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大学数学基礎解説
文献あり

【モーメント】尖度と歪度

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Def.

$n$ 次のモーメント

$(\Omega,\mathcal F,\mathbb P)$ を確率空間とし、$X$ を実数値確率変数とする。

  1. $n\in\mathbb N_{>0}$ とし、
    $$ \mathbb E[|X|^n]<\infty $$
    が成り立つと仮定する。

-このとき、$X$$n$ 次のモーメント、または原点まわりの $n$ 次モーメントを
$$ m_n:=\mathbb E[X^n] $$
によって定義する。

モーメントに関する注意

$n$ 次のモーメントは、確率分布の位置、ばらつき、非対称性、裾の重さなどを調べるための基本的な量である。
ただし、モーメントは期待値として定義される量であるため、一般には常に存在するとは限らない。
例えば、標準コーシー分布では $1$ 次モーメントも存在しない。

$n$ 次の中心モーメント

$(\Omega,\mathcal F,\mathbb P)$ を確率空間とし、$X$ を実数値確率変数とする。

  1. まず、
    $$ \mu:=\mathbb E[X] $$
    が有限な実数として存在すると仮定する。
  2. さらに、$n\in\mathbb N_{>0}$ とし、
    $$ \mathbb E[|X-\mu|^n]<\infty $$
    が成り立つと仮定する。

-このとき、$X$$n$ 次の中心モーメントを
$$ \mu_n:=\mathbb E[(X-\mu)^n] $$
によって定義する。

中心モーメントの意味

中心モーメントは、確率変数の平均からのずれに注目した量であり、確率分布の形状を数量的に特徴づけるために重要である。
$X$ の平均が有限な実数として存在し、
$$ \mu:=\mathbb E[X] $$
と書けるとする。また、必要な次数の中心モーメントが存在するとする。
このとき、$k\in\mathbb N_{>0}$ に対して、$X$$k$ 次中心モーメントは
$$ \mu_k:=\mathbb E[(X-\mu)^k] $$
で定義される。
ここで、$X-\mu$ は平均からのずれ、すなわち偏差を表す。

  1. $1$ 次中心モーメント
    $1$ 次中心モーメントが定義されるならば、期待値の線型性( 証明はコチラ )より、
    $$ \mu_1 = \mathbb E[X-\mu] = \mathbb E[X]-\mu = 0 $$
    である。
    したがって、第 $1$ 次中心モーメントは、定義される場合には常に $0$ であり、分布の形状を区別する情報はもたない。
    $ $
  2. $2$ 次中心モーメント
    $2$ 次中心モーメントは
    $$ \mu_2 = \mathbb E[(X-\mu)^2] $$
    である。
    これは $X$ の分散であり、
    $$ \operatorname{Var}(X)=\mu_2 $$
    である。
    分散は、確率変数の値が平均からどの程度離れているかを表す尺度である。
    分散が有限であるとき、その平方根
    $$ \sigma:=\sqrt{\operatorname{Var}(X)} $$
    を標準偏差という。
    $ $
  3. $3$ 次中心モーメントと歪度
    $3$ 次中心モーメントは
    $$ \mu_3 = \mathbb E[(X-\mu)^3] $$
    である。
    これは、平均からの偏差の符号付き $3$ 乗の期待値であり、分布の左右非対称性に関係する。
    標準偏差
    $$ \sigma:=\sqrt{\operatorname{Var}(X)} $$
    が正であり、
    $$ \mathbb E[|X-\mu|^3]<\infty $$
    が成り立つとき、
    $$ \gamma_1:=\frac{\mu_3}{\sigma^3} $$
    を歪度という。
    歪度が正であるとき、分布は右側に長い裾をもつ傾向がある。歪度が負であるとき、分布は左側に長い裾をもつ傾向がある。
    ただし、歪度が $0$ であることから、分布が対称であるとは一般にはいえない。
    一方、分布が平均 $\mu$ を中心に対称であり、$\mu_3$ が存在するならば、
    $$ \mu_3=0 $$
    である。さらに $\sigma>0$ ならば、
    $$ \gamma_1=0 $$
    である。
    $ $
  4. $4$ 次中心モーメントと尖度
    $4$ 次中心モーメントは
    $$ \mu_4 = \mathbb E[(X-\mu)^4] $$
    である。
    標準偏差
    $$ \sigma:=\sqrt{\operatorname{Var}(X)} $$
    が正であり、$\mu_4$ が存在するとき、
    $$ \kappa:=\frac{\mu_4}{\sigma^4} $$
    を尖度という。
    尖度は、標準化された偏差の $4$ 乗の期待値であり、大きな偏差を強く反映する尺度である。
    正規分布では
    $$ \kappa=3 $$
    である。
    そのため、
    $$ \kappa-3 $$
    を超過尖度という。
    正規分布を基準に解釈する場合、$\kappa>3$ であれば正規分布より極端な偏差が現れやすい傾向があり、
    $\kappa<3$ であれば正規分布より極端な偏差が現れにくい傾向がある。
    ただし、この解釈は分布の形状を直感的に説明するためのものであり、尖度だけで分布の形を完全に決定できるわけではない。
    $ $
  5. 高次中心モーメント
    $k\geq5$ の中心モーメントは、分布のより細かな形状を反映するが、直感的な解釈は一般に難しい。
    数理統計では、分布の近似や展開、例えばエッジワース展開などで高次モーメントが現れることがある。
歪度

