13

積分問題集の解説(上級)

757
0

01lnxln(1+x)x(1+x)dx=58ζ(3)

級数展開により多重ゼータ値に帰着させます.

01lnxx(1+x)ln(1+x)dx=01lnxx(1+x)0xdtdx1+t=n,m0(1)m+n01xm1lnx0xtmdtdx=n,m0(1)n+m+1(n+m+1)2(m+1)=nm>0(1)nn2m=ζ(3¯)+ζ(1,2¯)=58ζ(3)

途中多重ゼータ値が出てきました.
ζ(1,2¯)=18ζ(3)
はwataruさんの下の記事で示されています.

weight3以下の多重ゼータ値を全て求める

シャッフル積,調和積により計算できるようですね.
あとは部分積分によりポリログの積分にして解くという発想がありますが試していません.
まめけびさんの調和数を含んだ級数seriesでも求められていました.

[調和数を含む級数とゼータ]
( https://mamekebi-science.com/math/series/harmonicseries-dedoelder1/ )

0π/2xtanxdx=π22(π2ln2)

これは0πsins1xsintxdxを求めてtで偏微分しt=1/2,s=1/2を代入することで求めることができます.
今回は問題を作っていた際にNKSさんから頂いた面白い計算方法を紹介します.

こういった複雑な積分を反復積分により級数にするという操作は魅力がありますね!
最近はなんらかの積分でこういった操作をできないか色々試して結構慣れてきた気がします.
やはりどんな事も回数を重ねる事が大事ですね.

01(arctanxx)3dx=32β(2)+3π8ln23π232π364

ここでβ(2)とはカタラン定数(n0(1)n(2n+1)2)です.
これは誰かが一般化できそうと話していた気がしますが結局は出来ていないっぽいですね.
僕も検討しましたがうまい具合にはできそうにない気がします.
今回の問題は結構都合の良い形になっているので簡単に解けますね.

01arctan3xx3dx=[x22arctan3x]01+3201arctan2xx2+arctan2x1+x2dx=π364+3201arctan2xx2dx
01arctan2xx2dx=π216+20π/4xcosxsinxdx=π216π4ln220π/4lnsinxdx=π216+π4ln2+2n>00π/4cos2nxndx=π216+π4ln2+β(2)
01(arctanxx)3dx=32β(2)+3π8ln23π232π364

途中対数三角関数のフーリエ級数である
ln2sinx=n>0cos2nxn
を使いました.

0π/2x4tanxdx=π216ln2+9332ζ(5)9π216ζ(3)

パット見面倒くさそうですね
実際結構面倒くさいです.
そして右辺ln2の係数が他の値と比べてみるとweightが違うように感じます.
実際wolframに入れてみるとπの指数が4であることがわかります.
多分typoですね.
これはなんとxの指数部分における一般化を出せたのでそれを証明しようと思います.
今回用いるのは次のような変形です.
0π/2xncotxdx=Re0π/2xn2i1e2ixe2ixdx=Relimm0π/21e2imx1e2ixxne2ix=limml=1m0π/2xne2ixldx
途中で無限和のようなものと積分を入れ替えましたがそもそも総和の極限が元から外にあるのでこれは項別積分しただけです.
そしていきなり出てきた極限ですが計算(部分積分と挟み込み)をしてみると0になる事がわかります.
なら最初から部分積分したlncosのフーリエ級数を用いればいいではないかとなるんですがなんとなくこっちの方が見通しがいい気がするのでこの方法で進めます.
先ほどの変形から求めるべきは次の積分であることがわかります.

0xxne2ixldx

不定積分となっていますがどちらにせよやることは同じなので区間についても一般化した感じです.
これはこの問題1の積分をIn
と置き部分積分することで漸化式に変形する事で解きます.

In=xne2ixl2il+n2ilIn1
(2il)nn!In(2il)n1(n1)!In1=(2il)n1xne2ixln!
(2il)nn!In=I0k=1n(2il)k1k!xke2ixlIn=n!(1e2ilx)(2il)n+1k=1nn!k!(2il)n+1kxke2ixl

汚すぎます.
xπ/2とし実部をとりlについての無限和を取りましょう.
補題意自体をIとおきます

I=Rel>0n!2nln+1(1(1)l)cos(πn/2)(1)lk=1nn!πk2nln+1kk!cos(π(nk)2)=n!cosπn22n(ζ(n+1)ζ(n+1))n!2nk=1nπkk!ζ(n+1k)cosπ(nk)2

汚すぎます.
今回の題意であるn=4を代入して見ましょう.
4!24(ζ(5)ζ(5¯))4!24k=14πkk!cosπ(4k)2ζ(5k)
=32(2124)ζ(5)+3π24ζ(3¯)+π416ln2=π416ln2+9332ζ(5)9π216ζ(3)
一致しましたね.
もうすでにかなり濃い内容ですが更に話したいことがあります.
反復ベータ積分についてです.

