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応用数学解説
文献あり

ケイリー=ディクソンの構成法から四元数の行列表現まで

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シリーズ: 四元数の行列表現

複素数の組から四元数を合成するためのケイリー=ディクソンの構成法を確認して、そこから発見的に行列表現を導出します。

ケイリー=ディクソンの構成法

ケイリー=ディクソンの構成法は、代数を合成して高次元の代数を得るための規則です。wiki-cd

本稿では、複素数の組から四元数を合成する構成法だけを取り扱います。

四元数a+bi+cj+dkを2つの複素数p=a+bi, q=c+di (a,b,c,dR)の組として表現します。複素数の虚数単位iは、表記を維持したまま四元数の虚数単位iとして埋め込みます。(CH)

a+bi+cj+dk=(a+bi)+(c+di)j=p+qj

jが(四元数の部分代数としての)複素数と交換するとき、複素数を共役に変化させます。共役をで表記します。

jp=pj(p=a+biH; a,bR)

jp=j(a+bi)=aj+bji=ajbij=(abi)j=pj

これを利用して、複素数r,sで構成される四元数r+sjとの積を計算します。

(p+qj)(r+sj)=pr+psj+qjr+qjsj=pr+psj+qrj+qsj2=(prqs)+(ps+qr)j

複素数の組を順序対として表記したものが、ケイリー=ディクソンの構成法と呼ばれます。

ケイリー=ディクソンの構成法(複素数 → 四元数)

(p,q)(r,s)=(prqs,ps+qr)(p,q,r,sC)

これは四元数の構成に特化しています。四元数から八元数を構成する場合、このままでは適用できません。

目標設定

ケイリー=ディクソンの構成法を出発点にして、四元数の行列表現を導出します。イメージを示します。

(????)(rs)=?(prqsps+qr)

仮計算

未知の成分に変数を割り当てて計算します。

(wxyz)(rs)=(wr+xsyr+zs)

この結果を目標の成分と比較します。

(wr+xsyr+zs)=?(prqsqr+ps)

両辺を見比べることで、共役の不一致はひとまず無視して対応を推定します。

(wxyz)=(pqqp)

改めて計算して比較します。

(pqqp)(rs)=(prqsqr+ps)=?(prqsqr+ps)

第2成分の一致

まず第2成分を合わせることに焦点を当てます。行列計算の第2成分 qr+ps が目標の qr+ps と一致するには、rr に置き換える必要があります。

そこで四元数のベクトル表現を修正します:

(pqqp)(rs)=(prqsqr+ps)=?(prqsqr+ps)

これにより第2成分は目標と一致しましたが、第1成分にはまだ不一致があります。

目標値の調整

(rs)の第1成分は共役になっていますが、これはベクトル表現に共通すると考えられます。

そこで目標値の第1成分の共役を取ります。

(prqsqr+ps)((prqs)qr+ps)=(prqsqr+ps)

行列表現の調整

改めてここまでの計算式と比較します。

(pqqp)(rs)=(prqsqr+ps)=?(prqsqr+ps)

目標値と一致させるため、行列の第1行の共役を取ります。

(pqqp)(rs)=(prqsqr+ps)=?(prqsqr+ps)

無事に目標値と一致しました!

まとめ

四元数・順序対・行列・ベクトルの対応

p+qj(p,q)(pqqp)(pq)(p,qC(H))

  • 行列・ベクトル表現の第1行の共役が、四元数の非可換性を反映しています。
  • ベクトルは行列の第1列のみを取り出した形です。
四元数の計算・ケイリー=ディクソンの構成法・行列とベクトルの計算

p,q,r,sC(H)
(p+qj)(r+sj)=(prqs)+(ps+qr)j
(p,q)(r,s)=(prqs,ps+qr)
(pqqp)(rs)=((prqs)qr+ps)

p=a+bi,q=c+diの関係を展開して、四元数と行列を比較します。

(a+bi)+(c+di)j((a+bi)(c+di)c+dia+bi)

これは発見的に構成した行列表現と一致します。7shi-qcm

参考文献

投稿日:25日前
更新日:23日前
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  1. ケイリー=ディクソンの構成法
  2. 目標設定
  3. 仮計算
  4. 第2成分の一致
  5. 目標値の調整
  6. 行列表現の調整
  7. まとめ
  8. 参考文献