$(\Omega,\mathcal F,\mathbb P)$ を確率空間とし、$X$ を実数値確率変数とする。

  1. $\mu:=\mathbb E[X]$ が有限な実数として存在するとする。
  2. また、
    $$ \mathbb E[(X-\mu)^2]<\infty $$
    かつ
    $$ \mathbb E[(X-\mu)^2]>0 $$
    であると仮定する。このとき、
    $$ \sigma^2:=\mathbb E[(X-\mu)^2]=\operatorname{Var}(X) $$
    とおき、
    $$ \sigma:=\sqrt{\sigma^2} $$
    と定める。
  3. さらに、$3$ 次中心絶対モーメントが有限、すなわち
    $$ \mathbb E[|X-\mu|^3]<\infty $$
    が成り立つとする。

-このとき、$X$ の歪度 $\gamma_1$
$$ \gamma_1 := \mathbb E\left[\left(\frac{X-\mu}{\sigma}\right)^3\right] = \frac{\mathbb E[(X-\mu)^3]}{\sigma^3} $$
によって定義する。

歪度の意味

歪度は、第 $3$ 標準化中心モーメントであり、分布の左右非対称性を表すために用いられる量である。
$\gamma_1>0$ であるとき、分布は右側に長い裾をもつ傾向がある。
$\gamma_1<0$ であるとき、分布は左側に長い裾をもつ傾向がある。
ただし、$\gamma_1=0$ であることから、分布が平均を中心に対称であるとは一般にはいえない。

尖度

$(\Omega,\mathcal F,\mathbb P)$ を確率空間とし、$X$ を実数値確率変数とする。

  1. $\mu:=\mathbb E[X]$ が有限な実数として存在するとする。
  2. また、
    $$ \mathbb E[(X-\mu)^2]<\infty $$
    かつ
    $$ \mathbb E[(X-\mu)^2]>0 $$
    であると仮定する。このとき、
    $$ \sigma^2:=\mathbb E[(X-\mu)^2]=\operatorname{Var}(X) $$
    とおき、
    $$ \sigma:=\sqrt{\sigma^2} $$
    と定める。
  3. さらに、$4$ 次中心絶対モーメントが有限、すなわち
    $$ \mathbb E[|X-\mu|^4]<\infty $$
    が成り立つとする。

-このとき、$X$ の尖度 $\kappa$
$$ \kappa := \mathbb E\left[\left(\frac{X-\mu}{\sigma}\right)^4\right] = \frac{\mathbb E[(X-\mu)^4]}{\sigma^4} $$
によって定義する。

正規分布の尖度は
$$ \kappa=3 $$
である。
そのため、
$$ \kappa-3 $$
を超過尖度という。なお、文献やソフトウェアによっては、超過尖度を単に尖度と呼ぶ流儀もある。
本稿では混同を避けるため、$\kappa$ を尖度、$\kappa-3$ を超過尖度と呼び、両者を区別する。

超過尖度

$(\Omega,\mathcal F,\mathbb P)$ を確率空間とし、$X$ を実数値確率変数とする。

  1. $\mu:=\mathbb E[X]$ が有限な実数として存在するとする。
  2. また、
    $$ \mathbb E[(X-\mu)^2]<\infty $$
    かつ
    $$ \mathbb E[(X-\mu)^2]>0 $$
    であると仮定する。このとき、
    $$ \sigma^2:=\mathbb E[(X-\mu)^2]=\operatorname{Var}(X) $$
    とおき、
    $$ \sigma:=\sqrt{\sigma^2} $$
    と定める。
  3. さらに、$4$ 次中心絶対モーメントが有限、すなわち
    $$ \mathbb E[|X-\mu|^4]<\infty $$
    が成り立つとする。
  4. $X$ の尖度を
    $$ \kappa := \mathbb E\left[\left(\frac{X-\mu}{\sigma}\right)^4\right] = \frac{\mathbb E[(X-\mu)^4]}{\sigma^4} $$
    とする。

-このとき、$X$ の超過尖度 $\kappa_{\mathrm{ex}}$
$$ \kappa_{\mathrm{ex}} := \kappa-3 $$
によって定義する。
すなわち、
$$ \kappa_{\mathrm{ex}} = \frac{\mathbb E[(X-\mu)^4]}{\sigma^4}-3 $$
である。

記号について

本稿では尖度を $\kappa$ と書くため、超過尖度は尖度から $3$ を引いた量であることを明確にするために
$$ \kappa_{\mathrm{ex}} $$
と書く。

正規分布を基準にした意味

正規分布の尖度は
$$ \kappa=3 $$
である。
したがって、非退化な正規分布の超過尖度は
$$ \kappa_{\mathrm{ex}}=3-3=0 $$
である。
そのため、超過尖度は正規分布を基準にして、極端な偏差の出やすさや裾の重さを比較するために用いられる。
ただし、超過尖度だけで分布の形状が完全に決まるわけではない。

Prop&Proof.

標準正規分布の $4$ 次モーメント

確率空間 $(\Omega,\mathcal F,\mathbb P)$ 上の実数値確率変数 $Z$ が標準正規分布に従うとする。すなわち、
$$ Z\sim\mathcal N(0,1) $$
とする。
このとき、$Z$$4$ 次モーメントは有限であり、
$$ \mathbb E[Z^4]=3 $$
が成り立つ。

