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二項関係 ⑩

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$$$$

Def.

定義 反射的な関係

$A$ を集合とし、$R\subseteq A\times A$$A$ 上の二項関係とする。
$R$ が反射的であるとは、
$$ \forall a\in A\ ((a,a)\in R) $$
が成り立つことをいう。

記号 $aRb$ による表し方

$A$ を集合とし、$R\subseteq A\times A$$A$ 上の二項関係とする。
$a,b\in A$ に対して、
$$ aRb $$
とは
$$ (a,b)\in R $$
を意味する。特に、$a\in A$ に対して、
$$ aRa \quad \Longleftrightarrow\quad (a,a)\in R $$
である。したがって、
$$ R\text{ が反射的である} \ \Longleftrightarrow\ \forall a\in A\ (aRa) $$
である。

反射的な二項関係の例
  1. 等号関係$=$
    $A$ を集合とし、$A$ 上の二項関係 $R$
    $$ \Delta_A:=\{(a,b)\in A\times A\mid a=b\} $$
    で定める。
    このとき、任意の $a\in A$ に対して、等号$=$
    $$ a=a $$
    であるから、
    $$ (a,a)\in R $$
    が成り立つ。したがって、$R$ は反射的である。
    $ $
  2. 通常の大小関係 $\le$
    $\mathbb R$ 上の二項関係 $\le$ を考える。すなわち、
    $$ R_{\le}:=\{(x,y)\in\mathbb R\times\mathbb R\mid x\le y\} $$
    について、任意の $x\in\mathbb R$ に対して
    $$ x\le x $$
    が成り立つ。
    したがって、$\le$$\mathbb R$ 上の反射的な二項関係である。
    $ $
  3. 包含関係 $\subseteq$
    $X$ を集合とし、$\mathcal P(X)$ 上の二項関係 $\subseteq$ を考える。すなわち、
    $$ R_{\subseteq}:=\{(A,B)\in\mathcal P(X)\times\mathcal P(X)\mid A\subseteq B\} $$
    について、任意の $A\in\mathcal P(X)$ に対して
    $$ A\subseteq A $$
    が成り立つ( 証明はコチラ )。
    したがって、$\subseteq$$\mathcal P(X)$ 上の反射的な二項関係である。
    $ $
  4. 整除関係
    $\mathbb N_{\ge1}$ 上の二項関係 $\mid$ を考える。すなわち、
    $$ R_{\mid}:=\{(a,b)\in\mathbb N_{\ge1}\times\mathbb N_{\ge1}\mid a\mid b\} $$
    について、$a,b\in\mathbb N_{\ge1}$ に対して、$a\mid b$ とは、ある $k\in\mathbb N_{\ge1}$ が存在して
    $$ b=ak $$
    と書けることをいう。
    任意の $a\in\mathbb N_{\ge1}$ に対して
    $$ a=a\cdot 1 $$
    であるから、
    $$ a\mid a $$
    が成り立つ。
    したがって、整除関係 $\mid$$\mathbb N_{\ge1}$ 上の反射的な二項関係である。
    $ $
  5. 空集合上の空関係
    $A=\varnothing$ とし、$R=\varnothing\subseteq A\times A$ とする。
    このとき、反射性の条件は
    $$ \forall a\in\varnothing\ ((a,a)\in R) $$
    である。これは空虚に真である。
    したがって、空集合上の空関係 $\varnothing$ は反射的である。
    $ $
  6. 全体関係
    $A$ を集合とする。このとき、$R=A\times A$$A$ 上の反射的な関係である。
    実際、任意に $a\in A$ をとる。
    このとき、$a\in A$ かつ $a\in A$ であるから、直積の定義より
    $$ (a,a)\in R=A\times A $$
    が成り立つ。したがって、
    $$ \forall a\in A\ ((a,a)\in R) $$
    が成り立つ。
    ゆえに、全体関係 $A\times A$ は反射的である。
    $ $
定義 対称的な関係

$A$ を集合とし、$R\subseteq A\times A$$A$ 上の二項関係とする。
$R$ が対称的であるとは、
$$ \forall a\in A\ \forall b\in A\ \bigl((a,b)\in R\Rightarrow (b,a)\in R\bigr) $$
が成り立つことをいう。

記号 $aRb$ による表し方

$A$ を集合とし、$R\subseteq A\times A$$A$ 上の二項関係とする。
$a,b\in A$ に対して、
$$ aRb $$
とは
$$ (a,b)\in R $$
を意味する。したがって、
$$ R\text{ が対称的である} \ \Longleftrightarrow\ \forall a\in A\ \forall b\in A\ (aRb\Rightarrow bRa) $$
である。

