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現代数学解説
文献あり

素イデアルの分解法則2:デデキント・クンマーの定理

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はじめに

 この記事では 前回の記事 に引き続き素イデアルの分解法則に関する理論を紹介していきます。
 今回はデデキント・クンマーの定理
f(x)φ1(x)e1φ2(x)e2φr(x)er(modp)pB=q1e1q2e2qrer
について解説していきます。

 Aをデデキント環、Kをその分数体、LKの有限次拡大、BLにおけるAの整閉包とする。
 このような状況設定のことをAKLB setupあるいは単にAKLBと言うことにする。

補題

 本題に入っていく前にまず剰余環に関する基本的な事実を二つ紹介しておく。

 可換環RとそのイデアルI,Jに対し
(R/I)/J(R/I)(R/J)/I(R/J)(R/(I+J))
が成り立つ。

 自然な準同型R/I,R/JR/(I+J)に対し準同型定理を考えることでわかる。

イデアルの対応定理

 可換環RとそのイデアルIに対し自然な準同型RR/Iは全単射
{J:I を含む R のイデアル}{J:R/Iのイデアル}
を与える。またこの写像は包含関係や極大イデアル、素イデアルなどの性質を保つ。

 一つ一つの主張を地道に確かめていくだけなので省略。

デデキント・クンマーの定理

導手

 可換環の拡大S/RにおいてRに含まれるSのイデアルであって最大のもの
c={xRxSR}
SにおけるR導手(conductor)と言う。

 AKLBにおいてL/Kを分離拡大とし、L=K(θ)なるθBを取る。またθの最小多項式をfA[x]A[θ]Bにおける導手をFとおく。
 このときAの素イデアルpFと互いに素(つまり1p+F)であれば
B/pBA[θ]/pA[θ]κ[x]/f(x)κ[x]
が成り立つ。ただしκ=A/pとおいた。

 一つ目の同型については自然な準同型
ϕ:A[θ]B/pB
を考えたとき、A[θ]+pB=Bよりこれは全射であり、また
Kerϕ=(p+F)KerϕpA[θ]+F(pB)=pA[θ]
からKerϕ=pA[θ]が成り立つことに注意するとわかる。
 二つ目の同型についてはA[θ]A/f(x)Aに注意すると補題7からわかる。

デデキント・クンマーの定理

 f(A/p)[x]において
f(x)φ1(x)e1φ2(x)e2φr(x)er(modp)
(φiA[x]:モニック)と既約分解したとき
qi=φi(θ)B+pB
Bの素イデアルであり
pB=q1e1q2e2qrer
が成り立つ。またqiの惰性次数はfi=degφiと求まる。

 いま準同型
BB/pB=κ[x]/f(x)κ[x]
によるイデアルの対応を考えると、κ[x]/f(x)κ[x]の素イデアル(φi(x))Bの素イデアルqi=φi(θ)B+pBを与え、その相対次数は
fi=dimκ(B/qi)=dimκ(κ[x]/φi(x)κ[x])=degφi
と求まる。
 またq1e1q2e2qrerκ[x]/f(x)κ[x]における像は0となることから
q1e1q2e2qrerpB
が成り立つのでpBq1e1q2e2qrerを割り切る、特に
pB=q1e1q2e2qrer(erer)
と素イデアル分解でき、 基本等式 およびfi=degφiから
[L:K]=i=1reifii=1reifi=degf(x)=[L:K]
が成り立つことに注意するとei=eiを得る。

デデキントの判別定理

 ついでにデデキント・クンマーの定理を用いてデデキントの判別定理の特別な場合を示しておこう。

 AKLBにおいてL/Kを分離拡大とし、任意にL=K(θ)なるθBを取る。
 このとき判別式
d=d(1,θ,θ2,,θn1)
を割り切らないAの素イデアルpは不分岐である。
 特に不分岐な素イデアルは高々有限個しか存在しない。

