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大学数学基礎解説
文献あり

留数と漸化式と円周率の平方根 (2) 〜ベッセル多項式〜

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前回の投稿のおさらいから。リンクは こちら

積分$\displaystyle I_n:=\int_{-\infty}^{\infty}\frac{\cos x}{(x^2+1)^n}dx$について値を考察していた。得られた結果としては
\begin{align*} I_{n+2} &= \frac{2n+1}{2n+2}I_{n+1}+\frac{1}{4n(n+1)}I_n, \quad I_1=I_2=\frac{\pi}{e}. \\ \lim_{n\to\infty}\sqrt{n}I_n &=\sqrt{\pi}. \end{align*}
の主に2つであった。(後者の証明もコメントで教えて頂きました。感謝です。)

ありがたいことに更にコメントを頂きました。そしてその内容は記事の追記ではもったいないので、続編を書くことにしました。

コメントで頂いた内容

この積分$I_n$を考えることは、複素関数$\displaystyle f(z)=\frac{e^{iz}}{(z^2+1)^n}$の点$z=i$における留数を計算することと同じことは前記事でも述べました。
そこで$w=iz$という変数を置き、変数変換をすると
\begin{align*} i\cdot \mathrm{Res}\left(\frac{e^{iz}}{(z^2+1)^n},\,\, i\right) = \mathrm{Res}\left(\frac{e^{w}}{(-w^2+1)^n},\,\, -1\right) \end{align*}
と書けます。ここで変数変換した際に$i$が1つ消えることに注意。(留数は複素積分と対応するのでそこからも自然にわかる)
さて関数$\displaystyle \widetilde{f}(w):=\frac{e^{w}}{(1-w^2)^n}$について考えると、分子は正則関数、分母は$(1+w)$の項を$n$個持つことから、この関数は$w=-1$において$n$位の極であることがわかる。
$n$位の極の点における留数の計算は、便利な計算方法があって
\begin{align*} \mathrm{Res}(\widetilde{f}, -1) =\frac{1}{(n-1)!}\lim_{w\to -1}\frac{d^{n-1}}{dw^{n-1}}\left\{(w+1)^n\widetilde{f}(w)\right\}. \end{align*}
これは関数$\widetilde{f}$の点$-1$の周りのローラン展開における$-1$次の係数の取り出し方である。$(w+1)^n$を掛けて0次以上のローラン級数にして、$n-1$回微分し留数より下の次数の項を消し、$w\to-1$で留数より上の項を消し、そして最後に$(n-1)!$で割ることで微分して掛かった係数を割っている。
この方法を使うと
\begin{align*} \mathrm{Res}(\widetilde{f}, -1) =\frac{1}{(n-1)!}\lim_{w\to -1}\frac{d^{n-1}}{dw^{n-1}}\frac{e^{w}}{(1-w)^n}. \end{align*}
次に関数$\displaystyle\frac{e^{w}}{(1-w)^n}$の微分には、ライプニッツの公式を用いる。具体的には
\begin{align*} \frac{d^{n-1}}{dw^{n-1}}\frac{e^{w}}{(1-w)^n} &=\sum_{k=0}^{n-1}\binom{n-1}{k} \frac{d^k}{dw^k}\frac{1}{(1-w)^n}\cdot \frac{d^{n-1-k}}{dw^{n-1-k}}e^w \\ &=\sum_{k=0}^{n-1}\binom{n-1}{k} n(n+1)\cdots(n+k-1)\frac{1}{(1-w)^{n+k}}e^w \\ \end{align*}
さてこれを$w\to-1$の極限を取り$(n-1)!$で割ることで
\begin{align*} \mathrm{Res}(\widetilde{f}, -1) &=\frac{1}{(n-1)!}\sum_{k=0}^{n-1}\binom{n-1}{k} n(n+1)\cdots(n+k-1)\frac{e^{-1}}{2^{n+k}} \\ &=\frac{1}{(n-1)!}\sum_{k=0}^{n-1}\frac{(n-1)!}{k!(n-k-1)!} \frac{(n+k-1)!}{(n-1)!}\frac{e^{-1}}{2^{n+k}} \\ &=\frac{1}{(n-1)!}\sum_{k=0}^{n-1}\frac{(n-1+k)!}{k!(n-1-k)!} \frac{e^{-1}}{2^{n+k}} \end{align*}
以上より、$2\pi$を掛けて整理すると次を得る。なお$n-1$が大量に出てきているので、見やすさのために$n$を1ずらす。

\begin{align*} I_{n+1}=\int_{-\infty}^\infty \frac{\cos x}{(1+x^2)^{n+1}}dx =\frac{1}{n!}\sum_{k=0}^{n}\frac{1}{2^{n+k}} \frac{(n+k)!}{k!(n-k)!}\frac{\pi}{e}. \end{align*}