  1. 標準正規分布のモーメント母関数は、任意の $t\in\mathbb R$ に対して
    $$ M_Z(t) := \mathbb E[e^{tZ}] = e^{t^2/2} $$
    である( 証明はコチラ )。特に、$M_Z(t)$$0$ の近傍で有限である。
    したがって、各 $n\in\mathbb N$ に対して $n$ 次モーメントが存在し、
    $$ M_Z^{(n)}(0)=\mathbb E[Z^n] $$
    が成り立つ。
    $ $
  2. 一方、指数関数のマクローリン展開より、
    $$ \begin{align} M_Z(t) &= e^{t^2/2} \\ &= \sum_{k=0}^{\infty}\frac{1}{k!}\left(\frac{t^2}{2}\right)^k \\ &= \sum_{k=0}^{\infty}\frac{t^{2k}}{2^k k!} \end{align} $$
    である。
    したがって、$t^4$ の係数は、$k=2$ の項から
    $$ \frac{1}{2^2\cdot 2!} = \frac{1}{8} $$
    である。
    $ $
  3. また、モーメント母関数の展開より、
    $$ M_Z(t) = \sum_{n=0}^{\infty} \frac{\mathbb E[Z^n]}{n!}t^n $$
    である。
    したがって、$t^4$ の係数は
    $$ \frac{\mathbb E[Z^4]}{4!} $$
    である。
    $ $
  4. 冪級数展開の係数の一意性より、
    $$ \frac{\mathbb E[Z^4]}{4!} = \frac{1}{8} $$
    である。
    ゆえに、$4!=24$ より、
    $$ \mathbb E[Z^4] = 24\cdot\frac{1}{8} = 3 $$
    である。
    $$ \Box$$
標準正規分布の $3$ 次絶対モーメントの有限性

確率空間 $(\Omega,\mathcal F,\mathbb P)$ 上の実数値確率変数 $Z$ が標準正規分布に従うとする。すなわち、
$$ Z\sim\mathcal N(0,1) $$
とする。
標準正規分布の密度関数を
$$ \varphi(z) := \frac{1}{\sqrt{2\pi}}e^{-z^2/2} $$
とおく。

  1. このとき、
    $$ \mathbb E[|Z|^3] = \int_{-\infty}^{\infty}|z|^3\varphi(z)\,dz < \infty $$
    である。
  2. したがって、広義積分
    $$ \int_{-\infty}^{\infty}z^3\varphi(z)\,dz $$
    は絶対収束する。
  1. 標準正規分布の密度関数の定義より、
    $$ \mathbb E[|Z|^3] = \int_{-\infty}^{\infty}|z|^3\varphi(z)\,dz = \frac{1}{\sqrt{2\pi}} \int_{-\infty}^{\infty}|z|^3e^{-z^2/2}\,dz $$
    である。
    ここで、関数 $z\mapsto |z|^3e^{-z^2/2}$ は偶関数であるから、
    $$ \int_{-\infty}^{\infty}|z|^3e^{-z^2/2}\,dz = 2\int_0^\infty z^3e^{-z^2/2}\,dz $$
    である。
    $ $
  2. 次に、
    $$ u:=\frac{z^2}{2} $$
    とおく。このとき、
    $$ du=z\,dz $$
    であり、さらに
    $$ z^2=2u $$
    である。したがって、
    $$ z^3\,dz = z^2z\,dz = 2u\,du $$
    である。
    また、$z=0$ のとき $u=0$ であり、$z\to\infty$ のとき $u\to\infty$ である。
    よって、変数変換により、
    $$ \begin{align} \int_0^\infty z^3e^{-z^2/2}\,dz &= \int_0^\infty 2ue^{-u}\,du \\ &= 2\int_0^\infty ue^{-u}\,du \end{align} $$
    である。
    ここで、部分積分により、
    $$ \begin{align} \int_0^\infty ue^{-u}\,du &= \lim_{b\to\infty}\int_0^b ue^{-u}\,du \\ &= \lim_{b\to\infty} \left( [-ue^{-u}]_0^b+\int_0^b e^{-u}\,du \right) \\ &= \lim_{b\to\infty} \left( -be^{-b}+[-e^{-u}]_0^b \right) \\ &= \lim_{b\to\infty} \left( -be^{-b}+1-e^{-b} \right) \\ &= 1 \end{align} $$
    である。ただし、最後の等号では
    $$ \lim_{b\to\infty}be^{-b}=0, \quad \lim_{b\to\infty}e^{-b}=0 $$
    を用いた( 証明はコチラ )。
    したがって、
    $$ \int_0^\infty z^3e^{-z^2/2}\,dz = 2 $$
    である。ゆえに、
    $$ \begin{align} \int_{-\infty}^{\infty}|z|^3\varphi(z)\,dz &= \frac{1}{\sqrt{2\pi}} \int_{-\infty}^{\infty}|z|^3e^{-z^2/2}\,dz \\ &= \frac{1}{\sqrt{2\pi}} \cdot 2\int_0^\infty z^3e^{-z^2/2}\,dz \\ &= \frac{1}{\sqrt{2\pi}} \cdot 2\cdot 2 \\ &= \frac{4}{\sqrt{2\pi}} \\ &< \infty \end{align} $$
    である。
    したがって、
    $$ \mathbb E[|Z|^3] < \infty $$
    である。
    $ $
  3. さらに、任意の $z\in\mathbb R$ に対して、$\varphi(z)\geq0$ より
    $$ |z^3\varphi(z)| = |z|^3\varphi(z) $$
    である。
    また、
    $$ \int_{-\infty}^{\infty}|z|^3\varphi(z)\,dz < \infty $$
    であるから、広義積分
    $$ \int_{-\infty}^{\infty}z^3\varphi(z)\,dz $$
    は絶対収束する。

-したがって、
$$ \int_{-\infty}^{\infty}z^3\varphi(z)\,dz $$
は広義積分として収束する。
$$ \Box$$

正規分布の歪度、尖度、超過尖度

$\mu\in\mathbb R$$\sigma>0$ とする。確率空間 $(\Omega,\mathcal F,\mathbb P)$ 上の実数値確率変数 $X$
$$ X\sim\mathcal N(\mu,\sigma^2) $$
を満たすとする。
このとき、$X$ の歪度 $\gamma_1$、尖度 $\kappa$、超過尖度 $\kappa_{\mathrm{ex}}$ はそれぞれ存在し、
$$ \gamma_1=0,\quad \kappa=3,\quad \kappa_{\mathrm{ex}}=0 $$
である。

