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「十分大きい元」と「十分小さい元」に関するメモ | Mathlog
に関して、定義の矛盾を修正していきます。
$\epsilon^2 + \epsilon$が不定
まず、$\epsilon^2 + x$を考えてみましょう。($\forall x \in NS$)
$\epsilon^2 + x=y$とおくと、
\begin{eqnarray*} \epsilon^2 + x &=& y \\ \epsilon + Ex &=& Ey \\ Ex &=& Ey \\ x &=& y \end{eqnarray*}
よって、$\epsilon^2 + x = x + \epsilon^2 = x$が導かれます。
$\rightarrow \epsilon ^2 + \epsilon = \epsilon$
一方、定義より、$\epsilon + x = x + \epsilon = x$なので、
$\rightarrow \epsilon ^2 + \epsilon = \epsilon^2$
これだけだと$\epsilon ^2 = \epsilon$であれば問題ないようにも思えますが、
それだと$\epsilon E = 1_{NS}$より$E^2 = E$となり矛盾です。
根本の問題となる定義要素は以下だと考えられます。
(8)$\epsilon + x = x$
(16)$\epsilon E = 1_{NS}$
イメージとして$\epsilon$は無視されるほど十分小さい元なので、
・和に対して零元のように振る舞う
・$\epsilon^2$も無視されて良い(が、保存されたほうがそのオーダーを再現できる)
・$\epsilon^n + E = E$になってほしい
定義を以下のように修正します。
集合$NS$が無視可能空間(negligible space)であるとは、$NS$上に以下を満たす二項演算$+$と$\cdot $および$\mathbb{R}$の作用$\cdot$が定義されている集合のことである。
$\forall a, b \in \mathbb{R}$, $\forall x, y, z \in NS$
(8)を変更、(16)を削除しました。
ついでに(15)も余分だったので消しました。
まず、当然前述の矛盾は解決されます。
また、前回の記事で述べた定理は以下のように保存されます。(一例)
(1)について、
\begin{eqnarray*}
\epsilon + E &=& \eps + (0 + E)\\
&=& (\eps + 0) + E \\
&=& 0 + E \\
&=& E
\end{eqnarray*}
加えて、以下のことも言えます。
$\eps^2 + \eps = \eps^2$
\begin{eqnarray*} \epsilon^2 + \eps &=& \eps(\eps + 1) \\ &=& \eps \eps \\ &=& \eps^2 \end{eqnarray*}
しかし注意すべき点として、乗法の逆元が自明ではなくなりました。
まあこれは良しとしましょう。
定義を少し変えただけで矛盾が解消されて、性質も保存されてました。
本記事は以上です。
また何か見つかれば記事にします。それでは~。