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大学数学基礎
文献あり

始域に誘導される位相

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写像によって誘導される位相

Xを集合,(Y,τ(Y))を位相空間とし,f:XYを写像とする.このとき,
f1(τ(Y))={f1(V)Vτ(Y)}
とおくと,これはXの位相を定める.f1(τ(Y))を(fによる)誘導位相(induced topology)という.

誘導位相の定義より
f:(X,f1(τ(Y)))(Y,τ(Y))
は連続である.

誘導位相の閉集合系

Xを集合,(Y,τ(Y))を位相空間とし,f:XYを写像とする.このとき,
(f1(τ(Y)))c=f1(τc(Y)):={f1(C)Cτc(Y)}
が成り立つ.

任意のBYに対して
Xf1(B)=f1(YB)
が成り立つことからしたがう.

誘導位相の推移性

X,Yを集合,(Z,τ(Z))を位相空間とし,f:XY,g:YZを写像とする.このとき,X上のふたつの誘導位相(gf)1(τ(Z))f1(g1(τ(Z)))とは一致する.

任意のWτ(Z)に対して
(gf)1(W)=f1(g1(W))
が成り立つことからしたがう.

誘導位相の普遍性

Xを集合,(Y,τ(Y))を位相空間,f:XYを写像とする.このとき,任意の位相空間(Z,τ(Z))と写像g:ZXに対して,次は同値である:

  1. g:(Z,τ(Z))(X,f1(τ(Y))):continuous;
  2. fg:(Z,τ(Z))(Y,τ(Y)):continuous.
    ZgfgXfY

(i)(ii)

明らか.

(ii)(i)

Vτ(Y)とする.このとき,
g1(f1(V))=(fg)1(V)τ(Z)
が成り立つ.

誘導位相f1(τ(Y))f:XYが連続となるようなXの位相のうち最も粗い(弱い),すなわち最も開集合が少ないものである.

Xの位相τ(X)に関してf:(X,τ(X))(Y,τ(Y))が連続であるとする.このとき,誘導位相の普遍性よりidX:(X,τ(X))(X,f1(τ(Y)))は連続である.
(X,τ(X))idXf(X,f1(τ(Y)))f(Y,τ(Y))

部分空間

(Y,τ(Y))を位相空間とし,XYをその部分集合とする.このとき,包含写像idXY:XYによる誘導位相
τ(Y)|X:=(idXY)1(τ(Y))={UXUτ(Y)}
相対位相(relative topology)といい,位相空間(X,τ(Y)|X)(Y,τ(Y))部分空間(subspace)という.

  • 相対位相に関して包含写像
    idXY:(X,τ(Y)|X)(Y,τ(Y))
    は連続である.
  • 以下,特に断らない限り位相空間の部分集合に対しては相対位相を考える.
相対位相の閉集合系

相対位相τ(Y)|Xに関して
(τ(Y)|X)c=τc(Y)|X:={CXCτc(Y)}
が成り立つ.

命題4の

(Y,τ(Y))を位相空間とする.このとき,次が成り立つ:

  1. Xτ(Y), τ(Y)|Xτ(Y);
  2. Xτc(Y), τc(Y)|Xτc(Y).
命題4の

Yを位相空間とし,XYをその部分空間とする.このとき,任意のAXに対して,次が成り立つ:

  1. clX(A)=clY(A)X;
  2. intX(A)intY(X)=intY(A).
  1. clX(A)={CXτc(X)ACX}={CXCτc(Y),ACX}=({Cτc(Y)AC})X=clY(A)X.
  2. intX(A)intY(X)=({UXτ(X)UXA})intY(X)=({UXUτ(Y),UXA})intY(X)={UintY(X)Uτ(Y),UXA}={Uτ(Y)UA}=intY(A).
相対位相の推移性

(Z,τ(Z))を位相空間とし,XYZをその部分集合とする.このとき,X上のふたつの相対位相τ(Z)|X(τ(Z)|Y)|Xとは一致する.

連続写像の部分空間への制限

連続写像f:(Y,τ(Y))(Z,τ(Z))の,部分空間(X,τ(Y)|X)への制限
f|X:(X,τ(Y)|X)(Z,τ(Z))
は連続である.

f|X=fidXY:(X,τ(Y)|X)idXY(Y,τ(Y))f(Z,τ(Z))
より,f|Xは連続写像の合成ゆえ連続である.