実数値確率変数 $Z$
$$ Z:=\frac{X-\mu}{\sigma} $$
とおく。正規分布の標準化より、
$$ Z\sim\mathcal N(0,1) $$
である( 証明はコチラ )。
また、
$$ X-\mu=\sigma Z $$
である。
標準正規分布の $3$ 次絶対モーメントは有限であるから、
$$ \mathbb E[|X-\mu|^3] = \mathbb E[|\sigma Z|^3] = \sigma^3\mathbb E[|Z|^3] < \infty $$
である。
また、標準正規分布の $4$ 次モーメントより、
$$ \mathbb E[Z^4]=3 $$
である(本記事内で証明済み)。さらに、$|Z|^4=Z^4$ であるから、
$$ \mathbb E[|Z|^4]=\mathbb E[Z^4]=3<\infty $$
である。
したがって、
$$ \mathbb E[|X-\mu|^4] = \mathbb E[|\sigma Z|^4] = \sigma^4\mathbb E[|Z|^4] < \infty $$
である。
ゆえに、$X$ の歪度、尖度、超過尖度は定義される。

  1. まず、歪度を求める。
    歪度の定義より、
    $$ \gamma_1 := \frac{\mathbb E[(X-\mu)^3]}{\sigma^3} $$
    である。
    定数倍の期待値の性質( 証明はコチラ )より、
    $$ \begin{align} \mathbb E[(X-\mu)^3] &= \mathbb E[(\sigma Z)^3] \\ &= \sigma^3\mathbb E[Z^3] \end{align} $$
    である。
    標準正規分布の密度関数を
    $$ \varphi(z):=\frac{1}{\sqrt{2\pi}}e^{-z^2/2} $$
    とおく。
    このとき、$\varphi$ は偶関数であり、$z^3$ は奇関数であるから、$z^3\varphi(z)$ は奇関数である。
    また、標準正規分布の $3$ 次絶対モーメントは有限であるから、広義積分
    $$ \int_{-\infty}^{\infty}z^3\varphi(z)\,dz $$
    は絶対収束する(本記事内で証明済み)。したがって、奇関数の対称性より、
    $$ \mathbb E[Z^3] = \int_{-\infty}^{\infty}z^3\varphi(z)\,dz = 0 $$
    である。よって、
    $$ \gamma_1 = \frac{\mathbb E[(X-\mu)^3]}{\sigma^3} = \frac{\sigma^3\mathbb E[Z^3]}{\sigma^3} = 0 $$
    である。
    $ $
  2. 次に、尖度を求める。
    尖度の定義より、
    $$ \kappa := \frac{\mathbb E[(X-\mu)^4]}{\sigma^4} $$
    である。
    ここで、定数倍の期待値の性質( 証明はコチラ )より、
    $$ \begin{align} \mathbb E[(X-\mu)^4] &= \mathbb E[(\sigma Z)^4] \\ &= \sigma^4\mathbb E[Z^4] \end{align} $$
    である。
    標準正規分布の $4$ 次モーメントより、
    $$ \mathbb E[Z^4]=3 $$
    である(本記事内で証明済み)。したがって、
    $$ \mathbb E[(X-\mu)^4] = 3\sigma^4 $$
    である。
    ゆえに、
    $$ \kappa = \frac{\mathbb E[(X-\mu)^4]}{\sigma^4} = \frac{3\sigma^4}{\sigma^4} = 3 $$
    である。
    $ $
  3. 最後に、超過尖度を求める。
    超過尖度の定義より、
    $$ \kappa_{\mathrm{ex}} := \kappa-3 $$
    である。
    すでに $\kappa=3$ を示したので、
    $$ \kappa_{\mathrm{ex}} = 3-3 = 0 $$
    である。

-以上より、
$$ \gamma_1=0,\quad \kappa=3,\quad \kappa_{\mathrm{ex}}=0 $$
である。
$$ \Box$$

$Z\sim\mathcal N(0,1)$ とし、標準正規分布の密度関数を
$$ \varphi(z):=\frac{1}{\sqrt{2\pi}}e^{-z^2/2} $$
とおく。

  1. まず、すでに示したように、
    $$ \mathbb E[|Z|^3] = \int_{-\infty}^{\infty}|z|^3\varphi(z)\,dz = \frac{4}{\sqrt{2\pi}} < \infty $$
    である。
  2. したがって、標準正規分布の $3$ 次絶対モーメントは有限である。
    また、すでに示したように、
    $$ \mathbb E[Z^4]=3 $$
    である。特に、
    $$ \mathbb E[|Z|^4] = \mathbb E[Z^4] = 3 < \infty $$
    である。ここで、$|Z|^4=Z^4$ であることを用いた。

-以上より、標準正規分布の $3$ 次絶対モーメントと $4$ 次モーメントは有限である。

一様分布の歪度、尖度、超過尖度

$a,b\in\mathbb R$$a< b$ とする。確率空間 $(\Omega,\mathcal F,\mathbb P)$ 上の実数値確率変数 $X$ が区間 $[a,b]$ 上の一様分布に従うとする。
すなわち、
$$ X\sim U(a,b) $$
とする。
このとき、$X$ の歪度 $\gamma_1$、尖度 $\kappa$、超過尖度 $\kappa_{\mathrm{ex}}$ はそれぞれ存在し、
$$ \gamma_1=0,\quad \kappa=\frac{9}{5},\quad \kappa_{\mathrm{ex}}=-\frac{6}{5} $$
である。

