この記事は以前書いた記事『
三角形演算子を整理する
』の修正版です。
修正部分は以下です。
ご指摘ありがとうございました。
こんにちは。Nappleです。
三角形演算子って?という方は前回の記事「
三角形演算子について
」を参照ください。
前回の記事では思いついたことをとりあえず並べただけなので、この記事ではいくつかの観点から三角形演算子を整理してまとめていきたいと思います。
・定義の整理
・公式
・総和・総乗演算子との比較
・基本対称式との比較
・解と係数の関係
なお、今回は三角形演算子$\prodsum{}{}{}$及び超三角形演算子$\genprodsum{}{}{k}{}$についてのみ扱います。
逆三角形演算子$\Large \triangledown{}$は一旦しまいます。 常温保存
まずは復習を兼ねて、三角形演算子と超三角形演算子を以下のように再定義します。
数列$\{a_n\}$に対して、三角形演算子$\prodsum{}{}{}$を以下のように定義する。
\begin{eqnarray}
\prodsum{i=1}{n}{}{a_i}
&:=&a_1a_2\dots{}a_{n-1}+a_2\dots{}a_{n-1}a_n+\dots{}+a_1a_2\dots{}a_{n-2}a_n\\
&=&\gsum{i=1}{n}{\gprod{j\neq{}i}{}{a_j}}
\end{eqnarray}
数列$\{a_n\}$に対して、超三角形演算子$\genprodsum{}{}{k}{}$を以下のように定義する。
\begin{eqnarray}
\genprodsum{i=1}{n}{k}{a_i}
&:=&a_1a_2\dots{}a_k+a_2\dots{}a_ka_{k+1}+\dots{}+a_1a_2\dots{}a_{k-1}a_n\\
&=&\gsum{i=1}{n}{\gprod{j=i}{i+k}{a_{(j-1)\%n+1}}}
\end{eqnarray}
ただし、$x\%y$は$x$を$y$で割った余りを意味する。
なお、$\genprodsum{i=1}{n}{0}{a_i}=n $とする。
重要そうな定理だけをまとめておきます。
\begin{eqnarray} (1) \genprodsum{i=1}{n}{0}{a_i}&=&n \\ (2) \genprodsum{i=1}{n}{1}{a_i}&=&\sum_{i=1}^{n}{a_i} \\ (3) \genprodsum{i=1}{n}{n-1}{a_i}&=&\prodsum{i=1}{n}{a_i} \\ (4) \genprodsum{i=1}{n}{n}{a_i}&=&n\prod_{i=1}^{n}{a_i} \end{eqnarray}
定理1を見ると、超三角形演算子は総和・総乗の一般化であるとも考えられそうですね。
$k\geq0$、$\forall{i}, a_i\neq0$である数列$\{a_n\}$について
$$
\genprodsum{i=1}{n}{n+k}{a_i}=\prod_{i=1}^{n}{a_i}\cdot\genprodsum{i=1}{n}{k}{a_i}
$$
$$
\genprodsum{i=1}{n}{n-k}{a_i}=\prod_{i=1}^{n}{a_i}\cdot\genprodsum{i=1}{n}{k}{\frac{1}{a_i}}
$$
$\forall{i}, a_i\neq0$である数列$\{a_n\}$に関して、以下を満たす。
$$
\gsum{i=1}{n}{\frac{1}{a_i}} = \frac{\genprodsum{i=1}{n}{}{a_i}} {\gprod{i=1}{n}{a_i}}
$$
総和 | 三角形演算子 | 総乗 |
---|---|---|
$ \gsum{i=1}{n}{c} = nc $ | $ \genprodsum{i=1}{n}{k}{c} = nc^{k} $ | $ \gprod{i=1}{n}{c} = c^n $ |
$ \gsum{i=1}{n}{i} = \frac{1}{2}n(n-1) $ | $ \genprodsum{i=1}{n}{}{i} = n!\gsum{i=1}{n}{\frac{1}{i}} $ | $ \gprod{i=1}{n}{i} = n! $ |
$ \gsum{i=1}{n}{(a_i+b_i+\dots)} = \gsum{i=1}{n}{a_i} + \gsum{i=1}{n}{b_i} + \dots $ | $ ??? $ | $\rightarrow{}多項定理$ |