相対位相の普遍性

(Y,τ(Y))を位相空間とし,(X,τ(Y)|X)をその部分空間とする.このとき,任意の位相空間(Z,τ(Z))と写像g:ZXに対して,次は同値である:

  1. g:(Z,τ(Z))(X,τ(Y)|X):continuous;
  2. idXYg:(Z,τ(Z))(Y,τ(Y)):continuous.
    ZgidXYgXidXYY
(連続写像の制限・余制限)

f:(X,τ(X))(Y,τ(Y))を連続写像とする.このとき,任意の部分集合X1X,Y1Yであってf(X1)Y1なるものに対して,
f|X1Y1:(X1,τ(X)|X1)(Y1,τ(Y)|Y1)
は連続である.

idY1Yf|X1Y1=fidX1X:(X1,τ(X)|X1)(Y,τ(Y))
は連続なので,相対位相τ(Y)|Y1の普遍性よりf|X1Y1は連続である.

f:(X,τ(X))(Y,τ(Y))を単射連続写像とする.このとき,fが開写像(resp. 閉写像)ならば
ff(X):(X,τ(X))(f(X),τ(Y)|f(X))
Yの開集合(resp. 閉集合)への同相写像である.

idf(X)Yff(X)=fは連続なので,ff(X)は全単射連続写像である.あとはff(X)が開写像(resp. 閉写像)であることを示せばよい.

  • fが開写像のとき,任意のUτ(X)に対して
    ff(X)(U)=f(U)f(X)τ(Y)|f(X)
    が成り立つので,ff(X)は開写像である.
  • fが閉写像のとき,任意のCτc(X)に対して
    ff(X)(C)=f(C)f(X)τc(Y)|f(X)
    が成り立つので,ff(X)は閉写像である.

f:(X,τ(X))(Y,τ(Y))を単射連続写像とする.全単射連続写像
ff(X):(X,τ(X))(f(X),τ(Y)|f(X))
が同相写像となるとき,f位相的埋め込み(topological embedding)という.

部分空間の普遍性

(Y,τ(Y))を位相空間とし,(X,τ(Y)|X)をその部分空間とする.このとき,任意の位相空間(Z,τ(Z))と連続写像g:ZYであってg(Z)Xなるものに対して,連続写像gX:ZXであってidXYgX=gとなるものがただ一つ存在する.
ZgXgXidXYY

  • gXへの余制限を取ればよい.
  • 一意性はidXYが単射であることからしたがう.

写像族によって誘導される位相

Xを集合,((Xλ,τλ))λΛを位相空間族とし,f=(fλ:XXλ)λΛを写像族とする.このとき,λΛfλ1(τλ)によって生成されるXの位相を(fによる)誘導位相といい,f1(τ)で表わす.

誘導位相の定義より,各λΛに対して
fλ:(X,f1(τ))idX(X,fλ1(τλ))fλ(Xλ,τλ)
は連続である.

誘導位相の普遍性

Xを集合,((Xλ,τλ))λΛを位相空間族とし,f=(fλ:XXλ)λΛを写像族とする.このとき,任意の位相空間(Z,τ(Z))と写像g:ZXに対して,次は同値である:

  1. g:(Z,τ(Z))(X,f1(τ)):continuous;
  2. λΛ, fλg:(Z,τ(Z))(Xλ,τλ):continuous.
    ZgfλgXfλXλ

(i)(ii)

明らか.

(ii)(i)

仮定より,各λΛに対して
g:(Z,τ(Z))(X,fλ1(τλ))
は連続である.よって,任意のUλΛfλ1(τλ)に対して,g1(U)τ(Z)が成り立つ.

誘導位相f1(τ)は,任意のλΛに対してfλ:XXλが連続となるようなXの位相のうち最も粗いものである.