$X\sim U(a,b)$ であるから、$X$ の確率密度関数 $f_X:\mathbb R\to[0,\infty)$
$$ f_X(x) = \begin{cases} \dfrac{1}{b-a}, & a\leq x\leq b,\\ 0, & \text{それ以外} \end{cases} $$
である。
$ $
$X\sim U(a,b)$ であるから、$a\leq X\leq b$ がほとんど確実に成り立つ。したがって、すべての正の整数 $n$ に対して、$n$ 次絶対モーメントは有限である。
さらに、$\mu_X$ は有限な実数であるから、すべての正の整数 $n$ に対して、中心絶対モーメント $\mathbb E[|X-\mu_X|^n]$ も有限である(補足を参照)。
$ $
一様分布の平均と分散の公式より、
$$ \mu_X = \mathbb E[X] = \frac{a+b}{2} $$
であり、
$$ \operatorname{Var}(X) = \frac{(b-a)^2}{12} $$
である( 証明はコチラ )。
したがって、$a< b$ より $b-a>0$ であるから、標準偏差は
$$ \sigma_X = \sqrt{\operatorname{Var}(X)} = \sqrt{\frac{(b-a)^2}{12}} = \frac{b-a}{\sqrt{12}} $$
である。
$ $

  1. 歪度を求める。
    $$ d:=\frac{b-a}{2} $$
    とおく。また、
    $$ y:=x-\mu_X $$
    とおく。
    このとき、$x=a$ ならば $y=-d$ であり、$x=b$ ならば $y=d$ である。また、$dx=dy$ である。
    したがって、
    $$ \begin{align} \mathbb E[(X-\mu_X)^3] &= \int_a^b (x-\mu_X)^3\frac{1}{b-a}\,dx \\ &= \frac{1}{b-a}\int_{-d}^{d} y^3\,dy \\ &= 0 \end{align} $$
    である。最後の等号では、$y^3$ が奇関数であり、積分区間 $[-d,d]$ が原点対称であることを用いた。
    よって、
    $$ \gamma_1 = \frac{\mathbb E[(X-\mu_X)^3]}{\sigma_X^3} = 0 $$
    である。
    $ $
  2. 尖度を求める。
    同様に、
    $$ \begin{align} \mathbb E[(X-\mu_X)^4] &= \int_a^b (x-\mu_X)^4\frac{1}{b-a}\,dx \\ &= \frac{1}{b-a}\int_{-d}^{d} y^4\,dy \\ &= \frac{1}{b-a}\cdot 2\int_0^d y^4\,dy \\ &= \frac{1}{b-a}\cdot 2\cdot\frac{d^5}{5} \\ &= \frac{2d^5}{5(b-a)} \end{align} $$
    である。
    ここで、$b-a=2d$ であるから、
    $$ \mathbb E[(X-\mu_X)^4] = \frac{2d^5}{5\cdot 2d} = \frac{d^4}{5} = \frac{1}{5}\left(\frac{b-a}{2}\right)^4 = \frac{(b-a)^4}{80} $$
    である。
    また、
    $$ \sigma_X^4 = \left(\frac{b-a}{\sqrt{12}}\right)^4 = \frac{(b-a)^4}{144} $$
    である。
    したがって、尖度は
    $$ \begin{align} \kappa &= \frac{\mathbb E[(X-\mu_X)^4]}{\sigma_X^4} \\ &= \frac{\frac{(b-a)^4}{80}}{\frac{(b-a)^4}{144}} \\ &= \frac{144}{80} \\ &= \frac{9}{5} \end{align} $$
    である。
    $ $
  3. 超過尖度を求める。
    超過尖度の定義より、
    $$ \kappa_{\mathrm{ex}} := \kappa-3 $$
    である。したがって、
    $$ \begin{align} \kappa_{\mathrm{ex}} &= \frac{9}{5}-3 \\ &= \frac{9}{5}-\frac{15}{5} \\ &= -\frac{6}{5} \end{align} $$
    である。

-以上より、
$$ \gamma_1=0,\quad \kappa=\frac{9}{5},\quad \kappa_{\mathrm{ex}}=-\frac{6}{5} $$
である。
$$ \Box$$

一様分布のモーメントの有限性

$X\sim U(a,b)$ であるから、$X$ の確率密度関数は $[a,b]$ の外で $0$ である。
したがって、
$$ \mathbb P(a\leq X\leq b)=1 $$
である。すなわち、$X$ はほとんど確実に有界である。

  1. ここで、任意の $n\in\mathbb N_{>0}$ に対して、
    $$ M_n:=\max\{|a|^n,|b|^n\} $$
    とおく。このとき、$a\leq X\leq b$ が成り立つ各点において、
    $$ |X|^n\leq M_n $$
    である。
    よって、ほとんど確実に
    $$ |X|^n\leq M_n $$
    が成り立つ。期待値の単調性( 証明はコチラ )より、
    $$ 0\leq \mathbb E[|X|^n]\leq \mathbb E[M_n]=M_n<\infty $$
    である。
    したがって、すべての $n\in\mathbb N_{>0}$ に対して、$X$$n$ 次絶対モーメントは有限である。
    特に、
    $$ |X^n|=|X|^n $$
    であり、$\mathbb E[|X|^n]<\infty$ であるから、$n$ 次モーメント
    $$ \mathbb E[X^n] $$
    も有限な実数として存在する。
    $ $
  2. また、$\mu_X$ が有限な実数として存在するので、任意の $n\in\mathbb N_{>0}$ に対して、
    $$ |X-\mu_X|^n \leq 2^{n-1}(|X|^n+|\mu_X|^n) $$
    が成り立つ。したがって、
    $$ \mathbb E[|X-\mu_X|^n] \leq 2^{n-1}(\mathbb E[|X|^n]+|\mu_X|^n) < \infty $$
    である。
    ゆえに、すべての $n\in\mathbb N_{>0}$ に対して、$X$$n$ 次中心絶対モーメントも有限である。
一様分布の対称性

