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現代数学解説
文献あり

WP-Bailey対

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Bailey対
βn=k=0nαk(q;q)nk(aq;q)n+k
を満たす数列の組(αn,βn)として定義されるが, その一般化としてWP-Bailey対が以下のように定義される.

βn=k=0n(w/a;q)nk(w;q)n+k(q;q)nk(aq;q)n+kαk
を満たす組(αn,βn)(a,w)に関するWP-Bailey対という.

これは定義からw=0の場合にaに関するBailey対に一致する. 定義は
βn=(w,w/a;q)n(aq,q;q)nk=0n(qn,wqn;q)k(aq1n/w,aqn+1;q)k(aqw)kαk
とも書くことができる. Bressoudの反転公式 により, (αn,βn)がWP-Bailey対であることは,
αn=1aq2n1ak=0n1wq2k1w(a/w;q)nk(a;q)n+k(q;q)nk(wq;q)n+k(wa)nkβk
を満たすことと同値である. 次はBaileyの補題のWP-Bailey対への一般化である.

Andrews(2000)

v=awq/bcとする. (αn,βn)(a,w)に関するWP-Bailey対であるとき,
αn:=(b,c;q)n(aq/b,aq/c;q)n(vw)nαnβn:=(vb/a,vc/a;q)n(aq/b,aq/c;q)nk=0n(b,c;q)k(vb/a,vc/a;q)k1wq2k1w(v/w;q)nk(v;q)n+k(q;q)nk(wq;q)n+k(vw)kβk
(a,v)に関するWP-Bailey対である.

αn=1aq2n1ak=0n1vq2k1v(a/v;q)nk(a;q)n+k(q;q)nk(vq;q)n+k(va)nkβk
を示せば良い. 右辺は
k=0n1vq2k1v(a/v;q)nk(a;q)n+k(q;q)nk(vq;q)n+k(va)nkβk=k=0n1vq2k1v(a/v;q)nk(a;q)n+k(q;q)nk(vq;q)n+k(va)nk(vb/a,vc/a;q)k(aq/b,aq/c;q)kj=0k(b,c;q)j(vb/a,vc/a;q)j1wq2j1w(v/w;q)kj(v;q)k+j(q;q)kj(wq;q)k+j(vw)jβj=j=0n1wq2j1w(b,c;q)j(vb/a,vc/a;q)j(vw)jβjk=jn1vq2k1v(a/v;q)nk(a;q)n+k(q;q)nk(vq;q)n+k(va)nk(vb/a,vc/a;q)k(aq/b,aq/c;q)k(v/w;q)kj(v;q)k+j(q;q)kj(wq;q)k+j
ここで, Jacksonの8ϕ7和公式 より,
k=jn1vq2k1v(a/v;q)nk(a;q)n+k(q;q)nk(vq;q)n+k(va)nk(vb/a,vc/a;q)k(aq/b,aq/c;q)k(v/w;q)kj(v;q)k+j(q;q)kj(wq;q)k+j=(vb/a,vc/a;q)j(v;q)2j(a;q)n+j(a/v;q)nj(aq/b,aq/c;q)j(wq;q)2j(vq;q)n+j(q;q)nj1vq2j1v(va)njk=0nj1vq2k+2j1vq2jqk(qjn,aqn+j,vbqj/a,vcqj/a,v/w,vq2j;q)k(vq1+jn/a,vq1+n+j,aqj+1/b,aqj+1/c,wq2j+1,q;q)k=(vb/a,vc/a;q)j(v;q)2j(a;q)n+j(a/v;q)nj(aq/b,aq/c;q)j(wq;q)2j(vq;q)n+j(q;q)nj1vq2j1v(va)nj(vq2j+1,bqj,cqj,a/w;q)nj(aqj+1/b,aqj+1/c,wq2j+1,a/v;q)nj=(b,c;q)n(vb/a,vc/a;q)j(a;q)n+j(a/w;q)nj(aq/b,aq/c;q)n(b,c;q)j(wq;q)n+j(q;q)nj(va)nj
であるから, これを代入すると,
1aq2n1aj=0n1wq2j1w(b,c;q)j(vb/a,vc/a;q)j(vw)jβjk=jn1vq2k1v(a/v;q)nk(a;q)n+k(q;q)nk(vq;q)n+k(va)nk(vb/a,vc/a;q)k(aq/b,aq/c;q)k(v/w;q)kj(v;q)k+j(q;q)kj(wq;q)k+j=1aq2n1a(b,c;q)n(aq/b,aq/c;q)n(vw)nj=0n1wq2j1wβj(a;q)n+j(a/w;q)nj(wq;q)n+j(q;q)nj(wa)nj=(b,c;q)n(aq/b,aq/c;q)n(vw)nαn=αn
となって示すべきことが得られた.