対称性の意味

対称性は、$a$ から $b$ へ関係が成り立つならば、逆向きに $b$ から $a$ へも関係が成り立つ、という性質である。
つまり、対称性は
$$ (a,b)\in R $$
が成り立つときに、必ず
$$ (b,a)\in R $$
も成り立つことを要求する。
ただし、最初から
$$ (a,b)\in R $$
が成り立たない場合には、条件文
$$ (a,b)\in R\Rightarrow (b,a)\in R $$
は真である。

対称的な二項関係の例
  1. 等号から定まる関係
    $A$ を集合とし、$A$ 上の二項関係 $\Delta_A$
    $$ \Delta_A:=\{(a,b)\in A\times A\mid a=b\} $$
    で定める。
    任意の $a,b\in A$ に対して、$(a,b)\in\Delta_A$ とする。
    このとき、$\Delta_A$ の定義より
    $$ a=b $$
    である。等号の対称性より
    $$ b=a $$
    であるから、
    $$ (b,a)\in\Delta_A $$
    が成り立つ。
    したがって、$\Delta_A$ は対称的である。
    $ $
  2. 実数上の差の絶対値で定まる関係
    $\mathbb R$ 上の二項関係 $R$
    $$ R:=\{(x,y)\in\mathbb R\times\mathbb R\mid |x-y|\le 1\} $$
    で定める。
    任意の $x,y\in\mathbb R$ に対して、$(x,y)\in R$ とする。
    このとき、$R$ の定義より
    $$ |x-y|\le 1 $$
    である。
    絶対値の性質より
    $$ |y-x|=|x-y| $$
    であるから、
    $$ |y-x|\le 1 $$
    が成り立つ。
    したがって、
    $$ (y,x)\in R $$
    である。ゆえに、$R$ は対称的である。
    $ $
  3. 合同関係
    $n\in\mathbb N_{\ge1}$ を固定する。
    $\mathbb Z$ 上の二項関係 $R$
    $$ R:=\{(a,b)\in\mathbb Z\times\mathbb Z\mid n\mid (a-b)\} $$
    で定める。
    任意の $a,b\in\mathbb Z$ に対して、$(a,b)\in R$ とする。
    このとき、$R$ の定義より
    $$ n\mid(a-b) $$
    である。
    したがって、ある $k\in\mathbb Z$ が存在して
    $$ a-b=nk $$
    と書ける。
    このとき、
    $$ b-a=-(a-b)=-nk=n(-k) $$
    であり、$-k\in\mathbb Z$ であるから、
    $$ n\mid(b-a) $$
    が成り立つ。
    したがって、
    $$ (b,a)\in R $$
    である。
    ゆえに、$R$ は対称的である。
    $ $
  4. 空関係
    $A$ を集合とし、$A$ 上の二項関係 $R$
    $$ R:=\varnothing $$
    で定める。
    任意の $a,b\in A$ に対して、
    $$ (a,b)\in R $$
    は成り立たない。
    したがって、条件文
    $$ (a,b)\in R\Rightarrow (b,a)\in R $$
    は常に真である。
    ゆえに、空関係 $\varnothing$ は対称的である。
    $ $
  5. 全体関係
    $A$ を集合とし、$A$ 上の二項関係 $R$
    $$ R:=A\times A $$
    で定める。
    任意の $a,b\in A$ に対して、$(a,b)\in R$ とする。
    このとき、$a,b\in A$ であるから、直積の定義より
    $$ (b,a)\in A\times A $$
    が成り立つ。
    したがって、
    $$ (b,a)\in R $$
    である。
    ゆえに、全体関係 $A\times A$ は対称的である。
    $ $
対称的ではない二項関係の例
  1. 通常の大小関係 $\le$ は対称的ではない
    $\mathbb R$ 上の二項関係 $R$
    $$ R:=\{(x,y)\in\mathbb R\times\mathbb R\mid x\le y\} $$
    で定める。
    このとき、
    $$ 1\le 2 $$
    であるから、
    $$ (1,2)\in R $$
    である。
    しかし、
    $$ 2\le 1 $$
    は成り立たないので、
    $$ (2,1)\notin R $$
    である。
    したがって、$R$ は対称的ではない。
    $ $
  2. 整除関係 $\mid$ は対称的ではない
    $\mathbb N_{\ge1}$ 上の二項関係 $R$
    $$ R:=\{(a,b)\in\mathbb N_{\ge1}\times\mathbb N_{\ge1}\mid a\mid b\} $$
    で定める。
    このとき、
    $$ 2\mid 4 $$
    であるから、
    $$ (2,4)\in R $$
    である。
    しかし、
    $$ 4\nmid 2 $$
    であるから、
    $$ (4,2)\notin R $$
    である。
    したがって、整除関係 $\mid$$\mathbb N_{\ge1}$ 上で対称的ではない。
    $ $
定義 反対称的な関係