区間 $[a,b]$ 上の一様分布は、平均
$$ \mu_X=\frac{a+b}{2} $$
を中心に対称である。
そのため、$3$ 次中心モーメントは $0$ になり、歪度も $0$ になる。
ただし、尖度は
$$ \kappa=\frac{9}{5} $$
であり、正規分布の尖度 $3$ より小さい。
したがって、超過尖度は
$$ \kappa_{\mathrm{ex}}=-\frac{6}{5} $$
である。
これは、正規分布を基準にすると、一様分布では大きな標準化偏差が現れにくい傾向をもつことを表している。
ただし、尖度および超過尖度だけで分布の形状が完全に決まるわけではない。

ベルヌーイ分布の歪度、尖度、超過尖度

$p\in(0,1)$ とする。確率空間 $(\Omega,\mathcal F,\mathbb P)$ 上の実数値確率変数 $X$ がベルヌーイ分布 $\operatorname{Bernoulli}(p)$ に従うとする。
すなわち、
$$ \mathbb P(X=1)=p, \quad \mathbb P(X=0)=1-p $$
が成り立つとする。
このとき、$X$ の歪度 $\gamma_1$、尖度 $\kappa$、超過尖度 $\kappa_{\mathrm{ex}}$ はそれぞれ存在し、
$$ \gamma_1 = \frac{1-2p}{\sqrt{p(1-p)}} $$
$$ \kappa = \frac{1-3p(1-p)}{p(1-p)} $$
$$ \kappa_{\mathrm{ex}} = \frac{1-6p(1-p)}{p(1-p)} $$
である。

まず、
$$ q:=1-p $$
とおく。このとき、$p\in(0,1)$ より、
$$ q\in(0,1) $$
である。
また、
$$ \mathbb P(X=0)+\mathbb P(X=1)=q+p=1 $$
であるから、$X$$0$ または $1$ の値をほとんど確実に取る。したがって、任意の $n\in\mathbb N_{>0}$ に対して、
$$ |X|^n\leq 1 $$
がほとんど確実に成り立つ。ゆえに、
$$ \mathbb E[|X|^n]\leq 1<\infty $$
である。
特に、$X$ の任意の正の整数次の絶対モーメントは有限である。
$ $

  1. 平均と分散を求める。
    ベルヌーイ分布の定義より、
    $$ \begin{align} \mathbb E[X] &= 0\cdot\mathbb P(X=0)+1\cdot\mathbb P(X=1) \\ &= p \end{align} $$
    である。よって、
    $$ \mu:=\mathbb E[X]=p $$
    である。
    また、$X$$0$ または $1$ の値をほとんど確実に取るので、
    $$ X^2=X $$
    がほとんど確実に成り立つ。したがって、
    $$ \mathbb E[X^2]=\mathbb E[X]=p $$
    である。
    ゆえに、分散公式( 証明はコチラ )より
    $$ \begin{align} \operatorname{Var}(X) &= \mathbb E[X^2]-(\mathbb E[X])^2 \\ &= p-p^2 \\ &= p(1-p) \\ &= pq \end{align} $$
    である。
    $p,q>0$ より、
    $$ 0< pq<\infty $$
    である。したがって、標準偏差は
    $$ \sigma:=\sqrt{\operatorname{Var}(X)}=\sqrt{pq} $$
    であり、特に
    $$ \sigma>0 $$
    である。
    また、$X$$0$ または $1$ の値をほとんど確実に取るので、
    $$ |X-\mu|\leq 1 $$
    がほとんど確実に成り立つ。したがって、任意の $n\in\mathbb N_{>0}$ に対して、
    $$ \mathbb E[|X-\mu|^n]\leq 1<\infty $$
    である。
    よって、$X$ の歪度、尖度、超過尖度は定義される。
    $ $
  2. $3$ 次中心モーメントを求める。
    $X$$0$ または $1$ の値をほとんど確実に取るので、
    $$ \begin{align} \mathbb E[(X-\mu)^3] &= (0-p)^3\mathbb P(X=0) + (1-p)^3\mathbb P(X=1) \\ &= (-p)^3q+q^3p \\ &= -p^3q+pq^3 \\ &= pq(q^2-p^2) \\ &= pq(q-p)(q+p) \end{align} $$
    である。ここで、
    $$ q+p=1 $$
    であり、$q:=1-p$ と定義しているので、
    $$ q-p = (1-p)-p = 1-2p $$
    である。ゆえに、
    $$ \mathbb E[(X-\mu)^3] = pq(1-2p) $$
    である。
    したがって、歪度の定義より、
    $$ \begin{align} \gamma_1 &= \frac{\mathbb E[(X-\mu)^3]}{\sigma^3} \\ &= \frac{pq(1-2p)}{(\sqrt{pq})^3} \\ &= \frac{pq(1-2p)}{(pq)^{3/2}} \\ &= \frac{1-2p}{\sqrt{pq}} \\ &= \frac{1-2p}{\sqrt{p(1-p)}} \end{align} $$
    である。
    $ $
  3. $4$ 次中心モーメントを求める。
    同様に、
    $$ \begin{align} \mathbb E[(X-\mu)^4] &= (0-p)^4\mathbb P(X=0) + (1-p)^4\mathbb P(X=1) \\ &= p^4q+q^4p \\ &= pq(p^3+q^3) \end{align} $$
    である。
    ここで、$p+q=1$ より、
    $$ \begin{align} p^3+q^3 &= (p+q)^3-3pq(p+q) \\ &= 1-3pq \end{align} $$
    である。したがって、
    $$ \mathbb E[(X-\mu)^4] = pq(1-3pq) $$
    である。
    ゆえに、尖度の定義より、
    $$ \begin{align} \kappa &= \frac{\mathbb E[(X-\mu)^4]}{\sigma^4} \\ &= \frac{pq(1-3pq)}{(\sqrt{pq})^4} \\ &= \frac{pq(1-3pq)}{(pq)^2} \\ &= \frac{1-3pq}{pq} \\ &= \frac{1-3p(1-p)}{p(1-p)} \end{align} $$
    である。
    $ $
  4. 超過尖度を求める。
    超過尖度の定義より、
    $$ \kappa_{\mathrm{ex}}:=\kappa-3 $$
    である。したがって、
    $$ \begin{align} \kappa_{\mathrm{ex}} &= \frac{1-3pq}{pq}-3 \\ &= \frac{1-3pq-3pq}{pq} \\ &= \frac{1-6pq}{pq} \\ &= \frac{1-6p(1-p)}{p(1-p)} \end{align} $$
    である。

