Fermatの二平方和定理は奇素数$p$が整数$x,y$を用いて$p=x^2+y^2$と表されることと, $p\equiv 1\pmod 4$であることが同値であるというものであり, 様々な証明が知られている. Jacobiの二平方和定理はその一般化であり, 自然数$n$に対し, $x^2+y^2=n$となる整数$(x,y)$の組の個数$r_2(n)$が
\begin{align}
r_2(n)=4\sum_{2\not\mid d\mid n}(-1)^{\frac{d-1}2}
\end{align}
と表されるという定理である. ここで, 右辺は$n$の約数であり$2$で割り切れない$d$に関する和を意味している. この定理は母関数を考えることによって$q$級数の間の等式
\begin{align}
\left(\sum_{n\in\ZZ}q^{n^2}\right)^2=1+4\sum_{0< n}\frac{q^n}{1+q^{2n}}
\end{align}
に書き換えることができ, それを示すという方針の証明が多い. しかし, この定理を代数的な観点から証明したものは(より一般的な結果を示したものはあるものの)意外と見当たらなかったので, 今回はJacobiの二平方和定理の代数的な証明を与えようと思う. ($q$級数を用いる証明に関しては
子葉さんの記事
や
僕の記事
で扱われている.)
Fermatの二平方和定理については, 多くの本や記事で証明が与えられているのでここでは既知とする. 主に用いるのは次の定理である.
$\ZZ[i]$は一意分解整域である.
これに関してもよく知られているので証明は省略する. この定理が意味するところとしては, $z\in\ZZ[i]$が与えられたときに, $\ZZ[i]$における素数$p_1,\dots,p_n,q_1,\dots,q_m$によって
\begin{align}
z=p_1\cdots p_n=q_1\cdots q_m
\end{align}
と二通りに分解できたならば, $n=m$であり, $q_1,\dots,q_n$を上手く並び替えて$q_1',\dots,q_n'$として, 各$i$に対して$p_i/q_i'$が$\ZZ[i]$の単数である$\pm 1,\pm i$のどれかになるようにできるということである. 以下, $\ZZ[i]$の素数と区別するために, $\ZZ$の素数を有理素数ということにする.
$\ZZ[i]$において$n=x^2+y^2=(x-yi)(x+yi)$と書き換えることができる. このように書き換えると, Fermatの二平方和定理が意味することは以下のようになる.
$\ZZ[i]$の素数は$p\equiv 3\pmod 4$となる有理素数の場合, $p\equiv 1\pmod 4$である有理素数を$p=x^2+y^2$と表したときの$x+yi$の場合か, $1+i$のいずれかの単数倍である.
まず, $p\equiv 3\pmod 4$となる有理素数が$\ZZ[i]$の素数であることを示す. $p$が$\ZZ[i]$の素数でない, つまり$x,y,z,w\in\ZZ, x^2+y^2\neq 1, z^2+w^2\neq 1$によって
\begin{align}
p=(x+yi)(z+wi)
\end{align}
と表せたとすると両辺の複素共役をとったものを掛けると
\begin{align}
p^2=(x^2+y^2)(z^2+w^2)
\end{align}
となる. $x^2+y^2\neq 1, z^2+w^2\neq 1$と$\ZZ$における素因数分解の一意性より, $x^2+y^2=z^2+w^2=p$である. しかし, これはFermatの二平方和定理に矛盾する. よって$p$は$\ZZ[i]$における素数である. 次に, Fermatの二平方和定理より$p\equiv 1\pmod 4$となる有理素数は$p=x^2+y^2$と表される. このとき, $x+yi$は$\ZZ[i]$における素数である. もしそうでないとすれば, $a^2+b^2\neq 1, c^2+d^2\neq 1$となる整数$a,b,c,d$があって,
\begin{align}
x+yi=(a+bi)(c+di)
\end{align}
と表されるが, 両辺の複素共役をとったものと掛け合わせることによって
\begin{align}
p=x^2+y^2=(a^2+b^2)(c^2+d^2)
\end{align}
を得る. これは$p$が有理素数であることに矛盾する. $1+i$が$\ZZ[i]$にの素数であることは全く同様に分かる. 逆に$x+yi$が$\ZZ[i]$の素数であるとき,
\begin{align}
(x+yi)(x-yi)=x^2+y^2
\end{align}
の$\ZZ$における素因数分解を
\begin{align}
(x+yi)(x-yi)=p_1\cdots p_k
\end{align}
としたとき, 素因数分解の一意性から, $k=1$または$2$であり, $k=1$のとき,
\begin{align}
x^2+y^2=p
\end{align}
で, $p\equiv 1\pmod 4$または$p=2$の場合, $k=2$の場合, $\ZZ[i]$における素因数分解の一意性から$x+yi$と$p$は単数倍を除いて一致しなければならず, $p\equiv 3\pmod 4$の場合となる.
自然数$n$の素因数分解を$n=2^mp_1^{e_1}\cdots p_k^{e_k}q_1^{f_1}\cdots q_l^{f_l}$とする. ここで, $p_1,\dots,p_k$は$4$を法として$1$と合同な有理素数, $q_1,\dots,q_l$は$4$を法として$1$と合同な有理素数とする. $n=x^2+y^2$は
\begin{align}
n=(x-yi)(x+yi)
\end{align}
と$\ZZ[i]$において素因数分解される. $x+yi$が単数倍の違いを除いて, どれぐらいあるかを数え上げることを考える. ここで, $x-yi$と$x+yi$は複素共役であり, $q_1,\dots,q_l$は$\ZZ[i]$の素数であるから, 単数倍を除いて, $x+yi$と$x-yi$は同じ数だけ素因子$q_j$を含まなければならない. よって, $f_1,\dots,f_l$のうち少なくとも1つが奇数である場合は$n=x^2+y^2$と表すことができないこと分かる. $f_1,\dots,f_l$が全て偶数であるとするとき, $x+yi, x-yi$はともにちょうど$q^{\frac {f_1}2},\dots,q^{\frac{f_l}2}$で割り切れるので, それを割っておくことによって, 初めから$f_1=\cdots f_l=0$の場合, つまり$n=2^mp_1^{e_1}\cdots p_k^{e_k}$であると仮定してよい. $2=(1-i)(1+i)$であり, $1+i=i(1-i)$から$1+i$はその共役の単数倍になる. よって, $x-yi$と$x+yi$は同じ数だけ素因子$1+i$を含むので, 同様の議論によって, $m=0$と仮定してよい.