$A$ を集合とし、$R\subseteq A\times A$$A$ 上の二項関係とする。
$R$ が反対称的であるとは、
$$ \forall a\in A\ \forall b\in A\ \bigl(((a,b)\in R\land (b,a)\in R)\Rightarrow a=b\bigr) $$
が成り立つことをいう。

記号 $aRb$ による表し方

$A$ を集合とし、$R\subseteq A\times A$$A$ 上の二項関係とする。
$a,b\in A$ に対して、
$$ aRb $$
とは
$$ (a,b)\in R $$
を意味する。
したがって、
$$ R\text{ が反対称的である} \ \Longleftrightarrow\ \forall a\in A\ \forall b\in A\ ((aRb\land bRa)\Rightarrow a=b) $$
である。

反対称性の意味

反対称性は、$a$ から $b$ へ関係が成り立ち、さらに逆向きに $b$ から $a$ へも関係が成り立つならば、$a$$b$ は同じ元でなければならない、という性質である。
つまり、反対称性は
$$ (a,b)\in R \quad\text{かつ}\quad (b,a)\in R $$
が同時に成り立つときに、必ず
$$ a=b $$
が成り立つことを要求する。
言い換えると、$a\neq b$ である異なる $2$ つの元については、
$$ (a,b)\in R \quad\text{かつ}\quad (b,a)\in R $$
が同時には成り立たない。

対称的でないこととの違い

反対称的であることは、対称的でないことを意味するわけではない。
反対称性は、
$$ (a,b)\in R\land (b,a)\in R $$
が成り立つならば
$$ a=b $$
である、という条件である。
したがって、$a=b$ の場合には、
$$ (a,a)\in R $$
が成り立つことは反対称性に反しない。