-以上より、
$$ \gamma_1 = \frac{1-2p}{\sqrt{p(1-p)}}, \quad \kappa = \frac{1-3p(1-p)}{p(1-p)}, \quad \kappa_{\mathrm{ex}} = \frac{1-6p(1-p)}{p(1-p)} $$
である。
$$ \Box$$

パラメータの端点について

$p=0$ または $p=1$ の場合、ベルヌーイ分布は退化分布になる。
このとき、
$$ \operatorname{Var}(X)=p(1-p)=0 $$
である。
したがって、標準偏差で割る形で定義される歪度、尖度、超過尖度は、本稿の定義では定義されない。
そのため、本命題では
$$ 0< p<1 $$
を仮定している。

特に $p=\frac{1}{2}$ の場合

$p=\frac{1}{2}$ のとき、ベルヌーイ分布は $0$$1$ に同じ確率をもつ。
このとき、
$$ \gamma_1 = \frac{1-2p}{\sqrt{p(1-p)}} = 0 $$
である。
また、
$$ \kappa = \frac{1-3p(1-p)}{p(1-p)} = 1 $$
である。したがって、
$$ \kappa_{\mathrm{ex}} = \kappa-3 = -2 $$
である。
これは、ベルヌーイ分布 $\operatorname{Bernoulli}\left(\frac{1}{2}\right)$ が正規分布を基準にして負の超過尖度をもつことを表している。
ただし、尖度および超過尖度だけで分布の形状が完全に決まるわけではない。

歪度、尖度、超過尖度の一次変換に対する性質

$(\Omega,\mathcal F,\mathbb P)$ を確率空間とし、$X$ を実数値確率変数とする。

  1. $\mu_X:=\mathbb E[X]$ が有限な実数として存在するとする。
  2. また、
    $$ \sigma_X^2:=\operatorname{Var}(X)=\mathbb E[(X-\mu_X)^2] $$
    が正で有限、すなわち
    $$ 0<\sigma_X^2<\infty $$
    であると仮定し、
    $$ \sigma_X:=\sqrt{\sigma_X^2} $$
    とおく。
  3. さらに、
    $$ \mathbb E[|X-\mu_X|^4]<\infty $$
    が成り立つとする。
  4. $a,b\in\mathbb R$$a\ne0$ とし、
    $$ Y:=aX+b $$
    によって実数値確率変数 $Y$ を定める。

-このとき、$Y$ の歪度、尖度、超過尖度は存在し、
$$ \gamma_1(Y)=\operatorname{sign}(a)\gamma_1(X) $$
$$ \kappa(Y)=\kappa(X) $$
$$ \kappa_{\mathrm{ex}}(Y)=\kappa_{\mathrm{ex}}(X) $$
が成り立つ。

