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曲面論レベルで接空間は何か、ガウス写像とその微分

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$$\newcommand{bm}[1]{\boldsymbol{#1}} $$

曲面論の概要は ココ を参考にしてください。

まず曲面論を軽く復習しよう。滑らかな写像$p:\mathbb{R}^2\to\mathbb{R}^3$の像を滑らかな曲面$M$という。曲面の各点の法ベクトル、つまり接ベクトルに垂直なベクトルを求めたい。そのために接空間を定義しよう。接線の次元を上げたもので、曲面に1点上で接するような平面のことを言う。
楕円点の接平面 楕円点の接平面
放物点の接平面 放物点の接平面

放物点上のような点であれば接平面と曲面が交わる軌跡が現れたりする。

この接平面は2次元でありベクトル空間なため基底を2つ求めればいい。点$p(u_0,v_0)\in\mathbb{R}^3$の接平面を求めたいとき片方の変数を固定して偏微分することで接ベクトルを得られる。
$$\frac{\partial p}{\partial u}(u_0,v_0) = \left.\frac{dp(u_0+t,v)}{dt}\right|_{t=0},\ \ \ \frac{\partial p}{\partial v}(u_0,v_0) = \left.\frac{dp(u_0,v_0+t)}{dt}\right|_{t=0}$$
この二つのベクトルが張る空間$\langle\frac{\partial p}{\partial u}(u_0,v_0),\frac{\partial p}{\partial u}(u_0,v_0)\rangle_{\mathbb{R}}:=\qty{k\frac{\partial p}{\partial u}(u_0,v_0)+l\frac{\partial p}{\partial u}(u_0,v_0)\ |\ k,l\in\mathbb{R}}$接空間$T_{(u_0,v_0)}M$と定義する。果たしてこの接空間は曲面の点$(u_0,v_0)$上の接線を全て体現できているか疑問になる。

そしたら任意に$(u_0,v_0)$を通る滑らかな曲線$\gamma=(\gamma_1,\gamma_2):[-1,1]\to\mathbb{R}^2$, $\gamma(0)=(u_0,v_0)$を取ってこれを曲面上に写したもの$p\circ\gamma(t)$は曲面上の曲線を選べる。これは当然曲面上の曲線を取ればそれに対応するような$\gamma$が存在する。

接平面とそれを通る曲線 接平面とそれを通る曲線

このとき接ベクトルは$\left.\frac{dp\circ\gamma(t)}{dt}\right|_{t=0}$で求められる。これを計算する。
$$\left.\frac{dp\circ\gamma(t)}{dt}\right|_{t=0} = \frac{\partial p}{\partial u}(u_0,v_0)\left.\frac{d\gamma_1(t)}{dt}\right|_{t=0} + \frac{\partial p}{\partial v}(u_0,v_0)\left.\frac{d\gamma_2(t)}{dt}\right|_{t=0}$$
であり$\gamma$は任意であるから$\frac{d}{dt}\gamma(0)|_{t=0} = (\frac{d}{dt}\gamma_1(0)|_{t=0},\frac{d}{dt}\gamma_2(0))|_{t=0})$も任意になる(ここら辺は常微分方程式の解の存在と一意性を使えば示せる)。 $T_{(u_0,v_0)}M$の中の元になりこれを全て張るわけだ。

これで接空間のイメージはできただろうか。余談だが接空間の次元が2未満になるときもあり、このような点を特異点という。例えば$(u,v)\mapsto(u,v^2,uv)$と置くと$\dim T_{(0,0)}M = 1$となる。この曲面のことをWhitneyの傘/cross capという。
Whitneyの傘/cross cap Whitneyの傘/cross cap
特異点を持たないような曲面を正則な曲面と言ったりし、以降はこの正則を仮定する。もし特異点の微分幾何を知りたいときは僕に会いにくるか、梅原・山田・佐治の"特異点を持つ曲線と曲面の微分幾何"を読むといい。

さて接平面に垂直になる単位法ベクトル$\nu:\mathbb{R}^2\to\mathbb{R}^3$を求めよう。これは外積を使えば簡単に求められる。
$$\nu(u,v) = p_u(u,v)\times p_v(u,v)/|p_u(u,v)\times p_v(u,v)|$$
単位化しているわけだから$|\nu(u,v)|=1$であり、つまり値域は単位球面$S^2$になる。言い換えれば$\nu:\mathbb{R^2}\to S^2$となる。この写像$\nu$ガウス写像と言う。これは曲面の各点に対応してその点における単位法ベクトルを返す写像であるので、所謂ベクトル場と呼ばれるものだ。イメージ図は以下の通りである。
ガウス写像の像(ちょいキモイ) ガウス写像の像(ちょいキモイ)

ここでやっとこの記事の本題になるわけだ。このガウス写像を偏微分するとどうなるか?

