本記事は 「日曜数学 Advent Calendar 2023」 の参加記事です。
私の記事は「ねこが書いたのか?」と思うほど、かなりお気楽な内容なんですが、アドベントカレンダーには力作が揃っていますので、ぜひご覧ください。
中学や高校で有理化を習いますよね。
$$
\frac{1}{\sqrt{2}-1}=\frac{1}{\sqrt{2}-1}\times\frac{\sqrt{2}+1}{\sqrt{2}+1}=\frac{\sqrt{2}+1}{2-1}=\sqrt{2}+1
$$
といった計算をしますが、指示されるまま、機械的に行っている人が少なくないと思います。
私自身も、最初に習ったときは、あまり意味もわからず行っていた計算でしたが、代数学の知識を得ることにより、一気に見え方が変わりました。
今回は、そんな有理化の話からスタートしつつ、2次体というものを少しだけ紹介していきたいです。途中までは、高校数学の知識で(ある程度)読めるよう、書いていこうと思います。
本記事の内容は代数学の基本的なお話ではありますが、作図不能問題やガロア理論などにもつながっていくので、少しでも興味を持って頂けたら、とてもうれしいです。
中高の数学を勉強しているとき、なかなか意識しないと思うことの一つに「(ある集合がある二項演算に関して)閉じているか?閉じていないか?を考える」という点があります。
厳密な話を省略しながら、ざっくりと紹介します。
まず、$\mathbb{Z}$を例として考えてみましょう。
任意の整数$a,b$に対して
$$ a+b \in \mathbb{Z},\ a-b \in \mathbb{Z},\ a\cdot b \in \mathbb{Z} $$
が成立しています。しかし、除法に関しては
$$ 1\div 2 \not\in \mathbb{Z} $$
となっており、演算の結果が必ずしも$\mathbb{Z}$に属するとは限りません。
こういった状況を「$\mathbb{Z}$は加法・減法・乗法に関して閉じているが、除法に関して閉じていない」といった表現をします。
一方で、$\mathbb{Q},\ \mathbb{R},\ \mathbb{C}$は、加法・減法・乗法・除法に関して閉じています。
加法、(加法の逆演算である)減法、乗法に関して閉じていて、その他、いくつかの条件を満たす代数系で、環と呼ばれるものがあります。
本記事では、環の定義の記載を省略しますが、詳しくは以下を参考にしてみてください。
やや抽象的なので、難しく感じる場合、いったんは、「環は、加法、減法、乗法に関して閉じていて、その他、いくつかの条件を満たす」と、とらえて、本記事を読みすすめてみると良いと思います(ただし、このとらえ方は、不正確だと思うので、本記事内に限るものとし、その他の文献を読む場合は、きちんと勉強をすることをおすすめします)。
集合$R$が環であり、任意の$a,b \in R$に対して、$a\cdot b=b\cdot a$を満たすとき、$R$は可換環であるといいます。
また、以下を満たすような可換環$K$は体と呼ばれています。
$K$に属する$0$でない任意の元$a$に対し、$a\cdot b=1$を満たすような$b$が存在する。
このような$b$は、$a$の乗法逆元と呼ばれ
$$b=a^{-1}$$
と表します。
$K$は環であることから、乗法に関して閉じているので、任意の$a,b(\not=0)\in K$に対して
$$ a\cdot b^{-1} \in K $$
が成り立ちます。
このように考えると、体は加法、減法、乗法、除法に関して閉じているといえます。
具体例を挙げると、$\mathbb{Z}$は可換環であり、$\mathbb{Q},\ \mathbb{R},\ \mathbb{C}$は体です。
中高の数学では、実数や複素数を前提にして考えていることが多く、四則演算が問題なくできるため、「除法に関して閉じているか?」といったことを、あまり気にせずに話を進めていることが多いのかもしれません。
$\mathbb{Q}[X]$を有理数係数多項式全体の集合とします。
有理数係数多項式とは、$n$を$0$以上の整数として
$$ a_0+a_1X+a_2X^2+\cdots +a_{n-1}X^{n-1}+a_nX^n \quad (a_0,a_1,a_2\cdots,a_{n-1},a_n \in \mathbb{Q}) $$
といった形の式で書けるもののことを言います。
