に反する.

以上より$X = \bigcup U_{\lambda(x_{i})}$となるので$X$はコンパクトである.

距離空間のあいだの固有写像

$X$を位相空間,$(x_{n})_{n}$$X$の点列とする.任意のコンパクト集合$K \subset X$に対して$\{n\ |\ x_{n}\in K \}$が有限集合であるとき,すなわち
$$ \forall K \subset X:\text{compact}, \exists N > 0, \forall n > N, x_{n} \in X \smallsetminus K$$
が成り立つとき,$(x_{n})_{n}$遁走点列という(ことにする).

Euclid空間の点列$(x_{n})_{n}$について,これが遁走点列であることと$\lim_{n \to \infty} |x_{n}| = \infty$となる,すなわち
$$ \forall R > 0, \exists N > 0, \forall n > N, |x_{n}| > R$$
が成り立つこととは同値である.これはEuclid空間の部分集合について,それがコンパクト集合であることと有界閉集合であることとが同値であることから従う.

$X$を距離空間,$(x_{n})_{n}$$X$の点列とする.このとき次は同値である:

  1. $(x_{n})_{n}$は遁走点列である;
  2. $(x_{n})_{n}$は収束部分列を持たない.

(i)$\implies$(ii)

遁走点列$(x_{n})_{n}$が収束部分列$(x_{n_{k}})_{k}$を持ったとする.$x = \lim x_{n_{k}}$とおく.このとき$K := \{x_{n_{k}}\ |\ k \in \mathbb{N}\} \cup \{x\} \subset X$はコンパクトであるが$\{k \ |\ x_{n_{k}} \in K\} = \mathbb{N}$は有限集合ではない.これは$(x_{n})_{n}$が遁走点列であることに矛盾する.

(ii)$\implies$(i)

$K \subset X$をコンパクト集合とする.もし$\{n\ |\ x_{n} \in K\}$が有限集合でないとすると,$(x_{n})_{n}$の部分列$(x_{n_{k}})_{k}$であって$x_{n_{k}} \in K$となるものが得られる.このとき$K$の点列コンパクト性より$(x_{n_{k}})_{k}$は収束部分列を持つがこれは仮定に反する.

$X,Y$を距離空間,$f \colon X \to Y$を写像とする.このとき次は同値である:

  1. $f$は固有写像である;
  2. $X$の任意の遁走点列$(x_{n})_{n}$に対して$(f(x_{n}))_{n}$$Y$の遁走点列である.

(i)$\implies$(ii)

$(x_{n})_{n}$$X$の遁走点列とする.もし$(f(x_{n}))_{n}$が遁走点列でないとすると,コンパクト集合$K \subset Y$であって$\{n\ |\ f(x_{n}) \in K\} = \{n\ |\ x_{n} \in f^{-1}(K)\}$が無限集合となるものが存在する.ところで仮定より$f^{-1}(K) \subset X$はコンパクト集合であるから,これは$(x_{n})_{n}$が遁走点列であることに反する.

(ii)$\implies$(i)

$K \subset Y$をコンパクト集合とする.もし$f^{-1}(K) \subset X$が点列コンパクトでないとすると,$f^{-1}(K)$の点列$(x_{n})_{n}$であって収束部分列を持たないものが存在する.このとき補題2より$(x_{n})_{n}$$X$の遁走点列であるが,$\{n\ |\ f(x_{n}) \in K\} = \mathbb{N}$は有限集合でないので$(f(x_{n}))_{n}$$Y$の遁走点列ではないことになり,仮定に反する.

条件(ii)の対偶を考えることで次を得る:

命題3の

$X,Y$を距離空間,$f \colon X \to Y$を写像とする.このとき次は同値である:

  1. $f$は固有写像である;
  2. $X$の任意の点列$(x_{n})_{n}$に対して,$(f(x_{n}))_{n}$が収束部分列を持つ(とくに収束点列である)ならば$(x_{n})_{n}$は収束部分列を持つ.

