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ヤコビの楕円関数とテータ関数まとめ

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はじめに

 この記事ではヤコビの楕円関数とテータ関数に関する公式をまとめていきます。

完全楕円積分

 この項で紹介する導出については この記事 の第4節にてまとめてあります。

楕円積分

 0k1および1x1に対して
K(x,k)=0xdt(1t2)(1k2t2)E(x,k)=0x1k2t21t2dt
と定められる関数のことを(第一種,第二種)不完全楕円積分と言う。またそのx=1における値
K(1,k)=01dt(1t2)(1k2t2)E(1,k)=011k2t21t2dt
のことを(第一種,第二種)完全楕円積分と言い、単にK=K(k)と表す。

母数と補母数

 楕円積分に付随するパラメーターk母数(modulus)と言い、これに対して
k=1k2
と定められるパラメーターを補母数(complementary modulus)と言う。
 また慣例として補母数に関する楕円積分K(k)のことをK=K(k)と表す。微分との混同を避けるためdK/dkK˙と書かれる。Eについても同様である。

微分

kk2dKdk=Ek2Kkk2dEdk=k2(EK)kk2dKdk=(Ek2K)kk2dEdk=k2(EK)

ルジャンドル関係式

KE+KEKK=π2

ddkKK=π2kk2K2

ヤコビの楕円関数

 この項で紹介する公式の導出については この記事 にてまとめてあります。

ヤコビの楕円関数

 不完全楕円積分の逆関数として定まる関数
x=sn(u,k)defu=K(x,k)
およびこれに対し
cn(u,k)=1sn2(u,k),dn(u,k)=1k2sn2(u,k)
と定められる関数sn,cn,dnのことをヤコビの楕円関数と言う。
 これらはしばしば母数kを省略してsnu,cnu,dnuと表される。

微分

(snu)=cnudnu(cnu)=snudnu(dnu)=k2snucnu

加法定理

sn(u+v)=snucnvdnv+snvcnudnu1k2sn2usn2vcn(u+v)=cnucnvsnudnusnvdnv1k2sn2usn2vdn(u+v)=dnudnvk2snucnusnvcnv1k2sn2usn2v

周期性

sn(u+K)=cnudnusn(u+iK)=1k1snucn(u+K)=ksnudnucn(u+iK)=ikdnusnudn(u+K)=k1dnudn(u+iK)=icnusnu
特に
sn(u+2K)=snusn(u+2iK)=snucn(u+2K)=cnucn(u+2iK)=cnudn(u+2K)=dnudn(u+2iK)=dnu

対称性

sn(u)=snusn(u+K)=sn(Ku)sn(u+iK)=sn(iKu)cn(u)=cnucn(u+K)=cn(Ku)cn(u+iK)=cn(iKu)dn(u)=dnudn(u+K)=dn(Ku)dn(u+iK)=dn(iKu)

虚数変換

sn(iv,k)=isn(v,k)cn(v,k)cn(iv,k)=1cn(v,k)dn(iv,k)=dn(v,k)cn(v,k)

半数公式

snu2=1cnu1+dnucnu2=dnu+cnu1+dnudnu2=k2+dnu+k2cnu1+dnu

特殊値
u2KK0K2K
snu01010
cnu10101
dnu1k1k1

snK2=11+kcnK2=k1+kdnK2=k
sniK2=iksn(K+iK2)=1k

テータ関数

テータ関数

 複素数v,τ(Im(τ)>0)に対してq=eπiτ,z=e2πivとし
θ1(v,τ)=1in=(1)nq(n+12)2zn+12θ2(v,τ)=n=q(n+12)2zn+12θ3(v,τ)=n=qn2znθ4(v,τ)=n=(1)nqn2zn
と定められる関数のことを(楕円)テータ関数と言う。またこれらのv=0における値
θ1(τ)=n=(1)n(2n+1)q(n+12)2(=1πdθ1dv(0,τ))θ2(τ)=n=q(n+12)2θ3(τ)=n=qn2θ4(τ)=n=(1)nqn2
のことをテータ定数という。これらのことも単にテータ関数と言うことが多い。

vの周期性

θ1(v+12,τ)=θ2(v,τ)θ1(v+τ2,τ)=i(qz2)14θ4(v,τ)θ2(v+12,τ)=θ1(v,τ)θ2(v+τ2,τ)=(qz2)14θ3(v,τ)θ3(v+12,τ)=θ4(v,τ)θ3(v+τ2,τ)=(qz2)14θ2(v,τ)θ4(v+12,τ)=θ3(v,τ)θ4(v+τ2,τ)=i(qz2)14θ1(v,τ)
特に
θ1(v+m+nτ,τ)=(1)m+n(qn2zn)1θ1(v,τ)θ2(v+m+nτ,τ)=(1)m(qn2zn)1θ2(v,τ)θ3(v+m+nτ,τ)=(qn2zn)1θ3(v,τ)θ4(v+m+nτ,τ)=(1)n(qn2zn)1θ4(v,τ)

