全体集合 $U$ を固定し、$X\subseteq U$ とする。さらに、$\mathcal{F}\subseteq\mathcal{P}(X)$ を $X$ 上の集合系とする。
このとき、$\mathcal{F}$ の和集合を
$$
\bigcup \mathcal{F}:=\{x\in X\mid \exists A\in\mathcal{F}\ (x\in A)\}
$$
で定義する。
すなわち、$\bigcup\mathcal{F}$ は、$\mathcal{F}$ に属する少なくとも $1$ つの集合の元となるような $x\in X$ 全体の集合である。
同じ意味で
$$
\bigcup \mathcal{F}=\bigcup_{A\in\mathcal{F}} A
$$
とも書く。
全体集合 $U$ を固定し、$X\subseteq U$ とする。さらに、$\mathcal{F}\subseteq\mathcal{P}(X)$ を $X$ 上の集合系とする。
このとき、$\mathcal{F}$ の共通部分を
$$
\bigcap \mathcal{F}:=\{x\in X\mid \forall A\in\mathcal{F}\ (x\in A)\}
$$
で定義する。
すなわち、$\bigcap\mathcal{F}$ は、$\mathcal{F}$ に属するすべての集合に共通して属するような $x\in X$ 全体の集合である。
同じ意味で
$$
\bigcap \mathcal{F}=\bigcap_{A\in\mathcal{F}} A
$$
とも書く。
空集合族の共通部分の扱いには注意が必要である。
実際、共通部分を $U$ を台集合(その構造がのっている元の集合)として
$$
x\in\bigcap\mathcal{F}
\ \Leftrightarrow\
x\in U\ \land\ \forall A\in\mathcal{F}\ (x\in A)
$$
で定義すると、$\mathcal{F}=\varnothing$ のとき、空な領域にわたる全称命題は空虚に真であるから
$$
\bigcap\varnothing=U
$$
となる(この後で証明する)。
したがって、$X\subsetneq U$ かつ $\mathcal{F}=\varnothing$ とすると、
$$
\mathcal{F}\subseteq\mathcal{P}(X)
$$
であるにもかかわらず
$$
\bigcap\mathcal{F}=U\nsubseteq X
$$
となる。
このように、空集合族を許す場合に共通部分を $U$ を台集合として定義すると、
$\mathcal{P}(X)$ の元からなる集合族に対して共通部分をとっても、その結果が $X$ の部分集合になるとは限らない。
したがって、$\mathcal{P}(X)$ の範囲で閉じた形で議論したい場合には、共通部分を
$$
x\in\bigcap\mathcal{F}
\ \Leftrightarrow\
x\in X\ \land\ \forall A\in\mathcal{F}\ (x\in A)
$$
によって定義するか、あるいは空集合族を最初から除外しておくのが自然である。
全体集合 $U$ を固定し、$X\subseteq U$ とする。集合系 $\mathcal{F}\subseteq \mathcal{P}(X)$ について $\mathcal{F}=\varnothing$ ならば
$$
\bigcup \mathcal{F}=\varnothing
$$
が成り立つ。
集合系の和集合の定義より
$$
\bigcup \mathcal{F}=\{x\in X\mid \exists A\in\mathcal{F}\ (x\in A)\}
$$
である。
$ $
いま、$\mathcal{F}=\varnothing$ と仮定する。空集合の定義より、$\mathcal{F}$ には元が $1$ つも存在しない。
ゆえにこのとき、任意の $x\in X$ について
$$
\exists A\in\mathcal{F}\ (x\in A)
$$
は成立しない。実際、$\mathcal{F}=\varnothing$ なら
$$
\exists A\in\varnothing\ (x\in A)
$$
であるが、空集合には元がないため、「$A\in\varnothing$ であるような $A$」が存在しない。
ゆえに、任意の $x\in X$ について
$$
x\in \bigcup \mathcal{F}
$$
は成り立たない。すなわち、
$$
\forall x\in X\ (x\notin\bigcup\mathcal{F})
$$
である。したがって、$\bigcup \mathcal{F}$ は元を $1$ つも持たない集合であるから
$$
\bigcup \mathcal{F}=\varnothing
$$
である。
$$ \Box$$
より形式的には、存在命題 $\exists A\in \mathcal{F}\ (x\in A)$ は「ある $A$ が $\mathcal{F}$ に属し、かつ $x\in A$ が成り立つ」という意味であり、
$$
\exists A\ (A\in \mathcal{F}\land x\in A)
$$
と書ける。$\mathcal{F}=\varnothing$ のとき、空集合には元がないため、「$A\in\varnothing$ であるような $A$」が存在しない。
ゆえに、$A\in \varnothing$ は偽なので、連言 $A\in \mathcal{F}\land x\in A$ は常に偽となり、前述の存在命題は偽である。
- 詳しくはこちら
全体集合 $U$ を固定し、$X\subseteq U$ とする。集合系 $\mathcal{F}\subseteq \mathcal{P}(X)$ について $\mathcal{F}=\varnothing$ ならば
$$
\bigcap \varnothing=X
$$
が成り立つ。
$\mathcal{F}=\varnothing$ とする。このとき、共通部分の定義より
$$
\begin{align}
\bigcap \mathcal{F}
&=
\{x\in X\mid \forall A\in\mathcal{F}\ (x\in A)\}\\
&=
\{x\in X\mid \forall A\in\varnothing\ (x\in A)\}\cdots①\\
\end{align}
$$
である。
$ $
-以上より
$$
\bigcap \varnothing=X
$$
である。
$$ \Box$$
この結果は直観に反すると感じただろうか(´ω`)?