反対称的な二項関係の例
  1. 等号から定まる関係
    $A$ を集合とし、$A$ 上の二項関係 $\Delta_A$
    $$ \Delta_A:=\{(a,b)\in A\times A\mid a=b\} $$
    で定める。
    任意の $a,b\in A$ に対して、
    $$ (a,b)\in\Delta_A\land(b,a)\in\Delta_A $$
    とする。
    このとき、特に
    $$ (a,b)\in\Delta_A $$
    であるから、$\Delta_A$ の定義より
    $$ a=b $$
    が成り立つ。
    したがって、$\Delta_A$ は反対称的である。
    $ $
  2. 通常の大小関係 $\le$
    $\mathbb R$ 上の二項関係 $R$
    $$ R:=\{(x,y)\in\mathbb R\times\mathbb R\mid x\le y\} $$
    で定める。
    任意の $x,y\in\mathbb R$ に対して、
    $$ (x,y)\in R\land(y,x)\in R $$
    とする。
    このとき、$R$ の定義より
    $$ x\le y\land y\le x $$
    である。
    実数の大小関係 $\le$ の反対称性より
    $$ x=y $$
    が成り立つ。
    したがって、$R$ は反対称的である。
    $ $
  3. 包含関係 $\subseteq$
    $X$ を集合とし、$\mathcal P(X)$ 上の二項関係 $R$
    $$ R:=\{(A,B)\in\mathcal P(X)\times\mathcal P(X)\mid A\subseteq B\} $$
    で定める。
    任意の $A,B\in\mathcal P(X)$ に対して、
    $$ (A,B)\in R\land(B,A)\in R $$
    とする。
    このとき、$R$ の定義より
    $$ A\subseteq B\land B\subseteq A $$
    である。
    集合の外延性より
    $$ A=B $$
    が成り立つ( 証明はコチラ )。
    したがって、$R$ は反対称的である。
    $ $
  4. 整除関係 $\mid$
    $\mathbb N_{\ge1}$ 上の二項関係 $R$
    $$ R:=\{(a,b)\in\mathbb N_{\ge1}\times\mathbb N_{\ge1}\mid a\mid b\} $$
    で定める。
    任意の $a,b\in\mathbb N_{\ge1}$ に対して、
    $$ (a,b)\in R\land(b,a)\in R $$
    とする。
    このとき、$R$ の定義より
    $$ a\mid b\land b\mid a $$
    である。
    したがって、ある $k,l\in\mathbb N_{\ge1}$ が存在して
    $$ b=ak,\qquad a=bl $$
    と書ける。
    これらを代入すると、
    $$ a=bl=(ak)l=a(kl) $$
    である。
    $a\in\mathbb N_{\ge1}$ であるから、$a\neq0$ である。よって
    $$ 1=kl $$
    である。
    $k,l\in\mathbb N_{\ge1}$ より、
    $$ k=1,\qquad l=1 $$
    である。
    したがって、
    $$ b=a $$
    が成り立つ。
    ゆえに、$R$ は反対称的である。
    $ $
  5. 空関係
    $A$ を集合とし、$A$ 上の二項関係 $R$
    $$ R:=\varnothing $$
    で定める。
    任意の $a,b\in A$ に対して、
    $$ (a,b)\in R\land(b,a)\in R $$
    は成り立たない。
    したがって、条件文
    $$ \bigl((a,b)\in R\land(b,a)\in R\bigr)\Rightarrow a=b $$
    は常に真である。
    ゆえに、空関係 $\varnothing$ は反対称的である。
    $ $
  6. 狭義の大小関係 $<$
    $\mathbb R$ 上の二項関係 $R$
    $$ R:=\{(x,y)\in\mathbb R\times\mathbb R\mid x< y\} $$
    で定める。
    任意の $x,y\in\mathbb R$ に対して、
    $$ (x,y)\in R\land(y,x)\in R $$
    とする。
    このとき、$R$ の定義より
    $$ x< y\land y< x $$
    である。
    しかし、実数の大小関係において
    $$ x< y\land y< x $$
    は成り立たない。
    したがって、前件
    $$ (x,y)\in R\land(y,x)\in R $$
    は常に偽である。
    よって、条件文
    $$ \bigl((x,y)\in R\land(y,x)\in R\bigr)\Rightarrow x=y $$
    は常に真である。
    ゆえに、$R$ は反対称的である。
    $ $
反対称的ではない二項関係の例
  1. 実数上の差の絶対値で定まる関係
    $\mathbb R$ 上の二項関係 $R$
    $$ R:=\{(x,y)\in\mathbb R\times\mathbb R\mid |x-y|\le1\} $$
    で定める。
    このとき、
    $$ |0-1|=1\le1 $$
    であるから、
    $$ (0,1)\in R $$
    である。
    また、
    $$ |1-0|=1\le1 $$
    であるから、
    $$ (1,0)\in R $$
    である。
    しかし、
    $$ 0\neq1 $$
    である。
    したがって、
    $$ (0,1)\in R\land(1,0)\in R $$
    であるにもかかわらず、
    $$ 0=1 $$
    は成り立たない。
    ゆえに、$R$ は反対称的ではない。
    $ $
  2. 合同関係
    $n\in\mathbb N$ とし、$n\ge2$ とする。
    $\mathbb Z$ 上の二項関係 $R$
    $$ R:=\{(a,b)\in\mathbb Z\times\mathbb Z\mid n\mid(a-b)\} $$
    で定める。
    このとき、
    $$ n\mid(0-n) $$
    であるから、
    $$ (0,n)\in R $$
    である。
    また、
    $$ n\mid(n-0) $$
    であるから、
    $$ (n,0)\in R $$
    である。
    しかし、$n\ge2$ より
    $$ 0\neq n $$
    である。
    したがって、
    $$ (0,n)\in R\land(n,0)\in R $$
    であるにもかかわらず、
    $$ 0=n $$
    は成り立たない。
    ゆえに、$R$ は反対称的ではない。
    $ $
  3. 全体関係
    $A:=\{1,2\}$ とし、$A$ 上の二項関係 $R$
    $$ R:=A\times A $$
    で定める。
    このとき、
    $$ (1,2)\in R $$
    であり、また
    $$ (2,1)\in R $$
    である。
    しかし、
    $$ 1\neq2 $$
    である。
    したがって、
    $$ (1,2)\in R\land(2,1)\in R $$
    であるにもかかわらず、
    $$ 1=2 $$
    は成り立たない。
    ゆえに、$R$ は反対称的ではない。
    $ $
  4. 同じ余りをもつ関係
    $\mathbb Z$ 上の二項関係 $R$
    $$ R:=\{(a,b)\in\mathbb Z\times\mathbb Z\mid a-b\text{ は偶数である}\} $$
    で定める。
    このとき、
    $$ 1-3=-2 $$
    は偶数であるから、
    $$ (1,3)\in R $$
    である。
    また、
    $$ 3-1=2 $$
    は偶数であるから、
    $$ (3,1)\in R $$
    である。
    しかし、
    $$ 1\neq3 $$
    である。
    したがって、
    $$ (1,3)\in R\land(3,1)\in R $$
    であるにもかかわらず、
    $$ 1=3 $$
    は成り立たない。
    ゆえに、$R$ は反対称的ではない。
    $ $
定義 推移的な関係

