5
現代数学解説
文献あり

超幾何関数の変換

422
0

はじめに

 この記事では超幾何関数の変換に関する理論について解説していきます。
 以下ではφ(x)を有理関数、θ(x)を無理関数(多項式の冪根とその四則演算によって表される関数)として
2F1(A,BC;x)=θ(x)2F1(a,bc;φ(x))
なる変換公式について考察していきます。なお
θ1(x)2F1(a1,b1c1;φ1(x))=θ2(x)2F1(a2,b2c2;φ2(x))
のような一般の代数変換については扱わないのであしからず。

超幾何微分方程式

 超幾何関数の変換を考えるには超幾何関数
f(z)=2F1(a,bc;z)
はの満たす超幾何微分方程式
z(1z)d2fdz2+(c(a+b+1)z)dfdzabf=0
の話に帰着させるのが効果的である。
 超幾何微分方程式に関する基本事項は 以前書いた記事 の序盤にてまとめているのでここではそのステートメントを確認するだけに留める。

確定特異点

確定特異点

 微分方程式
d2udz2+p(z)dudz+q(z)u=0()
に対しp,qが共に正則となる点を()通常点、そうでない点を特異点と言う。またp,qの極の位数がそれぞれ高々1,2となるような特異点を確定特異点、そうでない特異点を不確定特異点と言う。
 また無限遠点z=()の通常点、特異点、確定特異点であるとはw=1/zに関して変形した微分方程式
d2udw2+(2wp(1/w)w2)dudw+q(1/w)w4u=0
w=0を通常点、特異点、確定特異点に持つことを言う。

特性指数

 確定特異点z=cに対し
pc=limzc(zc)p(z),qc=limzc(zc)2q(z)
とおいたときαについての方程式
α(α1)+pcα+qc=0
のことをz=cにおける決定方程式と言い、その解α=α1,α2のことを特性指数と言う。
 通常点においても決定方程式を考えることができ、その場合の特性指数は0,1と求まる。

確定特異点周りの解

 ()の特異点z=cが確定特異点であることと、()z=c周りでの任意の解uz=cを高々極に持つ、つまりあるNが存在して
limzc|zc|N|u(z)|=0
を満たすことは同値である。
 また確定特異点z=cにおける特性指数をα,α(Re(α)Re(α))とおくと、ααZであれば
u1(z)=(zc)αn=0an(zc)n(a0=1)u2(z)=(zc)αn=0an(zc)(a0=1)
という形の解が、m=ααが正整数のときは
u2(z)=Gu1(z)log(zc)+(zc)αn=0an(zc)n(a0=1)
という形の解が、αα=0のときは
u2(z)=u1(z)log(zc)+n=1an(zc)n
という形の解がz=cの周りで定まる。このことについては この記事 にて紹介している。

リーマンのP方程式

Fuchs型微分方程式

 C^=C{}において不確定特異点を持たない微分方程式のことをフックス型微分方程式と言う。

RiemannのP方程式

 C^において丁度3つの確定特異点を持つ二階のフックス型微分方程式のことをリーマンのP方程式と言う。
 その特異点をz=a,b,c、対応する特性指数をα,α,β,β,γ,γとおいたとき、P方程式の解全体を
P{abcαβγαβγz}
と表し、これをリーマンのP関数と言う。またこの図式のことをリーマンのP図式とも言う。
 リーマンのP方程式はそのP図式から
u+(1ααza+1ββzb+1γγzc)u+1(za)(zb)(zc)(αα(ab)(ac)za+ββ(bc)(ba)zb+γγ(ca)(cb)zc)u=0
と逆算できることが知られている。

 ちなみに一般のフックス型微分方程式では特異点や特性指数に依らないパラメーター(アクセサリー・パラメーター)が出現するため、このように微分方程式を逆算することはできない。