ここで、$\mathbb{Q}[\sqrt{2}]$と$\mathbb{Q}(\sqrt{2})$を以下のように定義します。
$$
\mathbb{Q}[\sqrt{2}]=\{f(\sqrt{2})\ |\ f(X) \in \mathbb{Q}[X]\}
$$
$$
\mathbb{Q}(\sqrt{2})=\Biggl\{\frac{f(\sqrt{2})}{g(\sqrt{2})}\ \Bigg|\ f(X),g(X) \in \mathbb{Q}[X],\ g(\sqrt{2})\not = 0\Biggr\}
$$
例えば
$$ \frac{3}{2}+\frac{4}{3}\sqrt{2}+\frac{5}{4}(\sqrt{2})^2+\frac{6}{5}(\sqrt{2})^3 \in \mathbb{Q}[\sqrt{2}] $$
$$ \frac{\frac{3}{2}+\frac{4}{3}\sqrt{2}+\frac{5}{4}(\sqrt{2})^2+\frac{6}{5}(\sqrt{2})^3 }{\frac{8}{7}+\frac{9}{8}\sqrt{2}+\frac{10}{9}(\sqrt{2})^3+\frac{11}{10}(\sqrt{2})^5} \in \mathbb{Q}(\sqrt{2}) $$
となっています。
$\mathbb{Q}[\sqrt{2}] \ni f(\sqrt{2})=\frac{f(\sqrt{2})}{1}$と考えれば
$$\mathbb{Q}[\sqrt{2}]\subset \mathbb{Q}(\sqrt{2})$$
であることがわかります。
また、$\mathbb{Q}[\sqrt{2}]$と$\mathbb{Q}(\sqrt{2})$の関係性は、$\mathbb{Z}$と$\mathbb{Q}$の関係性に似ています。
$$ \mathbb{Q}=\Biggl\{\frac{a}{b}\ \Bigg|\ a,b\in \mathbb{Z},\ b\not=0\Biggr\} $$
と書くと、似ていると感じられると思います。
$$ \mathbb{Q}[\sqrt{2}]=\{a+b\sqrt{2}\ |\ a,b \in \mathbb{Q}\} $$
$$R=\{a+b\sqrt{2}\ |\ a,b \in \mathbb{Q}\}$$
とする。
任意の有理数$a,b$に対して、$a+bX \in \mathbb{Q}[X]$なので、$\mathbb{Q}[\sqrt{2}]$の定義より
$$a+b\sqrt{2}\in \mathbb{Q}[\sqrt{2}]$$
である。
よって、$ R \subset \mathbb{Q}[\sqrt{2}]$である。
したがって、$R \supset \mathbb{Q}[\sqrt{2}]$を示せばよい。
任意の$f(X)\in \mathbb{Q}[X]$について
$$f(X)=(X^2-2)q(X)+r(X)$$
を満たす$q(X),r(X)\in \mathbb{Q}[X]$が存在する。ただし、$r(X)$の次数は$0$次または$1$次であり
$$r(X)=a+bX\quad(a,b \in \mathbb{Q})$$
と表せる。
よって
$$f(\sqrt{2})=r(\sqrt{2})=a+b\sqrt{2}$$
となるので、$f(\sqrt{2}) \in R$であることが示された。
以上より、$R=\mathbb{Q}[\sqrt{2}]$である。
$$ \mathbb{Q}(\sqrt{2})=\Biggl\{\frac{a+b\sqrt{2}}{c+d\sqrt{2}}\ \Bigg|\ a,b,c,d\in \mathbb{Q},\ c+d\sqrt{2}\not=0\Biggr\} $$
※先の命題とほぼ同様に示せるので、省略。
$\mathbb{Q}[\sqrt{2}]$は、加法、減法、乗法に関して閉じている。
$$\mathbb{Q}[\sqrt{2}]\ni a+b\sqrt{2},\ c+d\sqrt{2}\quad (a,b,c,d\in \mathbb{Q}) $$
について
$$
(a+b\sqrt{2})+(c+d\sqrt{2})=(a+c)+(b+d)\sqrt{2} \in \mathbb{Q}[\sqrt{2}]
$$
$$
(a+b\sqrt{2})-(c+d\sqrt{2})=(a-c)+(b-d)\sqrt{2} \in \mathbb{Q}[\sqrt{2}]
