こんにちは ごててんという者です いつか書こうと思っていた記事をようやく書き終えました(※2年くらい逃げてました)
この記事シリーズ(全2回)では、群論の重要な定理「準同型定理」を説明します。結構しっかり書いた記事ですので、そんなに気軽に読めない記事かもしれません!
後編(この記事です)では「準同型」「準同型定理」について説明します。いよいよ本番です。
前編は→ https://mathlog.info/articles/sTacgC5iT24V4aWjLhiu
準同型の説明です。無茶苦茶雑なことを書くと、群と群の間のいいかんじの写像のことです。定義を見ましょう。
線形代数や微積分をやっていて、たびたび「代数的に」いい感じの写像に出会ってきたと思います。これはそれらを包括しています。
例をいっぱい出します!
開区間
このとき、微分を行う写像
(
正則行列の行列式を求める写像
結構ビッグネーム(?)が出てきますね。準同型はそれくらい広い概念です。一応触れておきますが、「線形写像」も準同型の例です。
準同型の、すぐわかる性質を述べておきます。
演算の構造をある程度保ってくれる
さて、群論でキモとなる概念である「同型」について説明します。
「同型」は...... まあ群と群の間に同型があったらその2つの群は同じとみなします。そのくらいの認識でいいと思います。より正確に言えば、「
同型という概念自体は重要ですが、別に話すことがあるかというと別に無い、という感じです。群論の範疇で 対象が「同じ」とはなにか を規定するのが同型の概念、という認識で問題ありません。
例ですが、準同型定理を説明する中で色々証明します。ですので、ここでは控えめに例を紹介しようと思います。
そうなってほしいと思いますので当然といえば当然ですが、群
例えば恒等写像
このくらいにしておきましょう。
準同型定理を理解するために一番大事なのが
・
・
このとき
この命題は大事です。(証明は省略します。)
前編を思い出してみてください。(読んでない人は別に大丈夫です。)「
アイキャッチ
さて、この記事のキーとなる定理が次になります。この定理は超大事だぞ!!!!!!!!!!!!!と言うためにここまで5,000文字打ったと言っても過言ではありません。
(1)
(2)
これがたいへんに準同型定理を理解するための助けになります。
この定理は「単射」と「
物事というのは往々にしてグラデーションです。「数学が好き」というのも度合いがありますよね。「親しみやすい数学の雑学はちょっと楽しめる」から「数学者になる以外の人生が想像つかない」など、色々あります。さて、「単射」という言葉ですが、これは「極端」ですよね。
例えばですが、次のような3つの写像を考えてみましょう。
・
・
・
これらはすべて単射ではありませんが、「単射っぽさ」を考えたら
単射というのは、「行き先のかぶらなさ」が一番大きい場合のことです。そして、準同型における
核の小ささと単射っぽさが対応
・
・
・
上の方が「単射っぽい」ですが、「像が大きい」というのがありますね。
「
つまり「
これも理解の助けになるはずです。
...
...
...
さあ!!!ここまで長かったですね!!!ようやく本題です!!!!!!!
アイキャッチをもう一度貼りますね。
またこのアイキャッチ
ここに出てくる
準同型
なんと...... 像と同型だったんですね!!!このイメージをゆっくり説明していきます。キーワードは、「準同型を無理やり全単射にして同型を作る」です。
上の主張では具体的な同型を与えていないのですが、実際には同型写像の構成方法まで与えられています。ですが、その構成方法の具体例を見てみましょう。そして、その構成方法を理解することが準同型定理の理解に繋がります。
この、特に単射でもない準同型から、全単射な同型写像を作るのが準同型定理です。それをやってみます。次の図を見てみてください。
2つの点が1つの点に対応
とまあこんな感じの図が想像できると思います。さて、ここから全単射な写像を作りたいので、まずは単射にしてみましょう。さて単射にするためには、定義域を変えないといけません。どう変えれば良いでしょうか? そうですね。正負を無視すれば良いです。
さて、前編の記事でちらっと書いたことなのですが、
情報を詰め込んだ図
上の図で分かっていただけるかもしれませんが、これで全単射の完成です。どういう写像かなのですが、
ここから同型を書き下すと、
さてさて、準同型定理の同型を構成する対応を書いてみます。それは上でも赤字で強調した
この図が自分で描けるとよい?
では、この対応の写像
...
...
...
すみません、 well-defined性を確かめていないようなのですが
(>_<)
前編でも説明しました well-defined が、またここでも問題となります。
さて、対応が well-defined, すなわち
well-defined
さて、
・準同型であることを示す
・全射であることを示す
・単射であることを示す
実は同型写像であることを示すには、「準同型+全単射」であることを示せば良い(証明略)ので、これで良いです。
位相空間の間の連続写像は、全単射だったとしても同相写像ではありません。なので、群論の同型写像はある種の「特別な場合」です。
イメージしやすいと思うので、以前ツイートした内容を描いたものを掲載します。
だいたいこんなかんじです
以下、対応
見やすくするために
さて証明ですが、
まあこれも簡単です。
最後になります。
(1)
(2)
この定理によると、
こうして準同型定理を証明できました!証明自体はそんなに難しくなかったですね。あとは準同型定理を使う問題を実際に解いてみて、この記事をまとめて終わろうと思います。
「準同型を無理やり全単射にして同型を作る」のが準同型定理です。では、もともと同型だった場合はどうでしょうか。
同型写像(つまり全単射)
・
単射なので単位元のみです。よって左辺は
・
全射なので
つまり、
準同型写像
・
・
絶対値が
さて、これを
トーラス群の図
置換から符号を対応させる準同型
・
置換
・
全射なので、
では、これを
n=3の場合
さて、準同型定理のイメージは掴んでいただけましたでしょうか。
これ1枚でマスター!
ここまで読んでいただきありがとうございます!かな~~~~~り頑張って記事を書きました。GWを3日潰しました。どうでしたでしょうか?準同型定理の理解度は上がりましたでしょうか?
今までに見てきた準同型定理の説明を見て、こういう説明の仕方をしているものは見たことがないな~~~と思い、(私が見たことがないだけだとは思いますが)いつか書こういつか書こうと思っていたら2年経ってしまいました。今回、なんとか完成させることができて、書き終わった今満足感に包まれています。図もいっぱい書きましたし、力作のつもりです。
前編後編と割と長かったと思いますが、ここまで読んでいただき本当にありがとうございました。この記事の直感を持った状態で線形代数を見ると、
もし面白かったという方は記事の高評価よろしくお願いします! それでは~~~