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積分問題集の解説(中級)

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\begin{eqnarray} \int_{0}^{π/2}\tan x\arctan\frac{a\sin 2x}{1-a\cos 2x}dx=\frac{π}{2}\ln(1+a) (|a|<1) \end{eqnarray}

まず被積分関数をaについて微分してみましょう
\begin{eqnarray} \frac{d}{da}\tan x\arctan\frac{a\sin 2x}{1-a\cos 2x} =\frac{2\sin^2 x}{(1-a)^2+4a\sin^2x} \end{eqnarray}
結構簡単な形になりました.
ここから進めていきましょう.

\begin{eqnarray} \int_{0}^{π/2}\tan x\arctan\frac{a\sin 2x}{1-a\cos 2x}dx&=&\int_{0}^{a}\int_{0}^{π/2} \frac{2\sin^2 x}{(1-a)^2+4a\sin^2x}dxda\\ &=&\int_{0}^{a}\int_{0}^{\infty} \frac{2}{(1-a)^2(1+x^2)+4a}\frac{dxda}{1+x^2}\\ &=&\int_{0}^{a}\frac{1}{2a}\int_{0}^{\infty}\frac{1}{1+x^2}-\frac{1}{\left(\frac{1+a}{1-a}\right)^2+x^2}dxda \end{eqnarray}
ここで第二項について
$x→\frac{1+a}{1-a}\tan x$
と置換しますがa≠-1,1である必要があります.
また|a|>1の場合と|a|<1の場合で正負が変わるので積分区間が変わってしまいます.
本来はここで場合分けが必要なのですが題意は|a|<1の範囲なので積分区間は$[0,\infty]$で大丈夫です.
先ほどの計算から始めます.
\begin{eqnarray} &=&\int_{0}^{a}\frac{π}{4a}\left(1-\frac{1-a}{1+a}\right)da\\ &=&\frac{π}{2}\int_{0}^{a}\frac{da}{1+a}\\ &=&\frac{π}{2}\ln(1+a) \end{eqnarray}

余談としてarctanの関数ですが次のようなフーリエ級数表示を持ちます.
\begin{eqnarray} \arctan\frac{a\sin x}{1-a\cos x}=\sum_{n>0}\frac{a^{n}}{n}\sin nx \end{eqnarray}
こういった表示はかなり有用なのでたしか何かこういう表示あったなっていう感じで覚えていれば大丈夫です.

\begin{eqnarray} \int_{0}^{\infty}\frac{\ln(a^2+x^2)}{1+x^2}dx=π\ln(1+a) (a≥0) \end{eqnarray}

よくある問題な気がします.
1問目と解が似ていますが直接的な関係はないように思います.
これはよく1問目と同じようにFeynman's trickを用いられているのですがそれでは面白さに欠けます.
今回はlnで使える場合がある特殊な方法を使って解きます.
まずlnは次のような方法でも出せる事を思い出しましょう.
\begin{eqnarray} \frac{d}{ds}(f(x))^s=(f(x))^s\ln f(x) \end{eqnarray}
これを用いれば今回何を求めれば言いかがわかります.
次を求めてsについて微分しましょう.

\begin{eqnarray} \int_{0}^{\infty}\frac{\cos(s\arctan\frac{x}{a})}{(a^2+x^2)^{s/2}}\frac{dx}{1+x^2} \end{eqnarray}

見た目すごいですがそこまで難しいものではないんですよね.
cosの部分ですが次のように書けます.
$\Re\frac{1}{(a+ix)^s}$
です.
$\Re$とは複素数の実部のことです.普通はReと書きますがtexで打つとRみたいな字になるんですよね.
ではまずこの問題の解を出しましょう.

\begin{eqnarray} \Re\int_{0}^{\infty}\frac{1}{(a+ix)}\frac{dx}{1+x^2}&=&\Re\frac{1}{Γ(s)}\int_{0}^{\infty}\frac{dx}{1+x^2}\int_{0}^{\infty}t^{s-1}e^{-(a+ix)t}dtdx \end{eqnarray}
もうここで何してるんだと思うかもしれません.
ガンマ関数について次のような積分が成り立ちます.
\begin{eqnarray} \int_{0}^{\infty}t^{s-1}e^{-zt}dt=\frac{Γ(s)}{z^s} (\Re z>0) \end{eqnarray}
これから$\frac{1}{z^s}$を積分になおしたという訳です.
$\Re z>0$とありますがこれは大事です.この範囲外では感覚でもわかると思いますが収束しません.
なので先ほどの1番最初の変形もa>0が重要です.(a=0でも収束する場合があります.(sin,cosのメリン変換))
先ほどの計算から進めます.
\begin{eqnarray} &=&\frac{1}{Γ(s)}\int_{0}^{\infty}t^{s-1}e^{-at}\int_{0}^{\infty}\frac{\cos tx}{1+x^2}dxdt\\ &=&\frac{π}{2Γ(s)}\int_{0}^{\infty} t^{s-1}e^{-t(1+a)}dt\\ &=&\frac{π}{2(1+a)^s} \end{eqnarray}

なんとこんなにも綺麗になるんですね.
あとはsについて微分することで題意を示しましょう.