$$
$$
(a+b\sqrt{2})(c+d\sqrt{2})=(ac+2bd)+(bc+ad)\sqrt{2} \in \mathbb{Q}[\sqrt{2}]
$$
より、$\mathbb{Q}[\sqrt{2}]$は加法、減法、乗法で閉じていることがわかる。
$\mathbb{Q}(\sqrt{2})$は、加法、減法、乗法に関して閉じている。
$$\mathbb{Q}(\sqrt{2})\ni \frac{a+b\sqrt{2}}{c+d\sqrt{2}},\ \frac{p+q\sqrt{2}}{r+s\sqrt{2}} \quad (a,b,c,d,p,q,r,s\in \mathbb{Q},\ c+d\sqrt{2}\not=0,\ r+s\sqrt{2}\not=0) $$
について
$$ \left(\frac{a+b\sqrt{2}}{c+d\sqrt{2}}\right)+\left(\frac{p+q\sqrt{2}}{r+s\sqrt{2}}\right)=\frac{(ar+2bs+cp+2dq)+(as+br+cq+dp)\sqrt{2}}{(cr+2ds)+(cs+dr)\sqrt{2}} \in \mathbb{Q}(\sqrt{2}) $$
$$ \left(\frac{a+b\sqrt{2}}{c+d\sqrt{2}}\right)-\left(\frac{p+q\sqrt{2}}{r+s\sqrt{2}}\right)=\frac{(ar+2bs-cp-2dq)+(as+br-cq-dp)\sqrt{2}}{(cr+2ds)+(cs+dr)\sqrt{2}} \in \mathbb{Q}(\sqrt{2}) $$
$$ \left(\frac{a+b\sqrt{2}}{c+d\sqrt{2}}\right)\left(\frac{p+q\sqrt{2}}{r+s\sqrt{2}}\right)=\frac{(ap+2bq)+(aq+bp)\sqrt{2}}{(cr+2ds)+(cs+dr)\sqrt{2}} \in \mathbb{Q}(\sqrt{2}) $$
より、$\mathbb{Q}(\sqrt{2})$は、加法、減法、乗法に関して閉じている。
$\mathbb{Q}[\sqrt{2}]$は可換環である。
※証明は省略。
$\mathbb{Q}(\sqrt{2})$は体である。
※$\mathbb{Q}(\sqrt{2})$が可換環であることの証明は省略。
$$ \mathbb{Q}(\sqrt{2})\ni \frac{a+b\sqrt{2}}{c+d\sqrt{2}}\quad (a,b,c,d\in\mathbb{Q},\ a+b\sqrt{2}\not=0,\ c+d\sqrt{2}\not=0) $$
に対して
$$ \left(\frac{a+b\sqrt{2}}{c+d\sqrt{2}}\right) \left(\frac{c+d\sqrt{2}}{a+b\sqrt{2}}\right)=1 $$
が成り立つ。
したがって
$$ \left(\frac{a+b\sqrt{2}}{c+d\sqrt{2}}\right)^{-1} \in \mathbb{Q}(\sqrt{2}) $$
であることから、$\mathbb{Q}(\sqrt{2})$は体である。
以上より、$\mathbb{Q}[\sqrt{2}]\subset \mathbb{Q}(\sqrt{2})$で、$\mathbb{Q}[\sqrt{2}]$は可換環であり、$\mathbb{Q}(\sqrt{2})$は体であることがわかりました。
$\mathbb{Q}(\sqrt{2})$は$\mathbb{Q}[\sqrt{2}]$の商体と呼ばれるものです。ちなみに、$\mathbb{Q}$は$\mathbb{Z}$の商体です。
※詳細は以下を参考にしてください:
【商体への招待】整域から「分数」をつくる
このように見ていくと、$\mathbb{Q}[\sqrt{2}]$と$\mathbb{Q}(\sqrt{2})$はかなり違ったもののように見えますが、実は以下が成り立ちます。そして、ここで有理化が良い仕事をしてくれます。
$$\mathbb{Q}[\sqrt{2}]=\mathbb{Q}(\sqrt{2}) $$