Euclid空間のあいだの固有写像

$f \colon \mathbb{R}^{m} \to \mathbb{R}^{n}$を写像とする.任意の$E > 0$に対して,$D > 0$であって
$$ \forall x \in \mathbb{R}^{m},\ |x| > D \implies |f(x)| > E$$
が成り立つものが存在するとき,$\lim_{|x| \to \infty} |f(x)| = \infty$と書く.

  • $$ \lim_{|x|\to \infty} |f(x)| = \infty \iff \forall E > 0,\ \exists D > 0, f(\mathbb{R}^{m} \smallsetminus \overline{B}^{m}(0;D)) \subset \mathbb{R}^{n} \smallsetminus \overline{B}^{n}(0;E)$$
    が成り立つ.
  • $\mathbb{R}^{m} \smallsetminus \overline{B}^{m}(0;D)$(および$\mathbb{R}^{n} \smallsetminus \overline{B}^{n}(0;E)$)は“無限遠点の開近傍”にほかならない(cf. 補遺).
  • $$ f\left(\mathbb{R}^{m} \smallsetminus \overline{B}^{m}(0;D)\right) \subset \mathbb{R}^{n} \smallsetminus \overline{B}^{n}(0;E) \iff f^{-1}\left(\overline{B}^{n}(0;E)\right) \subset \overline{B}^{m}(0;D)$$
    より,
    \begin{align} \lim_{|x| \to \infty} |f(x)| = \infty &\iff \forall B \subset \mathbb{R}^{n}:\text{bounded}, f^{-1}(B) \subset \mathbb{R}^{m}:\text{bounded}\\ \end{align}
    が成り立つことがわかる.

$f \colon \mathbb{R}^{m} \to \mathbb{R}^{n}$を連続写像とする.このとき次は同値である:

  1. $f$は固有写像である;
  2. $\lim_{|x| \to \infty}|f(x)| = \infty$

(i)$\implies$(ii)

$E > 0$とする.閉球$\overline{B}^{n}(0;E) \subset \mathbb{R}^{n}$は有界閉集合ゆえコンパクトなので,仮定より$f^{-1}\left(\overline{B}^{n}(0;E)\right) \subset \mathbb{R}^{n}$はコンパクト,とくに有界集合である.したがって$D > 0$であって
$$ f^{-1}\left(\overline{B}^{n}(0;E)\right) \subset \overline{B}^{m}(0;D)$$
が成り立つものが存在する.

(ii)$\implies$(i)

$K \subset \mathbb{R}^{n}$をコンパクト集合とする.このとき$K \subset \mathbb{R}^{n}$の有界性より,$E > 0$であって$K \subset \overline{B}^{n}(0;E)$となるものが存在する.また,仮定より$D > 0$であって$f^{-1}\left(\overline{B}^{n}(0;E)\right) \subset \overline{B}^{m}(0;D)$となるものが存在する.

  • $\mathbb{R}^{n}$のハウスドルフ性および$f$の連続性より$f^{-1}(K) \subset \mathbb{R}^{m}$は閉集合であり,
  • $f^{-1}(K) \subset \overline{B}^{m}(0;D)$より$f^{-1}(K) \subset \mathbb{R}^{m}$は有界集合である.

よって$f^{-1}(K) \subset \mathbb{R}^{m}$はコンパクトである.

連続写像$f \colon \mathbb{R}^{n+1} \to \mathbb{R}$$\lim_{|x| \to \infty}|f(x)| = \infty$を満たすならば,任意の$r \in \mathbb{R}$に対して$f^{-1}(r) \subset \mathbb{R}^{n+1}$はコンパクトである.とくに$f(x) = \sum (x_{i})^{2}$を考えると,半径$r$の球面$S^{n}(r) \subset \mathbb{R}^{n+1}$のコンパクト性がわかる(大袈裟?).

非定数多項式$p \in \mathbb{C}[x]$により定まる連続写像$p \colon \mathbb{C} \to \mathbb{C}$は固有写像である.