$A$ を集合とし、$R\subseteq A\times A$$A$ 上の二項関係とする。
$R$ が推移的であるとは、
$$ \forall a\in A\ \forall b\in A\ \forall c\in A\ \bigl(((a,b)\in R\land(b,c)\in R)\Rightarrow(a,c)\in R\bigr) $$
が成り立つことをいう。

記号 $aRb$ による表し方

$A$ を集合とし、$R\subseteq A\times A$$A$ 上の二項関係とする。
$a,b\in A$ に対して、
$$ aRb $$
とは
$$ (a,b)\in R $$
を意味する。
したがって、
$$ R\text{ が推移的である} \ \Longleftrightarrow\ \forall a\in A\ \forall b\in A\ \forall c\in A\ ((aRb\land bRc)\Rightarrow aRc) $$
である。

推移性の意味

推移性は、$a$ から $b$ へ関係が成り立ち、さらに $b$ から $c$ へ関係が成り立つならば、$a$ から $c$ へも関係が成り立つ、という性質である。
つまり、推移性は
$$ (a,b)\in R \quad\text{かつ}\quad (b,c)\in R $$
が同時に成り立つときに、必ず
$$ (a,c)\in R $$
が成り立つことを要求する。
ただし、
$$ (a,b)\in R\land(b,c)\in R $$
が成り立たない場合には、条件文
$$ \bigl((a,b)\in R\land(b,c)\in R\bigr)\Rightarrow(a,c)\in R $$
は真である(空虚に真)。