Xの位相τ(X)に関して
λΛ, fλ:(X,τ(X))(Xλ,τλ):continuous
が成り立つとする.このとき,誘導位相の普遍性よりidX:(X,τ(X))(X,f1(τ))は連続である.
(X,τ(X))idXfλ(X,f1(τ))fλ(Xλ,τλ)

誘導位相の推移性

X,Λを集合,(Λμ)μMΛの分割,(Xμ)μMを集合族,((Xμ,λ,τμ,λ))(μ,λ)Λを位相空間族とし,

  • f=(fμ:XXμ)μM
  • fμ,=(fμ,λ:XμXμ,λ)λΛμ, μM

を写像族とする.各μMに対してXμfμ,による誘導位相τμを与える.このとき,X上のふたつの位相,すなわちfによる誘導位相f1(τ)(fμ,λfμ)(μ,λ)Λによる誘導位相τ(X)とは一致する.
XfμXμfμ,λXμ,λ

  • 任意の(μ,λ)Λに対して
    fμ,λfμ:(X,f1(τ))fμ(Xμ,τμ)fμ,λ(Xμ,λ,τμ,λ)
    は連続写像の合成ゆえ連続である.よって定理8の系より
    f1(τ)τ(X)
    が成り立つ.
  • μMとする.このとき,任意のλΛμに対して
    fμ,λfμ:(X,τ(X))(Xμ,λ,τμ,λ)
    は連続であるから,誘導位相τμの普遍性より,fμ:(X,τ(X))(Xμ,τμ)は連続である.よって定理8の系より
    τ(X)f1(τ)
    が成り立つ.

積空間

普遍性とその帰結

((Xλ,τλ))λΛを非空位相空間の非空族とする(以下いちいち断らない).このとき,自然な射影からなる写像族p=pX=(pλ:XXλ)λΛによる誘導位相を積位相といい,位相空間(X,p1(τ))((Xλ,τλ))λΛ積空間という.

積位相の普遍性

任意の位相空間(Z,τ(Z))と写像g:ZλΛXλに対して,次は同値である:

  1. g:(Z,τ(Z))(X,p1(τ)):continuous;
  2. λΛ, pλg:(Z,τ(Z))(Xλ,τλ):continuous.
    ZgpλgXpλXλ
積空間の普遍性

任意の位相空間(X,τ(X))と連続写像族f=(fλ:XXλ)λΛに対して,連続写像
Δ(f):(X,τ(X))(X,p1(τ))
であって,
λΛ, pλΔ(f)=fλ
が成り立つものがただ一つ存在する.
XΔ(f)fλXpλXλ
さらに,あるλ0Λに対してfλ0:XXλ0が位相的埋め込みならば,Δ(f)は位相的埋め込みである.

  • 一意性は補題1.1よりしたがう.
  • 写像Δ(f):XX
    λΛ, Δ(f)(x)(λ)=fλ(x)Xλ
    で定める.このとき,任意のλΛに対して
    pλΔ(f)=fλ:(X,τ(X))(Xλ,τλ):continuous
    が成り立つ.よって
    Δ(f):(X,τ(X))(X,p1(τ))
    は連続である.
  • fλ0:XXλ0が位相的埋め込みであるとする.このとき,任意のx,xX,xx,に対して
    pλ0(Δ(f)(x))=fλ0(x)fλ0(x)=pλ0(Δ(f)(x))
    よりΔ(f)(x)Δ(f)(x)が成り立つので,Δ(f)は単射である.あとは全単射連続写像
    f:=Δ(f)Δ(f)(X):XΔ(f)(X)
    が閉写像であることを示せばよい.そこでCXを閉集合とする.このとき
    f(C)=!f(C)Δ(f)(X)τc(X)|Δ(f)(X)
    が成り立つことを示す.
    • f(C)RHSは明らか.
    • f(x)RHSとする.このとき,pλ0idf(X)Xの連続性とf0:=fλ0fλ0(X):Xfλ0(X)が同相写像であることより
      fλ0(x)=pλ0Δ(f)(x)=pλ0idf(X)X(f(x))pλ0idf(X)X (f(C))fλ0(X)pλ0idf(X)X(f(C))fλ0(X)=pλ0Δ(f)(C)fλ0(X)=fλ0(C)fλ0(X)=clfλ0(X)(f0(C))=f0(clX(C))=f0(C)=fλ0(C)
      が成り立つので,fλ0の単射性よりxCを得る.よってf(x)f(C)が成り立つ.

λΛ, pλΔ(f)=fλ
と誘導位相の推移性(命題9)より
Δ(f)1(p1(τ))=f1(τ)
が成り立つ(Λの分割として(Λ)を考えればよい).
XΔ(f)fλXpλXλ

f=(fλ:XλYλ)λΛを連続写像族とする.このとき,連続写像f=λΛfλ:XYであって,任意のλΛに対してpYλf=fλpXλが成り立つようなものがただ一つ存在する.
XfpXλYpYλXλfλYλ
さらに,連続写像族g=(gλ:YλZλ)λΛに対して,h=(gλfλ:XλZλ)λΛとおくと,
gf=h:XZ
が成り立つ.