固有距離空間のあいだの固有写像

$X,Y$を距離空間,$f \colon X \to Y$を写像とする.任意の有界集合$B \subset Y$に対してその逆像$f^{-1}(B) \subset X$が有界集合であるとき,$f$距離的固有写像(metrically proper map)という.

上述の注意より命題4は次のように言い換えられる:

$f \colon \mathbb{R}^{m} \to \mathbb{R}^{n}$を連続写像とする.このとき次は同値である:

  1. $f$は固有写像である;
  2. $f$は距離的固有写像である.

$X$を距離空間とする.$X$の任意の有界閉集合がコンパクトであるとき$X$固有距離空間(proper metric space)という.

一般に距離空間$X$のコンパクト集合$K \subset X$は有界(閉)集合である.実際,

  • 命題1の証明より,$x_{1},\ldots,x_{n} \in K$であって$K \subset \bigcup B(x_{i};1)$となるものが存在する;
  • $M = \max \{d(x_{i},x_{j})\ |\ i,j = 1,\ldots,n\}$とおく;
  • 任意の$x,y \in K$に対して$x_{i},x_{j} \in K$であって$x \in B(x_{i};1), y \in B(x_{j};1)$となるものが存在するので
    $$ d(x,y) \leq d(x,x_{i}) + d(x_{i},x_{j}) + d(x_{j},y) \leq M+2$$
    が成り立つ;
  • よって$\mathrm{diam}(K) \leq M+2$が成り立つ.

命題5は次のように一般化される:

$X,Y$を固有距離空間,$f \colon X \to Y$を連続写像とする.このとき次は同値である:

  1. $f$は固有写像である;
  2. $f$は距離的固有写像である.

(i)$\implies$(ii)

$B \subset Y$を非空有界集合とする.$R = \mathrm{diam}(B) \in \mathbb{R}_{\geq 0}$とおき,$b \in B$を取る.このとき$B \subset K := \overline{B}(b;R)$が成り立つ.有界閉集合$K \subset Y$はコンパクトなので,仮定より$f^{-1}(K) \subset X$はコンパクト,とくに有界集合である.よって$f^{-1}(B) \subset f^{-1}(K)$より,$f^{-1}(B) \subset X$も有界である.

(ii)$\implies$(i)

$K \subset Y$をコンパクト集合とする.このとき$K \subset Y$は有界閉集合であるから,仮定(と$f$の連続性)より$f^{-1}(K) \subset X$は有界閉集合,したがってコンパクトである.

$(X,d)$を距離空間とする.各$x_{0} \in X$に対して連続写像
$$ d_{x_{0}} \colon X \to \mathbb{R}_{\geq 0};\ x \mapsto d(x,x_{0})$$
が定まる.

命題6の

$(X,d)$を距離空間とする.このとき次は同値である:

  1. $X$は固有距離空間である;
  2. 任意の$x_{0} \in X$に対して$d_{x_{0}}$は固有写像である.

(i)$\implies$(ii)

$x_{0} \in X$とする.任意の$R > 0$に対して$d_{x_{0}}^{-1}([0,R]) = \overline{B}(x_{0};R)$が成り立つので,連続写像$d_{x_{0}}$は固有距離空間のあいだの距離的固有写像であり,したがって固有写像である.

(ii)$\implies$(i)

$B \subset X$を非空有界閉集合とする.$R = \mathrm{diam}(B) \in \mathbb{R}_{\geq 0}$とおき$b \in B$を取ると$B \subset \overline{B}(b;R)$が成り立つ.ところで仮定より$\overline{B}(b;R) = d_{b}^{-1}([0,R])$はコンパクトであるから,その閉部分集合$B$はコンパクトである.

補遺:固有写像と1点コンパクト化

1点コンパクト化の存在

$X$を位相空間とする.

  • コンパクト空間$c(X)$と位相的埋め込み$\iota_{X} \colon X \to c(X)$であって$\overline{\iota_{X}(X)} = c(X)$なるものとの組$(c(X),\iota_{X})$$X$コンパクト化という.
  • $X$のコンパクト化$(c(X),\iota_{X})$であって$c(X) \smallsetminus \iota_{X}(X)$が単集合となるものを$X$1点コンパクト化という.

