前回
はRiemann幾何学的な視点から曲面論の復習を行い, 各種用語や概念の定義をしました.
今回はいよいよの面積の変分を計算していきます.
面積の第一変分公式
変分法の基本補題
はじめに, 初回で紹介した解析学の命題を証明しておきます.
変分法の基本補題
をRiemann多様体とする. が任意の関数に対して
を満たすならば, である.
任意に固定したに対し, となることを示せばよい.
を中心とした半径の測地球を考える. 十分小さなを考えることで, の閉包はコンパクトであるとしておく(具体的には, の周りのある局所座標に含まれるようにしておけばOK).
いま, 関数を以下で定義する:
ここで, 定数はとなるように取った.
このとき,
であることを示す.
実際, 任意にを取ると, の連続性から, を十分小さく取っておけば
とできる. このとき, を用いると,
となるから, がわかる.
一方, 仮定よりだったから, でなければならない.
曲面の変分(微小変形)
2次元多様体のへのはめ込みが与えられたとき, それを微小に変形したものを変分と言います. より詳細には次で定義します.
曲面(はめ込み)の変分
曲面の変分とは, 級写像で, 以下の条件を満たすものとする:
- .
- 任意のに対しては級はめ込み.
- の台はコンパクト, すなわち任意のに対し, あるコンパクト集合が存在して, に対しては.
が境界を持つ場合は,
を追加で仮定する.
このようなはめ込みの1径数族が存在することは, 変分を次のようにして構成できることからわかります.
変分の構成法
を曲面のはめ込みとする. をコンパクト台を持つ, に沿ったなめらかなベクトル場とする. が境界を持つ場合は, 上でを追加で仮定する. このとき, 十分小さなを取ると, に対して写像を
で定めたとき,がの変分であるようにできる.
こうして作った写像がはめ込みになることは, はめ込み全体の成す集合が写像空間の中で(適当な位相に関して)開集合になることから直ちにわかります([2]も参照のこと). 以下の折り畳みに証明を載せておきますが, 証明そのものよりも「変分がこのようにして構成できる」ことの方が重要ですので, 一旦この事実は認めて先に進んでもらって構いません.
変分の構成法の証明
十分小さな任意のに対して, がはめ込みになることを示せばよい. それには任意の点でが単射となることを示せばよい.
仮定よりははめ込みだから, 任意のに対しは単射な線形写像である. の台をとおく. の時はとなるから, 以下で考える.
いま, コンパクト集合上の単位接束
を考え, 上の関数をで定義すると, の単射性からは上の正値連続関数である. さらに, は接束のコンパクト部分集合だから, この上では最小値を持つ. このとき任意のおよびに対し,
が成り立つ.
いま, とおくと, 任意のに対し, .
そこで, とおくと, のとき,
となるので, . したがっては単射となり, がはめ込みになることがわかった.
第一変分公式
をの任意の変分とします. の周りの局所座標をとなるよう取っておきます. 示すべき公式を思い出しておきましょう.
変分した曲面の面積は
となります. とおくと, これは局所座標によらず大域的に定義できる関数ですから,
とできます. そこで, のパラメータに関する微分を計算します.
任意にを固定し, のにおける微分を考える.
行列式の定義より, を次対称群とすると,
となる. に注意してで微分すると,
一方, の定義からとなるから,
補題4より,
となります. いま, の周りの局所座標をとなるよう取っていたので,
最後の等式を得るために, となることを用いました.
さて, それ自体は曲面に沿ったベクトル場ですから, 接空間の分解にしたがって,
と分解しておきます. ではの正規直交基底になるので, に沿ったベクトル場に対する発散が
で与えられますから,
と計算されます. 前回も計算したように, 法成分の発散は
となります.
このことと発散定理により, 面積の変分は
と計算されます. これにより, 第一変分公式が証明されました. お疲れ様でした.
さて, 変分法の基本補題によれば,
がの任意性から成り立ちます. こうして, 次のような定義に至ります.
極小曲面
平均曲率が至る所であるような曲面を極小曲面と呼ぶ.
向き付けられない(より厳密には裏表のない(one-sided))曲面に対しては, 大域的な単位法ベクトル場の非存在性から今回のような変分計算はできません. ところが, どんな曲面にも局所的には単位法ベクトルは存在するので, 各点において平均曲率がという概念自体は意味を持ちます. そのためこの場合にも, 平均曲率がという条件を以って極小曲面を定義することができます.
おわりに
今回は面積汎函数の変分計算を行い, 極小曲面の概念を改めて定義しました. 今回の計算はそのまま高次元の場合にも一般化ができます. その場合にもやはり「平均曲率が」という条件で極小部分多様体を特徴づけることができます.
次回
は, 第一変分公式から導かれる極小曲面の幾つかの幾何学的な性質について紹介しようと思います.