推移的な二項関係の例
  1. 等号から定まる関係
    $A$ を集合とし、$A$ 上の二項関係 $\Delta_A$
    $$ \Delta_A:=\{(a,b)\in A\times A\mid a=b\} $$
    で定める。
    任意の $a,b,c\in A$ に対して、
    $$ (a,b)\in\Delta_A\land(b,c)\in\Delta_A $$
    とする。
    このとき、$\Delta_A$ の定義より
    $$ a=b\land b=c $$
    である。
    等号の推移性より
    $$ a=c $$
    が成り立つ。
    したがって、
    $$ (a,c)\in\Delta_A $$
    である。
    ゆえに、$\Delta_A$ は推移的である。
    $ $
  2. 通常の大小関係 $\le$
    $\mathbb R$ 上の二項関係 $R$
    $$ R:=\{(x,y)\in\mathbb R\times\mathbb R\mid x\le y\} $$
    で定める。
    任意の $x,y,z\in\mathbb R$ に対して、
    $$ (x,y)\in R\land(y,z)\in R $$
    とする。
    このとき、$R$ の定義より
    $$ x\le y\land y\le z $$
    である。
    実数の大小関係 $\le$ の推移性より
    $$ x\le z $$
    が成り立つ。
    したがって、
    $$ (x,z)\in R $$
    である。
    ゆえに、$R$ は推移的である。
    $ $
  3. 狭義の大小関係 $<$
    $\mathbb R$ 上の二項関係 $R$
    $$ R:=\{(x,y)\in\mathbb R\times\mathbb R\mid x< y\} $$
    で定める。
    任意の $x,y,z\in\mathbb R$ に対して、
    $$ (x,y)\in R\land(y,z)\in R $$
    とする。
    このとき、$R$ の定義より
    $$ x< y\land y< z $$
    である。
    実数の大小関係 $<$ の推移性より
    $$ x< z $$
    が成り立つ。
    したがって、
    $$ (x,z)\in R $$
    である。
    ゆえに、$R$ は推移的である。
    $ $
  4. 包含関係 $\subseteq$
    $X$ を集合とし、$\mathcal P(X)$ 上の二項関係 $R$
    $$ R:=\{(A,B)\in\mathcal P(X)\times\mathcal P(X)\mid A\subseteq B\} $$
    で定める。
    任意の $A,B,C\in\mathcal P(X)$ に対して、
    $$ (A,B)\in R\land(B,C)\in R $$
    とする。
    このとき、$R$ の定義より
    $$ A\subseteq B\land B\subseteq C $$
    である。
    包含関係 $\subseteq$ の推移性より
    $$ A\subseteq C $$
    が成り立つ( 証明はコチラ )。
    したがって、
    $$ (A,C)\in R $$
    である。
    ゆえに、$R$ は推移的である。
    $ $
  5. 整除関係 $\mid$
    $\mathbb N_{\ge1}$ 上の二項関係 $R$
    $$ R:=\{(a,b)\in\mathbb N_{\ge1}\times\mathbb N_{\ge1}\mid a\mid b\} $$
    で定める。
    任意の $a,b,c\in\mathbb N_{\ge1}$ に対して、
    $$ (a,b)\in R\land(b,c)\in R $$
    とする。
    このとき、$R$ の定義より
    $$ a\mid b\land b\mid c $$
    である。
    したがって、ある $k,l\in\mathbb N_{\ge1}$ が存在して
    $$ b=ak,\qquad c=bl $$
    と書ける。
    これらを代入すると、
    $$ c=bl=(ak)l=a(kl) $$
    である。
    $k,l\in\mathbb N_{\ge1}$ であるから、
    $$ kl\in\mathbb N_{\ge1} $$
    である。
    したがって、
    $$ a\mid c $$
    が成り立つ。
    ゆえに、
    $$ (a,c)\in R $$
    である。
    したがって、整除関係 $\mid$$\mathbb N_{\ge1}$ 上で推移的である。
    $ $
  6. 空関係
    $A$ を集合とし、$A$ 上の二項関係 $R$
    $$ R:=\varnothing $$
    で定める。
    任意の $a,b,c\in A$ に対して、
    $$ (a,b)\in R\land(b,c)\in R $$
    は成り立たない。
    したがって、条件文
    $$ \bigl((a,b)\in R\land(b,c)\in R\bigr)\Rightarrow(a,c)\in R $$
    は常に真である。
    ゆえに、空関係 $\varnothing$ は推移的である。
    $ $
  7. 全体関係
    $A$ を集合とし、$A$ 上の二項関係 $R$
    $$ R:=A\times A $$
    で定める。
    任意の $a,b,c\in A$ に対して、
    $$ (a,b)\in R\land(b,c)\in R $$
    とする。
    このとき、$a,c\in A$ であるから、直積の定義より
    $$ (a,c)\in A\times A $$
    である。
    したがって、
    $$ (a,c)\in R $$
    である。
    ゆえに、全体関係 $A\times A$ は推移的である。
    $ $
推移的ではない二項関係の例
  1. 実数上の差の絶対値で定まる関係
    $\mathbb R$ 上の二項関係 $R$
    $$ R:=\{(x,y)\in\mathbb R\times\mathbb R\mid |x-y|\le1\} $$
    で定める。
    このとき、
    $$ |0-1|=1\le1 $$
    であるから、
    $$ (0,1)\in R $$
    である。
    また、
    $$ |1-2|=1\le1 $$
    であるから、
    $$ (1,2)\in R $$
    である。
    しかし、
    $$ |0-2|=2>1 $$
    であるから、
    $$ (0,2)\notin R $$
    である。
    したがって、
    $$ (0,1)\in R\land(1,2)\in R $$
    であるにもかかわらず、
    $$ (0,2)\in R $$
    は成り立たない。
    ゆえに、$R$ は推移的ではない。
    $ $
  2. 隣り合う整数である関係
    $\mathbb Z$ 上の二項関係 $R$
    $$ R:=\{(a,b)\in\mathbb Z\times\mathbb Z\mid b=a+1\} $$
    で定める。
    このとき、
    $$ 1=0+1 $$
    であるから、
    $$ (0,1)\in R $$
    である。
    また、
    $$ 2=1+1 $$
    であるから、
    $$ (1,2)\in R $$
    である。
    しかし、
    $$ 2\neq0+1 $$
    であるから、
    $$ (0,2)\notin R $$
    である。
    したがって、
    $$ (0,1)\in R\land(1,2)\in R $$
    であるにもかかわらず、
    $$ (0,2)\in R $$
    は成り立たない。
    ゆえに、$R$ は推移的ではない。
    $ $
  3. 異なるという関係
    $A:=\{1,2,3\}$ とし、$A$ 上の二項関係 $R$
    $$ R:=\{(a,b)\in A\times A\mid a\neq b\} $$
    で定める。
    このとき、
    $$ 1\neq2 $$
    であるから、
    $$ (1,2)\in R $$
    である。
    また、
    $$ 2\neq1 $$
    であるから、
    $$ (2,1)\in R $$
    である。
    しかし、
    $$ 1=1 $$
    であるから、
    $$ (1,1)\notin R $$
    である。
    したがって、
    $$ (1,2)\in R\land(2,1)\in R $$
    であるにもかかわらず、
    $$ (1,1)\in R $$
    は成り立たない。ゆえに、$R$ は推移的ではない。
    $ $
  4. 有限集合上の具体的な関係
    $A:=\{1,2,3\}$ とし、$A$ 上の二項関係 $R$
    $$ R:=\{(1,2),(2,3)\} $$
    で定める。
    このとき、
    $$ (1,2)\in R $$
    であり、また
    $$ (2,3)\in R $$
    である。
    しかし、
    $$ (1,3)\notin R $$
    である。
    したがって、
    $$ (1,2)\in R\land(2,3)\in R $$
    であるにもかかわらず、
    $$ (1,3)\in R $$
    は成り立たない。
    ゆえに、$R$ は推移的ではない。
    $ $
定義 比較可能な元