$(X,\tau(X))$を位相空間とし,
\begin{align} \infty_{X} &= X,\\ X^{+} &= X \cup \{\infty_{X}\} \end{align}
とおく.$\infty_{X} \notin X$に注意する(cf. https://twitter.com/yamyam_topo/status/289727377267900417 ).

上の記号のもとで
$$ \tau(X^{+}) = \tau(X) \cup \{X^{+} \smallsetminus K \mid K \subset X:\text{compact closed}\}$$
とおくと,$\tau(X^{+})$$X^{+}$上の位相を定める.

$$ \tau^{+}_{\mathrm{cpt}}(X) = \{X^{+} \smallsetminus K \mid K \subset X:\text{compact closed}\}$$
とおく.

  • $\varnothing \in \tau(X) \subset \tau(X^{+})$が成り立つ.
  • $X^{+} = X^{+} \smallsetminus \varnothing \in \tau^{+}_{\mathrm{cpt}}(X) \subset \tau(X^{+})$が成り立つ.
  • $U,V \in \tau(X^{+})$とする.
    • $U,V \in \tau(X)$のとき,$U \cap V \in \tau(X) \subset \tau(X^{+})$が成り立つ.
    • $U = X^{+} \smallsetminus K \in \tau^{+}_{\mathrm{cpt}}(X),\,V \in \tau(X)$のとき,
      $$ U \cap V = V \cap (X \smallsetminus K) \in \tau(X) \subset \tau(X^{+})$$
      が成り立つ.
    • $U = X^{+} \smallsetminus K,\,V = X^{+} \smallsetminus L \in \tau^{+}_{\mathrm{cpt}}(X)$のとき,
      $$ U \cap V = X^{+} \smallsetminus ( K \cup L) \in \tau^{+}_{\mathrm{cpt}}(X) \subset \tau(X^{+})$$
      が成り立つ.
  • $U_{\lambda} \in \tau(X^{+}),\,\lambda \in \Lambda \neq \varnothing,\,$とする.
    \begin{align} \Lambda_{X} &= \{\lambda \in \Lambda \mid U_{\lambda} \in \tau(X)\},\\ \Lambda^{+}_{\mathrm{cpt}} &= \{\lambda \in \Lambda \mid U_{\lambda} = X^{+} \smallsetminus K_{\lambda} \in \tau^{+}_{\mathrm{cpt}}(X)\} \end{align}
    とおく
    • $\Lambda = \Lambda_{X}$のとき,$\bigcup_{\lambda} U_{\lambda} \in \tau(X) \subset \tau(X^{+})$が成り立つ.
    • $\Lambda = \Lambda^{+}_{\mathrm{cpt}}$のとき,
      $$ \bigcup_{\lambda \in \Lambda} U_{\lambda} = X^{+} \smallsetminus \bigcap_{\lambda \in \Lambda} K_{\lambda} \in \tau^{+}_{\mathrm{cpt}}(X) \subset \tau(X^{+})$$
      が成り立つ.
    • $\Lambda_{X},\Lambda^{+}_{\mathrm{cpt}} \neq \varnothing$のとき,
      $$ \bigcup_{\lambda \in \Lambda} U_{\lambda} = \left(\bigcup_{\lambda \in \Lambda_{X}} U_{\lambda}\right) \cup \left(\bigcup_{\lambda \in \Lambda^{+}_{\mathrm{cpt}}} U_{\lambda}\right)$$
      となるので,前段より,
      $$ U \in \tau(X),\ V = X^{+} \smallsetminus K \in \tau^{+}_{\mathrm{cpt}}(X) \implies U \cup V \in \tau(X^{+})$$
      を示せば十分である.ところで
      $$ K \smallsetminus U = K \cap (X \smallsetminus U) \subset X$$
      はコンパクト閉集合であるから,
      $$ U \cup (X^{+} \smallsetminus K) = X^{+} \smallsetminus (K \smallsetminus U) \in \tau^{+}_{\mathrm{cpt}}(X) \subset \tau(X^{+})$$
      が成り立つ.