  この記事 の命題16の証明から
dBA[θ]
が成り立っていたのでBにおけるA[θ]の導手Fdを割り切る。特にpFと互いに素となるのでデデキント・クンマーの定理が適用できる。
 いまθの最小多項式をfA[x]とおくと、f(A/p)[x]における判別式d
dd0(modp)
を満たすのでf(A/p)[x]において分離的となる。したがってp
pB=q1q2qr
と分解される。
 また補題9の証明からA[θ]B/pBは全射であったので剰余体の拡大(B/qi)/(A/p)は分離的な元θmodqiによって生成される、つまり分離拡大であることがわかる。

 ちなみにデデキントの判別定理とはこの逆も成り立つことを主張するものである。

 判別式全体
{d(α1,α2,,αn)α1,α2,,αnB}
によって生成されるAのイデアルdL/KL/K判別式と言う。

デデキントの判別定理

 AKLBにおいてL/Kおよび任意の剰余体の拡大(B/q)/(A/p)が分離的であるとき、Aの素イデアルpが分岐することとpが判別式dL/Kを割り切ることは同値となる。

 より正確にはもう少し強い主張を含んでいるが、この辺りの話については書くと長くなるので気が向いたときに次々回くらいの記事としてまとめたいと思う。

応用例

 以下K=Qとして円分体L=Q(ζ)と二次体L=Q(d)における素数の分解法則について紹介していく。

円分体の場合

 ζ1の原始n乗根とし円分拡大Q(ζ)/Qにおける素数の分解を考える。
 このとき以下が成り立つ。

 n=pepn (pn)と分解し
pf1(modn)
なる正整数fであって最小のものをfpとおくと、pQ(ζ)において
p=(q1q2qφ(n)/fp)φ(pep)
(qiの惰性次数はfp)と素イデアル分解される。

  この記事 にて示した。

二次体の場合

 d0,1を平方因子を持たない整数とし、二次拡大Q(d)/Qにおける素数の分解法則を考える。
 二次体の整数環は
O={Z[1+d2]d1,3(mod4)Z[d]d2,3(mod4)
と表せることに注意するとθ=dに関する導手は
F={2Od1,3(mod4)Od2,3(mod4)
と求まる。したがって
f(x)=x2d
Z/pZにおける分解を考えることで以下が得られる。

 d1(mod4)かつp=2のときを除き以下が成り立つ。

  • pdまたはp=2のとき、pは分岐する。
  • dpを法として平方剰余であるとき、pは分解する。
  • dpを法として非平方剰余であるとき、pは惰性する。

 またd1(mod4)かつp=2のときはθ=1+d2とし
f(x)=x(x+1)+1d4
Z/pZにおける分解を考えることで以下が得られる。

  • d1(mod8)のとき、p=2は分解する。
  • d5(mod8)のとき、p=2は惰性する。

 以上を合わせるとQ(d)/Qにおける素数の分解法則は次のようにして統一的に記述することができる。

クロネッカー記号

 整数a,n (n>0)に対してクロネッカー記号(a|n)=(an)を次のように定める。

  • gcd(a,n)1であれば(a|n)=0とする。
  • 奇素数pに対しては(a|n)をルジャンドル記号、つまり
    (ap)={1if x, x2a(modp)1if x, x2a(modp)
    とする。
  • p=2に対しては
    (a2)=(1)a218={1a±1(mod8)1a±3(mod8)
    とする。
  • 一般の正整数n=pnpepに対しては
    (an)=pn(ap)ep
    とする。

 Q(d)の判別式を
D={dd1,3(mod4)4dd2,3(mod4)
とおくと、素数pQ(d)における分解は
(Dp)={0(p:分岐)1(p:分解)1(p:惰性)
と判別できる。

参考文献

[1]
J. Neukirch 著, 足立恒雄 監修, 梅垣敦紀 訳, 代数的整数論, 丸善出版, 2012
投稿日:2024627
更新日:2024628
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投稿者

子葉
子葉
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主に複素解析、代数学、数論を学んでおります。 私の経験上、その証明が簡単に探しても見つからない、英語の文献を漁らないと載ってない、なんて定理の解説を主にやっていきます。 同じ経験をしている人の助けになれば。最近は自分用のノートになっている節があります。

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  1. はじめに
  2. 補題
  3. デデキント・クンマーの定理
  4. デデキントの判別定理
  5. 応用例
  6. 円分体の場合
  7. 二次体の場合
  8. 参考文献