Fuchsの関係式

 上のP図式において
α+α+β+β+γ+γ=1
が成り立つ。

P関数の変換

 ρを一次分数変換
ρ(z)=Az+BCz+D(ADBC0)
とすると
(zazb)δP{abcαβγαβγz}=P{abcα+δβδγα+δβδγz}P{abcαβγαβγρ(z)}=P{ρ1(a)ρ1(b)ρ1(c)αβγαβγz}
が成り立つ(ただしb=のときは(zb)δ1とおく)。

超幾何微分方程式

P{0100a1ccabbz}
に対応する微分方程式
z(1z)d2udz2+(c(a+b+1)z)dudzabf=0
のことを超幾何微分方程式という。
 超幾何微分方程式はz=0周りにおいて
2F1(a,bc;z),z1c2F1(ac+1,ac+12c;z)
という基本解を持つ(ただしcZとした)。

有限被覆

 以下では微分方程式が有理関数によってどのように変換されていくかを見ていくことになるが、それには有限被覆の考え方(用語)を用いるのが便利である。単に用語を用意するだけなので特に深く理解する必要はない。
 有理関数とは一口に言えば多項式の商として表される関数のことを言うが、複素解析的な見方ではC^からC^への正則写像という特徴付けがあった。これを一般化した概念として有限被覆というものがある。

被覆

 位相空間X,Yに対し全射π:XY
・任意のqYに対してある開近傍Vqが存在し、π1(V)の任意の連結成分Uに対しπ:UVは位相同型となる。
を満たすときπY被覆であると言う。
 Yが連結であるときファイバーπ1(q)の濃度はqYに依らず定まり、その値のことをπの被覆の次数あるいは被覆度と言いdegπと表す。

有限被覆

 コンパクトリーマン面X,Yに対し正則写像π:XYのことを有限被覆と言う。
 適当な局所座標を取ることでπは各点pXの周りでπ(z)=zeと局所座標表示できる。このeのことを分岐指数と言いordpπと表す。またordpπ2なる点pXまたはπ(p)Yのことをπ分岐点と言う。
 分岐点全体のなす集合Rπ,BπX,Yにおいて有限集合となり、π:XRπYBπは有限次の被覆を成す(Rはramification、Bはbranchの頭文字を取っている)。

 これは有理関数φ:C^xC^zに関して言えば

  • pC^xにおけるφの分岐指数とは方程式φ(x)=φ(p)における解x=pの重複度のこと
  • qC^zφの分岐点であるとは方程式φ(x)=qが重解x=pを持つこと
  • φの被覆度とは各点qC^zにおけるφ(x)=qの解xC^xの個数、つまり互いに素な多項式f,gを用いてφ(x)=f(x)/g(x)と表したときのmax{degf,degg}のこと

を意味している(C^x,C^zについている添え字は始域と終域を区別するためのもの)。
 本記事で有限被覆の理論が関わってくることは特にないが次の式は覚えておきたい。

Riemann-Hurwitzの公式

 X,Yの種数をそれぞれgX,gYπの被覆度をdとおくと
22gX=d(22gY)pX(ordpπ1)
が成り立つ。

 なおC^の種数は0なので有理関数φに関して言えば
D=pC^x(ordpφ1)
とおいたときD=2d2が成り立つことを意味している。

微分方程式の変換

 以下ではφ:C^xC^zを有理関数、θを無理関数とし、C^zにおけるフックス型微分方程式H1がその解の変換
u(z)U(x)=θ(x)u(φ(x))
によってどのような微分方程式H2に写るのかを考える。
 このような変換H1H2のことをpull-back transformationまたはRS-transformationと言う(直訳するなら引き戻し変換と言うべきだろうか)。

 フックス型微分方程式H1の解u(z)に対し
U(x)=θ(x)u(φ(x))
は再びあるフックス型微分方程式H2を満たす。

 U(x)が何らかの微分方程式を満たすことは簡単にわかる。またそれがフックス型であることはUの特異点が常に高々極であることからわかる。

irrelevantな特異点

 いまH2の特異点の振る舞いを考えるために以下のような分類を考える。

 フックス型微分方程式Hに対し

  • Hz=c周りの基本解がlogの項を持つときz=c対数的な点であると言う。
  • z=cにおける特性指数の差(の絶対値)が1かつz=cは対数的でないとき、z=cirrelevantな点であると言う。
  • 特異点z=cがirrelevantでないとき、z=crelevantな特異点であると言う。