$ \gsum{i=1}{n}{\lambda{}a_i} = \lambda\gsum{i=1}{n}{a_i} $ | $ \genprodsum{i=1}{n}{k}{\lambda{}a_i} = {\lambda{}}^{k}\cdot\genprodsum{i=1}{n}{k}{a_i} $ | $ \gprod{i=1}{n}{\lambda{}a_i} = \lambda{}^n\gprod{i=1}{n}{a_i} $ |
$ \gsum{i=1}{n}{\frac{1}{a_i}} = \genprodsum{i=1}{n}{}{a_i} / {\gprod{i=1}{n}{a_i}} $ | $ \genprodsum{i=1}{n}{k}{\frac{1}{a_i}} = \genprodsum{i=1}{n}{n-k}{a_i} / \gprod{i=1}{n}{a_i} $ | $ \gprod{i=1}{n}{\frac{1}{a_i}} = {1}/{\gprod{i=1}{n}{a_i}}$ |
対称式とは任意の2変数を入れ替えても変化しない多項式のことです。
例えば$x^2+y^2$とか、$\frac{1}{x}+\frac{1}{y}+\frac{1}{z}$のようなものがあります。
それに対して、基本対称式とは$x+y$や$xy+yx+zx$のような、各変数の積とその和によって表される対称式のことを言います。詳しくは こちら などを参照してください。
すべての対称式は基本対称式を用いて表せることが知られています。
$x^2+y^2 = (x+y)^2 - 2xy$
$\frac{1}{x}+\frac{1}{y}+\frac{1}{z} = \frac{xy+yz+zx}{xyz}$
これは!三角形演算子と基本対称式はすごく似ている気がしますね。
もしや基本対象式は三角形演算子で表せるのでは?
早速$4$変数の場合の基本対象式でも確かめましょう。
(1)$a+b+c+d = \genprodsum{i=1}{4}{1}{(a,b,c,d)}$
(2)$ab+ac+ad+bc+bd+cd$
(3)$abc+bcd+cda+dab = \genprodsum{i=1}{4}{3}{(a,b,c,d)}$
(4)$abcd = \frac{1}{4}\genprodsum{i=1}{4}{4}{(a,b,c,d)}$
???
残念ながら式(2)は三角形演算子で表せないですね。
そもそも、基本対称式を得る方法はいくつかありますが、簡単なのが組み合わせを考える方法です。
4変数の式であれば、
$a,b,c,d$から
・$1$つ選ぶ方法は${a,b,c,d}$の$_4C_1=4$通り
・$2$つ選ぶ方法は${ab,bc,cd,da,ac,bd}$の$_4C_2=6$通り
・$3$つ選ぶ方法は${abc,bcd,cda,dab}$の$_4C_3=4$通り
・$2$つ選ぶ方法は${abcd}$の$_4C_4=1$通り
として、各要素の和を取れば基本対称式になります。
三角形演算子は隣り合う要素同士を選ぶので$k\geq4$では明らかに基本対象式と異なりますね。
一応まとめておきましょう。
$n\leq3$ のとき $n$変数の基本対称式に関して、$k$次の式は$\genprodsum{i=1}{n}{k}{\boldsymbol{x}}$で表せる。
いろいろすれば三角形演算子だけで対称式を表す方法も見つかりそうですが今回は置いておきます。
高校数学でよく使う解と係数の関係(根と係数の関係)ですが、これにもまた三角形演算子が現れます。
$n\leq3$のとき$n$次方程式$a_nx^n+a_{n-1}x^{n-1}+\cdots{}+a_1x+a_0=0$が$n$個の解${\alpha_1,\dots{},\alpha_n}$を持つとき、係数$a_k$($k \neq n$)と解の間には以下の関係が成り立つ。
\begin{eqnarray}
k \neq 0 : \frac{a_k}{a_n} &=& (-1)^{n-k}\cdot\genprodsum{i=0}{n}{n-k}{\alpha_i} \\
k = 0 : \frac{a_k}{a_n} &=& \frac{(-1)^{n-k}}{n} \cdot\genprodsum{i=0}{n}{n-k}{\alpha_i}
\end{eqnarray}
まあ定理4から当たり前なんですけどね。
三角形演算子についての整理は以上です。
応用とか、また思いついたときに記事にするかもしれないです。