Kroneckerのデルタを用いて,
αn:=1aq2n1a(a,a/w;q)n(wq,q;q)n(wa)nβn:=δn,0
とすると, (αn,βn)(a,w)に関するWP-Bailey対である. これにWP-Baileyの補題を適用すると, v=awq/bcとして,
αn=1aq2n1a(a,b,c,a/w;q)n(aq/b,aq/c,wq,q;q)n(va)nβn=(vb/a,vc/a,v,v/w;q)n(aq/b,aq/c,wq,q;q)n
(a,v)に関するWP-Bailey対である. これはSinghによって1994年に発見されたものである. 上のWP-Bailey対にもう一度Baileyの補題を適用すると, u=avq/deとして,
αn=1aq2n1a(a,b,c,d,e,a/w;q)n(aq/b,aq/c,aq/d,aq/e,wq,q;q)n(ua)nβn=(ud/a,ue/a;q)n(aq/d,aq/e;q)nk=01vq2k1v(vb/a,vc/a,d,e,v,v/w;q)k(u/v;q)nk(u;q)n+k(aq/b,aq/c,ud/a,ue/a,wq,q;q)k(q;q)nk(vq;q)n+k(uv)k=(ud/a,ue/a,u/v,u;q)n(aq/d,aq/e,vq,q;q)n10ϕ9[v,vq,vq,vb/a,vc/a,d,e,v/w,uqn,qnv,v,aq/b,aq/c,ud/a,ue/a,vq1n/u,vqn+1;q]
(a,u)に関するWP-Bailey対である.
0n(u/a;q)nk(u;q)n+k(q;q)nk(aq;q)n+kαk=βn
を書き換えると,
10ϕ9[a,aq,aq,b,c,d,e,a/w,uqn,qna,a,aq/b,aq/c,aq/d,aq/e,wq,aq1n/u,aqn+1;q]=(ud/a,ue/a,u/v,aq;q)n(aq/d,aq/e,vq,u/a;q)n10ϕ9[v,vq,vq,vb/a,vc/a,d,e,v/w,uqn,qnv,v,aq/b,aq/c,ud/a,ue/a,vq1n/u,vqn+1;q]
が得られる. これは Baileyの10ϕ9変換公式 である.

応用の際には, 定理1をvを用いずに表しておくこと便利なこともあるかもしれない. それは以下のようになる.

(αn,βn)(a,w)に関するWP-Bailey対であるとき,
αn:=(b,c;q)n(aq/b,aq/c;q)n(aqbc)nαnβn:=(wq/b,wq/c;q)n(aq/b,aq/c;q)nk=0n(b,c;q)k(wq/b,wq/c;q)k1wq2k1w(aq/bc;q)nk(awq/bc;q)n+k(q;q)nk(wq;q)n+k(aqbc)kβk
(a,awq/bc)に関するWP-Bailey対である.

WP-Bailey対の様々な応用については, これからまとめていきたいと思う.

参考文献

[1]
G. E. Andrews, Bailey's transform, lemma, chains and tree, Proceeding of Special Functions Conference, 2000
[2]
G. E. Andrews, The WP-Bailey Tree and its Implications, J. London Math. Soc., 2002, 529-549
投稿日:20日前
更新日:8日前
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Wataru
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超幾何関数, 直交関数, 多重ゼータ値などに興味があります

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