主張自体はシンプルです.
$\nu_1,\nu_2,\cdots,\nu_n$を互いに同値でない$K$の正規付値とすれば,
$$\nu_i(x_j)=\delta_{ij}$$
をみたす$K$の元$x_1,\cdots, x_n$が存在する.ここで,$\delta_{ij}$はクロネッカーのデルタである.
$\nu_1,\nu_2,\cdots,\nu_n$の中に同値な正規付値があれば当然このような$x_1,\cdots, x_n$はありません.また,正規付値でない付値があってもその付値は値として1を取ることができないので当然定理は成り立たないということを一応注意しておきます.
つかう補題を書いておきます.証明は文献[2,3]を見てください.
$\nu_1,\cdots,\nu_n(n\geq2)$を互いに同値でない$K$の付値とすれば,$K$の元$x$が存在して,
$$\nu_1(1-x)>0,\quad \nu_2(x)>0,\quad \cdots,\quad \nu_n(x)>0 $$
が成り立つ.
$\nu_1$は正規付値なので,$\nu_1(a)=1$なる元$a$が存在します.
補題2の不等式をみたす$x$を用いて,試しに$x_1 = ax + (x-1)$としてみましょう.$x_1 = a+(x-1)(a+1)$です.$\nu_1(x-1)\ge1$,$\nu_1(a+1)=0$より,$\nu_1((x-1)(a+1))\ge1$なので,$\nu_1(x_1)=1$が出ません.$i\ge2$についてはどうでしょうか.$\nu_i(ax + (x-1))$で,$\nu_i(ax)=\nu_i(a)+\nu_i(x)$,$\nu_i(x-1)=0$です.ちょっとどうしようもないですね.$\nu_i(ax)>0$だと嬉しいんですけど.処方箋として次のようなことができます.
補題2の不等式をみたす$x$を用いて,$x_1=ax^m + (x-1)^m$としてみましょう.これは$i\ge2$のとき,$\nu_i(ax^m)=\nu_i(a)+m\nu_i(x)$,$\nu_i((x-1)^m)=m\nu_i(x-1)=0$です.よって$m$が十分大きければ$\nu_i(x_1)=0$となってくれます!さて,$\nu_1(x_1)=1$を示さなければいけません.ちょっと計算すると,$ax^m+(x-1)^m=a+(x-1)\left(a\dfrac{x^m-1}{x-1}+(x-1)^{m-1}\right)$が分かります.$m$が十分大きいときに,$\nu_1\left(a\dfrac{x^m-1}{x-1}+(x-1)^{m-1}\right)\ge1$であることを示します.$\nu_1\left(a\dfrac{x^m-1}{x-1}\right)=1+\nu_1(x^{m-1}+x^{m-2}+\cdots+x+1)\ge1$ですね.よって$m\ge2$であれば$\nu_1\left(a\dfrac{x^m-1}{x-1}+(x-1)^{m-1}\right)\ge1$が成り立つことが分かります.よって$\nu_1\left((x-1)\left(a\dfrac{x^m-1}{x-1}+(x-1)^{m-1}\right)\right)\ge 2 $なので,$\nu_1(x_1)=1$です.
同様のことを$x_2,x_3,\cdots, x_n$にすれば証明完了です.
ここまで見てくださった方ありがとうございます.なんか式変形がよく分からんというときは過去の記事を見ていただければわかるかもしれません.とくに,$\nu_1(x^{m-1} + \cdots + x+1)\ge0$は$\nu(x)=0$からきています.$\nu_1(1-x)>0$より,$\nu_1(x)=0$である必要がありました.