$\tau(X) = \tau(X^{+})|X$より,包含写像$\id_{X}^{X^{+}} \colon (X,\tau(X)) \to (X^{+},\tau(X^{+}))$は位相的埋め込みである.

$(X,\tau(X))$を位相空間とする.このとき次が成り立つ:

  1. 位相空間$(X^{+},\tau(X^{+}))$はコンパクトである;
  2. $X$がコンパクトでないならば,$X \subset X^{+}$は稠密である;
  3. $X:T_{1} \iff X^{+}:T_{1}$
  1. $(U_{\lambda})_{\lambda \in \Lambda}$$X^{+}$の開被覆とする.このとき$\lambda_{0} \in \Lambda$であって$\infty \in U_{\lambda_{0}}$となるものが存在する.明らかに$U_{\lambda_{0}} \in \tau^{+}_{\mathrm{cpt}}(X)$であるから,あるコンパクト閉集合$K \subset X$を用いて$U_{\lambda_{0}} = X^{+} \smallsetminus K$と書ける.いま$(U_{\lambda})_{\lambda}$はコンパクト集合$K \subset X^{+}$の開被覆でもあるから,$\lambda_{1},\ldots,\lambda_{n} \in \Lambda$であって
    $$ K \subset U_{\lambda_{1}} \cup \cdots \cup U_{\lambda_{n}}$$
    となるものが存在する.よって
    $$ X^{+} = U_{\lambda_{0}} \cup (X^{+} \smallsetminus U_{\lambda_{0}}) = U_{\lambda_{0}} \cup U_{\lambda_{1}} \cup \cdots \cup U_{\lambda_{n}}$$
    が成り立つ.
  2. $U \in \tau(X^{+}) \smallsetminus \{\varnothing\}$とする.
    1. $U \in \tau(X)$のとき,$X \cap U = U \neq \varnothing$が成り立つ.
    2. $U = X^{+} \smallsetminus K \in \tau^{+}_{\mathrm{cpt}}(X)$のとき,$X \neq K$より
      $$ X \cap U = X \smallsetminus K \neq \varnothing$$
      が成り立つ.
  3. $X \in \tau(X) \subset \tau(X^{+})$より$\{\infty_{X}\} = X^{+} \smallsetminus X \subset X^{+}$は閉集合である.
    1. $X$$T_{1}$空間であるとする.このとき,各$x \in X \subset X^{+}$に対して$\{x\} \subset X$はコンパクト閉集合であるから$X^{+} \smallsetminus \{x\} \subset X^{+}$は開集合である.
    2. $X^{+}$$T_{1}$空間であるとすると,その部分空間$X \subset X^{+}$$T_{1}$空間である.
命題8の

コンパクトでない位相空間$X$に対して,$(X^{+},\id_{X}^{X^{+}})$はその1点コンパクト化である.

1点コンパクト化の一意性

位相空間$X$について,そのハウスドルフな1点コンパクト化が存在するならば,$X$はコンパクトではない.

$(c(X),\iota_{X})$$X$のハウスドルフな1点コンパクト化とする.$X$がコンパクトであるとすると,$\iota_{X}(X) \subset c(X)$は閉集合であるから
$$ \iota_{X}(X) = \overline{\iota_{X}(X)} = c(X)$$
が成り立つが,これは$c(X) \smallsetminus \iota_{X}(X)$が単集合であることに反する.

局所コンパクトハウスドルフ空間の開集合は局所コンパクトである.

$Y$を局所コンパクトハウスドルフ空間とし,$U \subset Y$を開集合とする.

