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「十分小さい元」についての修正

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$$\newcommand{eps}[0]{\epsilon} \newcommand{genprodsum}[4]{{}^{#3}\!\!\underset{#1}{\overset{#2}{\Large \triangle{}}}#4} \newcommand{gprod}[3]{\underset{#1}{\overset{#2}{\prod{}}}#3} \newcommand{gsum}[3]{\underset{#1}{\overset{#2}{\sum{}}}#3} \newcommand{prodsum}[3]{\underset{#1}{\overset{#2}{\huge \triangledown{}}}#3} \newcommand{sumprod}[3]{\underset{#1}{\overset{#2}{\huge \triangle{}}}#3} $$

なにをする?

前回の記事
「十分大きい元」と「十分小さい元」に関するメモ | Mathlog
に関して、定義の矛盾を修正していきます。

矛盾って?

$\epsilon^2 + \epsilon$が不定

まず、$\epsilon^2 + x$を考えてみましょう。($\forall x \in NS$)
$\epsilon^2 + x=y$とおくと、

\begin{eqnarray*} \epsilon^2 + x &=& y \\ \epsilon + Ex &=& Ey \\ Ex &=& Ey \\ x &=& y \end{eqnarray*}

よって、$\epsilon^2 + x = x + \epsilon^2 = x$が導かれます。
$\rightarrow \epsilon ^2 + \epsilon = \epsilon$

一方、定義より、$\epsilon + x = x + \epsilon = x$なので、
$\rightarrow \epsilon ^2 + \epsilon = \epsilon^2$

これだけだと$\epsilon ^2 = \epsilon$であれば問題ないようにも思えますが、
それだと$\epsilon E = 1_{NS}$より$E^2 = E$となり矛盾です。

解消するには?

根本の問題となる定義要素は以下だと考えられます。

(8)$\epsilon + x = x$
(16)$\epsilon E = 1_{NS}$

理想はこう

イメージとして$\epsilon$は無視されるほど十分小さい元なので、
・和に対して零元のように振る舞う
$\epsilon^2$も無視されて良い(が、保存されたほうがそのオーダーを再現できる)
$\epsilon^n + E = E$になってほしい

解消する

定義を以下のように修正します。

無視可能空間

集合$NS$が無視可能空間(negligible space)であるとは、$NS$上に以下を満たす二項演算$+$$\cdot $および$\mathbb{R}$の作用$\cdot$が定義されている集合のことである。

$\forall a, b \in \mathbb{R}$, $\forall x, y, z \in NS$

  1. $(x + y) + z = x + (y + z)$
  2. $x + y = y + x$
  3. $(x y) z = x (y z)$
  4. $x y = y x$
  5. $a x = x a$
  6. $1_{NS} \in NS$が存在して、 $x 1_{NS} = 1_{NS} x = x$
    なお、$ a 1_{NS}$$a$と表す
  7. $a + x = x + a$
  8. $\eps \in NS$が存在して、$a + \eps = a$
  9. $E \in NS$が存在して、$a + E = E$
  10. $a(b + x) = a b + a x $
  11. $a(x + y) = a x + a y $
  12. $(a + b)x = a x + b x$
  13. $a \eps = \eps a = \eps$
  14. $a E = E a = \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} sgn(a)E \space ,(a \neq 0) \\ E \space ,(a = 0) \end{array} \right. \end{eqnarray}$

(8)を変更、(16)を削除しました。
ついでに(15)も余分だったので消しました。

妥当なの?

まず、当然前述の矛盾は解決されます。
また、前回の記事で述べた定理は以下のように保存されます。(一例)

和と差について
  1. $\eps + E = E$
  2. $\eps + \epsilon = \epsilon $

(1)について、
\begin{eqnarray*} \epsilon + E &=& \eps + (0 + E)\\ &=& (\eps + 0) + E \\ &=& 0 + E \\ &=& E \end{eqnarray*}

加えて、以下のことも言えます。

$\eps^2 + \eps = \eps^2$

\begin{eqnarray*} \epsilon^2 + \eps &=& \eps(\eps + 1) \\ &=& \eps \eps \\ &=& \eps^2 \end{eqnarray*}

しかし注意すべき点として、乗法の逆元が自明ではなくなりました。
まあこれは良しとしましょう。

うれしい

定義を少し変えただけで矛盾が解消されて、性質も保存されてました。
本記事は以上です。
また何か見つかれば記事にします。それでは~。

投稿日:328
更新日:328
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投稿者

🤔 数学の専門ではないです。 思いついたことを書きます。

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