$A$ を集合とし、$R\subseteq A\times A$$A$ 上の二項関係とする。
$a,b\in A$$R$ に関して比較可能であるとは、
$$ (a,b)\in R\lor (b,a)\in R $$
が成り立つことをいう。

記号 $aRb$ を用いれば、
$$ a\text{ と }b\text{ が }R\text{ に関して比較可能である} \Longleftrightarrow aRb\lor bRa $$
である。

同じ元同士の比較可能性

上の定義では、$a=b$ の場合も含めている。
このとき、$a$$a$$R$ に関して比較可能であることは
$$ aRa $$
が成り立つことと同値である。
したがって、任意の同じ元同士まで比較可能であることを要求すると、反射性も含む条件になる。

定義 比較可能律を満たす関係

$A$ を集合とし、$R\subseteq A\times A$$A$ 上の二項関係とする。
$R$ が比較可能律を満たすとは、任意の異なる $2$$a,b\in A$ について、$a$$b$$R$ に関して比較可能であることをいう。
すなわち、
$$ \forall a\in A\ \forall b\in A\ \bigl(a\neq b\Rightarrow ((a,b)\in R\lor (b,a)\in R)\bigr) $$
が成り立つことをいう。

記号 $aRb$ を用いれば、
$$ R\text{ が比較可能律を満たす} \Longleftrightarrow \forall a\in A\ \forall b\in A\ \bigl(a\neq b\Rightarrow (aRb\lor bRa)\bigr) $$
である。

両者の違い

次の条件
$$ \forall a\in A\ \forall b\in A\ \bigl(a\neq b\Rightarrow (aRb\lor bRa)\bigr) $$
は、異なる $2$ 元だけを比較する条件である。
一方、次の条件
$$ \forall a\in A\ \forall b\in A\ (aRb\lor bRa) $$
は、$a=b$ の場合も含む。
したがって、$a=b$ とすると
$$ aRa $$
が必要になる。つまり、
$$ \forall a\in A\ \forall b\in A\ (aRb\lor bRa) $$
は、比較可能律に加えて反射性も含む条件である。

比較可能な元の具体例
  1. $\mathbb R$ 上の大小関係 $\le$
    $\mathbb R$ 上の二項関係 $\le$ を考える。
    例えば、
    $$ 2\le 5 $$
    であるから、$2$$5$$\le$ に関して比較可能である。
    また、
    $$ 5\le 2 $$
    は成り立たないが、比較可能であるためには一方が成り立てば十分である。
    したがって、$2$$5$ は比較可能である。
    より一般に、任意の $x,y\in\mathbb R$ に対して
    $$ x\le y\lor y\le x $$
    が成り立つ。
    したがって、$\mathbb R$ 上の大小関係 $\le$ では、任意の $2$ 元が比較可能である。
    $ $
  2. $\mathbb C$ 上の等号 $=$
    $\mathbb C$ 上の二項関係 $=$ を考える。
    例えば、
    $$ 1+i=1+i $$
    であるから、$1+i$$1+i$$=$ に関して比較可能である。
    一方、
    $$ 1+i\neq 2+i $$
    であるから、
    $$ 1+i=2+i $$