$y \in U$とする.仮定より$y \in Y$の相対コンパクト開近傍$V \subset Y$が存在する.局所コンパクトハウスドルフ空間$Y$はとくに$T_{3}$空間なので,$y \in Y$の開近傍$U \cap V$に対して,$y \in Y$の開近傍$W \subset Y$であって$\overline{W} \subset U \cap V$となるものが存在する( 命題25 ).このとき
$$ \mathrm{cl}_{U}(W) = \overline{W} \cap U = \overline{W} \subset \overline{V}$$
より,$W \subset U$$y \in U$の相対コンパクト開近傍である.

$X$を位相空間とする.このとき次は同値である:

  1. $X$は局所コンパクトハウスドルフ空間である;
  2. $X^{+}$は(コンパクト)ハウスドルフ空間である.

(i)$\implies$(ii)

$x \in X$とする.仮定より$x$の相対コンパクト開近傍$U \in \tau(X)$が存在する.このとき,$V := X^{+} \smallsetminus \mathrm{cl}_{X}(U) \in \tau^{+}(X)$$\infty_{X} \in X^{+}$の開近傍であり$U \cap V = \varnothing$が成り立つ.

(ii)$\implies$(i)

$X \subset X^{+}$は局所コンパクトハウスドルフ空間$X^{+}$の開集合ゆえ局所コンパクトハウスドルフである.

命題11の

コンパクトでない局所コンパクトハウスドルフ空間$X$に対して,$(X^{+},\id_{X}^{X^{+}})$はそのハウスドルフな1点コンパクト化である.これを$X$Alexandroff コンパクト化という.

Alexandroff コンパクト化の普遍性

$X$をコンパクトでない局所コンパクトハウスドルフ空間とする.このとき$X$の任意のハウスドルフなコンパクト化$(c(X),\iota_{X})$に対して,連続写像$f \colon c(X) \to X^{+}$であって$f \circ \iota_{X} = \id_{X}^{X^{+}}$が成り立つものがただ一つ存在する:
$$ \xymatrix{ {X} \ar[r]^{\iota_{X}} \ar[rd]_{\id_{X}^{X^{+}}} & {c(X)} \ar@{.>}[d]^{f}\\ {} & {X^{+}} }$$

存在

写像$f \colon c(X) \to X^{+}$
$$ f(y) = \begin{cases} (\iota_{X}^{\iota_{X}(X)})^{-1}(y) &, y \in \iota_{X}(X)\\ \infty_{X} &, y \in c(X) \smallsetminus \iota_{X}(X) \end{cases}$$
で定める.

  • $f \circ \iota_{X} = \id_{X}^{X^{+}}$が成り立つ.
  • $f|\iota_{X}(X) = (\iota_{X}^{\iota_{X}(X)})^{-1}$は連続である.
  • あとは各$\infty \in c(X) \smallsetminus \iota_{X}(X)$における連続性を示せばよい.そこで$K \subset X$をコンパクト閉集合とする.このとき,コンパクト集合$\iota_{X}(K) \subset c(X)$は閉集合であるから,
    $$ f^{-1}(X^{+} \smallsetminus K) = c(X) \smallsetminus \iota_{X}(K) \subset c(X)$$
    $\infty \in c(X)$の開近傍である.

一意性

連続写像$g \colon c(X) \to X^{+}$$g \circ \iota_{X} = \id_{X}^{X^{+}}$を満たすとする.このとき,ハウスドルフ空間$X^{+}$への連続写像$f,g$は稠密部分集合$\iota_{X}(X) \subset c(X)$上で一致するので$f =g$が成り立つ.

コンパクト空間$c(X)$からハウスドルフ空間$X^{+}$への(全射)連続写像$f \colon c(X) \to X^{+}$は閉写像であり,したがって全射等化写像である.よって同相
$$ c(X)/R(f) \approx X^{+}$$
が成り立つ.

$p_{0},p_{1},\ldots,p_{\ell} \in S^{m}$を相異なる$\ell+1$個の点とする.このとき
$$ S^{m}/\{p_{0},\ldots,p_{\ell}\} \approx (S^{m} \smallsetminus \{p_{0},\ldots,p_{\ell}\})^{+}$$
が成り立つ.

