2
現代数学解説
文献あり

cubic theta functionについての覚え書き

147
0

はじめに

 この記事ではボールウェインのcubic theta functionの諸性質について証明を省略しつつ眺めていきます。

cubic theta function

 τHおよびq=e2πiτ,ω=e2πi3に対し
a(τ)=m,n=qm2+mn+n2b(τ)=m,n=ωnmqm2+mn+n2c(τ)=m,n=q(m+13)2+(m+13)(n+13)+(n+13)2
とおく。またα(τ)=c(τ)3/a(τ)3とおく。

算術幾何平均の類似

 実数a,b(ab>0)に対し数列{an},{bn}a0=a,b0=bおよび
an+1=an+2bn3,bn+1=(an2+anbn+bn2)bn33
によって定める。このとき
(x+2y)39(x2+xy+y2)y=(xy)3
に注意すると
b=b0b1bnana1a0=a
が成り立つので単調収束定理からan,bnはある値α,βに収束する。また
α=α+2β3
からα=βがわかる。このようにして定まる値をAG3(a,b)=α=βとおく。
 このとき以下が成り立つ。

1AG3(1,x)=2F1(13,231;1x3)

 これは通常の算術幾何平均についての公式
1M(1,x)=2F1(12,121;1x2)
の類似となっている(これについては この記事 の定理8系として紹介している)。
 いま
AG3(a,b)=AG3(a1,b1)=a+2b3M(1,1(aba+2b)33)
が成り立つことに注意すると
2F1(13,231;1x3)=31+2x2F1(13,231;(1x1+2x)3)
やこれをx1x1+2xとすることで
2F1(13,231;x3)=11+2x2F1(13,231;1(1x1+2x)3)
といった関係式が得られることに注意したい。

ラマヌジャンの変換公式

x=p3(2+p)1+2p,y=274(p+p2)2(1+p+p2)3
において
2F1(12,121;x)=1+2p1+p+p22F1(13,231;y)
が成り立つ。

 超幾何関数の変換公式を組み合わせるとわかる(多分)。

cubic thetaと超幾何関数

3次モジュラー方程式

λ(τ)=θ2(τ)4θ3(τ)4,M=1+2p=θ3(τ)2θ3(3τ)2
とおいたとき
λ(τ)=p(2+p)3(1+2p)3,λ(3τ)=p3(2+p)1+2p
が成り立つ(これはこの記事の9.3.3節あたりで解説している)。

a(τ)=θ3(τ)21+p+p2(1+2p)32=θ3(3τ)21+p+p21+2pα(τ)=274p2(1+p)2(1+p+p2)3

a(τ)=2F1(13,231;α(τ))

 この記事の定理9
θ3(τ)2=2F1(12,121;λ(τ))
からわかる。

保型性とか

ヤコビの恒等式の類似

a(τ)3=b(τ)3+c(τ)3

a(τ)=η(τ/3)3+3η(3τ)3η(τ),b(τ)=η(τ)3η(3τ),c(τ)=3η(3τ)3η(τ)

G(τ)=314η(3τ)η(τ)
とおくと
α(τ)=11+G124α(1α)=(G6+G62)2

a(τ+1)=a(τ)a(13τ)=iτ3a(τ)b(τ+1)=b(τ)b(13τ)=iτ3c(τ)c(τ+1)=ωc(τ)c(13τ)=iτ3b(τ)G(τ+1)=eπi6G(τ)G(13τ)=G(τ)1

a(τ)=1+6n=0(q3n+11q3n+1q3n+21q3n+2)

 cf. ヤコビの二平方定理
m,n=qm2+n2=1+4n=0(q4n+11q4n+1q4n+31q4n+3)

テータ関数による表示

a(τ)=θ2(2τ)θ2(6τ)+θ3(2τ)θ3(6τ)

 整数m,nに対し
mn(mod2)のとき(m,n)=(x+y,xy)
mn(mod2)のとき(m,n)=(x+y+1,xy)
とおくと
(x+y)2+(x+y)(xy)+(xy)2=3x2+y2(x+y+1)2+(x+y+1)(xy)+(xy)2=3x2+y2+3x+y+1=3(x+12)2+(y+12)2
より
n=qm2+mn+n2=x,y=(q3x2+y2+q3(x+12)2+(y+12)2)
を得る(q=e2πiτとしていたことに注意する)。

 この表示は個人的に考察したもので、またどの文献にもこのような表示が見当たらなかったので少し不安であったが、以下の性質が正常に導かれるので誤りではないはず。

定理9(再)

a(13τ)=iτ3a(τ)

a(13τ)=iτ32(θ4(3τ2)θ4(τ2)+θ3(3τ2)θ3(τ2))=iτ32m,n=(1+(1)m+n)q(3m2+n2)/4=iτ3mn(mod2)q(3m2+n2)/4
いま
m,n0(mod2)のとき(m,n)=(2x,2y)
m,n1(mod2)のとき(m,n)=(2x+1,2y+1)
とおくと
a(13τ)=iτ3x,y=(q3x2+y2+q3(x+12)2+(y+12)2)=iτ3a(τ)
を得る。

参考文献

[1]
H. H. Chan, On Ramanujan's cubic transformation formula for 2F1(1/3, 2/3; 1; z), Math. Proc. Cambridge Philos. Soc., 1998, 193-204
投稿日:20231119
更新日:20231120
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

子葉
子葉
1065
259812
主に複素解析、代数学、数論を学んでおります。 私の経験上、その証明が簡単に探しても見つからない、英語の文献を漁らないと載ってない、なんて定理の解説を主にやっていきます。 同じ経験をしている人の助けになれば。最近は自分用のノートになっている節があります。

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中
  1. はじめに
  2. 算術幾何平均の類似
  3. cubic thetaと超幾何関数
  4. 保型性とか
  5. テータ関数による表示
  6. 参考文献