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大学数学基礎解説
文献あり

『代数函数論』補題1.5

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はじめに

主張自体はシンプルです.

ν1,ν2,,νnを互いに同値でないKの正規付値とすれば,
νi(xj)=δij
をみたすKの元x1,,xnが存在する.ここで,δijはクロネッカーのデルタである.

ν1,ν2,,νnの中に同値な正規付値があれば当然このようなx1,,xnはありません.また,正規付値でない付値があってもその付値は値として1を取ることができないので当然定理は成り立たないということを一応注意しておきます.

つかう補題を書いておきます.証明は文献[2,3]を見てください.

ν1,,νn(n2)を互いに同値でないKの付値とすれば,Kの元xが存在して,
ν1(1x)>0,ν2(x)>0,,νn(x)>0
が成り立つ.

定理1の証明

ν1は正規付値なので,ν1(a)=1なる元aが存在します.
補題2の不等式をみたすxを用いて,試しにx1=ax+(x1)としてみましょう.x1=a+(x1)(a+1)です.ν1(x1)1,ν1(a+1)=0より,ν1((x1)(a+1))1なので,ν1(x1)=1が出ません.i2についてはどうでしょうか.νi(ax+(x1))で,νi(ax)=νi(a)+νi(x)νi(x1)=0です.ちょっとどうしようもないですね.νi(ax)>0だと嬉しいんですけど.処方箋として次のようなことができます.
補題2の不等式をみたすxを用いて,x1=axm+(x1)mとしてみましょう.これはi2のとき,νi(axm)=νi(a)+mνi(x)νi((x1)m)=mνi(x1)=0です.よってmが十分大きければνi(x1)=0となってくれます!さて,ν1(x1)=1を示さなければいけません.ちょっと計算すると,axm+(x1)m=a+(x1)(axm1x1+(x1)m1)が分かります.mが十分大きいときに,ν1(axm1x1+(x1)m1)1であることを示します.ν1(axm1x1)=1+ν1(xm1+xm2++x+1)1ですね.よってm2であればν1(axm1x1+(x1)m1)1が成り立つことが分かります.よってν1((x1)(axm1x1+(x1)m1))2なので,ν1(x1)=1です.
同様のことをx2,x3,,xnにすれば証明完了です.

おわりに

ここまで見てくださった方ありがとうございます.なんか式変形がよく分からんというときは過去の記事を見ていただければわかるかもしれません.とくに,ν1(xm1++x+1)0ν(x)=0からきています.ν1(1x)>0より,ν1(x)=0である必要がありました.

参考文献

投稿日:20241022
更新日:20241022
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投稿者

はじめまして!楽しい記事を書ければと思いますので、よろしくお願いします。

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