$P = \{p_{0},\ldots,p_{\ell}\},\,X = S^{m} \smallsetminus P$とおく.$c(X) := S^{m}$は,コンパクトでない局所コンパクトハウスドルフ空間$X$のハウスドルフなコンパクト化であるから,連続写像$f \colon c(X) \to X^{+}$であって$f|X = \id_{X}^{X^{+}}$なるものがただ一つ存在する.
$$ R(f) = \Delta_{S^{m}} \cup (P \times P)$$
であるから
$$ S^{m}/P = c(X)/R(f) \approx X^{+} = (S^{m} \smallsetminus P)^{+}$$
が成り立つ.

コンパクトでない局所コンパクトハウスドルフ空間$X$のハウスドルフな1点コンパクト化は互いに同相である.

$(c(X),\iota_{X})$$X$のハウスドルフな1点コンパクト化とする.このとき$c(X)$$X^{+}$とが同相であることを示せばよい.ところで,$f \colon c(X) \to X^{+}$はコンパクト空間$c(X)$からハウスドルフ空間$X^{+}$への全単射連続写像であるから同相写像である.

固有写像と1点コンパクト化

$X,Y$を位相空間とする.写像$f \colon X \to Y$に対して,写像$f^{+} \colon X^{+} \to Y^{+}$
$$ f^{+}(x) = \begin{cases} f(x) &, x \in X\\ \infty_{Y} &, x = \infty_{X} \end{cases}$$
で定める.

$X$を位相空間,$Y$をハウスドルフ空間とし,$f \colon X \to Y$を連続写像とする.このとき次は同値である:

  1. $f \colon X \to Y$は固有写像である;
  2. $f^{+} \colon X^{+} \to Y^{+}$は連続写像である.

(i)$\implies$(ii)

$f^{+}|X = \id_{Y}^{Y^{+}} \circ f$は連続なので,あとは$\infty_{X} \in X^{+}$での連続性を示せばよい.そこで$K_{Y} \subset Y$をコンパクト閉集合とすると,仮定より$f^{-1}(K_{Y}) \subset X$はコンパクト閉集合であるから
$$ (f^{+})^{-1}(Y^{+} \smallsetminus K_{Y}) = X^{+} \smallsetminus f^{-1}(K_{Y})$$
$\infty_{X} \in X^{+}$の開近傍である.

(ii)$\implies$(i)

$K_{Y} \subset Y$をコンパクト集合とする.$Y$のハウスドルフ性より$K_{Y} \subset Y$は閉集合でもあるから,$\infty_{Y} \in Y^{+}$の開近傍$Y^{+} \smallsetminus K_{Y}$に対して,仮定より,コンパクト閉集合$K_{X} \subset X$であって
$$ f^{+}(X^{+} \smallsetminus K_{X}) \subset Y^{+} \smallsetminus K_{Y}$$
となるものが存在する.このとき
$$ f^{-1}(K_{Y}) = (f^{+})^{-1}(K_{Y}) \subset K_{X}$$
が成り立つので,コンパクト集合$K_{X}$の閉集合$f^{-1}(K_{Y})$はコンパクトである.

命題13の

$X,Y$をハウスドルフ空間とする.このとき
$$ X \approx Y \implies X^{+} \approx Y^{+}$$
が成り立つ.

$f \colon X \to Y$を同相写像とすると,$f$はとくに固有写像であるから
$$ f^{+} \colon X^{+} \to Y^{+}$$
は連続である.逆写像$f^{-1} \colon Y \to X$から定まる連続写像$(f^{-1})^{+} \colon Y^{+} \to X^{+}$$f^{+}$の逆写像を与える.

$n \in \mathbb{Z}_{\geq 1}$とし$p \in S^{n}$とする.ハウスドルフ空間$S^{n}$は,コンパクトでない局所コンパクトハウスドルフ空間$S^{n} \smallsetminus \{p\} \approx \mathbb{R}^{n}$の1点コンパクト化である.よって
$$ (\mathbb{R}^{n})^{+} \approx (S^{n} \smallsetminus \{p\})^{+} \approx S^{n}$$
が成り立つ.

