この記事では
前回の記事
に引き続き局所コンパクトアーベル群上のフーリエ変換
の性質について簡単に解説していきます。
今回の記事ではポアソン和公式
について解説していきます。
と言っても証明は通常のポアソン和公式
の場合とほとんど同じなのでさっさと示しちゃいましょう。
局所コンパクトアーベル群
また
このとき
が成り立つ。
とおくと、これは任意の
というフーリエ級数展開が考えられる。
また全単射
と求まり、したがって
を得る。
なお一応注意しておくと
と同型となります。特に
ちなみにこの群
例えば
と表せる加法群、あるいは同じことですが正則な正方行列
を用いて
このとき
の体積は行列式
と表せる(ただし
とおくと
が成り立つ。
この公式自体は標準的なポアソン和公式
において
を確かめることでも示せますが、そんなまどろっこしいことしなくても直接上の公式が導けるというのは少し楽(?)ですね。
ちなみに代数体
また
と表せ、これによってあるテータ関数の変換公式
や完備化された部分デデキントゼータ関数の関数等式
が得られたりします。
詳しい話についてはまた気が向いたときに記事にしようと思ってます。
以上が局所コンパクトアーベル群上のポアソン和公式の概説となります。
ただ上で紹介したポアソン和公式の証明はあまり一般的ではありません。具体的には上では
という形の等号を示すのに基本領域
これは通常のポアソン和公式の証明の延長として自然な方法だとは思うのですが、そもそも格子の基本領域という対象について詳しく触れられている文献すらあまり見かけませんでした。
では一般的にはどうしているのかと言うと、
第一回の記事
でもちらっと触れたリース・マルコフ・角谷の表現定理と呼ばれる次の主張を用います。
このとき
を満たすようなラドン測度
特に
このとき
を満たすようなものに対しある定数
が成り立つ。
これを用いるといま考えている等式
の一般化であるヴェイユの公式が得られます。
このとき任意の
とおくと、
が成り立つ(ただし
またこれが成り立つような
ちなみに以下の証明は
という事実からそれは
という写像を考えると、これは
が成り立つ。したがって
とできる。
いまヴェイユの公式を用いると次のようなポアソン和公式の一般化が得られます。
上の条件下において、いい感じの関数
が成り立つ。
いま、一般にハウスドルフ位相群の離散部分群は閉であることが知られているので、局所コンパクトアーベル群
したがってヴェイユの公式から
が成り立っていたわけですが、ここで
と言っても話は簡単で、
とおくと任意の
となることから
が成り立つので、この等式
特にこれは定理1の証明で用いた押し出し測度
以上がポアソン和公式に関する概説でした。
ちなみにポアソン和公式の非可換群への一般化としてセルバーグの跡公式
というものがあるようですが、詳しいことは各々で調べてみてください。
またこれを以ってこのシリーズは一旦終わりとなります。
まだ上のセルバーグの跡公式とか
第二回の記事
でも言及した表現論とかスペクトル理論とかのように深堀りしたい話題はいくらでもあるのですが、このシリーズを書き始めた当初の目標であったポアソン和公式の話はできたので一先ずここで区切りとし、そこら辺の発展的な話題についてはまた気が向いたときに調べていきたいと思います。
とりあえず今回の記事はこんなところで。では