 参考文献Vidでは対数的やirrelevantの定義にz=cが特異点であることが含まれているが、簡単のためここでは対数的ではない点、irrelevantな点と言ったときは通常点も含むものとする。
 ちなみにirrelevantな特異点は適当な無理関数θ(x)を掛けることで簡単に取り除くことができる。

 リーマンのP方程式を拡張して3つの確定特異点とk個のirrelevantな点を持つフックス型微分方程式
P{abcp1pkαβγe1ekαβγe1+1ek+1z}
を考えるとこれは
(zp1zc)e1(zpkzc)ekP{abcαβγ+e1++ekαβγ+e1++ekz}
と表せる。

 微分方程式
d2udz2+p(z)dudz+q(z)=0
の特性指数が0,1なるirrelevantな点z=cは通常点、つまりp,qz=cにおいて正則となることを示せばよい。
 pが正則となることはその決定方程式からわかる。またirrelevantという仮定から特性指数0に対応する
u0(z)=n=0an(zc)n(a0=1)
なる正則解が存在するので
q(z)=1u0(d2u0dz2+p(z)du0dz)
も正則となることがわかる。

引き戻しと特異点

 pC^xを任意に取りq=φ(p)とおく。このとき

  1. qH1の対数的な点であることとpH2の対数的な点であることは同値である。
  2. q,pにおけるH1,H2の特性指数の差(の絶対値)をそれぞれe,eとおくとe=eordpφが成り立つ。
  3. 特にpがirrelevantであることとqが対数的ではなくe=1/ordpφを満たすことは同値である。

 解の挙動を考えれば明らか。

  1. ΔC^z内の三点とする。φの分岐点がΔで尽くされるとき|φ1(Δ)|=d+2が成り立ち、そうでなければ|φ1(Δ)|>d+2が成り立つ。
  2. H1,H2が共に超幾何微分方程式であるとする。このときφの被覆度をdH1,H2の特性指数の差(の絶対値)をそれぞれe0,e1,e,e0,e1,eとおくと
    d(e0+e1+e1)=e0+e1+e1
    が成り立つ。

 各点qC^zに対し
|φ1(q)|=dpφ1(q)(ordpφ1)
が成り立つことに注意するとリーマン・フルヴィッツの公式より
|φ1(Δ)|=3dpφ1(Δ)(ordpφ1)3dpRφ(ordpφ1)=3d(2d2)=d+2
を得る。この等号成立条件は明らかにRφ=φ1(Δ)である。
 またフックス型微分方程式Hz=cにおける特性指数の差をledcHと表すことにすると
pC^x(ledpH21)=pC^x(ordpφledφ(p)H11)=dqC^z(ledqH11)+pC^x(ordpφ1)=dqC^z(ledqH11)+2d2
つまり
e0+e1+e3=d(e0+e1+e3)+2d2
を得る。

変換の決定

 H1が超幾何微分方程式であるとき、H2も超幾何微分方程式となるための条件を考える。
 いまφC^zにおいて4つ以上の分岐点を持つとすると補題7の(3)よりH24つ以上のrelevantな特異点を持つことになり不適である。したがってφC^z内の三点、特に適当な一次変換によってΔ={0,1,}以外の点で分岐しないものとしてよい。
 また同じく補題7の(3)よりΔのうちN (=0,1,2,3)点におけるH1の特性指数の差は対応する分岐指数kによって1/kに制限される。またこのとき以下が成り立つ。