以上がコメント頂いた内容でした。ありがとうございました。
圧巻です。全く思いつかなかった方法にまた賢くなった気分。

これを見て、きっとよく知られた数なんだろうなぁ、と思いました。

分母を払うと出てくる数列

一応、実験ね。お決まりの。$n=9$として、計算機にかけると
\begin{align*} I_{10}=\frac{12994393}{26542080}\frac{\pi}{e}. \end{align*}
よかった、一致していた。こんなに綺麗に求まるとは。
上の式を一見すると分母を払うのに$n!\times 2^{2n}$位必要ではと思うが、よく見ると
\begin{align*} \frac{1}{2^{n+k}} \frac{(n+k)!}{k!(n-k)!} =\frac{1}{2^n}\frac{(n+k)!}{(2k)!(n-k)!}\frac{(2k)!}{k!2^k} =\frac{\binom{n+k}{2k}(2k-1)!!}{2^n} \end{align*}
と書けるので
\begin{align*} I_{n+1}=\frac{1}{n!2^n} \sum_{k=0}^n\binom{n+k}{2k}(2k-1)!!\cdot\frac{\pi}{e} \end{align*}
である。すなわち$n!\times 2^n$(及び$\frac{e}{\pi}$)を掛けると整数値になる。

$\displaystyle y_n=\sum_{k=0}^n\binom{n+k}{2k}(2k-1)!!=\sum_{k=0}^n\frac{(n+k)!}{2^kk!(n-k)!}$ とおく

さてこの数列はどのような意味を持つのだろうか。
困ったら実験。$0\le n\le 9$に対して

$n$$y_n$
$0$$1$
$1$$2$
$2$$7$
$3$$37$
$4$$266$
$5$$2431$
$6$$27007$
$7$$353522$
$8$$5329837$
$9$$90960751$

この中で素数は$2, 7, 37, 5329837$がそうなのね...いやそういう話じゃない。
こんな数列は誰かが既に研究しているでしょう。
OEIS という数列のオンライン辞典で検索...あった!!

A001515 Bessel polynomial $y_n(x)$ evaluated at $x=1$.
ベッセル多項式? 初めて聞いた。

とりあえず、A001515に書かれているコメントを訳して掲載する。

  • $\{1, 2, \cdots, n\}$ ($n\le k\le 2n$) を1ブロックあたり2個以下の要素を持つn個のブロックに分割する数。言い換えると、$\{1,...,k\}$ ($n\le k\le 2n$) の要素をそれぞれ1回ずつ使って、1個または2個の要素を持つn個の集合族を作る方法の数。
  • 区別されていない$n$個のものをそれぞれ1回または2回用いて並べる列の数と同じ。
  • $1+\tanh(1)$の(連分数展開における)$n+1$次近似分数の分子
  • 連分数展開$[2,3,5,7,9,11,13,...]$を持つ連分数の分子
  • "Gift Exchange Game"においてGiftは高々1度しか盗めない場合の数

最後のゲームが気になる(後述)が、ベッセル多項式についての記述というよりはこの数列自体の性質が書かれていた。
Note: $\displaystyle 1+\tanh(1)=\frac{2e^2}{1+e^2}$は連分数展開$[1; 1,3,5,7,9,11,13,...]$を持つ。別の言い方をすると、$[2,3,5,7,9,11,13,...]$を持つ連分数は$\displaystyle \frac{e^2-1}{2e^2}$である。