Weingartenの公式

$$^\exists W\in M_2(\mathbb{R})\ \ \ \text{s.t.}\ \ \ \qty(\begin{matrix} \nu_u\\ \nu_v \end{matrix}) = W\qty(\begin{matrix} p_u\\ p_v \end{matrix})$$

証明をする前にこの定理の主張を理解しよう。これは単位法ベクトルの偏微分が接ベクトルの一次結合でかけてしまうという主張をしている。個人的に物凄く直観に反しているように感じていて、もともと接ベクトルに直交するような単位法ベクトル$\nu$を考えているのに、その偏微分、つまりある軸への変化量が直交してた接ベクトルでかけると言うことだ。しかも$\nu_u$, $\nu_v$$\nu$に直交していることも分かる。

次に曲面の各点の基底を考えてみよう。普通は固定された標準基底を考える。各点における$\mathbb{R}^3$の基底をなす3つ組のベクトルのことをと言い、この枠が正規直交基底であれば正規直交枠という。正則な場合であれば$\qty{p_u,p_v,\nu}$が枠になっているが、単位ベクトルでもないし$p_u$, $p_v$は直交しているとも限らないため正規直交枠ではない(例えば空間曲線のFrenet-Serret枠が正規直交枠になっている)。さらにこの枠は各点で滑らかに変化している。この枠で考えると$\nu_u$, $\nu_v$$\nu$に直交すると言うことは$p_u$, $p_v$が作る平面に$\nu_u$, $\nu_v$が乗っていると言うことになる。つまり$\nu_u,\nu_v\in T_{(u_0,v_0)}M$であると言うことが分かる。

また単位球面$S^2$を曲面だと思うと、$S^2$の接平面はガウス写像$\nu:\mathbb{R}^2\to S^2$が球面を表現していることを考えれば基底は$\nu_u$, $\nu_v$になる。このことから曲面の接平面$T_{(u_0,v_0)}M$と単位球面の接平面$T_{p(u_0,v_0)}S^2$が一致していることが分かる。これはつまり、曲面$M$の各点に接平面が一致するような単位球面$S^2$が必ず存在すると言うことを言っている。接平面が一致していると言うことは、高校数学でやったような共通接線のような状況になっていて、すっぽりと球が曲面にハマっていることが分かる。
曲面にハマる球面 曲面にハマる球面
ちなみに$z=-(x^3-y^3+x^2+y^2)+1$と言う曲面を描いている。

ここまで理解ができれば十分だろう。証明を与える。

・最初に$\nu$の偏微分が$\nu$に直交していることを示そう。内積を$\langle\ ,\ \rangle$で表すとして像は単位球面上から$\langle\nu ,\nu \rangle=1$を得る。これを両辺とも偏微分すると
$$\langle\nu_u ,\nu \rangle+\langle\nu ,\nu_u \rangle = 2\langle\nu ,\nu_u \rangle=0,\ \ \ \langle\nu_v ,\nu \rangle + \langle\nu ,\nu_v \rangle = 2\langle\nu ,\nu_v \rangle=0$$
を得て、$\nu_u,\nu_v\in T_{(u_0,v_0)}M$であることが示される。