  • f=Δ((fλpXλ)λΛ)とおけばよい.
  • 任意のλΛに対して
    pZλ(gf)=gλpYλf=gλfλpXλ=hλpXλ=pZλh
    が成り立つので,補題1.1より結論を得る.
    XfhpXλYgpYλZpZλXλfλhλYλgλZλ
積空間の結合性

((Xλ,τλ))λΛを位相空間族,(Λμ)μMΛの分割とする.各μMに対して((Xλ,τλ))λΛμの積空間を(Yμ,τμ)とおく.このとき,積空間(X,p1(τ))(Y,pY1(τ))とは同相である.

  • X=λΛXλ,Y=μMYμとおく.
  • μMとする.任意のλΛμに対してpλ:(X,τ(X))(Xλ,τλ)は連続なので,積空間(Yμ,τμ)の普遍性より,連続写像pΛμ:(X,τ(X))(Yμ,τμ)であって以下の図式を可換にするものがただ一つ存在する:
    XpΛμpλYμpλμXλ
    よって,積空間(Y,τ(Y))の普遍性より,連続写像f:(X,τ(X))(Y,τ(Y))であって以下の図式を可換にするものがただ一つ存在する:
    XfpΛμYpYμYμ
  • λΛとする.このときμ(λ)MであってλΛμ(λ)となるものがただ一つ存在する.そこで自然な射影の合成をfλ=pλμ(λ)pYμ(λ)とおくと
    fλ:(Y,τ(Y))pYμ(λ)(Yμ(λ),τμ(λ))pλμ(λ)(Xλ,τλ)
    は連続である.よって,積空間(X,τ(X))の普遍性より,連続写像g:(Y,τ(Y))(X,τ(X))であって,以下の図式を可換にするものがただ一つ存在する:
    YgfλXpλXλ
  • いま,任意の(μ(λ),λ)Λに対して
    pλ(gf)=fλf=pλμ(λ)pYμ(λ)f=pλμ(λ)pΛμ(λ)=pλ=pλidX
    が成り立つので,補題1.1よりgf=idXを得る.
    XgfidXpλXpλXλ
  • また,μMとすると,任意のλΛμに対して
    pλμ(pYμfg)=pλμpΛμg=pλg=fλ=pλμpYμ
    となるので,補題1.1よりpYμ(fg)=pYμ=pYμidYが成り立つ.よってfg=idYを得る.
    YpYμfgpYμpλμpYμYμpλμYfgidYpYμYpYμXλYμ
(積空間の可換性)

((Xλ,τλ))λΛを位相空間族とする.このとき,任意の全単射φ:ΛΛに対して,(X,p1(τ))(Xφ(),pφ()1(τφ()))とは同相である.

Λの分割として({φ(λ)})λΛを考えればよい.

開写像の積

f=(fλ:XλYλ)λΛを連続開写像族とする.このとき,有限個のλΛを除いてfλが全射ならば,f:=f:XYは連続開写像である.

fが開写像であることを示せばよい.λ1,,λnΛ,Uiτ(Xλi)とする.このとき
f(pXλ11(U1)pXλn1(Un))=i[n]pYλi1(fλi(Ui))λΛ{λ1,,λn}pYλ1(fλ(Xλ))
が成り立つ.仮定より有限個のλΛを除いてfλ(Xλ)=Yλが成り立つので,右辺はYの開集合である.

  • 閉写像の積は閉写像とは限らない.実際,閉写像の積
    p1:R×RidR×c0R×{0}R; (x,y)x
    について,閉集合C={(x,y)R2xy=1}の像p1(C)=R{0}Rは閉集合ではない.
  • 完全写像(任意のファイバーがコンパクトな閉写像)の積は完全写像になる( 参考 ).
定理13,命題14の

((Xλ,τλ))λΛ,((Yμ,τμ))μMを位相空間族とし,φ:ΛMを全単射とする.このとき,各λΛに対して(Xλ,τλ)(Yφ(λ),τφ(λ))とが同相ならば,積空間(X,pX1(τ(X)))(Y,pY1(τ(Y)))とは同相である.