Gift Exchange Game

この章(及びこれ以降)は、主に以下のarticleGiftを参照した。

 --ゲームのルール--

  • 数値$\sigma$ (通常は1または2) は最初に決められている。
  • $n$人の客は持ち寄ったギフトをテーブルに置く。(未開封)
  • $n$人の客に$1$から$n$まで書かれた紙が1人1枚配られる。
  • ホストは$1$から$n$までの数を順に呼び、呼ばれた人は以下の2つの操作のうちいずれかを行う。
  1. 未開封のギフトを1つ選び、開封し全員に見せる。
  2. 開封済のギフトを1つ取る(盗む"steal")。
  • それぞれのギフトにつき、盗まれる回数は$\sigma$回以内。
  • 自分が開封したギフトが盗まれた場合、すぐに順が回ってきて、上の(1)(2)いずれかの操作を行う。
  • 誰かが最後($n$個目)のギフトを開封した時点でゲーム終了。
    Note: $\sigma\ge2$のときは、自分のギフトが盗まれた際(自分の回数制限に達してなければ)"盗み返し"ができる。
    Note: 誰がどのギフトを持ち寄ったかという事実はこのゲームには寄与しない

・・・なんと楽しそうなゲームであろうか!(楽しくないって?)
でも数学的には楽しそうなのは間違いない。
起こりうるゲームの進み方の数を$H_\sigma(n)$とおく。

$n=3,\,\, \sigma=1$ のときの例 >

3人の人をA, B, Cとしこの順に呼ばれたとする。
3つのギフトを1, 2, 3とおき、この順に開封されたとする。(ここは任意性があるので本当は$3!=6$倍される)
このとき、次の7通りのゲームの進み方がある。

  1. Aが1を開封→Bが2を開封→Cが3を開封
  2. Aが1を開封→Bが2を開封→Cが1を盗む→Aが3を開封
  3. Aが1を開封→Bが2を開封→Cが1を盗む→Aが2を盗む→Bが3を開封
  4. Aが1を開封→Bが2を開封→Cが2を盗む→Bが3を開封
  5. Aが1を開封→Bが2を開封→Cが2を盗む→Bが1を盗む→Aが3を開封
  6. Aが1を開封→Bが1を盗む→Aが2を開封→Cが3を開封
  7. Aが1を開封→Bが1を盗む→Aが2を開封→Cが2を盗む→Aが3を開封

ということで、$H_1(3)=7\times3!=42$である。
以下、$H_\sigma(n)=n!\cdot G_\sigma(n-1)$とおく。$n$を1つずらすのは、上の例だとギフト$3$は最後に開封されてそれですぐ終了になるので、実質ゲームには寄与していないからである。
すなわち、$G_1(2)=7$である。

上のコメントが意味しているのは、この関数$G_1(n)$がベッセル多項式に等しいということである。

Note: このことの証明は参考論文にも述べられているが、大事なことは、最後のギフト以外の全てのギフトの(開封された+盗まれた)回数は1回以上2回以下で、それらの順列の総数と対応がつく。(コメント1つ目との対応)

ベッセル多項式

以下(Bessel関数の章以外)は主にarticleBesselを参照した。

Bessel多項式$y_n(x)$は以下のように定義される。
\begin{align*} y_n(x)=\sum_{k=0}^n \frac{(n+k)!}{k!(n-k)!}\left(\frac{x}{2}\right)^k \end{align*}
この定義から、$x=1$のときの値$y_n(1)$は上の数列$y_n$と一致している。
$0\le n\le 5$のとき、多項式$y_n(x)$の値は
\begin{align*} y_0(x)&=1 \\ y_1(x)&=x+1 \\ y_2(x)&=3x^2+3x+1 \\ y_3(x)&=15x^3+15x^2+6x+1 \\ y_4(x)&=105x^4+105x^3+45x^2+10x+1 \\ y_5(x)&=945x^5+945x^4+420x^3+105x^2+15x+1 \end{align*}
などと計算される。よく知られた事実として