・3次正方行列$M_1=\qty(\begin{matrix} p_u & p_v & \nu\end{matrix})$, $M_2=\qty(\begin{matrix} \nu_u & \nu_v & \nu\end{matrix})$を定義する。これらはスカラー3重積と$\nu_u,\nu_v$$p_u,p_v$の線形結合で表せるため、ある全て0でない実数$k_1,k_2,l_1,l_2$が存在して
$$\det M_2 = \nu\cdot(\nu_u\times\nu_v) = \nu\cdot\qty{(k_1p_u+l_1p_v)\times(k_2p_u+l_2p_v)} = \qty|\begin{matrix} k_1 & k_2 \\ l_1 & l_2 \end{matrix}|\nu\cdot (p_u\times p_v) = \qty|\begin{matrix} k_1 & k_2 \\ l_1 & l_2 \end{matrix}|\det M_1$$
$\nu\cdot(p_i\times p_v) = |p_u\times p_v|\not=0$であるから$\det M_1,\det M_2\not=0$より正則である。

$M_1^{-1}M_2 = (M_1^tM_1)^{-1}M_1^tM_2$であるから右辺を計算すると
$$M_1^{t}M_1 = \qty(\begin{matrix} p_u\cdot p_u & p_v\cdot p_u & 0 \\ p_u\cdot p_v & p_v\cdot p_v & 0 \\ 0 & 0 & 1\end{matrix}),\ \ \ M_1^tM_2 = \qty(\begin{matrix} p_u\cdot \nu_u & p_v\cdot \nu_u & 0 \\ p_u\cdot \nu_v & p_v\cdot \nu_v & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{matrix})$$
従って以下の計算から、枠の変換が作れる。
$$M_2 = \qty{(M_1^tM_1)^{-1}M_1^tM_2}M_1\ \Leftrightarrow\ \qty(\begin{matrix} \nu_u & \nu_v & \nu\end{matrix})=\qty{(M_1^tM_1)^{-1}M_1^tM_2}\qty(\begin{matrix} p_u & p_v & \nu\end{matrix})$$
このとき$W$は次のように表記できる。
$$W = \qty(\begin{matrix} p_u\cdot p_u & p_v\cdot p_u \\ p_u\cdot p_v & p_v\cdot p_v \end{matrix})^{-1}\qty(\begin{matrix} p_u\cdot \nu_u & p_v\cdot \nu_u \\ p_u\cdot \nu_v & p_v\cdot \nu_v \end{matrix})$$

多様体の話

なぜ、ガウス写像を殊更に取り上げたか。標準カリキュラムでは微分幾何、多様体、リーマン幾何と学び進めていくわけだが、多様体の2番目の壁は接平面と微分写像を理解することだと思っている(ちなみに最初の壁は座標・座標変換)。これを理解する最初のモチベーションを与えてくれるのがガウス写像だと思っている。このガウス写像は$\mathbb{R}^2\to S^2$の写像になっていて、定義域と値域が多様体の基本的な例になっていてさらに$S^2$は多様体の言葉で描く必要が生まれる典型的な例である。

次にWeingartenの公式について深く考えよう。とりあえず何らかの行列$W$があって曲面の偏微分を単位法ベクトルの偏微分に写してくれるという主張である。さらに言うとこれはベクトル空間$T_{(u_0,v_0)}M$からベクトル空間$T_{p(u_0,v_0)}S^2$への線形写像になっていることが分かり、表現行列は$W$となる。

ここで多様体$M$の接空間$T_pM$の定義は「任意の滑らかな曲線$\gamma$の接ベクトル全体」とされていて、適当な多様体間の滑らかな写像$f:M\to N$を考えると微分写像$df$は次のように定義される。
$$df\qty(\left.\frac{d\gamma}{dt}\right|_{t=0}) := \left.\frac{df\circ\gamma}{dt}\right|_{t=0} = \sum^m_{i=1}\frac{\partial f}{\partial x_i}\left.\frac{d\gamma_i}{dt}\right|_{t=0} = J_f\qty(\left.\frac{d\gamma}{dt}\right|_{t=0})$$
つまりこれもまた行列$J_f$にベクトルを作用させた線形写像になっている。つまり$df:T_pM\to T_qN$は表現行列$J_f$と表記できる。先ほどWeingartenの公式の面白さで接空間に入っていることを上げたが、これは一般の多様体間の写像で成り立つ事実だったりする。そしてWeingarten行列が微分写像における表現行列$J_\nu$になっている。

以上の話がWeingartenの公式が多様体をやるうえで教育的な例になっているという話だった。まとめると
・ガウス写像は最初の多様体間の写像の例になる。
・微分写像が線形写像になっていることを知れる最初の例になる。
が僕の盛り上がりポイントである。