  • λΛに対して,(Xλ,τλ)(Yφ(λ),τφ(λ))との同相を与える写像をfλ:XλYφ(λ)とする.
  • このとき,命題14よりλΛfλ:λΛXλλΛYφ(λ)は全単射連続開写像ゆえ同相写像である.
  • Λの分割({φ1(μ)})μMを考えて,定理13より同相λΛYφ(λ)μMYμを得る.

積位相と相対位相

積位相の相対位相と相対位相の積位相

((Xλ,τλ))λΛを位相空間族とし,各λΛに対して部分集合AλXλが与えられているとする.包含写像λΛAλλΛXλによりAXと見做すとき,積集合A上のふたつの位相,すなわち

  • 積空間(X,p1(τ))の相対位相τ1
  • 位相空間族((Aλ,τλ|Aλ))λΛの積位相τ2

は一致する.

包含写像からなる族idAX=(idAλXλ:AλXλ)λΛと自然な射影からなる族pA=(pAλ:AAλ)λΛについて,
λΛ, pXλidAX=idAλXλpAλ:AXλ
が成り立つ.ところで,誘導位相の推移性より,

  • 写像族(pXλidAX)λΛによる誘導位相は包含写像idAX=idAXによる誘導位相,すなわちτ1に一致する;
  • 写像族(idAλXλpAλ)λΛによる誘導位相は写像族pAによる誘導位相,すなわちτ2に一致する.
写像の終域の違いを尊重する場合

f=idAXとおく.f(a)=f(a)とすると,任意のλΛに対して
a(λ)=idAλXλ(a(λ))=idAλXλpAλ(a)=pXλf(a)=pXλ(f(a))=pXλ(f(a))=a(λ)
が成り立つので,a=aとなる.したがってf:AXは単射連続写像である.全単射連続写像ff(A)の逆写像をg:f(A)Aとおく.λΛとする.f=idf(A)Xg1より,
idAλXλ(pAλg)=pXλidf(A)X
は連続なので,相対位相の普遍性よりpAλgは連続である.λΛは任意であったから,積位相の普遍性よりgは連続である.よってAXの部分空間と同相である:
Af(A)={xX | λΛ, xλAλ}X.

命題15の

f=(fλ:XλYλ)λΛを位相的埋め込みの族とする.このときf:XYは位相的埋め込みである.

定理12の系より
f=idf(X)Yff(X)
が成り立つ.よってfは位相的埋め込みと同相写像の合成であるから位相的埋め込みである(cf. 命題3.21).
Xff(X)fpXλf(X)idf(X)Ytop. emb.pfλ(Xλ)YpYλXλfλfλ(Xλ)top. emb.fλfλ(Xλ)idfλ(Xλ)Yλtop. emb.Yλ

((Xλ,τλ))λΛを位相空間族とする.このとき,各λΛに対して,自然な射影
pλ:(X,p1(τ))(Xλ,τλ)
は連続開写像である.

  • 連続写像であることは明らか.
  • 任意の有限集合{λ1,,λn}Λと開集合Uiτλiに対して
    pλ(pλ11(U1)pλn1(Un))={Ui,λ=λiXλ,λ{λ1,,λn}τλ
    が成り立つ.よってpλは開写像である.

((Xλ,τλ))λΛを位相空間族とし,AλXλ,λΛ,とする.このとき次が成り立つ:

  1. λΛAλ=λΛAλ;
  2. int(λΛAλ)λΛint(Aλ);
  3. 有限個のλΛを除いてAλ=Xλが成り立つならば,int(λΛAλ)=λΛint(Aλ).

ただし部分集合のなす族の直積はXの部分集合と見做している.

    1. λΛに対してpλの連続性より
      pλ(A)pλ(A)=Aλ
      が成り立つ.よってLHSRHSが成り立つ.
    2. λΛに対してaλ,0Aλを取る.xRHSとする.このとき,任意のλ1,,λnΛ,UiτλiであってxU:=pλi1(Ui)なるものに対して,pλi(x)UiAλiよりUiAλiとなるので,aλiUiAλiが取れる.そこでaX
      a(λ)={aλi,λ=λiaλ,0,λ{λ1,,λn}
      で定めると,aUAが成り立つ.よってxLHSを得る.
  1. pλが開写像であることから
    pλ(int(A))int(pλ(A))=int(Aλ)
    が成り立つ.よって
    int(A)λΛint(Aλ)
    が成り立つ.
  2. 仮定よりλΛint(Aλ)XAに含まれる開集合なので
    λΛint(Aλ)int(A)
    が成り立つ.