 H2が超幾何微分方程式となるためには
dj=1Ndkj1
特に
1d+j=1N1kj1
となることが必要である。

3(H2のrelevantな特異点の個数)|φ1(Δ)|(分岐指数がkjなるxφ1(Δ)の個数)d+2j=1Ndkjd+2j=1Ndkj
とわかる。

 またk=1なる点があるときは以下の主張が成り立つことにも注意したい。

 H1のある特異点がirrelevantであるとすると残る二つの特異点における特性指数の差(の絶対値)は一致しなければならない。

 H1
z(1z)d2udz2+(c(a+b+1)z)dudzabu=0
と表せることに注意してz=0がirrelevant、特にc=0であるものとしてよい。
 このときz=0における特性指数は0,1となるので補題6での議論から
c(a+b+1)zz(1z)=a+b+11z
および
abz(1z)
z=0において正則でなければならない。したがってab=0でなければならず、b=0とするとこのP図式は
P{0100a1a0z}
となる。

 このことを踏まえてどのような変換H1H2があり得るのかを考えてみよう。

N=0のとき

 補題9の不等式からd=1、つまりこれは一次分数変換であり、特に
2F1(A,BC;x)=θ(x)2F1(a,bc;φ(x))
という形のものはEulerの変換公式
2F1(a,bc;z)=(1z)cab2F1(ca,cbc;z)
およびPfaffの変換公式
2F1(a,bc;z)=(1z)a2F1(a,cbc;zz1)=(1z)b2F1(ca,bc;zz1)
に他ならない。

N1,k1=1のとき

 補題10よりH1P図式は例えば
P{0100a1abz}
のようになり、これは
2F1(1+a,12;z)={1(1z)aaza01zlog(1z)a=0
と明示的に解ける。したがって特に面白い変換公式は得られない。
 参考文献VidのSection 5では少し深堀りされているので、興味があればそちらを参照されたい。

N=1のとき

 以下、kj2とする。
 補題9の不等式および2k1dよりk1=d=2となる。このとき適当な一次変換によって

  • φ(x)=0x=0,1を解に持つ
  • φ(x)=1はある重解x=pを持つ
  • φ(x)=は重解x=を持つ

としてよく、この条件からφ(x)=4x(1x)と決定できる。このとき上での議論から
P{0100a12ab12b4x(1x)}=P{0112002a012ab12ab2b1x}=P{01002a12ab12ab2bx}
つまり
2F1(2a,2ba+b+12;z)=2F1(a,ba+b+12;4z(1z))
という二次変換変換が得られる(これが成り立つことは両辺がz=0において正則であることとz=0において1となることから導ける)。
 またこれを適当に一次変換することで(φ(0)=0という条件下で)計6通りの二次変換公式が得られる。その一覧については この記事 を参照されたい。

N=2のとき

 N=2のときはmax(k1,k2)3およびk1=k2=2の二通りの場合が考えられる。
 max(k1,k2)3の場合からはよく知られた三、四、六次の変換公式が出てくることとなる。それについては後で別途解説する。
 k1=k2=2の場合は適当な二次変換によって
P{0100a2a12a+124x(1x)}=P{01002a2a2a2a+1x}
のようにirrelevantな特異点を持つ場合に帰着できるのでやはり面白い変換公式は得られない。
 これについても参考文献VidのSection 6にて少し深堀りされている。

N=3のとき

 N=3のときは1/k1+1/k2+1/k31より大きいか小さいか等しいかの三通りに場合分けして考える。やはり長くなるので詳しくは後で別途解説するが、端的にまとめると

  • 1/kj>1のとき、H1,H2の解は代数関数となる。
  • 1/kj=1のとき、H1の解は不完全楕円積分として表せる。
  • 1/kj<1のとき、d(d24)の特殊な変換公式が得られる。