反復ベータ積分

0xt2n11t2dt=12nβnmnβmx2m1x2
0xt2n1t2dt=βnm>nx2m12mβm1x2
βn:=(2nn)22n

積分botにて次の積分が出されていました.

0xt3tantdt=x4n>0sin2nxn3βncosx8m>n>0sin2m1xn3mβm

早速証明です

0xt3tantdt=0sinxarcsin3ttdt=0xarcsin2tt0tdsdt1s2=n>012n2βn0sinxt2n10tdsdt1s2=n>014n3βn0sinxsin2nxs2n1s2ds=x4n>0sin2nxn3βncosx8m>n>0sin2m1xn3mβm
またx=π/2のとき
n>014n3βn011t2n1t2dt=π8n>01n3βn1n3

では同様の展開を4乗の場合にもやってみしょう.

0sinxarcsin4ttdt=2!0sinxarcsin2tt0t11s20sdudsdt1u2=12n>01n3βn0sinxsin2nxs2n1s20sduds1u2=x24n>0sin2nxn3βn14m>n>01n3mβm0sinxsin2n1xcosxs2n11s21s2ds=x24n>0sin2nxn3βnxcosx4m>n>0sin2m1xn3mβm+18m>n>0sin2mxm3n2βn

ここから何らかの級数が得られそうで面白いですね

0cosαxcoshx+cosβπdx=πsinhαβπsinhαπsinβπ

まず,被積分関数には次のような級数表示があります.
1coshx+cost=2sintn>0(1)n1sinnt enx
証明はいたって簡単です.

1cosx+cost=2ex(ex+eix)(ex+eix)=exisint(1ex+eit1ex+eit)=exisintn>0(1)nenx(e(n+1)ite(n+1)it)=2sintn>0(1)n1sinnt enx

では積分の証明です.

0cosαxcoshx+cosβπdx=2sinβπn>0(1)n1sinβπn0cosαxenxdx=2sinβπn>0(1)n1nsinβπnn2+α2=πsinhαβπsinhαπsinβπ

途中次の級数を使いました.
n>0nsinπxn2+a2=πsinha(πx)2sinhaπ
留数定理により証明できます.

0πsin2n+1xetxdx=(2n+1)!k=0n(t2+(2k+1)2(1+eπt)

これは高校範囲で証明可能です!
部分積分により漸化式に持ち込みます.

In+1:=0πsin2n+1xetxdx=2n+1t0πcosxsin2nxetxdx=2n+1t20π(2nsin2n1x(1sin2x)sin2n+1x)etxdx=(2n+1)2nt2In(2n+1)2t2In+1
In+1=(2n+1)2nt2+(2n+1)2In
In+1=(2n+1)!k=1n(t2+(2k+1)2)I1=(2n+1)!k=0n(t2+(2k+1)2)(1+eπt)

ここまで計算してみると区間が[0,πn]のときはsinxにより,
[0,)のときはetxにより
良い具合に漸化式を作るれることに気づきます.
実際,同様の計算により
0sin2n+1xetxdx=(2n+1)!k=0n(t2+(2k+1)2)
がわかります.
そして,これがある問題に使えます.
初級で解説した時に与えられた次の問題です.

0k=0n1x2+(2k+1)2dx=π22n+1(2n+1)n!2

次のような変形ができます.
0k=0n1x2+(2k+1)2dx=1(2n+1)!00sin2n+1yexydydx=1(2n+1)!0sin2n+1y0exydxdy=1(2n+1)!0sin2n+1xxdx
なんとこんな簡単な形に変形できるんですね.
また次のようなこともわかります.
0sin2n+1xetxdx=122n+1(1)n1i0k=02n+1(2n+1k)(1)keix(2n+12k)etxdx=i22n+1k=02n+1(2n+1k)(1)nk1ti(2n+12k)=122n+1k=02n+1(2n+1k)2n2k+1t2+(2n2k+1)2(1)nk=122nk=0n(2n+1k)2k+1t2+(2k+1)2(1)k
つまり
k=0n1t2+(2k+1)2=122n(2n+1)!k=0n(2n+1k)2k+1t2+(2k+1)2
と部分分数分解できます.

0xs11+x2sin(xsarctan1ax)(1+a2x2)s/2dx=π2e(1+a)s

これはかなり難しいです.
特徴としては前回の解説同様に
1(a+ib)sが関係してきます.

