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随伴作用素についてのいくつかの基本事項

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スピン幾何における解析学
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 コンパクトリーマン多様体上のDirac作用素はコンパクト自己随伴作用素となるので、ここではコンパクト自己随伴作用素の一般的な性質である固有空間分解について述べます。

 HをHilbert空間とし、A:dom(A)Hを線形作用素とします。またdom(A)H内でdenseとします。このとき、Aの随伴作用素Aを次のように定義します。まず定義域を
dom(A):={uH; fHvdom(A)(f,v)=(u,Av)}
とします。dom(A)がdenseなので、udom(A)に対して、fは一意的に決まるので、Au:=fと定義します。AAの形式的随伴作用素と呼びます。A形式的自己随伴であるとは、
(Au,v)=(u,Av), u,vdom(A)
となることを言います。このとき、dom(A)dom(A)となるので、一般にはAAの拡張となっています。ここで
dom(A)=dom(A)
となる場合を自己随伴と言います。

 Aレゾルベント集合とは
res(A):={λC; (Aλ):dom(A)H(Aλ)1}
となる集合のことで、この補集合をAスペクトルspec(A):=Cres(A)と定義します。

 自己随伴作用素Aに対して、spec(A)R,spec(A2)[0,)であることが知られています。さらにAがコンパクト作用素のときは以下のスペクトル定理が知られています。

コンパクト自己随伴作用素のスペクトル定理

コンパクト自己随伴作用素Aに対して、
E(λ,A):={uH; Au=λu}
と定義するとき、直交直和分解
H=nZE(λn,A)
が成り立つ。またλnR0に集積する。さらに各E(λn,A)は有限次元である。

投稿日:20231111
更新日:20231113
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Submersion
Submersion
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専門は相対論やLorentz幾何です。Einstein系の厳密解の構成や接触幾何の応用などの研究をしています。Ph.D保有者の中ではクソ雑魚の部類です。

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