τの周期性

θ1(v,τ+1)=eπi4θ1(v,τ)θ2(v,τ+1)=eπi4θ2(v,τ)θ3(v,τ+1)=eπi4θ4(v,τ)θ4(v,τ+1)=eπi4θ3(v,τ)

虚数変換公式

θ1(vτ,1τ)=iiτeπiv2/τθ1(v,τ)θ2(vτ,1τ)=iτeπiv2/τθ4(v,τ)θ3(vτ,1τ)=iτeπiv2/τθ3(v,τ)θ4(vτ,1τ)=iτeπiv2/τθ2(v,τ)

保型性

θ2(τ+1)=eπi4θ2(τ)θ2(τ+2)=eπi2θ2(τ)θ2(1τ)=iτθ2(τ)θ3(τ+1)=θ4(τ)θ3(τ+2)=θ3(τ)θ3(1τ)=iτθ4(τ)θ4(τ+1)=θ3(τ)θ4(τ+2)=θ4(τ)θ4(1τ)=iτθ3(τ)

三重積

θ1(v,τ)=q14z12z12in=1(1q2n)(1q2nz)(1q2nz1)θ2(v,τ)=q14(z12+z12)n=1(1q2n)(1+q2nz)(1+q2nz1)θ3(v,τ)=n=1(1q2n)(1+q2n1z)(1+q2n1z1)θ4(v,τ)=n=1(1q2n)(1q2n1z)(1q2n1z1)θ1(τ)=2q14n=1(1q2n)3θ2(τ)=2q14n=1(1q2n)(1+q2n)2θ3(τ)=n=1(1q2n)(1+q2n1)2θ4(τ)=n=1(1q2n)(1q2n1)2

分割恒等式

θ1(τ)=θ2(τ)θ3(τ)θ4(τ)

倍数公式

2θ2(2τ)2=θ3(τ)2θ4(τ)22θ3(2τ)2=θ3(τ)2+θ4(τ)2θ4(2τ)2=θ3(τ)θ4(τ)θ2(τ)2=2θ2(2τ)θ3(2τ)

ヤコビの恒等式

θ3(τ)4=θ2(τ)4+θ4(τ)4

ヤコビの楕円関数とテータ関数

 この項で紹介する公式の導出については この記事 にてまとめてあります。

モジュラーλ関数

k(τ)=θ2(τ)2θ3(τ)2
とおいたとき
k(1τ)=k(τ),k(τ+1)=eπi2k(τ)k(τ)

楕円積分

K=π2θ3(τ),K=iτπ2θ3(τ)2
特に
τ=iKK,dτdk=πi2kk2K2

テータ関数

θ2(τ)2=2πkK,θ3(τ)2=2πK,θ4(τ)2=2πkK

ヤコビの楕円関数

sn2Ku=θ3(τ)θ2(τ)θ1(u,τ)θ4(u,τ)cn2Ku=θ4(τ)θ2(τ)θ2(u,τ)θ4(u,τ)dn2Ku=θ4(τ)θ3(τ)θ3(u,τ)θ4(u,τ)

1sn2Ku1+sn2Ku=θ1(u214,τ2)θ2(u214,τ2)=1sinπu1+sinπun=112qnsinπu+q2n1+2qnsinπu+q2n1ksn2Ku1+ksn2Ku=θ4(u214,τ2)θ3(u214,τ2)=n=112qn12sinπu+q2n11+2qn12sinπu+q2n1cn2Ku+isn2Ku=z12n=1(1q4n1z)/(1q4n1z1)(1q4n3z)/(1q4n3z1)

 この公式は 上に挙げた記事 では紹介していなかったが、やはりuについて同じ二重周期性を持つこと、同じ零点と極を持つこと、そしてu=0において両辺が1になることからわかる(多分)。

投稿日:202423
更新日:202423
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子葉
子葉
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主に複素解析、代数学、数論を学んでおります。 私の経験上、その証明が簡単に探しても見つからない、英語の文献を漁らないと載ってない、なんて定理の解説を主にやっていきます。 同じ経験をしている人の助けになれば。最近は自分用のノートになっている節があります。

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