$\mathbb{Q}[\sqrt{2}]\subset \mathbb{Q}(\sqrt{2})$であることは、すでに示しているので、$\mathbb{Q}[\sqrt{2}]\supset \mathbb{Q}(\sqrt{2})$を示せばよい。
$$ \mathbb{Q}(\sqrt{2})\ni \frac{a+b\sqrt{2}}{c+d\sqrt{2}}\quad (a,b,c,d\in\mathbb{Q},\ c+d\sqrt{2}\not=0) $$
に対して
$$ \frac{a+b\sqrt{2}}{c+d\sqrt{2}}=\Biggl( \frac{a+b\sqrt{2}}{c+d\sqrt{2}}\Biggr)\Biggl( \frac{c-d\sqrt{2}}{c-d\sqrt{2}}\Biggr)=\frac{ac-2bd}{c^2-2d^2}+\frac{bc-ad}{c^2-2d^2}\sqrt{2} $$
が成り立つので
$$ \frac{a+b\sqrt{2}}{c+d\sqrt{2}} \in \mathbb{Q}[\sqrt{2}] $$
である。
よって
$$ \mathbb{Q}[\sqrt{2}]\supset \mathbb{Q}(\sqrt{2}) $$
であることがわかった。
したがって
$$\mathbb{Q}[\sqrt{2}]=\mathbb{Q}(\sqrt{2}) $$
が成り立つ。
※$c+d\sqrt{2}\not=0$より、$c-d\sqrt{2}\not=0$を示すことができます。$1,\sqrt{2}$が$\mathbb{Q}$上1次独立であることは、後で述べています。
「環だと思っていたものが、実は体だった」ということが、有理化によって示せました。
今回は$\mathbb{Q}[\sqrt{2}],\ \mathbb{Q}(\sqrt{2})$をテーマとしましたが、$\mathbb{Q}[\sqrt{3}],\ \mathbb{Q}(\sqrt{3})$や$\mathbb{Q}[i],\ \mathbb{Q}(i)$などでも、同様のことができます。
また、$\mathbb{R}[i],\ \mathbb{R}(i)$についても、同様にして
$$ \mathbb{R}[i]=\mathbb{R}(i) $$
を示すことができます。
$$ \mathbb{R}[i]=\{a+bi\ |\ a,b\in \mathbb{R} \} $$
なので、$\mathbb{R}[i]$は$\mathbb{C}$であり、$\mathbb{C}$が体であることを、改めて実感できます。
ここからは、線形代数の知識を使います。
※必要な知識は以下を参考にしてください:
ベクトル空間と次元(高校数学の美しい物語)
$\mathbb{Q}(\sqrt{2})$は$\mathbb{Q}$上の$2$次元ベクトル空間である。
※$\mathbb{Q}$上のベクトル空間であることの証明は省略。
$\mathbb{Q}(\sqrt{2})=\mathbb{Q}[\sqrt{2}]$より、$\mathbb{Q}(\sqrt{2})$の任意の元は
$$ a+b\sqrt{2}\quad (a,b\in \mathbb{Q}) $$
と表せる。
また、$c,d \in \mathbb{Q}$として
$$ c+d\sqrt{2}=0 $$
とすると
$$ d\sqrt{2}=-c $$
が成り立つ。
$d=0$ならば、$c=0$である。
$d\not=0$であると仮定すると
$$ \sqrt{2}=-\frac{c}{d} $$
となるが、$\sqrt{2}$が有理数ではないことに矛盾する。
したがって
$$ c+d\sqrt{2}=0 $$
を満たすような、$c,d\in \mathbb{Q}$は$c=d=0$に限られる。
よって、$1,\sqrt{2}$は$\mathbb{Q}$上1次独立であることがわかる。
ゆえに、$\{1,\sqrt{2}\}$は$\mathbb{Q}(\sqrt{2})$の基底である。
以上より、$\mathbb{Q}(\sqrt{2})$は$\mathbb{Q}$上の$2$次元ベクトル空間であることが示された。
このことから、$\mathbb{Q}(\sqrt{2})$は$2$次体と呼ばれています。
また、同様にして、$\mathbb{Q}(\sqrt{3})$や$\mathbb{Q}(i)$なども、$\mathbb{Q}$上の$2$次元ベクトル空間であることが示せます。
ここからは、剰余環や準同型定理などの知識を使います。