という結果が得られることとなる。

N=2の場合

 不等式
1d+1k1+1k21,2k1k2d,k23
の解は
(k1,k2,d)=(2,3,3),(2,3,4),(2,3,5),(2,3,6),(2,4,4),(2,4,5),(2,4,6),(3,3,3)
8つで尽くされ、このうち
ddk1dk21
を満たすものは
(k1,k2,d)=(2,3,3),(2,3,4),(2,3,6),(2,4,4),(3,3,3)
5つに限られる。
 またφの分岐の仕方を考えると以下のような可能性が考えられる。
(k1,k2,d)01存在・分解(2,3,3)2+132+1分解できない(2,3,4)2+23+13+1分解できない(2,3,4)2+23+12+2存在しない(2,3,6)2+2+23+34+1+12×3(2,3,6)2+2+23+32+2+22×3 or 3×2(2,3,6)2+2+23+33+2+1存在しない(2,4,4)2+242+1+12×2(3,3,3)331+1+1分解できない
 真ん中の3列はd+2個の点φ1({0,1,})の分岐の仕方を表しており、最後の列はφがあるp,q次変換φp,φqを用いてφ=φqφpと表せることをp×qと表している。
 実際これを満たすような有理関数φを考えると例えば
2F1(3a,a+164a+23;z)=(1z4)3a2F1(a,a+132a+56;27z2(4z)3)2F1(4a,4a+136a+12;z)=(189z)3a2F1(a,a+132a+56;64z3(1z)(98z)3)2F1(6a,4a+162a+56;z)=(1616z+z216)3a2F1(a,a+132a+56;108z4(1z)(1616z+z2)3)2F1(6a,2a+134a+23;z)=(1z+z2)3a2F1(a,a+132a+56;27z2(1z)24(1z+z2)3)2F1(4a,2a+144a+12;z)=(1z2)4a2F1(a,a+142a+34;16z2(1z)(2z)4)2F1(3a,a+132a+23;z)=(1+ω2z)3a2F1(a,a+132a+23;3ω(ω1)z(1z)(z+ω)3)(ω=e2πi3)
のような変換公式が得られることとなる(多分)。
 このようにして得られる変換の一覧については この記事 を参照されたい。

N=3のとき

1/k1+1/k2+1/k3>1のとき

 k1=k2=2の場合は上で考えたのでk1k2k3, k23としてよい。このとき不等式
1k1+1k2+1k3>1
の解は
(k1,k2,k3)=(2,3,3),(2,3,4),(2,3,5)
3つで尽くされる。
 このときH1,H2モノドロミーの変換のされ方を考えることで特殊な変換が構成できるらしい。詳しくは参考文献VidのSection 7を参照されたい。

1/k1+1/k2+1/k3=1のとき

 不等式
1k1+1k2+1k3=1,2k1k2k3
の解は
(k1,k2,k3)=(2,4,4),(2,3,6),(3,3,3)
3つで尽くされる。このときオイラー積分表示
2F1(a,bc;z)=Γ(c)Γ(a)Γ(ca)01ta1(1t)ca1(1zt)bdt
からH1の解は
2F1(a,ba+1;z)=a01ta1(1zt)bdt=aza0zta1(1t)bdt
という形に表せる。
 これの変換についてはこの積分をイジっていくと何か得られるらしい。詳しくは参考文献VidのSection 8を参照されたい。

1/k1+1/k2+1/k3<1のとき

 不等式
1k1+1k2+1k3<1,k1k2k3
が成り立つとき以下が成り立つ。

 上の条件下において
ddk1dk2dk3=1d(11k11k21k3)13k3(11k11k2)k322k3+3023<1k1+1k2<1
が成り立つ。

 第一式は
dj=13dkjd(1j=131kj)>0
および補題9からわかる。
 第二式は補題8の(2)(および補題7の(2))より
d(11k11k21k3)=1e0e1e11k31k31k3
とわかる。
 第三式は第二式の左辺においてk3dとすることでわかる。
 第四式は不等式ax22x+30が実数解を持つための条件が13a20であることから
11k11k213
とわかる。またこの等号が成り立つときはk3=3つまり1/k1+1/k2+1/k3=1となるため不適である。

 まず第四式から(k1,k2)の候補が
(k1,k2)=(2,3),(2,4)
に絞られ、1/k3<11/k11/k2および第三式からk3の候補は
k3262k3+3=(k36)21860k3=7,8,9,10k3242k3+3=(k34)2440k3=5,6
に絞られる。
 また第一式、第二式、dk3を満たすようなdおよびφの分岐の仕方を考えると以下のような可能性が考えられる。