0xs+11+x2sin(xsarctan1ax)(1+a2x2)s/2dx=Im011+x2eix(a+i/x)sdx=Im1Γ(s)0eix1+x20ts1et(a+i/x)dtdx=1Γ(s)0ts1eat0xsin(xtx)1+x2dxdt
ここでxの積分を解きます.
I(t):=0xsin(x1x)1+x2dxI(t)=0cos(xtx)1+x2dxI(t)=0sin(xtx)1+x2dxxI(0)=π2e
I(t)I(t)=0sin(xtx)xdx=0sin(xtx)xdx(xtx)=0
I(t)=π2et1
なんと微分方程式によりあっさり解決できました.綺麗ですね.
先ほどの計算から始めます.
=π2eΓ(s)0ts1eatdt=π2e(a+1)s

かなり計算が多いですね.
初手から行っていたガンマ関数への変形を施せばこういった問題に対処できる可能性があると思います.
また途中でてきたI(t)は便利さんによりかなり前に解説されています.(どこで解説されていたかは覚えていません…)
その際の手法は次の記事のような置換だったと記憶しています.

Cauchy-Schlomilch変換と自己逆関数による一般化

0(sinxxarcsinasinx)2=π4Li2(a2)

今回は次の公式を使います.

Lobachevsky integral formula

f(x)=f(πx)=f(x+π)なるfについて次が成り立つ
0sin2xx2f(x)dx=0sinxxf(x)=0π/2f(x)dx
(詳細は wikipedia へ)

証明は ここ でされています.
三角関数の分数展開によるものですね.
今回の関数は条件を満たすので範囲を変えて積分していきましょう.

0π/2arcsin2asinxdx=01arcsin2ax1x2dx=n>0a2n2n2βn01x2n1x2dx=π4n>0a2nn2

種がわかってしまえば簡単ですがその種がめちゃくちゃ難しいですよね.この問題にぶつかって全く歯が立たないとなってこの解説を読めばロバーチェフスキーの積分公式が偉大に見えそうです.(経験者は語る)
そしてこれはexc3に解を与えます.
0sin2n+1xxdx=0π/2sin2nxdx=(2n)!π22n+1n!2

0xln(1+1coshx)dx=2116ζ(3)

この問題はNKSさんがすごい解法を見せてくださったのでそれを共有します!
問題2と同様に反復積分に持ち込みます.

0xln(1+1coshx)dx=0<t<xln(1+1coshx)tdtdx=0<s<t<1ln(1+s)s1s2dsdt1t2 (1coshxs,1coshtt)=0<u<s<t<1dtt1t2dss1s2du1+u (dtt1t2dtt,dss1s2)dss,duu1u2duu1u2(y=2x1+x2))=20<u<s<t<1dttdss1u(1+u2)(1+u)du=20<u<s<t<1dttdss(11+uu1+u2)=2n>0(1)n0<u<s<t<1dttdss(unu2n+1)du=2116ζ(3)

途中で都合の良い置換をするために微分方程式を解くのは凄いテクニックですよね.
この置換は反復積分においてかなり有用らしいです.
また次のような解法もあります.

0xs1coshx+costsintdx=2Γ(s)n>0(1)n1nssinnt
0xs1ln(1+1coshx)dx=2Γ(s)n>0(1)n1ns+1(cosπn21)

上のメリン変換は問題5と同様にして示せます.

01ln(1x)1+s2x2dx=arctansln(1+s2)2sn0(1)n(2n+1)2s2n

これはものすごく難しいです.
級数展開により右辺と一致することを示します.

01ln(1x)1+s2x2dx=n0(1)ns2n01x2nln(1x)dx=n0(1)ns2n2n+1(ψ(1)ψ(2n+2))=n0(1)n1s2n2n+1H2n+1=n0(1)n(2n+1)2s2n+n>0(1)n12n+1H2ns2n
arctanxln(1+x2)=(0x11+t2dx)(0x2s1+s2ds)=(0<t<s<x+0<s<t<x)dt1+t22s1+s2ds=2m,n0(1)m+nx2m+2n+3(12(n+1)(2m+2n+3)+1(2m+1)(2m+2n+3))=2mn>0(1)m12m+1x2m+1(12n+12n1)=2m>0(1)m12m+1H2mx2m+1
01ln(1x)1+s2x2dx=arctansln(1+s2)2sn0(1)n(2n+1)2s2n

難しいですね…
これの両辺をsで不定積分し適切な変形を施す事で次が示せます.
01arctansxxln1+s2x21xdx=n0(1)n(2n+1)3s2n+1
これは元々 Necrooo さんから提唱された問題でなんと|s|1でも成り立つそうです.
僕はまだ|s|1しか示せていないのでまだ謎はありますね.

投稿日:2024126
更新日:2024217
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

KBHM
KBHM
141
11223
怠惰

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中