複素数の虚数単位を増やして拡張することから、テンソル積を導入します。
虚数単位を増やす
複素数の虚数単位についてが成り立ちます。ここに、同じ性質を満たす新しい虚数単位を導入します。ただし、で、とは可換とします。
積を計算します。(は実数)
この計算結果から、によって生成される数は
の形で表せることが分かります。このような数の体系を双複素数wiki-bc (bicomplex numberwiki-bc-en) と呼びます。
- はの形では表せないことから、三元数ではありません。
- 双複素数はであることから、となる四元数wiki-qとは異なります。
零因子の存在
でないつの双複素数の積がになる場合があります。
のように、ではないのに積がになる数を零因子wiki-0dと呼びます。
零因子は逆数を持ちません。なぜなら、に何かを掛けてになると仮定すれば、その両辺にを掛けることで矛盾が生じるためです。
これはがでないという前提に矛盾します。
もう少し式変形を進めるととなって、前提に矛盾します。
テンソル積による構成
非可換な積の演算子を導入して、複素数の積を計算します。(は実数)
これを双複素数と比較します。
実部の基底としてを明示し、係数と基底 を分離します。
でも係数と基底を分離して、係数が括り出せるという計算規則を追加します。
以下の対応関係を認めれば、双複素数はによる計算と一致します。
このように
- 因子に含まれる基底は非可換
- 因子に含まれる実成分(係数)は可換で、括り出せる
という規則を持った積の演算子を導入することで、双複素数を構成することができます。このようなによる積をテンソル積wiki-tpと呼びます。
双線形性
このような性質を双線形性と呼びます。テンソル積と、2つの引数を取る双線形関数を比較します。
分配法則も双線形性に含まれます。
テンソル積による構成によって「複素数複素数」という構造が明確となり、これが双複素数という名前の由来となっています。
- 双複素数でのはに対応します。言い換えると、双複素数での基底の区別が、テンソル積の因子の非可換性として現れます。
- 双複素数ではですが、テンソル積では両辺ともとなるため区別がありません。言い換えると、双複素数での可換性が、テンソル積では同一な表現として現れます。
テンソル積の積
双複素数の積を、テンソル積で書き直します。
対応関係の観察から、左因子は左因子と、右因子は右因子と積を計算すると定義します。
計算例
冒頭に挙げた双複素数での計算例をテンソル積で書き直します。
双複素数の計算結果と一致しました。
まとめ
テンソル積によって代数系を拡張することができます。いくつか例を挙げます。
テンソル積の応用として量子コンピューターがあります。7shi-qc17shi-qc2