命題4(の (ii)$\implies$(i) )は次のように一般化できる:

$P \subset \mathbb{R}^{m}$を有限集合とし$f \colon \mathbb{R}^{m} \smallsetminus P \to \mathbb{R}^{n}$を連続写像とする.このとき2条件

  1. $\lim_{|x|\to\infty} |f(x)| = \infty$,
  2. $\forall p \in P,\ \lim_{x \to p} |f(x)| = \infty$

が成り立つならば,$f$は固有写像であり,連続写像$\tilde{f} \colon S^{m} \to S^{n}$に“拡張”できる.

$f$が固有写像であること

$K \subset \mathbb{R}^{n}$をコンパクト集合とする.$E > 0$であって$K \subset \overline{B}^{n}(0;E)$となるものが存在する.

  1. $D > 0$であって,
    $$ f\left(\mathbb{R}^{m} \smallsetminus \left(P \cup \overline{B}^{m}(0;D)\right)\right) \subset \mathbb{R}^{n} \smallsetminus \overline{B}^{n}(0;E)$$
    となるものが存在する;
  2. $p_{i} \in P$に対して,$\delta_{i} > 0$であって
    $$ f\left(B^{m}(p_{i};\delta_{i}) \smallsetminus P\right) \subset \mathbb{R}^{n} \smallsetminus \overline{B}^{n}(0;E)$$
    となるものが存在する.したがって
    \begin{align} f^{-1}\left(\overline{B}^{n}(0;E)\right) &\subset \bigcap_{i} (\mathbb{R}^{m} \smallsetminus P) \smallsetminus (B^{m}(p_{i};\delta_{i}) \smallsetminus P)\\ &= \bigcap_{i} \mathbb{R}^{m} \smallsetminus (P \cup B^{m}(p_{i};\delta_{i}))\\ &= \mathbb{R}^{m} \smallsetminus \bigcup_{i} P \cup B^{m}(p_{i};\delta_{i})\\ &= \mathbb{R}^{m} \smallsetminus \bigcup_{i} B^{m}(p_{i};\delta_{i}) \end{align}
    が成り立つ.

よって
$$ f^{-1}(K) \subset f^{-1}\left(\overline{B}^{n}(0;E)\right) \subset \overline{B}^{m}(0;D) \smallsetminus \bigcup_{i} B^{m}(p_{i};\delta_{i})$$
が成り立つので,コンパクト集合$\overline{B}^{m}(0;D) \smallsetminus \bigcup_{i} B^{m}(p_{i};\delta_{i})$の閉集合$f^{-1}(K)$はコンパクトである.

$f$が“拡張”できること

$\# P = \ell$とおく.同相$S^{m} \smallsetminus \{p_{0}\} \approx \mathbb{R}^{m}$に対応して,同相$S^{m} \smallsetminus \{p_{0},p_{1},\ldots,p_{\ell}\} \approx \mathbb{R}^{m} \smallsetminus P$を得る.したがって,連続写像
$$ \tilde{f} \colon S^{m} \to S^{m}/\{p_{0},\ldots,p_{\ell}\} \approx (S^{m} \smallsetminus \{p_{0},\ldots,p_{\ell}\})^{+} \approx (\mathbb{R}^{m} \smallsetminus P)^{+} \xrightarrow{f^{+}} (\mathbb{R}^{n})^{+} \approx S^{n}$$
が定まる.適当に同一視すると
$$ \tilde{f}(x) = \begin{cases} f(x) &, x \notin \{p_{0},\ldots,p_{\ell}\}\\ \infty &, x \in \{p_{0},\ldots,p_{\ell}\} \end{cases}$$
と書ける.

更新履歴

2024/02/04:$\lim_{|x|\to\infty} |f(x)| = \infty$の定義(の述べ方)を変更しました.また,補遺を加筆しました.

参考文献

[1]
John M. Lee, Introduction to Topological Manifolds
[2]
深谷友宏, 粗幾何学入門
投稿日:20231013
更新日:23

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うすい
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