以前紹介したHankel変換など偶関数に対してしか定義されなかったものの定義域を拡張する試みの一環で、厳密化しようとする過程にある計算なので怪しいものが多数あるが、きれいなので紹介する
誤差関数$\mathrm{erf}(x)=\frac{2}{\sqrt\pi}\int_0^xe^{-t^2}dt$
相補誤差関数$\mathrm{erfc}(x)=1-\mathrm{erf}(x)$
スケーリング相補誤差関数(scaled complementary error function)
$\mathrm{erfcx}(x)=e^{x^2}\mathrm{erfc}(x) $
Dawson関数$ D(x)=\frac{\sqrt\pi}{2i}e^{-x^2}\mathrm{erf}(ix)$
$$\p^{-1}\cdot f(x)=\int_0^x f(t)dt$$
のように$\p$の(右)逆元を定義することができる。これを使うと
\begin{align}
D(x)=&e^{-x^2}\int_0^x e^{t^2}dt\\
=&e^{-x^2}\p^{-1}\cdot e^{x^2}\\
=&e^{-x^2}\p^{-1}e^{x^2}\cdot1 \\
=&(e^{-x^2}\p e^{x^2})^{-1}\cdot 1\\
=&(\p+2x)^{-1}\cdot 1\\
=&(e^{\p^2/4}x e^{-\p^2/4})^{-1}\cdot 1\\
=&e^{\p^2/4}(2x)^{-1}e^{-\p^2/4}\cdot1\\
=&e^{\frac14\p^2}\cdot\frac1{2x}\\
\end{align}
となる。実際、途中にある式が示唆するように、$D$は微分方程式
$$\frac{dD(x)}{dx}+2xD(x)=1$$
を満たす。両辺を微分すると簡単に示せる次の式
$$\int_{-\infty}^\infty e^{-t^2}\frac{\sin(xt)}tdt=\pi ~\mathrm{erf}(x/2)$$
を使うと
Weierstrass変換
のCauchy主値として
$$D(x)=\frac1{2\sqrt\pi}\int_{-\infty}^\infty e^{-(x-t)^2}\frac{dt}t=e^{\frac14\p^2}\cdot\frac1{2x}$$
となっていることがわかる。書き換えると次のようになる。
$$\mathrm{erf}(x)=e^{-x^2}\frac1{\p-2x} \cdot \frac2{\sqrt\pi}=-\frac1{\sqrt\pi}e^{-x^2}e^{-\frac14\p^2}\cdot\frac1{x}$$
次の公式について考える。
$$\frac1{\sqrt{2\pi\sigma^2}}\int_{-\infty}^\infty \mathrm{erf}(ax+b)\exp\left(-\frac{(x-\mu)^2}{2\sigma^2}\right)dx=\mathrm{erf}\left(\frac{a\mu+b}{\sqrt{1+2a^2\sigma^2}}\right)$$
Weierstrass変換を用いると次のように書ける(ただし$A=1+2a^2\sigma^2 $)
$$e^{\frac{\sigma^2}2\p^2}\cdot \mathrm{erf}(ax)=\mathrm{erf}(ax/\sqrt A)$$
$$e^{\frac{\sigma^2}2\p^2}e^{-a^2x^2}e^{-\frac{1}{4a^2}\p^2}\cdot\frac1x=\sqrt Ae^{-\frac{a^2}Ax^2}e^{-\frac{A}{4a^2}\p^2}\cdot \frac1x$$
LCT
を用いると
\begin{align}
\t+
\left(
\begin{array}{cc}
1 & 0 \\
-\sigma^2i & 1
\end{array}
\right)
\t+
\left(
\begin{array}{cc}
1 & 2ia^2 \\
0 & 1
\end{array}
\right)
\t+
\left(
\begin{array}{cc}
1 & 0 \\
i/(2a^2) & 1
\end{array}
\right)\cdot \frac1x=
\sqrt A\t +
\left(
\begin{array}{cc}
1 & 2ia^2/A \\
0 & 1
\end{array}
\right)
\t+
\left(
\begin{array}{cc}
1 & 0 \\
iA/(2a^2) & 1
\end{array}
\right)\cdot \frac1x
\end{align}
という等式に言い換えられる。
\begin{align}
\left(
\begin{array}{cc}
A & 0 \\
0 & A^{-1}
\end{array}
\right)
=
\left(
\left(
\begin{array}{cc}
1 & 0 \\
-\sigma^2i & 1
\end{array}
\right)
\left(
\begin{array}{cc}
1 & 2ia^2 \\
0 & 1
\end{array}
\right)
\left(
\begin{array}{cc}
1 & 0 \\
i/(2a^2) & 1
\end{array}
\right)
\right)^{-1}
\left(
\begin{array}{cc}
1 & 2ia^2/A \\
0 & 1
\end{array}
\right)
\left(
\begin{array}{cc}
1 & 0 \\
iA/(2a^2) & 1
\end{array}
\right)
\end{align}
という$SL(2,\mathbb C)$の等式を使うことで準同型性から
\begin{align}
\frac1x=\sqrt A \t +\left(
\begin{array}{cc}
A & 0 \\
0 & 1/A
\end{array}
\right)\cdot \frac1x
\end{align}
という式に帰着する。この議論を逆行することで公式をしめすことができるように思えるが、LCTのパラメータが$SL(2,\mathbb R)$ではなく$SL(2,\mathbb C)$なので、普遍被覆群の基本群に由来する係数の部分を定めることができない。
もとに戻ると、
$$\mathrm{erfcx}(x)=e^{x^2}+\frac1{\sqrt\pi}e^{-\frac14\p^2}\cdot\frac1{x}$$
となる。Weierstrass変換は積分変換として定義されていたが、指数関数の級数展開を行うと$n!x^{-2n}$のオーダーで発散してしまうため、微分演算子としては通常の計算ができない。しかし、漸近展開としては計算できる。
$\p^{2n}\cdot x^{-1}=(2n)!x^{-1-2n}=(1/2)_n(1)_n4^nx^{-1-2n}$
なので無理やり計算すると
$$\mathrm{erfcx}(x)=e^{x^2}+\frac1{x\sqrt\pi }~_2F_0\left(1,\frac12;;-\frac1{x^2}\right)$$
これは漸近展開の公式
$\mathrm{erfcx}(x)\approx\frac1{x\sqrt{\pi}}~_2F_0^{(n-term)}(1,\frac12;;-\frac1{x^2})$
を示唆している。$_2F_0^{(n-term)}$は$n$項までの部分和である。
他の関数としてQ-functionがある。
$Q(x)=\frac12\mathrm{erfc}(x/\sqrt2)=\frac12+\frac1{\sqrt{2\pi}}e^{-\frac12x^2}e^{-\frac12\p^2}\cdot \frac1x$
となる。