シリーズ: 四元数の行列表現
四元数の複素行列表現を、なるべく素朴な考え方によって発見的に構成します。
四元数
これを単純に複素ベクトルに対応させます。
このベクトル表現によって、四元数の基本操作がどのように表現されるか確認してみます。
四元数に左から
この操作をベクトルの変換として考えます。
これは各成分に
次に、四元数に左から
この操作をベクトルの変換として考えます。
この変換を行列で表現できるでしょうか。
成分の対応には複素共役操作が含まれており、複素共役は線形変換ではないため、行列を掛けるだけでは表現できません。
最初から
この表現では、左から
この操作をベクトルの変換として考えます。
この変換には複素共役が含まれないため、行列で変換が可能です。
このように、ベクトル表現へのマッピングに最初から複素共役の形を埋め込むことで、線形変換として扱うことが可能になります。
このマッピングによって、
ここまでの結果をまとめます。
これらの行列は四元数の乗算規則を満たしています。(
行列表現を線形結合させると、第1列がベクトル表現に一致することが分かります。
四元数を複素行列で表現するためには、単純なマッピングではなく、巧妙なひねりを加えることが本質的です。具体的には、第1成分の虚部の符号を反転させる表現を採用することで、四元数の乗算構造を完全に保存する複素行列表現が得られました。
これは、複素共役のような非線形操作が、適切な表現を選ぶことで線形化できることを示す興味深い例です。
四元数の行列表現には任意性があります。一例として、パウリ行列の形に合わせるには、以下のように組み替えます。(それぞれ