4次元Euclid空間における非可換ゲージ理論(以降YM理論(Yang-Mills理論)と呼びます)にはインスタントンというトポロジカルなソリトンが存在しますPolyakov1975Belavin1975。この解をSU(2)YM理論において導出したのち、Dirac演算子のゼロモードとインスタントン、トポロジカルな不変量との関係を述べます。
本記事はNash1989Nakahara1990Cheng2000の議論に基づきます。
以下ゲージ場のみが存在するEuclid空間でのYM理論を考えます。
Euclid空間におけるYM理論の経路積分及び作用は以下で与えられる:
ゲージ場のゲージ変換性は以下:
※本記事ではゲージ場に結合定数を吸収させていることに注意
本記事のnotationはNash1989に基づきます。
次の不等式
と関係式
より次の等式が成立することから始めます:
ここで
を定義します。すると
が成立します。等号が成立するのは
のときです。そして後ほど確認しますが、
Eq.(1)の条件を(anti-)self dualと呼びます(符号マイナスがanti-self dual)。
以下Eq.(1)の解を探します。この解に対し作用は有限でなければいけませんが、そのために解が遠方で持つべき振る舞いを確かめておきます。
作用の有限性より、
と変化します。これは遠方でゼロになる必要はなく、真空
と書ける配位であればかまいません。そして以下の議論で重要なのは、
ということで、次の2つの条件を満たすゲージ場の配位を探します:
(a)
(b) 遠方で
本記事ではSU(2)YM理論の解を求めることにします。
境界条件(b)を満たすように、次の形の解を探します:
ここで
この
ここで
これを
を得ます。
次にself dualの条件
として計算を進めます。ここで次の量を定義します:
これにより
と表せます。
ここで下線部はself dualityを満たします(Appendix参照)。よって
の部分がself dualならEq.(3)の配位はself dualityを満たします。最も単純にself dualityを実現するには、この部分がそもそもゼロであればよいです。よって
を要請します。この解はすぐに求まり
となります。ゆえに
を得ます。これは
最終的に、SU(2)YM理論において(a)(b)を満たす解は以下のようになります:
この解をインスタントンと呼びます。この名前は、
最初の章で
が整数になると言いました。ここではインスタントンの一般的な形
に関してこれを確かめます。
ここで次の定理を用います。
次の関係が成立する:
太字はその量がformであることを表します。
です。またformのwedge積は明示しません。例えば
また
ここで注意してほしいのは、
さて、インスタントンが定義されている4次元Euclid空間
ここで
が成立します。
この微小帯の赤道を
が成立しているとする。赤道は
ここで、「可縮な底空間上のファイバー束は自明」という事実を使う。
いま
が成立する。この式とEq.(6)を比べると、インスタントン解における
以上をもとにEq.(5)を計算する。
が成立する。これは
とも表せる。
ここで
Skyrme模型の基礎
で説明したmap
を用いると、Eq.(7)は以下のように書き直せます:
ただしここでの
Dirac作用素のゼロモードと指数定理 の記事で議論した、カイラルアノマリーにおける、Diracゼロモードとトポロジカルな不変量の関係に話を移します。この記事では以下の関係式を示しました:
ただし本記事では場の再定義:
であるから、
となります。このようにDiracゼロモードとトポロジカルな不変量との間には関係がつきます。これは楕円型微分作用素の指数と位相幾何学的指数の関係を示す「Atiyah-Singerの指数定理」のカイラルアノマリーにおける現れです。導出の詳細は上記記事をご参照ください。
Eq.(3)のインスタントン解に対して
を計算すればよいです。これはふつうに計算しても求まりますが、Ref.Nakahara1990では対称性を利用して計算しています。
ここで単位
証明はしませんが、
Euclid空間でのYang-Mills理論におけるトポロジカルなソリトンであるインスタントン解に関して説明しました。インスタントンはself-dualの条件および遠方での境界条件 −真空とゲージ同値となる条件− を満たす解です。SU(2)YM理論においてこれを具体的に構成しました。作用の極小はインスタントン配位によるトポロジカルな不変量
数学的に言うと、
おしまい。
表題を示すには
を示せばいいです。これには
Eq.(a1)の左辺は
右辺は
よって
Eq.(a1)の左辺は
右辺は
よって
ゆえにEq.(a1)が成立します。