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Chebyshev多項式のa類似について

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$$\newcommand{bk}[0]{\boldsymbol{k}} \newcommand{bl}[0]{\boldsymbol{l}} \newcommand{calA}[0]{\mathcal{A}} \newcommand{calS}[0]{\mathcal{S}} \newcommand{CC}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{F}[5]{{}_{#1}F_{#2}\left[\begin{matrix}#3\\#4\end{matrix};#5\right]} \newcommand{ol}[0]{\overline} \newcommand{Q}[5]{{}_{#1}\phi_{#2}\left[\begin{matrix}#3\\#4\end{matrix};#5\right]} \newcommand{QQ}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{ZZ}[0]{\mathbb{Z}} $$

前に書いた2つの記事( Legendre多項式の変数付きの拡張について , Hermite多項式の変数付きの拡張について )において, Legendre多項式とHermite多項式の$a$類似というものを導入した. ここではChebyshev多項式の$a$類似を定義していくことにする. Chebyshev多項式は$\sigma_n(x):=U_{2n}(\sqrt x), \beta_n:=\frac{\left(\frac 12\right)_n}{n!}$ とすると, $(0,1)$区間で重み関数$t^{a-1}(1-t)^{b-1}$であるようなJacobi多項式
\begin{align*} \rho_n^{(a,b)}(x)&=(-1)^n\frac{(a)_n}{n!}\sum_{k=0}^n\frac{(-n,a+b+n-1)_k}{k!(a)_k}x^k \end{align*}
を用いて,
\begin{align*} \sigma_n(x)=\frac 1{\beta_n}\rho_n^{\left(\frac 12,\frac 32\right)}(x)=(-1)^n\sum_{k=0}^n\frac{(-n,1+n)_k}{k!\left(\frac 12\right)_k}x^k \end{align*}
と表すことができる. よって, $[a]_n:=\frac{(a)_n}{n!}$として,
\begin{align*} \sigma_n^{(a)}(x)&:=(-1)^n\sum_{k=0}^n\frac{(-n,1+n)_k}{k!(a)_k}x^k=\frac 1{[a]_n}\rho_n^{(a,2-a)}(x) \end{align*}
と定義すると良さそうに見える. 以下, このように定義された$a$-Chebyshev多項式と$a$-Legendre多項式の関係を調べてみる. $a$-Legendre多項式を$\rho_n^{(a)}(x):=\rho_n^{(a,1)}(x)$とする.

以下の等式が成り立つ.
\begin{align*} \int_0^1x^{n+a-1}\rho_m^{(a)}(x)\,dx&=\frac{n!}{(n-m)!}\frac{(a)_n}{(a)_{n+m+1}} \end{align*}

証明手法(任意)

Jacobi多項式を用いて5F4のDougallの和公式を示す における命題1において$x\mapsto 1-x$と変数変換したものの特別な場合として従う.

以下の等式が成り立つ.
\begin{align*} \int_0^1\sum_{0\leq k}\frac{(b,c)_k}{k!(a)_k}x^{k+a-1}\rho_m^{(a)}(x)\,dx&=\frac{\Gamma(a)\Gamma(1+a-b-c)}{\Gamma(1+a-b)\Gamma(1+a-c)}\frac{(b,c)_m}{(1+a-b,1+a-c)_m} \end{align*}

前の補題とGaussの超幾何定理より,
\begin{align*} \int_0^1\sum_{0\leq k}\frac{(b,c)_k}{k!(a)_k}x^{k+a-1}\rho_m^{(a)}(x)\,dx&=\sum_{0\leq k}\frac{(b,c)_k}{k!(a)_k}\frac{k!}{(k-m)!}\frac{(a)_k}{(a)_{m+k+1}}\\ &=\sum_{0\leq k}\frac{(b,c)_{k+m}}{k!(a)_{k+2m+1}}\\ &=\frac{(b,c)_m}{(a)_{2m+1}}\frac{\Gamma(a+2m+1)\Gamma(1+a-b-c)}{\Gamma(1+a-b+m)\Gamma(1+a-c+m)}\\ &=\frac{\Gamma(a)\Gamma(1+a-b-c)}{\Gamma(1+a-b)\Gamma(1+a-c)}\frac{(b,c)_m}{(1+a-b,1+a-c)_m} \end{align*}
となって示される.

$b\mapsto -n, c\mapsto a+b+n$とすると, 以下を得る.

\begin{align*} \int_0^1(-1)^n\frac{(a+b)_n}{n!}\sum_{0\leq k}\frac{(-n,a+b+n)_k}{k!(a)_k}x^{k+a-1}\rho_m^{(a)}(x)\,dx&=\frac{(b)_{n-m}}{(n-m)!}\frac{(a+b)_{n+m}}{(a)_{n+m+1}}\\ \end{align*}

Jacobi多項式を用いて書き直すと,
\begin{align*} \frac{(a+b)_n}{(a)_n}\int_0^1\rho_n^{(a,b+1)}(x)\rho_n^{(a)}(x)\,dx&=[b]_{n-m}\frac{(a+b)_{n+m}}{(a)_{n+m+1}} \end{align*}
が成り立つことが分かる. よって, 直交性から

\begin{align*} \frac{(a+b)_n}{(a)_n}\rho_n^{(a,b+1)}(x)&=\sum_{k=0}^n[b]_{n-k}\frac{(a+b)_{n+k}}{(a)_{n+k+1}}(2k+a)\rho_k^{(a)}(x) \end{align*}
を得る. $b=1-a$として$a$-Chebyshev多項式を用いて書き直すと,
\begin{align*} \sigma_n^{(a)}(x)&=\pi_a\sum_{k=0}^n[1-a]_{n-k}[1-a]_{n+k+a}(2k+a)\rho_k^{(a)}(x) \end{align*}
が示される. この関係を見ても, $a$-Chebyshev多項式はChebyshev多項式の$a$類似としていい感じに定義できていること分かる. $a$-Chebyshev多項式は$a=1$の場合にどうなっているかを考えてみると,
\begin{align*} \rho_n^{(1)}(x)&=\rho_n^{(1)}(x)=P_n(2x-1) \end{align*}
となってLegendre多項式に一致する. よって, $a=1$の場合には$a$-Chebyshev多項式と$a$-Legendre多項式の違いがなくなることが分かる. これは興味深い現象だと思う. これまでで, 基本的な4つ直交多項式(Laguerre多項式,Hermtie多項式,Chebyshev多項式,Legendre多項式)の$a$類似を構成することができた. それらをさらに$q$類似へ一般化することは今後の研究課題である.

投稿日:321
更新日:321
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Wataru
Wataru
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超幾何関数, 直交関数, 多重ゼータ値などに興味があります

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