  • $y_n(x) \in \mathbb{Z}[x]$ (これは上にも書いた;係数は$\binom{n+k}{2k}(2k-1)!!$に等しい)
  • 漸化式 $y_{n+1}(x)=(2n+1)xy_n(x)+y_{n-1}(x)$ が成り立つ
  • 微分方程式 $x^2y_n''(x)+2(x+1)y_n'(x)=n(n+1)y_n(x)$ を満たす
    (この微分方程式の一般解は$Ay_n(x)+Be^{2/x}y_n(-x)$である)
  • 指数型母関数 $\displaystyle \sum_{n=0}^\infty y_{n-1}(x)\frac{t^n}{n!}=\exp\left(\frac{1-\sqrt{1-2xt}}{x}\right)$
  • $\displaystyle y_n(x)=2^{-n}e^{2/x}\frac{d^n}{dx^n}(x^{2n}e^{-2/x})$ と書き表せる [ライプニッツの公式を使う]

などがある。

Bessel関数との対応

Bessel多項式はBessel関数と関係が深い。
ただしここに関しては筆者は詳しくないのでより今後勉強したい。
この章は英語版WikipediaBesselWikiを参照した。

$\alpha\in\mathbb{C}$に対し、通常のBessel関数$J_\alpha(x)$は、ざっくり言えば
\begin{align*} x^2\frac{d^2y}{dx^2}+x\frac{dy}{dx}+(x^2-\alpha^2)y=0 \end{align*}
の解の1つであり、主に$\alpha$は整数または半整数を扱う。そのマクローリン展開は
\begin{align*} J_\alpha(x)=\sum_{m=0}^\infty \frac{(-1)^m}{m!\Gamma(m+\alpha+1)}\left(\frac{x}{2}\right)^{2m+\alpha} \end{align*}
で与えられる。
この関数$J_\alpha(x)$に対し、第二種Bessel関数$Y_\alpha(x)$
\begin{align*} Y_\alpha(x) =\frac{J_\alpha(x)\cos(\alpha\pi)-J_{-\alpha}(x)}{\sin(\alpha\pi)} \end{align*}
と定める。更に第一種(第二種)変形Bessel関数 $I_\alpha(x), K_\alpha(x)$をそれぞれ
\begin{align*} I_\alpha(x) &=i^{-\alpha}J_\alpha(ix) =\sum_{m=0}^\infty \frac{1}{m!\Gamma(m+\alpha+1)}\left(\frac{x}{2}\right)^{2m+\alpha}, \\ K_\alpha(x) &=\frac{\pi}{2}\frac{I_{-\alpha}(x)-I_\alpha(x)}{\sin(\alpha\pi)} \end{align*}
と定める。この時Bessel多項式$y_n(x)$
\begin{align*} y_n(x)=\sqrt{\frac{2}{\pi x}} e^{\frac{1}{x}}K_{\frac{2n+1}{2}}\left(\frac{1}{x}\right) \end{align*}
と書き表せる。

Bessel多項式の直交性

実は直交多項式と呼ばれる多項式族の1つである。
直交多項式については、私自身全くの無知であり(具体例として知られる関数の名前や簡単な性質を知っている程度)今後特に勉強したいと思っているので
mathlogの今後の記事の方針も、直交多項式について書こうと思っている。

なので、今回はBessel多項式が満たす直交性について述べ、それについて証明することで記事を終えたいと思う。

Bessel多項式の直交性

$m, n$: 非負整数
$C$: 複素数平面上の単位円$|z|=1$上を反時計回りに回る経路
このとき以下が従う。
\begin{align*} \int_C y_n(z)y_m(z)e^{-2/z}dz =\frac{2(-1)^{n+1}}{2n+1}2\pi i\delta_{m, n} \end{align*}