これより, $n=p_1^{e_1}\cdots p_k^{e_k}$であるとする. $p_j=(x_j-y_ji)(x_j+y_ji)$と素因数分解すると
\begin{align}
(x-yi)(x+yi)=(x_1-y_1i)^{e_1}(x_1+y_1i)^{e_1}\dots(x_k-y_ki)^{e_k}(x_k+y_ki)^{e_k}
\end{align}
と表される. $x-yi$と$x+yi$が共役であることと, $\ZZ[i]$における素因数分解の一意性から, $x+yi$はちょうど$e_1$個の$x_1-y_1i$または$x_1+y_1i$を素因子として含む. つまり, $a+b=e_1$となる非負整数$a,b$を用いて$x+yi$は
\begin{align}
x+yi=(x_1-y_1i)^a(x_1+y_1i)^b\cdots
\end{align}
と$\ZZ[i]$において素因数分解される. $a+b=e_1$となる非負整数の組は$e_1+1$通りであり, 他の$x_j+y_ji$に関しても同様の議論より$x+yi$は単数倍を除いて$(e_1+1)\cdots(e_k+1)$通りあり得ることが分かる.
まとめると, $n=2^mp_1^{e_1}\cdots p_k^{e_k}q_1^{f_1}\cdots q_l^{f_l}$であるとき,
\begin{align}
n=(x-yi)(x+yi)
\end{align}
となる$x+yi$は単数倍を除いて
\begin{align}
\begin{cases}
(e_1+1)\cdots(e_k+1)&&f_1\equiv\cdots f_l\equiv 0\pmod 2\\
0&&\mathrm{otherwise}
\end{cases}
\end{align}
通りあり得る. このような$x+yi$が与えられたときに, 単数倍の違いと, $x+yi$と$x-yi$の入れ替えによって,
\begin{align}
n=x^2+y^2
\end{align}
の解は$(\pm x,\pm y)$としてちょうど$4$通り得られることが分かる. よって, 自然数$n$に対し, $x^2+y^2=n$となる整数$(x,y)$の組の個数$r_2(n)$が$n=2^mp_1^{e_1}\cdots p_k^{e_k}q_1^{f_1}\cdots q_l^{f_l}$であるとき,
\begin{align}
r_2(n)=\begin{cases}
4(e_1+1)\cdots(e_k+1)&&f_1\equiv\cdots f_l\equiv 0\pmod 2\\
0&&\mathrm{otherwise}
\end{cases}
\end{align}
と表されることが分かった. 冒頭に述べた$r_2(n)$の表示の右辺は
\begin{align}
\sum_{2\not\mid d\mid n}(-1)^{\frac{d-1}2}&=\sum_{2\not\mid d\mid 2^mp_1^{e_1}\cdots p_k^{e_k}q_1^{f_1}\cdots q_l^{f_l}}(-1)^{\frac{d-1}2}\\
&=\sum_{d\mid p_1^{e_1}\cdots p_k^{e_k}q_1^{f_1}\cdots q_l^{f_l}}(-1)^{\frac{d-1}2}\\
&=\sum_{\substack{0\leq j_1\leq e_1,\dots,0\leq j_k\leq e_k\\0\leq m_1\leq f_1,\dots,0\leq m_l\leq f_l\\d=p_1^{j_1}\cdots p_k^{j_k}q_1^{m_1}\cdots q_l^{m_l}}}(-1)^{\frac{d-1}2}\\
\end{align}
と書き換えられ,
\begin{align}
(-1)^{\frac{d-1}2}
\end{align}
は$d$を$4$で割ったときのあまりのみに依存しているため, $m_1,\dots,m_l$の和が偶数のとき$1$, 奇数のとき$-1$になっている. よってそれは$(-1)^{m_1+\cdots+m_l}$と表され,
\begin{align}
\sum_{\substack{0\leq j_1\leq e_1,\dots,0\leq j_k\leq e_k\\0\leq m_1\leq f_1,\dots,0\leq m_l\leq f_l\\d=p_1^{j_1}\cdots p_k^{j_k}q_1^{f_1}\cdots q_l^{f_l}}}(-1)^{\frac{d-1}2}&=\sum_{\substack{0\leq j_1\leq e_1,\dots,0\leq j_k\leq e_k\\0\leq m_1\leq f_1,\dots,0\leq m_l\leq f_l}}(-1)^{m_1+\cdots+m_k}\\
&=(e_1+1)\cdots(e_k+1)\frac{1+(-1)^{f_1}}2\cdots\frac{1+(-1)^{f_k}}{2}\\
&=\frac 14r_2(n)
\end{align}
となる. つまり以下が得られた.
自然数$n$に対し, $x^2+y^2=n$となる整数$(x,y)$の組の個数$r_2(n)$は
\begin{align}
r_2(n)=4\sum_{2\not\mid d\mid n}(-1)^{\frac{d-1}2}
\end{align}
と表される.
より一般の場合に関しては 子葉さんの記事 で扱われている.