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Grapharyに収録されているグラフを解説する(ID1~10)

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この記事では、【彳▼亍 ▼てきちょく】さんの Graphary を題材に、「なぜその式からその形が得られるか」を解説します。

収録数が多いので、10個ごとに記事を区切って解説します。今回はID1~ID10を解説します。

基本的にグラフはこの記事に載せないので、Grapharyもご参照ください。

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一覧

ID1: 円

式: (cost,sint)
難易度: ☆☆☆☆☆

もはや説明するまでもありません。むしろ、「こうすると円が描ける」ではなく、「こうなるようにcossinが定義されている」と言った方が正しいです。

ID2: 楕円ほど細長くないが丸みを帯びた円

式: (cos(tsin2t2),2|sint|sint)
難易度: ★★★★★

三角関数の中に三角関数が入っています。難しいので、x座標とy座標に分けて考えましょう。

x座標

ddtsin2t2=cos2tなので、x座標のcosの中身は狭義単調増加です。
また、sinx=xx36+と展開できるので、tsin2t223t3と近似できます。とくに、t=0での2階までの微分係数は0になるので、tに対してx座標が減少するのが遅くなります。
さらに、cosx=1x22+と展開できることに注意すると、cos(tsin2t2)t0のときにO(t6)の速さで減少することが分かります。
一方、sin2ttπ2の整数倍のときには0になるので、それまでに「追いつく」必要があるために。

!FORMULA[25][-1746788890][0]のグラフ y=cos(xsin2x2)のグラフ

y座標

2sgn(sint)|sin2t|と書くことができます。t=0では2回までの微分係数が0になります。

!FORMULA[31][934333307][0]のグラフ y=2|sinx|sinxのグラフ

x座標とy座標をまとめる

x座標もy座標も増加・減少の様子はそれぞれcos,sinと変わらないので、大まかには楕円と似た形であることが分かります。
一方、t0のときx座標が1O(t6)であるのに対し、y座標はO(t2)なので、x1=O(y3)となります。係数を計算すると、x1136y3となります。実際、グラフを比較してみると、

黒:ID2のグラフ 紫:!FORMULA[44][-450697006][0] 黒:ID2のグラフ 紫:x1=136y3

このように、0.6<y<0.8くらいの範囲で目視では区別がつかないことが分かります。

また、楕円の場合はx1=O(y2)のような形になるので、オーダーの議論からもこのグラフが楕円より外側に膨らんでいることが分かります。

黒:ID2のグラフ 緑:楕円 黒:ID2のグラフ 緑:楕円

ID3: 1と0を繰り返す線

式: y=mod(floor(x1),2)
難易度: ★☆☆☆☆

式の中にmodfloorという見慣れない関数が出てきましたが、modは「余り」、floorはガウス記号のことです。厳密な定義を書くと、こうなります。

  • 実数xに対し、xを超えない最大の整数をfloor(x)と表す。
  • 実数x0でない実数dに対し、xdfloor(xd)mod(x,d)と表す。

xdの少なくとも一方が負である場合のmod(x,d)の定義にはこれと異なるものを採用する流儀もあります。ここではDesmosでの動作と合う定義を採用しています。

これらの定義に従って、x1=2y+a+b(yは整数、a0または1z0z<1を満たす実数)とおいて式を変形すると、グラフの形は容易にわかります。

ID5: 対角線が2のひし形

式: |x|+|y|=1
難易度: ★☆☆☆☆

構成の都合上ID4よりID5を先に解説します。

式の形からx軸とy軸に関して対象であることが分かります。第1象限について考えるとこれは線分なので、あとはこの線分を折り返すことでひし形が完成します。
実際には正方形になりますが、正方形はひし形なのでひし形と言っても間違いではありません。

ID4: 1辺が1の正方形

式: |x+y|+|xy|=1
難易度: ★★☆☆☆

X=x+y,Y=xyとおくことでこの式は1つ前の式と全く同じ形になります。

あとはX,Yx,yに戻すだけですが、これはXY平面上のグラフに

  • Y=Xで反転させる
  • 原点を中心に時計回りにπ4回転させる
  • 原点を中心に12倍に縮小する

の3つの操作を順に行ったときに得られます。

これは複素数を考えると直ちにわかり、
(x+yi)(1+i)=(xy)+(x+y)i=Y+Xi
であることから従います。

ID6: 繋がった円

式: (mod(x+1,2)1)2+y21=0
難易度: ★★☆☆☆

整数aごとに、2a1x2a+1の範囲で考えると、この式は(x2a)2+y2=12と変形でき、それぞれのa1つの円を描くことがわかります。

ID7: ジグザグな線

式: y=arcsin(sin(x))
難易度: ★★☆☆☆

arcsinの値域がπ2以上π2以下であることに注意すると、実数aに対するarcsin(sin(a))は次のように作図できます。

!FORMULA[94][-1435401447][0]の作図 arcsin(sin(a))の作図

  1. y=sinxのグラフを用意し、P(a,sina)をとる。
  2. Pを通りx軸に平行な直線と、y=sinxπ2xπ2の部分との共有点がちょうど1個存在するので、それをQとする。
  3. Qを通りy軸に平行な直線とx軸との交点をRとする。
  4. Rx座標がarcsin(sin(a))である。

このような作図をすると、ギザギザが出てくることは明らかですね。

ID10: ジグザグな線

式: y=arccos(cos(x))
難易度: ★★☆☆☆

!FORMULA[111][-389695813][0]の作図 arccos(cos(a))の作図

番号が前後しますが、関連性があるので隣同士に並べました。arcsin(sin(x))と同じように作図を考えることで、Grapharyにある線が描けることが分かります。

ID8, 9: ジグザグな線

(ID8)
式: y=arcsin(cos(x))
難易度: ★★☆☆☆

(ID9)
式: y=arccos(sin(x))
難易度: ★★☆☆☆

cosx=sin(x+π2),sinx=cos(xπ2)から即座に従います。

投稿日:323
更新日:429
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nayuta_ito
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