難しい話

ガウス写像の使い道

実は$d\nu$は体積要素(の微分形式付き、確か体積形式と言う)になっていたりする。また$\mathrm{div}\ \nu$はAI曰く極小曲面を求めるうえで役に立つらしい。

第一基本量と第二基本量

$\langle p_u,p_u \rangle$, $\langle p_u,p_v \rangle$, $\langle p_v,p_v \rangle$を第一基本量と呼び$E,F,G$と置き$\langle p_u,\nu_u \rangle$, $\langle p_u,\nu_v \rangle$, $\langle p_v,\nu_v \rangle$を第二基本量$L,M,N$と呼んだりする。これらをつかってWeingartenの公式の$W$
$$W = \qty(\begin{matrix} E & F \\ F & G \end{matrix})^{-1}\qty(\begin{matrix} L & M \\ M & N \end{matrix})$$
と表現できる。これを僕はWeingarten行列と呼んでいる。第一基本量と第二基本量を定義したらガウス曲率、平均曲率を気にしたくなるがこれは$\det W$, $\tr W$に一致する。詳しくは ココ でまとめた。この$W$を対角化すると主曲率がでてきてこの固有ベクトルが主方向になっていたりする。色々な幾何学が詰まっているので次元を一般化すると何かと使い勝手がいい。

球や平面との接触

先ほど$T_{(u_0,v_0)}M=T_{p(u_0,v_0)}S^2$と言うことを確認したが、これは一般の例ではう~~~ん、どうなんだろう…$M$$\mathbb{R}^{m+1}$に埋め込める…いや、はめ込みが存在すれば?もしくは特異点があったとしても$\mathbb{R}^{m+1}$$M$を実現したとき、$S^m$に対して同じ事実が言える気がする。
曲面にハマる球面 曲面にハマる球面
この図を思い出せば、曲面が球面にすっぽり嵌る状態を指していたわけだ。このとき球面の半径を自由に変えても中心を上手く調節すれば単位球面じゃなくても共通接空間が存在することが想像できるだろうか。

じゃあさらにちょうどよく嵌るにはどのような球であればいいかと言う問題もある。例えば今半径が自由になっていたが、これを主曲率の逆数するとすっぽり嵌ると言うことが知られている。この半径を主曲率半径と言ったりする。じゃあもっともっとすっぽり行くか?と言う問題もあって、これは曲面がridge/峰点/ゴロイド点という特徴を持っていると主曲率半径ですっぽり嵌る。さらには$k$th ridge pointという概念導入すれば考えることができる。

ここまでは球との接触を考えていたが、平面や直線、さらにはシリンダーなどの接触を図るという研究がある。トーラスとの接触をやろうとしてたらこの前別の先生にやられてしまった。他にも先生に錐との接触をやれとせっつかれていていろいろ面白くて新しい話題が沢山ある。

$d\nu$が退化するような場合

嫌なのが、$d\nu:T_pM\to T_{\nu(p)}S^2$の像が2次元にならないような場合が正則でも全然あったりする。$T_pM$の次元は2なため非退化であれば像の次元も2次元なはずである。では退化するような状態なら$\det d\nu = \det W = 0$が満たされるはずである。$\det W=0$であるような点を放物点と言う。
原点で放物点 原点で放物点

このような点が孤立していない様な例だと面白くないが平面のようなガウス曲率が0な面だったり$z=x^2$のような放物点の軌跡が1次元なものも存在する。そしてガウス写像がさらに退化したような場合をcusp of Gaussと呼んだりして、このような点を検出するには平面との接触度を調べるのがいい。
原点でcusp of Gauss 原点でcusp of Gauss
ここで迄の話は邦書にはないがこの前梅原、山田、佐治、"特異点を持つ曲線と曲面の微分幾何学"にcusp of Gaussが書いてあるのを見つけて感動した。

参考文献
Izumiya, Fuster, Ruas, Tari, "Differential Geometry from a Singularites Theory Viewpoint"
河野、"曲率とトポロジー"
福井、"曲線と曲面の基礎・基本"
梅原、山田、佐治、"特異点を持つ曲線と曲面の微分幾何学"

投稿日:8日前
更新日:6日前
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たぶん微分幾何をやってるねこです

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