先ほどの解についてsで微分しs=0を代入する.
\begin{eqnarray} \int_{0}^{\infty}\Re\frac{d}{ds}\frac{1}{(a+ix)^s}\frac{dx}{1+x^2}&=&\frac{d}{ds}\frac{π}{2(1+a)^s}\\ \end{eqnarray}
\begin{eqnarray} \int_{0}^{\infty}\frac{\ln(a^2+x^2)}{1+x^2}dx=π\ln(1+a) \end{eqnarray}

(補題1は留数定理でも示せます)

\begin{eqnarray} \int_{0}^{\infty}\frac{\sin ax\sinh x}{\cosh^2x}dx=\frac{πa}{2\cosh\frac{πa}{2}} \end{eqnarray}

これは部分積分をすると
$\int_{0}^{\infty}\frac{\cos ax}{\cosh x}dx$という
簡単な形になります.
また次のような積分を考えるのもありです.

\begin{eqnarray} \int_{0}^{\infty}\frac{\sin ax}{\cosh (x+b)}dx \end{eqnarray}

ですが計算してみたところ途中から計算が同じになったので前者で解いていきましょう.

\begin{eqnarray} \int_{0}^{\infty}\frac{\sin ax\sinh x}{\cosh^2 x}dx&=&a\int_{0}^{\infty}\frac{\cos ax}{\cosh x}dx\\ &=&2a\int_{0}^{\infty}\sum_{n≥0}(-1)^n \cos ax e^{-(2n+1)x}dx\\ &=&2a\sum_{n≥0}\frac{(-1)^n(2n+1)}{(2n+1)^2+a^2} \end{eqnarray}
変な級数が出てきました.
これはかなり有名な級数で
次が成り立ちます
\begin{eqnarray} \sum_{n>0}\frac{n\sin nx}{n^2+a^2}=\frac{π\sinh a(π-x)}{2\sinh aπ} \end{eqnarray}
$x→π/2$とすれば偶数項では0,奇数項ではsinが$(-1)^n$となるので求めたい級数になります.
先ほどの計算に戻ります.
\begin{eqnarray} &=&\frac{πa\sinh aπ/2}{\sinh aπ}\\ &=&\frac{πa}{2\cosh \frac{πa}{2}} \end{eqnarray}

特殊な級数につながる積分といった感じでしたね.

\begin{eqnarray} \int_{0}^{1}\sin\pi x\ln Γ(x)dx=\frac{1}{π}(\ln\frac{π}{2}+1) \end{eqnarray}

対数ガンマ関数を含む積分です.
こういった積分は相反公式用いるとうまくいく場合があり今回がまさにそれです.
kpをすることにより$\ln\sin x$の積分にします.
今回は まぐな さんが解説を送ってくれたのでそれを使わせてもらいます



また,余談として対数ガンマ関数のフーリエ級数展開を用いることで簡単に解けます.
この場合知識ゲーになってしまうのであまり面白みはないかもしれませんが対数ガンマ関数同士の積の積分などで役立ちます.

\begin{eqnarray} \int_{0}^{1}\frac{1+x^2}{\sqrt{1+x^4}+x^2}\ln xdx \end{eqnarray}

申し訳ないことに右辺の値が一致していないことをwolframで確認しました.
僕は当時メリン変換を微分しそれを[0,1],[1,∞)に分け後者を逆数の置換により出したのですが,この変形ができなかったのでこの問題は無しということにします.
本当に申し訳ないです…

\begin{eqnarray} \int_{0}^{\infty}\frac{\tanh x}{x}e^{-4ax}dx=\ln\frac{2^{4a-2}Γ(a+1)Γ(a)^3}{Γ(2a)^2π} \end{eqnarray}

