9
大学数学基礎解説
文献あり

数理生物学入門(1)〜個体数〜

1084
0

目次

・はじめに
・準備
・内容
・最後に

はじめに

どうも、色数です。
今回から数理生物学入門というシリーズを書いていこうと思います。
自分で学びながら書いていくので不備もあると思いますが、よろしければご覧ください。

準備

入門なのでここでは超簡単な微分方程式しか登場しません(させません)
なので基本的なものが解ければ十分です。

内容

微生物の増殖

微生物が時間が経つにつれ倍々になって増えていくことは習ったと思います。この事象を数学を使って記述してみましょう。
個体数をx,時間をtとします。
このとき個体数の増加速度はdxdtと表せます。(前述よりxtの関数なので)
どの個体も同じ環境にいるとすると(同じでないと増加速度が変化するため)
dxdt=mxmは定数
となります。これは増加速度がそのときの個体数に比例するためです。
1番最初の個体数をx0とすると、つまりt=0での個体数をx0とするとこの方程式の解は
x(t)=x0emt
とわかります。わからない方は上の式を微分してみてください。
ちなみにこのmのことをマルサス係数というみたいです。

いつまでも増殖し続けない場合

上のモデルは永遠と指数関数的に増加しますがこれはあまり現実的ではありません。
簡単にわかりますが食料は有限ですし、老廃物が堆積していくためですね。
では上の式のどこがいけないのでしょうか?

それはmを定数としてしまっているためですね。
この問題を解消するためにmを個体数xの増加とともに減少する関数m(x)としてみましょう。
例えばm(x)=r(1xK)とおきましょう。
こうするとxが小さいときはrに近くxKに近づいていくと0になります。(m=0となることはつまり増加が止まることを意味します)
このrを内的自然増加率なんていうみたいです。
すると微分方程式は
dxdt=rx(1xK)
となります。これが有名なロジスティック方程式です。
この方程式の解は
x(t)=K1+(Kx01)ertとなります。
この解が前提を満たしていることは各自Desmosなどで確認してみてください。
ここでのKは最大限維持することのできる個体数なので環境収容力といいます。
ちなみに最初からx=K,0であれば個体数は変化しません。
この状態を平衡状態といいます。
平衡状態はdxdt=0という式から得ることができます。
しかしこの2つは大きく異なりx=K安定な平衡状態、x=0不安定な平衡状態といいます。
これはx=KKから少しだけずれてもすぐにKになるがx=0は少しでも増えると時間とともにx=0から離れてしまうことからこのような名前がついているらしいです。

種関関係を考える場合

同じ物質を食料とする種関ではまれに競争がおこり様々な面で負の影響を及ぼします。[2]ではモンシロチョウとコナガが例に挙げられています。
このような種関での競争は「消費型」、「干渉型」にわけることができます。
消費型競争とはその名の通りどちらかの資源を消費することにより他方が利用できる資源が減ってしまうことを指します。
干渉型競争とはナワバリなどを直接取り合うような競争を指します。
また上のどちらとも違う、間接的に負の影響を及ぼす競争をHolt&Lawtonは見かけの競争と呼んだらしいです。
ここで上で考えた一種のみの場合のロジスティック方程式を思い出してみましょう。
種A、種Bの個体数をそれぞれx1,x2、環境収容力をK1,K2、内的自然増加率をr1,r2とします。
競争相手がいなければ
dx1dt=r1x1(1x1K1)

dx2dt=r2x2(1x2K2)…(1)

と、相手からの負の影響を受けなければならないのでした。
そこでその大きさを表す競争係数と呼ばれる定数αを導入します。
αAB,αBAはそれぞれ種Bの一個体が種Aを減らす割合と種Aの一個体が種Bを減らす割合としています。
種A,種Bの増加率にはそれぞれαAB,αBAで表される負の効果が加わります。
つまり、種A,種Bの環境収容力に対する減少はそれぞれ(x1+αABx2),(x2+αBAx1)となります。
これを(1)に代入すると
dx1dt=r1x1(1x1+αABx2K1)

dx2dt=r2x2(1x2+αBAx1K2)
という解を得ます。
これをロトカ-ヴォルテラの競争方程式といいます。
上の式の平衡状態を示す式を(ゼロ成長の)アイソクラインと呼びます。
アイソクラインとは個体群の増加と減少が釣り合う点の集合を言うらしいです。