  1. まず、仮定より
    $$ \mathbb E[|X-\mu_X|^4]<\infty $$
    である。任意の $t\geq0$ に対して $t^3\leq 1+t^4$ であるから、
    $$ |X-\mu_X|^3\leq 1+|X-\mu_X|^4 $$
    である。したがって、
    $$ \mathbb E[|X-\mu_X|^3]<\infty $$
    である。
    よって、$X$ の歪度、尖度、超過尖度は定義される。
    $ $
    i) $Y=aX+b$ であるから、期待値の線型性( 証明はコチラ )より、
    $$ \mu_Y := \mathbb E[Y] = \mathbb E[aX+b] = a\mathbb E[X]+b = a\mu_X+b $$
      である。
      また、分散の一次変換に関する性質( 証明はコチラ )より、
    $$ \sigma_Y^2 := \operatorname{Var}(Y) = \operatorname{Var}(aX+b) = a^2\operatorname{Var}(X) = a^2\sigma_X^2 $$
      である。
      したがって、$a\ne0$ かつ $\sigma_X>0$ より、
    $$ \sigma_Y = \sqrt{\sigma_Y^2} = \sqrt{a^2\sigma_X^2} = |a|\sigma_X > 0 $$
      である。さらに、
    $$ Y-\mu_Y = aX+b-(a\mu_X+b) = a(X-\mu_X) $$
      であるから、定数倍の期待値の性質( 証明はコチラ )より
    $$ \begin{align} \mathbb E[|Y-\mu_Y|^4] &= \mathbb E[|a(X-\mu_X)|^4] \\ &= |a|^4\mathbb E[|X-\mu_X|^4] \\ &< \infty \end{align} $$
      である。
    $ $
    ii) さらに、$Y$$3$ 次中心絶対モーメントも有限であることを示す。
      任意の $t\geq0$ に対して、
    $$ t^3\leq 1+t^4 $$
      が成り立つ。実際、$0\leq t\leq1$ のときは $t^3\leq1\leq1+t^4$ であり、$t>1$ のときは $t^3\leq t^4\leq1+t^4$ である。
      ここで、
    $$ t:=|Y-\mu_Y| $$
      とおくと、$|Y-\mu_Y|\geq0$ であるから、
    $$ |Y-\mu_Y|^3 \leq 1+|Y-\mu_Y|^4 $$
      が成り立つ。
      したがって、期待値の単調性より、
    $$ \mathbb E[|Y-\mu_Y|^3] \leq \mathbb E[1+|Y-\mu_Y|^4] $$
      である。右辺について、期待値の線型性より、
    $$ \mathbb E[1+|Y-\mu_Y|^4] = 1+\mathbb E[|Y-\mu_Y|^4] $$
      である。すでに
    $$ \mathbb E[|Y-\mu_Y|^4]<\infty $$
      を示しているので、
    $$ 1+\mathbb E[|Y-\mu_Y|^4]<\infty $$
      である。ゆえに、
    $$ \mathbb E[|Y-\mu_Y|^3]<\infty $$
      が成り立つ。
    よって、$Y$ の歪度、尖度、超過尖度は定義される。
    $ $
  2. 歪度について示す。
    標準化すると、
    $$ \begin{align} \frac{Y-\mu_Y}{\sigma_Y} &= \frac{a(X-\mu_X)}{|a|\sigma_X} \\ &= \frac{a}{|a|}\frac{X-\mu_X}{\sigma_X} \\ &= \operatorname{sign}(a)\frac{X-\mu_X}{\sigma_X} \end{align} $$
    である(補足を参照)。
    したがって、歪度の定義より、
    $$ \begin{align} \gamma_1(Y) &= \mathbb E\left[\left(\frac{Y-\mu_Y}{\sigma_Y}\right)^3\right] \\ &= \mathbb E\left[\left(\operatorname{sign}(a)\frac{X-\mu_X}{\sigma_X}\right)^3\right] \\ &= \operatorname{sign}(a)^3 \mathbb E\left[\left(\frac{X-\mu_X}{\sigma_X}\right)^3\right] \\ &= \operatorname{sign}(a)\gamma_1(X) \end{align} $$
    である。ただし、最後の等号では
    $$ \operatorname{sign}(a)^3=\operatorname{sign}(a) $$
    を用いた。
    $ $
  3. 尖度について示す。
    尖度の定義より、
    $$ \begin{align} \kappa(Y) &= \mathbb E\left[\left(\frac{Y-\mu_Y}{\sigma_Y}\right)^4\right] \\ &= \mathbb E\left[\left(\operatorname{sign}(a)\frac{X-\mu_X}{\sigma_X}\right)^4\right] \\ &= \operatorname{sign}(a)^4 \mathbb E\left[\left(\frac{X-\mu_X}{\sigma_X}\right)^4\right] \\ &= \kappa(X) \end{align} $$
    である。ただし、最後の等号では
    $$ \operatorname{sign}(a)^4=1 $$
    を用いた。
    $ $
  4. 超過尖度について示す。
    超過尖度の定義より、
    $$ \kappa_{\mathrm{ex}}(Y) := \kappa(Y)-3 $$
    である。
    すでに $\kappa(Y)=\kappa(X)$ を示したので、
    $$ \begin{align} \kappa_{\mathrm{ex}}(Y) &= \kappa(Y)-3 \\ &= \kappa(X)-3 \\ &= \kappa_{\mathrm{ex}}(X) \end{align} $$
    である。

-以上より、
$$ \gamma_1(Y)=\operatorname{sign}(a)\gamma_1(X) $$
$$ \kappa(Y)=\kappa(X) $$
$$ \kappa_{\mathrm{ex}}(Y)=\kappa_{\mathrm{ex}}(X) $$
が成り立つ。
$$ \Box$$

符号関数 $\operatorname{sign}$ について

実数 $x\in\mathbb R$ に対して、符号関数 $\operatorname{sign}:\mathbb R\to\{-1,0,1\}$
$$ \operatorname{sign}(x) := \begin{cases} 1, & x>0,\\ 0, & x=0,\\ -1, & x<0 \end{cases} $$
によって定義する。
これは、実数 $x$ の符号を数値として表す関数である。
特に、$x\ne0$ のとき、
$$ \operatorname{sign}(x)=\frac{x}{|x|} $$
が成り立つ。
実際、$x>0$ ならば $|x|=x$ であるから、
$$ \frac{x}{|x|}=\frac{x}{x}=1=\operatorname{sign}(x) $$
である。一方、$x<0$ ならば $|x|=-x$ であるから、
$$ \frac{x}{|x|}=\frac{x}{-x}=-1=\operatorname{sign}(x) $$
である。
したがって、$a\ne0$ のとき、
$$ \frac{a}{|a|}=\operatorname{sign}(a) $$
である。
このため、一次変換 $Y=aX+b$ において標準化すると、
$$ \frac{Y-\mu_Y}{\sigma_Y} = \frac{a(X-\mu_X)}{|a|\sigma_X} = \operatorname{sign}(a)\frac{X-\mu_X}{\sigma_X} $$
と書ける。
また、$a\ne0$ のとき $\operatorname{sign}(a)$$1$ または $-1$ であるから、
$$ \operatorname{sign}(a)^3=\operatorname{sign}(a) $$
および
$$ \operatorname{sign}(a)^4=1 $$
が成り立つ。
このため、歪度では符号が反映され、
$$ \gamma_1(aX+b)=\operatorname{sign}(a)\gamma_1(X) $$
となる。一方、尖度では符号が消えるため、
$$ \kappa(aX+b)=\kappa(X) $$
となる。

参考文献

投稿日:19日前
数学の力で現場を変える アルゴリズムエンジニア募集 - Mathlog served by OptHub

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Kagura
Kagura
11
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■ 分野を問わず数学の証明が好きです。あとで自分が読み返したときに、きちんと理解できるノートを作ることを心がけています。不定期に過去のノートを確認し、修正&更新 (追加&削除) しています。定義、命題、証明などに誤りや不正確な点がございましたら、ご指摘いただけますと幸いです(2025年12月28日)。    

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