$ $
たとえば
$$
X=\{1,2,3\}
$$
とする。いま、集合族が
$$
\mathcal{F}_1=\{\{1,2\},\{2,3\}\}
$$
なら、$1$ と $2$ と $3$ のうち、両方に入っているのは $2$ だけなので
$$
\bigcap\mathcal{F}_1=\{2\}
$$
である。次に、条件を $1$ つ減らして
$$
\mathcal{F}_2=\{\{1,2\}\}
$$
とすると、今度は$1$つの集合しかないため「${1,2}$ に入っていること」だけが条件となるから
$$
\bigcap\mathcal{F}_2=\{1,2\}
$$
になる(直観的には、制約が無くなるため大きくなる)。
さらに条件を全部なくして
$$
\mathcal{F}_3=\varnothing
$$
とすると、満たすべき条件が $0$ 個になり、すると、$X$ の元は誰も落とされないので
$$
\bigcap\mathcal{F}_3=X=\{1,2,3\}
$$
である。これは「集合族が小さくなるほど、共通部分は大きくなりうる」という見方と一致する。
$ $
参考資料の例:Intersection (set theory) - Wikipedia の Nullary intersection。
全体集合 $U$ を固定する。集合系 $\mathcal{A}\subseteq\mathcal{P}(U)$ と 任意の $A\in\mathcal{A}$ に対し
$$
A\subseteq\bigcup\mathcal{A}
$$
が成り立つ。
$A\in\mathcal{A}$ とする。$A\subseteq\bigcup\mathcal{A}$ を示す。
部分集合の定義により、任意の $x\in U$ について
$$
x\in A\ \Rightarrow\ x\in\bigcup\mathcal{A}
$$
を示せば十分である。
$ $
そこで、任意に $x\in U$ をとり、$x\in A$ と仮定する。
仮定より、$A\in\mathcal{A}$ かつ $x\in A$ であるから、集合系の和集合の定義より
$$
x\in\bigcup\mathcal{A}
$$
である。ゆえに、任意の $x\in U$ について
$$
x\in A\ \Rightarrow\ x\in\bigcup\mathcal{A}
$$
が成り立つので、部分集合の定義より
$$
A\subseteq\bigcup\mathcal{A}
$$
である。
$$ \Box$$
全体集合 $U$ を固定する。集合系 $\mathcal{A}\subseteq\mathcal{P}(U)$ と任意の $A\in\mathcal{A}$ に対し
$$
\bigcap\mathcal{A}\subseteq A
$$
が成り立つ。
任意に $A\in\mathcal{A}$ をとる。$\bigcap\mathcal{A}\subseteq A$ を示す。
すなわち、部分集合の定義により、任意の $x\in U$ について
$$
x\in\bigcap\mathcal{A}\ \Rightarrow\ x\in A
$$
を示せば十分である。
$ $
そこで、任意に $x\in U$ をとり、$x\in\bigcap\mathcal{A}$ と仮定する。
集合系の共通部分の定義より
$$
x\in\bigcap\mathcal{A}\ \Leftrightarrow\ \forall E\in\mathcal{A}\ (x\in E)
$$
であるから、仮定($x\in\bigcap\mathcal{A}$)より
$$
\forall E\in\mathcal{A}\ (x\in E)
$$
が成り立つ。
ここで、$A\in\mathcal{A}$ であるから、上の全称命題において $E=A$ とおけば
$$
x\in A
$$
を得る(全称除去)。
したがって、任意の $x\in U$ について
$$
x\in\bigcap\mathcal{A}\ \Rightarrow\ x\in A
$$
が成り立つので、部分集合の定義より
$$
\bigcap\mathcal{A}\subseteq A
$$
である。
$$ \Box$$
なお、この命題は $\mathcal{A}=\varnothing$ の場合にも成り立つ。実際、このとき命題の主張は
$$
\forall A\in\varnothing\ (\bigcap\varnothing\subseteq A)
$$
となるが、これは空な領域にわたる全称命題であるから空虚に真である。実際、全称命題は
$$
\forall A\ (A\in\varnothing\Rightarrow \bigcap\varnothing\subseteq A)
$$
と同じ意味である。ところが、空集合の定義より、任意の $A$ について $A\in\varnothing$ は偽である。
したがって、任意の $A$ について
$$
A\in\varnothing\Rightarrow \bigcap\varnothing\subseteq A
$$
は真(空虚に真)である。ゆえに
$$
\forall A\in\varnothing\ (\bigcap\varnothing\subseteq A)
$$
は真である。