    $$ 2+i=1+i $$
    も成り立たない。
    したがって、$1+i$$2+i$$=$ に関して比較可能ではない。
    このように、$\mathbb C$ 上の等号では、同じ元同士だけが比較可能である。
    $ $
  3. $\mathbb C$ 上の絶対値による関係
    $\mathbb C$ 上の二項関係 $R$
    $$ zRw\Longleftrightarrow |z|\le |w| $$
    で定める。
    例えば、
    $$ |1+i|=\sqrt{2},\qquad |2|=2 $$
    であり、
    $$ \sqrt{2}\le 2 $$
    であるから、
    $$ (1+i)R2 $$
    が成り立つ。
    したがって、$1+i$$2$$R$ に関して比較可能である。
    より一般に、任意の $z,w\in\mathbb C$ に対して、$|z|,|w|\in\mathbb R$ であり、実数の大小関係より
    $$ |z|\le |w|\lor |w|\le |z| $$
    が成り立つ。
    したがって、この関係 $R$ では、任意の $2$ つの複素数が比較可能である。
    $ $
  4. $\mathbb N_{\ge1}$ 上の整除関係 $\mid$
    $\mathbb N_{\ge1}$ 上の二項関係 $\mid$ を考える。
    例えば、
    $$ 2\mid 6 $$
    であるから、$2$$6$$\mid$ に関して比較可能である。
    一方、
    $$ 2\nmid 3 $$
    かつ
    $$ 3\nmid 2 $$
    であるから、$2$$3$$\mid$ に関して比較可能ではない。
    したがって、整除関係 $\mid$ では、比較可能な元の組もあれば、比較可能でない元の組もある。
    $ $
  5. $\mathcal P(\{1,2\})$ 上の包含関係 $\subseteq$
    $\mathcal P(\{1,2\})$ 上の二項関係 $\subseteq$ を考える。
    例えば、
    $$ \varnothing\subseteq \{1\} $$
    であるから、$\varnothing$$\{1\}$$\subseteq$ に関して比較可能である。
    また、
    $$ \{1\}\subseteq \{1,2\} $$
    であるから、$\{1\}$$\{1,2\}$ も比較可能である。
    一方、
    $$ \{1\}\nsubseteq \{2\} $$
    かつ
    $$ \{2\}\nsubseteq \{1\} $$
    であるから、$\{1\}$$\{2\}$$\subseteq$ に関して比較可能ではない。
    したがって、包含関係 $\subseteq$ では、すべての $2$ 元が比較可能であるとは限らない。
    $ $
  6. $\mathbb R^2$ 上の辞書式順序
    $\mathbb R^2$ 上の二項関係 $\preceq$
    $$ (x_1,x_2)\preceq (y_1,y_2) \Longleftrightarrow x_1< y_1\lor (x_1=y_1\land x_2\le y_2) $$
    で定める。
    例えば、
    $$ (1,100)\preceq (2,0) $$
    である。
    なぜなら、
    $$ 1<2 $$
    だからである。
    したがって、$(1,100)$$(2,0)$$\preceq$ に関して比較可能である。
    また、
    $$ (1,3)\preceq (1,5) $$
    である。
    なぜなら、第 $1$ 成分が等しく、
    $$ 3\le 5 $$
    だからである。
    この辞書式順序では、任意の $2$ 元が比較可能である。
    $ $
投稿日:8日前
更新日:8日前
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Kagura
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■ 分野を問わず数学の証明が好きです。あとで自分が読み返したときに、きちんと理解できるノートを作ることを心がけています。不定期に過去のノートを確認し、修正&更新 (追加&削除) しています。定義、命題、証明などに誤りや不正確な点がございましたら、ご指摘いただけますと幸いです(2025年12月28日)。          ----------------------------------------------- ■ ノート『数学概論』の読み方     STEP1:まずは定義を一通り理解し覚える。 STEP2:具体例を考えてみる。    STEP3:各命題の主張を一通り理解する。 STEP4:証明を繰り返し読んで流れを掴む。 (まずはココまでで良い)         STEP5:何も見ずに定義に従って証明を創る。 STEP6:STEP5の他の証明方法を創ってみる。    STEP7:自由に命題と証明を創ってみる  

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