(k1,k2,k3)(e0,e1,e)d存在・分解(2,3,7)(1/3,1/3,1/7)8分解できない(2,3,7)(1/2,1/7,1/7)9分解できない(2,3,7)(1/3,1/7,2/7)10分解できない(2,3,7)(1/7,1/7,3/7)12存在しない(2,3,7)(1/7,2/7,2/7)12存在しない(2,3,7)(1/3,1/7,1/7)16存在しない(2,3,7)(1/7,1/7,2/7)182×9(2,3,7)(1/7,1/7,1/7)243×8(2,3,8)(1/3,1/8,1/8)10分解できない(2,3,8)(1/4,1/8,1/8)122×2×3(2,3,9)(1/9,1/9,1/9)123×4(2,4,5)(1/4,1/4,1/5)6分解できない(2,4,5)(1/5,1/5,1/5)8存在しない
 このようにして次のような変換公式が得られることとなる。

8次変換公式

 ω=e2πi3および
φ8(x)=x(x1)(27x2(723+1392ω)x496+696ω)364((6ω+3)x83ω)7
とおくと
2F1(221,52123;x)=(133+39ω49x)1122F1(184,138423;φ3(x))
が成り立つ。

9次変換公式

 ξξ2+ξ+2=0を満たす複素数とし
φ9(x)=27x(x1)(49x3113ξ)749(7203x3+(9947ξ5831)x2(9947ξ+2009)x+27587ξ)3
とおくと
2F1(328,172867;x)=(1+7(1029ξ)8x343(5029ξ)512x2+1029(362+87ξ)16384x3)1282F1(184,298467;φ9(x))
が成り立つ。

10次変換公式1

φ10(x)=x2(x1)(49x81)74(16807x39261x213851x+6561)3
とおくと
2F1(542,194257;x)=(1199x343243x2+168076561x3)1282F1(184,298467;φ10(x))
が成り立つ。

10次変換公式2

 ξ=2とし
φ10(x)=4x(x1)(8ξx+74ξ)8(2048ξx3(3072ξ+3264)x2+(912ξ+3264)x+56ξ17)3
とおくと
2F1(524,132478;x)=(1+16(417ξ)9x64(167136ξ)243x2+2048(11217ξ)6561x3)1162F1(148,174878;φ10(x))
が成り立つ。

6次変換公式

φ6(x)=4ix(x1)(4x211i)4(8x4+3i)5
とおくと
2F1(320,72034;x)=(18(4+3i)25x)182F1(140,94034;φ6(x))
が成り立つ。

 また12,12,18,24次の変換は上の公式を合成することで得られる。特に24次変換公式は以下のようになる。

24次変換公式

θ24(x)=(x2x+1)(x6+229x5+270x41695x3+1430x2235x+1)φ24(x)=1728x(x1)(x38x2+5x+1)7θ24(x)3
とおくと
2F1(27,3767;x)=θ24(x)1282F1(184,298467;φ24(x))
が成り立つ。

参考文献

投稿日:202417
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

子葉
子葉
1068
261042
主に複素解析、代数学、数論を学んでおります。 私の経験上、その証明が簡単に探しても見つからない、英語の文献を漁らないと載ってない、なんて定理の解説を主にやっていきます。 同じ経験をしている人の助けになれば。最近は自分用のノートになっている節があります。

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中
  1. はじめに
  2. 超幾何微分方程式
  3. 確定特異点
  4. リーマンの$P$方程式
  5. 有限被覆
  6. 微分方程式の変換
  7. irrelevantな特異点
  8. 引き戻しと特異点
  9. 変換の決定
  10. $N=0$のとき
  11. $N\geq1,k_1=1$のとき
  12. $N=1$のとき
  13. $N=2$のとき
  14. $N=3$のとき
  15. $N=2$の場合
  16. $N=3$のとき
  17. $1/k_1+1/k_2+1/k_3>1$のとき
  18. $1/k_1+1/k_2+1/k_3=1$のとき
  19. $1/k_1+1/k_2+1/k_3<1$のとき
  20. 参考文献