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現代数学議論
文献あり

超微分を実数,または複素数に拡張する際の問題提起

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$$\newcommand{id}[0]{\mathrm{id}} \newcommand{ilim}[1]{\displaystyle \lim_{\stackrel{\longrightarrow}{#1}}} \newcommand{qinteg}[0]{\displaystyle \:\cancel{^{}}\!\!\!\:\:\:\llap{\int}} $$

この記事は, 7777777 氏によるタグ 超微分 に関連しています.


vunu 氏の記事, 超微分の小ネタ、(モニックな、実係数)n次関数の超微分と解のm乗和 や, 超微分の小ネタの拡張:整関数と超微分 には関数の零点の近傍での超微分には,興味深い性質がある.実際,超微分の定義から零点や無限遠点での挙動を考えることは意味がありそうな気がする.
そこで一般の関数の超微分を解析しやすいように定義したい.
そのために次の問題を考える.

問題

開集合$U\subset \mathbb{R} $から$ \mathbb{R} $への関数$f$は次の性質を満たすとする.

  1. $f$$U$上微分可能であり,$f$の根は孤立している.

孤立した根を$a\in U$とした時,
$$ \lim_{x \to a} \frac{x f'(x)}{f(x)} \qquad ( \star ) $$
が極限を持つような性質(i)を満たす関数$f$は存在するか.

もしそのような関数が存在しないのならば,どの関数の零点での超微分係数は,無限大に発散するか振動する.
そこで無限大に発散する場合を考え,超微分$f^{`}$$\mathbb{R}$から実数の一点コンパクト化$\mathbb{R}^*=\mathbb{R} \cup \{\infty\}$への関数として$f^{`}(a)=\infty$とおくと自然に見える.
もっとも,そのように定義しても考えるべき問題があるが,まずは上に上げた問題を考える必要がある.


そのような関数が存在しても上のように定義は出来るが,存在しない方が解析は楽になる.

最後に

解決案を上げるわけでもなく,ブログ的な書き方になってしまったことは許してください.
上に挙げた記事から,明らかに多項式の場合$( \star )$は極限を持たず,特に無限に発散する.また$C^\infty$級関数も恐らく極限を持たないだろう.
また時間があるときに,分かったことをここに追記していきたい.

問題の解決

開集合$U\subset \mathbb{R} $から$ \mathbb{R} $への関数$f$は次の性質を満たすとする.

  1. $f$$U$上微分可能であり,$f$の根は孤立しており,根は$0$でない.

孤立した根を$a\in U$とした時,
$$ \lim_{x \to a} \frac{x f'(x)}{f(x)} \qquad ( \star ) $$
は極限を持たない.
特に$\displaystyle \lim_{x \nearrow a} \frac{x f'(x)}{f(x)}$,$\displaystyle \lim_{x \searrow a} \frac{x f'(x)}{f(x)}$は$\infty$,$-\infty$のどちらかに発散する.

$f$の根は$U$の中にただ一つとしてよい.$a < x$なる$x\in U$$f(x) \geq0 $のとき,$\log f(x)$$x\searrow a$$-\infty$に発散する.なので,傾きも無限に発散する.
よって,$\frac{x f'(x)}{f(x)} =x (\log f(x))'$という関係式から$\displaystyle \lim_{x \searrow a} \frac{x f'(x)}{f(x)}$は極限を持たない.
$f(x) \leq 0 $のとき,$g(x)=-f(x)$とおくと,
$$ \frac{x f'(x)}{f(x)} =\frac{x g'(x)}{g(x)} =x (\log g(x))'$$
から,同様に$\displaystyle \lim_{x \searrow a} \frac{x f'(x)}{f(x)}$は極限を持たない.
同じようにして$x\nearrow a$も考えると,$( \star )$は極限を持たないことが分かる.

根が$0$の時の反例がとても簡単に作れました.

$\begin{eqnarray} f(x)=\left\{ \begin{array}{l} x^2\sin \left( \frac{1}{x} \right) & (x\not=0) \\ 0 &(x=0) \end{array} \right. \end{eqnarray}$
とおくと,
$$ f^`(x)= \lim_{h\to1}\log_{h}\frac{f(hx)}{f(x)}= \frac{x f'(x)}{f(x)} = 2- \frac{1}{x \tan( \frac{1}{x} )} $$
これは$x=0$で連続でない.

一方, Y.K. 氏の記事 超微分のx→0での値の意味 には次の予想がある.

(不連続とか微分不可能とかややこしい関数は無しで)
マクローリン展開可能な関数$ f(x)$ に対して、
$$ \begin{eqnarray} \lim_{x\to0}f^`(x) \end{eqnarray}$$
はf(x)をマクローリン展開した時の最低次数を表し、
$$\begin{eqnarray} \lim_{x\to\infty}f^`(x) \end{eqnarray} $$
$ f(x)$をマクローリン展開した時の最大次数を表す。
ただし最低次数とは係数が$ 0$でない最小の$ x$の次数を表し、最大次数とは係数が$0 $でない最大の$ x$の次数を表す。ただし、いくらでも大きな係数が$ 0$でない$x $の次数を持ってくることができる場合、最大次数は$ ∞$とする。

この予想の$x\to0$の部分を示す.

$0$の開近傍$U\subset \mathbb{R} $から$ \mathbb{R} $への関数$f$$U$上テーラー展開できるとする.このとき,
$$\lim_{x \to 0} \frac{x f'(x)}{f(x)}=\mathrm{ord} f$$
を満たす.すなわち超導関数$ f^`(x)$$0$の開近傍で連続.
ここで,$\mathrm{ord} f$はテーラー展開の$0$でない初項の次数である.

$f$$0$の近傍で
$$f(x)= \sum_{k=n_0}^{\infty} a_k x^k=x^{n_0} \sum_{k=0}^{\infty} a_{n_0+k} x^k$$
と書ける.ここで,$n_0 = 0$のとき,明らかに成り立つ.なので,$n_0 > 0$を考える.$\displaystyle g(x)= \sum_{k=0}^{\infty} a_{n_0+k} x^k$とおく.すると,
$$ \frac{x f'(x)}{f(x)}= \frac{n_0x^{n_0}g(x)+x^{n_0+1}g'(x)}{x^{n_0}g(x)}=n_0+ \frac{x g'(x)}{g(x)} $$
となり,$g(0)\not=0$ ゆえ,
$$\lim_{x \to 0} \frac{x f'(x)}{f(x)}=n_0=\mathrm{ord} f$$

さて,$U\subset \mathbb{C} $上すべての点で複素微分可能なら,$C^\infty$級,特に無限級数展開可能であるという美しい定理がある.
同じように零点を持たない関数がすべての点で"複素超微分可能"のとき,何回でも複素超微分可能や,$C^\infty$級,特に無限級数展開可能であることが言えるのならば,零点を持つ関数に実数よりもとても自然に拡張できる.(数学的根拠はない.)

参考文献

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更新日:522
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「ツクツクボーシ、ツクツクボーシ」 ほら、カエルが鳴いてるよ 春の訪れを感じながら 落ち葉で黄色くなった道を歩いてく

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