$$ \mathbb{Q}[X]/(X^2-2)\cong\mathbb{Q}(\sqrt{2}) $$
$\mathbb{Q}[X]$は可換環である(※証明は省略)。
$\mathbb{Q}[X] \ni f(X)$に対して
$$ \phi(f(X))=f(\sqrt{2}) $$
として、写像$\phi:\mathbb{Q}[X] \longrightarrow \mathbb{Q}(\sqrt{2})$を定める。
任意の有理数$a,b$に対して
$$ \phi(a+bX)=a+b\sqrt{2} $$
であることから
$$ \mathrm{Im}\phi=\mathbb{Q}(\sqrt{2}) $$
である。
※$\phi$が環準同型写像であることの証明については、後述。
以下
$$ \mathrm{Ker}\phi=(X^2-2) $$
を示す。
$(X^2-2)\subset \mathrm{Ker}\phi$は明らか。
$(X^2-2)\supset \mathrm{Ker}\phi$を示す。
$f(\sqrt{2})=0\quad (f(X) \in \mathbb{Q}(X))$とする。
このとき
$$f(X)=(X^2-2)q(X)+r(X)$$
を満たす$q(X),r(X)\in \mathbb{Q}[X]$が存在する。ただし、$r(X)$の次数は$0$次または$1$次であり
$$r(X)=a+bX\quad(a,b \in \mathbb{Q})$$
と表せる。
$$ f(\sqrt{2})=r(\sqrt{2})=a+b\sqrt{2}=0 $$
であることと、$1,\sqrt{2}$は$\mathbb{Q}$上1次独立であることにより
$$ a=b=0 $$
であることがわかる。
したがって
$$ f(X)=(X^2-2)q(X) \in (X^2-2) $$
であり、$(X^2-2)\supset \mathrm{Ker}\phi$である。
したがって
$$ \mathrm{Ker}\phi=(X^2-2) $$
が示された。
準同型定理より
$$ \mathbb{Q}[X]/\mathrm{Ker}\phi \cong \mathrm{Im}\phi $$
より
$$ \mathbb{Q}[X]/(X^2-2) \cong \mathbb{Q}(\sqrt{2}) $$
が成り立つ。
以前書いた「$\phi$が準同型写像であること」の証明は、私の不勉強で、不正確でした。コメントにて、以下の記事が参考になると教えて頂きました。(かなり先になってしまうと思いますが、)多項式環について、勉強しようと思います。
参考:
代入写像が準同型であること
また、命題1の証明における$f(\sqrt{2})=r(\sqrt{2})$においても、暗に、$\phi$が準同型写像であることが使用されています。
同様にして
$$ \mathbb{Q}[X]/(X^2-3)\cong\mathbb{Q}(\sqrt{3}) $$
$$ \mathbb{Q}[X]/(X^2+1)\cong\mathbb{Q}(i) $$
なども示せます。
個人的な感想ですが、同型の左側だけ見ると、剰余環ではあるものの、有理数と不定元$X$しか出てこないのですが、右側を見ると、$\sqrt{2},\sqrt{3}$や$i$が出てくるのが面白いと思っています。
また
$$ \mathbb{R}[X]/(X^2+1)\cong\mathbb{R}(i) $$
も示すことができます。
$\mathbb{R}(i)=\mathbb{C}$であり、これが複素数の構成の一つとして知られています。
多項式環や剰余環は、Juliaというプログラミング言語のAbstractAlgebra.jlというパッケージを使って簡単に実装できるので、ぜひ遊んでみてください。$\mathbb{Q}[X]/(X^2-2)$などの手触りを感じられるかもしれません。
※参考:
【AbstractAlgebra.jl】Juliaで代数学をやってみたいんじゃ② ~剰余環を使って√2やiをつくろう~
【AbstractAlgebra.jl】Juliaで代数学をやってみたいんじゃ③ ~-1の平方根をたくさんつくろう~
2次体は、比較的性質が調べやすいので、あれこれ探求しやすく、楽しいです。
私事ですが、今年はとても忙しく、数学をする機会はほとんどありませんでした。素朴な内容ではありますが、2023年の最後に、少しだけ数学に触れることでき、よかったです。