附:部分集合上で定義された写像族によって誘導される位相

X,Λを集合,各λΛに対してAλXを部分集合とし,(fλ:AλXλ)λΛを位相空間への写像族とする.このとき,各λに対して
fλ1(τ(Xλ)):={fλ1(V) | Vτ(Xλ)}{X}
X上の位相である.この位相に関してAλXは開集合であり
fλ:(Aλ,fλ1(τ(Xλ))|Aλ)(Xλ,τ(Xλ))
は連続写像である.さらに次が成り立つ:

Zを位相空間,g:ZXを写像とし,g1(Aλ)τ(Z) (λ)とする.このとき次は同値である:

  1. g:(Z,τ(Z))(X,f1(τ(X))):continuous;
  2. λΛ,fλgAλ:(g1(Aλ),τ(Z)|g1(Aλ))(Xλ,τ(Xλ)):continuous.
    ZgXg1(Aλ)gAλfλgAλAλfλXλ

(i)(ii)

仮定より
gAλ:(g1(Aλ),τ(Z)|g1(Aλ))gAλ(Aλ,τ(X)|Aλ)idAλ(Aλ,fλ1(τ(Xλ))|Aλ)
は連続であるから,fλgAλも連続である.

(ii)(i)

仮定より,任意のVτ(Xλ)に対して
g1(fλ1(V))=(fλgAλ)1(V)τ(Z)|g1(Aλ)τ(Z)
が成り立つので,gは連続である.

附:誘導位相と分離公理

Xを位相空間とする.

  1. XT1分離公理
    x,yX [ xyUτ(x,X),Vτ(y,X),UV{x,y}= ]
    を満たすとき,XT1空間という.
  2. XT2分離公理
    x,yX [ xyUτ(x,X),Vτ(y,X),UV= ]
    を満たすとき,XT2空間またはハウスドルフ空間という.
  3. XT3分離公理
    xX,Fτc(X) [ xFUτ(x,X),Vτ(F,X),UV= ]
    を満たすとき,X正則空間(regular space)という.正則T1空間をT3空間という.
  4. XT4分離公理
    C,Fτc(X) [ CF=Uτ(C,X),Vτ(F,X),UV= ]
    を満たすとき,X正規空間(normal space)という.正規T1空間をT4空間という.
  • T3分離公理(resp. T4分離公理)を満たす空間を正則空間(resp. 正規空間)といい,正則T1空間(resp. 正規T1空間)をT3空間(resp. T4空間)という文献も(の方が?)多い.(追記2024/10/14:多かったのでそちらに合わせました.)
  • T4T3T2T1が成り立つことはすぐにわかる(cf. 補題19).いづれの場合も逆は成り立たないことが知られている.

T1空間

Xを位相空間とする.このとき次は同値である:

  1. XT1空間である;
  2. 任意のxXに対して{x}Xは閉集合である.

(i)(ii)

xXとする.このとき,任意のyX{x}に対して,仮定よりVτ(y,X)であってVX{x}となるものが存在する.よってX{x}τ(X),すなわち{x}τc(X)を得る.

(ii)(i)

x,yX,xy,とする.このとき
U=X{y}, V=X{x}
とおくと,仮定よりUτ(x,X),Vτ(y,X)であり
UV{x,y}=
が成り立つ.

Xを位相空間とする.このとき次は同値である:

  1. XT1空間である;
  2. XからT1空間Yへの単射連続写像f:XYが存在する.

(i)(ii)

YとしてX自身を,fとして恒等写像idX:XXを取ればよい.

(ii)(i)

xXとする.仮定より{f(x)}τc(Y)であるから,{x}=f1({f(x)})τc(X)を得る.

包含写像を考えることで次を得る:

(部分空間のT1性)命題20の

T1空間の部分空間はT1空間である.

積空間のT1

(Xλ)λΛを位相空間族とする.このとき次は同値である:

  1. XT1空間である;
  2. XλT1空間である.

(i)(ii)

μΛに対してxμ,0Xμを取る.写像sλ:XλX
sλ(xλ)(μ)={xλ,μ=λxμ,0,μλ
で定める.積位相の普遍性よりsλは単射連続写像であるから,命題20よりXλT1空間である.