今回は
Feynman's trick
を使っていきます!
次のような物です

\begin{eqnarray} f(b)-f(a)=\int_{a}^{b}f'(x)dx \end{eqnarray}
です.
では今回どのように使うかというと$\frac{tanh x}{x}$部分において次のような変形をします.
\begin{eqnarray} \frac{\tanh x}{x}=\frac{1}{1+e^{-2x}}\frac{1-e^{-2x}}{x}=\frac{1}{1+e^{-2x}}\int_{0}^{2}e^{-tx}dt \end{eqnarray}
早速解いていきましょう.

\begin{eqnarray} \int_{0}^{\infty}\frac{\tanh x}{x}e^{-4ax}dx&=&\int_{0}^{2}\int_{0}^{\infty}\frac{e^{-x(4a+t)}}{1+e^{-2x}}dxdt\\ &=&\int_{0}^{2}\sum_{n≥0}(-1)^n\int_{0}^{\infty}e^{-x(4a+t+2n)}dxdt\\ &=&\int_{0}^{2}\sum_{n≥0}\frac{(-1)^n}{4a+t+2n}dt\\ &=&\int_{0}^{2}\sum_{n≥0}\frac{1}{4a+4n+t}-\frac{1}{4a+4n+2+t}dt\\ &=&\frac{1}{4}\int_{0}^{2}ψ(\frac{t}{4}+a+\frac{1}{2})-ψ(\frac{t}{4}+a)dt\\ &=&\ln\frac{Γ(a+1)Γ(a)}{Γ(a+\frac{1}{2})^2} \end{eqnarray}

最後の式について次の等式を用いる事で題意と一致することがわかります.
\begin{eqnarray} Γ(z)Γ(z+\frac{1}{2})=Γ(2z)2^{1-2z}\sqrt{π} \end{eqnarray}
Feynman's trickは他にも多くの積分で有効なので使えるようになっておきたいですね.

\begin{eqnarray} \int_{0}^{\infty}\frac{dx}{(1+z\cosh^2 x)^s}=\frac{2^{2s-2}Γ(s)^2}{Γ(2s)(1+z)^s} F\left[\begin{array} ss,\frac{1}{2}\\s+\frac{1}{2}\end{array};\frac{1}{1+z} \right]\end{eqnarray}

これは超幾何級数と積分の関係ですね.
まず次を示します.

\begin{eqnarray} F\left[\begin{array} aa,b\\c \end{array};z\right]=\frac{2Γ(a)Γ(c-a)}{z^bΓ(c)}\int_{0}^{\infty}\frac{\sinh^{2a-1}x}{\cosh^{2c-2b-1}x}\frac{dx}{(1+\frac{1-z}{z}\cosh^2x)} \end{eqnarray}

超幾何級数の積分表示から進めていきます.
この表示について適切な値を代入していけば題意を示せます.

\begin{eqnarray} \int_{0}^{1}t^{a-1}(1-t)^{c-a-1}(1-zt)^{-b}dt&=&\int_{0}^{\infty} \frac{t^{a-1}}{(1+t)^{c-b}}\frac{dt}{1+(1-z)t} (t→\frac{t}{1+t})\\ &=&\frac{2}{z^b}\int_{0}^{\infty}\frac{\sinh^{2a-1}t}{\cosh^{2c-2b-1}t}\frac{dt}{(1+\frac{1-z}{z}\cosh^2t)^b} (t→\sinh^2t) \end{eqnarray}
\begin{eqnarray} a→1/2,b→s,c→s+1/2,z→1/(1+z) \end{eqnarray}
として題意を得る

こういった積分を超幾何級数に直すというのはかなり使える手法です.僕は過去にこの記事で使ったことがあります.

積分botの問題を解いてみた2
https://mathlog.info/articles/HUyUx8vMnOCiBc2N0yrx

\begin{eqnarray} \int_{-\infty}^{\infty}\frac{\sin x}{\prod_{k=0}^{n}(x+k)}dx=\frac{2^n}{n!}π \end{eqnarray}

次の性質を使います.
\begin{eqnarray} \frac{Γ(x)}{Γ(x)\prod_{k=0}^{n}(x+k)}&=&\frac{Γ(x)}{Γ(x+n+1)}\\&=&\frac{1}{n!}\int_{0}^{1}t^{x-1}(1-t)^ndt\\ &=&\frac{1}{n!}\sum_{k=0}^{n} \frac{(-1)^k}{x+k}\binom{n}{k} \end{eqnarray}
いわゆる部分分数分解です.
早速解きましょう.

\begin{eqnarray} \int_{-\infty}^{\infty}\frac{\sin x}{\prod_{k=0}^{n}(x+k)}&=&\frac{1}{n!}\int_{-\infty}^{\infty}\sum_{k=0}^{n}\binom{n}{k}(-1)^k\frac{\sin x}{x+k}dx\\ &=&\frac{π}{n!}\sum_{k=0}^{n}\binom{n}{k}(-1)^k\\ &=&\frac{π}{n!}2^n \end{eqnarray}

これはガンマ関数を含む積分でした.
他にもガンマ関数を含む積分は湧水さんがいくつか紹介しています.
気になる方は解いてみるといいかもしれません.