なお被積分関数の極は$z=0$のみであるので、経路$C$$z=0$の周りを一周する経路なら他のものでも構わない。

  1. $m\neq n$のときの積分の値が$0$になること
    $y_n(x)$が満たす微分方程式より次が従う。
    \begin{align*} \left\{x^2e^{-2/x}y_n'(x)\right\}' &=2xe^{-2/x}y_n'(x)+x^2\cdot\frac{2}{x^2}e^{-2/x}y_n'(x) +x^2e^{-2/x}y_n''(x) \\ &=\left\{2(x+1)y_n'(x)+x^2y_n''(x)\right\}e^{-2/x} \\ &=n(n+1)e^{-2/x}y_n(x) \end{align*}
    以上より部分積分をすることで
    \begin{align*} n(n+1)\int_C y_n(z)y_m(z)e^{-2/z}dz &=\int_C \left\{x^2e^{-2/x}y_n'(x)\right\}'y_m(z)dz \\ &=-\int_C x^2e^{-2/x}y_n'(x)y_m'(z)dz \\ &=\int_C \left\{x^2e^{-2/x}y_m'(x)\right\}'y_n(z)dz \\ &=m(m+1)\int_C y_n(z)y_m(z)e^{-2/z}dz \end{align*}
    $0\le m, n$のとき$n(n+1)\neq m(m+1)$なので、以上より
    \begin{align*} \int_C y_n(z)y_m(z)e^{-2/z}dz=0 \end{align*}
  2. $m=n$のときの値の計算
    以下$\displaystyle y_n(x)=2^{-n}e^{2/x}\frac{d^n}{dx^n}(x^{2n}e^{-2/x})$を使う。
    ・補題
    $k< n$$k$に対し、$\displaystyle \int_C z^ky_n(z)e^{-2/z}dz=0$
    もちろん$k+1$回部分積分することで示せるが、以下のようにも示せる。
    $y_n(x)$の最高次係数が$(2n-1)!!x^n$であることを考えると、$\mathbb{Q}$$n$次以下の多項式全てのなすベクトル空間は基底$\{y_0(x), y_1(x), \cdots, y_n(x)\}$を持つ。
    この事実を$k$に対して使うと$z^k=\sum_{i=0}^k\alpha_iy_i(x)$と書ける。今$y_0(x)$から$y_k(x)$全てが$y_n(x)$と直交することは(1)で示したので従う。(補題が成立)
    この補題と、部分積分を$n$回用い
    \begin{align*} \int_C y_n(z)y_n(z)e^{-2/z}dz &=(2n-1)!!\int_C z^n 2^{-n}\frac{d^n}{dz^n}(z^{2n}e^{-2/z})dz \\ &=(-1)^n\frac{(2n-1)!!}{2^n} \int_C \frac{d^n}{dz^n}(z^n)\cdot z^{2n}e^{-2/z}dz \\ &=(-1)^n\frac{(2n-1)!!\cdot n!}{2^n} \int_C z^{2n}e^{-2/z}dz \end{align*}
    となる。
    ここで$e^{-2/z}$$z=0$の周りでローラン展開したときの$z^{-2n-1}$の項は
    \begin{align*} \frac{(-2/z)^{2n+1}}{(2n+1)!} =\frac{-2^{2n+1}}{(2n+1)!}z^{-2n-1} \end{align*}
    となるので、留数はこの項の係数が出てくる。従って
    \begin{align*} \int_C z^{2n}e^{-2/z}dz =2\pi i\cdot\frac{-2^{2n+1}}{(2n+1)!} \end{align*}
    となりこれを上の式に代入することで
    \begin{align*} \int_C y_n(z)y_n(z)e^{-2/z}dz &=(-1)^n\frac{(2n-1)!!\cdot n!}{2^n} 2\pi i\cdot\frac{-2^{2n+1}}{(2n+1)!} \\ &=2\pi i\cdot\frac{2(-1)^{n+1}}{2n+1} \end{align*}
    となり示された。

Note: 同様に部分積分を実行することで任意の$k$に対し
\begin{align*} \int_C z^ky_n(z)e^{-2/z}dz =2\pi i\frac{(-2)^{k+1}(k)_n}{(n+k+1)!} \end{align*}
が成立する。ここで$(k)_n$は下降階乗である。
\begin{align*} (k)_n=k(k-1)(k-2)\cdots(k-n+1)=\frac{k!}{(k-n)!} \end{align*}

あとがき

まさか複素関数の教科書の例題の積分から、組み合わせ論や直交多項式や...といった概念が出てくるとは

この記事を書きながらも
Bessel関数や直交多項式の勉強も(人はそれを次の記事のネタという)始めたし
また理解が進み次第記事の加筆も進めていきたいな

2023年の更新はこれが最後だろうし
今年もありがとうございました、そして来年もよろしくお願いします。

参考文献

投稿日:20231229
更新日:11

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投稿者

整数論を研究中。 本音は組合せ論がやりたい。 最近は直交多項式・超幾何級数にお熱。 だけど幾何と解析は鬼弱い。

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