食う食われるや寄生を考える場合

捕食に関する関係は世代が連続している種を対象としたロトカ-ヴォルテラモデルと世代が離れている種を対象としたニコルソン-ベイリーモデルという二つの方面から研究されてきたようです。

ロトカ-ヴォルテラモデル

まず2つの仮定を行います
①捕食者がいないときの被食者は指数関数的に増加し被食者がいないときの捕食者は指数関数的に減少するとする。
被食者と捕食者の個体数をそれぞれN,P、被食者の内的自然増加率をr1、捕食者の死亡率(内的自然死亡率)をr2と表すと
dNdt=r1N

dPdt=r2P
(捕食者は減っていくのでマイナスがつくのですね)
②被食数は二者の遭遇確率に依存し(個体数の積NPに比例)、遭遇したときに捕食される確率をa1とすると被食者の増加率はa1NPだけ減少する。
一方捕食者は捕食した量に依存して増加すると考えればNPに比例しその増加率をa2とすると捕食者の増加率はa2NPとなる。

以上よりそれぞれの増加率は
dNdt=r1Na1NP

dPdt=r2P+a2NP
と表すことができます。
これがロトカ-ヴォルテラモデルです。
それぞれのアイソクラインを求めてみます。
dNdt=0,dPdt=0より平衡状態での被食者と捕食者の個体数は
P=r1a1,N=r2a2

ニコルソン-ベイリーモデル

相手がいないときに寄主(H)と捕食寄生者(P)の個体数は指数関数的に増加するとき、それぞれの内的自然増加率をr1,r2とする。
時間t+1での両者の個体数は
Ht+1=r1Ht
Pt+1=r2Pt
時間区間(t,t+1)で寄主が寄生を逃れる確率関数をf(Ht,Pt)とすると、t+1での寄主の個体数はr1Htと寄生を逃れた個体数f(Ht,Pt)の積、捕食寄生者の個体数はr2Ptと寄生された個体数1f(Ht,Pt)の積で表されます。
Ht+1=r1Htf(Ht,Pt)
Pt+1=r2Pt(1f(Ht,Pt))
単位時間あたりにNeの寄生が起こるとすると、寄主を発見する確率(a)は寄生数と寄主数の比で定義できます。
寄生総数は捕食寄生者1個体あたりの寄主発見率と捕食寄生者数の積であるためNe=aPtHtとなります。
aを粗寄主発見率、捕食寄生者の数をかけたaPtを純寄主発見率とします。
ここで寄生に起こるとしfをポアソン分布の0次項に比例するとします。ポアソン分布については こちら をご覧ください。
そうすると寄生を逃れる確率は
f(Ht,Pt)=eNeHt
これを先ほどの式に代入すると
f(Ht,Pt)=eaPt
となりこれらをさらに最初の式に代入すると
Ht+1=r1HteaPt

Pt+1=r2Ht(1eaPt)
を得ます。
ちなみにこの式ではいずれ両者ともに絶滅してしまいますが、現実ではそうではありません。
なので実際には空間的要素も同時に考えられているようです。

最後に(裏話)

こんな感じで短い記事をいくつも書いていきます。
数理生物学は本当にこれからもどんどん発展していくと思うので興味のある方は今のうちに勉強していくといいでしょう。
個人的にニコルソン-ベイリーモデルでどのように確率を使っているのか気になっていたので満足です。
数理生物学入門(2)

と、ここからはこの記事の裏話的なものを書きます。
実はこの記事はとある研究センターのとある方に僕が個人的に連絡をとったところ、なんとそこの方から本を貸していただけることになりようやく書くことができるようになりました。
改めてありがとうございました。
また、本を借りたのは中3後期でのことでその当時は忙しすぎたため手がつけられていませんでした。そんなときなぜか伊計島セミナーに参加できちゃってその千葉先生の講義で微分方程式の話や数理の世界の話を聞くことができたことでモチベーションができ今改めて書きことができています。
本当に感謝しかないです。

参考文献

[1]
巌佐 庸, 生命の数理
[2]
藤崎憲治、大串隆之、宮竹貴久、松浦健二、松村正哉, 昆虫生態学
投稿日:2024413
更新日:2024417
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

色数
色数
188
40939

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中
  1. 目次
  2. はじめに
  3. 準備
  4. 内容
  5. 微生物の増殖
  6. いつまでも増殖し続けない場合
  7. 種関関係を考える場合
  8. 食う食われるや寄生を考える場合
  9. 最後に(裏話)
  10. 参考文献