(ii)(i)

xXとする.このとき各XλT1性より
{x}=λΛpλ1({xλ})τc(X)
が成り立つ.よって補題19より結論を得る.

T2空間

Xを位相空間としx,xXとする.このとき,ハウスドルフ空間Yへの連続写像f:XYであってf(x)f(x)なるものが存在するならば,Uτ(x,X),Uτ(x,X)であってUU=となるものが存在する.

Yのハウスドルフ性より,Vτ(f(x),Y),Vτ(f(x),Y)であってVV=となるものが存在する.そこでU=f1(V),U=f1(V)とおくと
Uτ(x,X), Uτ(x,X), UU=
が成り立つ.

Xを位相空間とする.このとき次は同値である:

  1. Xはハウスドルフ空間である;
  2. Xからハウスドルフ空間Yへの単射連続写像f:XYが存在する.

(i)(ii)

YとしてX自身を,fとして恒等写像idX:XXを取ればよい.

(ii)(i)

補題22よりしたがう.

包含写像を考えることで次を得る:

(部分空間のハウスドルフ性)命題23の

ハウスドルフ空間の部分空間はハウスドルフ空間である.

積空間のハウスドルフ性

(Xλ)λΛを位相空間族とする.このとき次は同値である:

  1. Xはハウスドルフ空間である;
  2. Xλはハウスドルフ空間である.

(i)(ii)

命題21の証明で定義した単射連続写像sλ:XλXの存在と命題23よりXλはハウスドルフ空間である.

(ii)(i)

x,yX,xy,とする.このときλΛであってpλ(x)=xλyλ=pλ(y)となるものが存在する.仮定よりXλはハウスドルフ空間であるから,補題22よりUτ(x,X),Vτ(y,X)であってUV=となるものが存在する.

T3空間

Xを位相空間とし,σ(X)τ(X)を準開基とする.このとき次は同値である:

  1. Xは正則空間である;
  2. 任意のxXUτ(x,X)に対して,Vτ(x,X)であってVUとなるものが存在する;
  3. 任意のxXUσ(x,X)に対して,Vτ(x,X)であってVUとなるものが存在する.

(i)(ii)

xX,Uτ(x,X)とする.F=XUτc(X)とおくと,xFより,Vτ(x,X),Wτ(F,X)であってVW=となるものが存在する.このときVXWτc(X)であるから,
VXW=XWXF=U
が成り立つ.

(ii)(iii)

明らか.

(iii) (i)

xX,Fτc(X),xFとする.このときxXFτ(X)より,U1,,Unσ(x,X)であってi[n]UiXFとなるものが存在する.仮定より,各i[n]に対してViτ(x,X)であってViUiとなるものが存在する.そこでU=i[n]Vi,V=Xi[n]Viとおくと,
Uτ(x,X), Vτ(F,X), UV=
が成り立つ.

部分空間の正則性
  1. 正則空間Xの部分空間AXは正則空間である.
  2. T3空間の部分空間はT3空間である.
  1. aA,FAτc(A),aFAとする.このときFτc(X)であってFA=FAとなるものが存在する(命題4).Xの正則性とaFより,Uτ(a,X),Vτ(F,X)であってUV=となるものが存在する.そこでUA=UA,VA=VAとおくと
    UAτ(a,A), VAτ(FA,A), UAVA=
    が成り立つ.
  2. 前段と命題20の系よりしたがう.
積空間の正則性

(Xλ)λΛを位相空間族とする.このとき次は同値である:

  1. Xは正則空間(resp. T3空間)である;
  2. Xλは正則空間(resp. T3空間)である.

命題21より正則性について示せば十分である.

(i)(ii)

命題21の証明で定義した単射連続写像sλ:XλXについて,
(pλ|sλ(Xλ))sλsλ(Xλ)=idXλ, sλsλ(Xλ)(pλ|sλ(Xλ))=idsλ(Xλ)
が成り立つので,sλsλ(Xλ):Xλsλ(Xλ)は同相写像である.命題26よりsλ(Xλ)Xは正則空間であるから,Xλも正則空間である.