ガンマ関数を含む積分

\begin{eqnarray} \int_{0}^{\infty}\frac{\sin x}{x}\prod_{k=1}^{n}\frac{\sin a_kx}{a_kx}dx=\frac{π}{2} (a_k>0,\sum_{k=1}^{n}a_k<1) \end{eqnarray}

ボールウェイン積分です.
調べれば証明方法が出てきますが示してみましょう.
先ず次を示します.

\begin{eqnarray}\int_{0}^{\infty}\frac{\sin x}{x}\prod_{k=1}^{n}\cos t_kxdx=\frac{π}{2} \end{eqnarray}

$t_k$の条件は題意と同じです.
今回は数学的帰納法を用いて示していきます.

\begin{eqnarray} n=1の時,\\ \int_{0}^{\infty}\frac{\sin x}{x}\cos t_1xdx&=&\int_{0}^{\infty}\frac{\sin(1+t_1)x+\sin(1-t_1)x}{2x}dx\\ &=&\frac{π}{2} \end{eqnarray}
ここで$t_1$は対称性と解が0にならないために$0< t_1<1$となります.
n=mで成り立つと仮定
n=m+1で成り立つことを示す
\begin{eqnarray} \int_{0}^{\infty}\frac{\sin x\cos t_{m+1}}{x}\prod_{k=1}^{n}\cos t_kxdx&=&\int_{0}^{\infty}\frac{\sin(1+t_{m+1})x+\sin(1-t_{m+1})x}{2x}\prod_{k=1}^{m}\cos t_kxdx\\ &=&\int_{0}^{\infty}\frac{\sin x}{2x}\left(\prod_{k=1}^{m}\cos \frac{t_k}{1+t_{m+1}}x+\prod_{k=1}^{m}\cos \frac{t_k}{1-t_{m+1}}x\right)dx\\ &=&\frac{π}{2} \end{eqnarray}
置換する際,条件について以下のように帰納法が使える
\begin{eqnarray} \sum_{k=1}^{m}\frac{t_k}{1-t_{m+1}}<1\\ ⇒\sum_{k=1}^{m+1}t_k<1 \end{eqnarray}
最後に今回得た結果を$t_k$についてそれぞれ条件内の範囲$[0,a_k]$で積分する事で題意を示せた.

初級の解説にもありましたが,有限積入りの積分などは帰納法が使える可能性があるのでそういった事を考えるのも大事かもしれませんね.

\begin{eqnarray} \int_{0}^{1}\frac{\ln^n x\ln^m(1-x)}{x(1-x)}dx= n!m!(-1)^{n+m}(ζ(\{1\}^m,n+1)+ζ(\{1\}^{m-1},n+2)) \end{eqnarray}

多重ゼータ値ですね.
シャッフル積を用います.

\begin{eqnarray} \int_{0}^{1}\frac{\ln^nx\ln^m(1-x)}{x(1-x)}dx&=&m!(-1)^m\int_{0}^{1}\frac{\ln^nx}{x(1-x)}\int_{0< t_1<…t_m< x}\frac{1}{(1-t_1)…(1-t_m)}dt_1…dt_mdx\\ &=&m!\sum_{k_1,k_2…k_{m+1}≥0} \int_{0}^{1}x^{k_{m+1}-1}\ln^nx\int_{0< t_1<…< t_m< x}t_1^{k_1}…t_m^{k_m}dt_1…dt_mdx\\ &=&m!(-1)^m\sum_{k_{m+1}≥k_m>…>0}\frac{1}{k_1…k_m}\int_{0}^{1}x^{k_{m+1}-1}\ln^nxdx\\ &=&m!n!(-1)^{m+n}\sum_{k_{m+1}≥k_m>…>k_1>0}\frac{1}{k_1…k_mk_{m+1}^{n+1}}\\ &=&m!n!(-1)^{m+n}(ζ(\{1\}^m,n+1)+ζ(\{1\}^{m-1},n+2)) \end{eqnarray}

こんな感じでした.
かなり難しくなってきましたね.
上級では更に面白い話し出来ると思っています!

投稿日:115
更新日:212
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