(ii)(i)

xX,Uσ(x,X)とする.積位相の定義よりσ(X)=λΛpλ1(τ(Xλ))であるから,あるUλτ(xλ,Xλ)を用いてU=pλ1(Uλ)と書ける.いまXλは正則空間であるから,命題25よりVλτ(xλ,Xλ)であってVλUλとなるものが存在する.そこでV=pλ1(Vλ)τ(x,X)とおくと,pλの連続性より
V=pλ1(Vλ)pλ1(Vλ)pλ1(Uλ)=U
が成り立つ.よって命題25よりXは正則空間である.

T4空間

Xを位相空間とする.このとき次は同値である:

  1. Xは正規空間である;
  2. 任意のCτc(X)Uτ(C,X)に対して,Vτ(C,X)であってVUとなるものが存在する;
  3. 任意のC,Fτc(X)であってCF=なるものに対して,Uτ(C,X)であってUF=となるものが存在する;
  4. 任意のC,Fτc(X)であってCF=なるものに対して,Uτ(C,X),Vτ(F,X)であってUV=となるものが存在する.

(i)(ii)

Cτc(X),Uτ(C,X)とする.F=XUτc(X)とおくと,CF=より,Vτ(C,X),Wτ(F,X)であってVW=となるものが存在する.このときVXWτc(X)であるから,
VXW=XWXF=U
が成り立つ.

(ii)(iii)

C,Fτc(X),CF=,とする.XFτ(C,X)に対して,仮定よりUτ(C,X)であってUXF,すなわちUF=となるものが存在する.

(iii)(iv)

C,Fτc(X),CF=,とする.仮定よりUτ(C,X)であってUF=となるものが存在する.交わらない閉集合U,FXに対して,ふたたび仮定より,Vτ(F,X)であってUV=となるものが存在する.

(iv)(i)

明らか.

  1. 正規空間X部分空間AXは正規空間である;
  2. 積空間XT4空間ならば,各XλT4空間である.
  1. C,Fτc(A),CF=,とする.Aτc(X)よりC,Fτc(X)であるから,Uτ(C,X),Vτ(F,X)であってUV=となるものが存在する.そこでUA=UA,VA=VAとおくと,
    UAτ(C,A), VAτ(F,A), UAVA=
    が成り立つ.
  2. 命題21より各XλT1空間である.また,同相
    Xλsλ(Xλ)X
    が存在するのだった.ところで各XμT1性より
    sλ(Xλ)=μλpμ1({xμ,0})X
    は閉集合であるから,前段よりsλ(Xλ)は,したがってXλは正規空間である.

T4空間の部分空間や積空間はT4空間になるとは限らないことが知られている.

Xを位相空間とする.任意のxXに対してそのコンパクト近傍,すなわちコンパクト集合KXであってxint(K)となるものが存在するとき,X局所コンパクト空間(locally compact space)という.

  1. コンパクトハウスドルフ空間はT4空間である;
  2. 局所コンパクトハウスドルフ空間はT3空間である.
  1. こちら を参照されたい.
    • Xを局所コンパクトハウスドルフ空間とする.
      • XT1空間であることは明らか.
    • xX,Uτ(x,X)とする.
    • xXのコンパクト近傍KXを取る.
    • 前段よりコンパクトハウスドルフ空間Kは正規空間であるから,その閉集合{x}の開近傍UKに対して,WKτ(x,K)であってclK(WK)UKとなるものが存在する.
    • 相対位相の定義よりWτ(x,X)であってWK=WKとなるものが存在する.
    • そこでV=Wint(K)τ(x,X)とおく.
    • ハウスドルフ空間Xのコンパクト集合KXは閉集合であることに注意すると,
      VWKK=clK(WK)U
      が成り立つことがわかる.
    • よって命題25よりXは正則空間である.

参考文献

[1]
N. Bourbaki, General Topology Chapters 1--4
[2]
J. Dugundji, Topology
[3]
小松醇郎,中岡稔,菅原正博, 『位相幾何学 I』, 岩波書店
投稿日:20231029
更新日:20241014

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うすい
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  1. 写像によって誘導される位相
  2. 部分空間
  3. 写像族によって誘導される位相
  4. 積空間
  5. 普遍性とその帰結
  6. 積位相と相対位相
  7. 附:部分集合上で定義された写像族によって誘導される位相
  8. 附:誘導位相と分離公理
  9. T1空間
  10. T2空間
  11. T3空間
  12. T4空間
  13. 参考文献
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