この記事では部分分数分解についての基本事項についてまとめていきます。
部分分数分解とは多項式
や
のように高次の分数式を低次の分数式の和に分解することを言います。
高校数学では分母を両辺に掛けて係数比較することで
一般の分数式を考えていくにあたって、そもそもどのようなときにどのような部分分数分解が存在するのかということを確かめておく必要があります。そのことについては以下のような事実として記述することができます。
多項式
が成り立つとき
および
を満たすような多項式
この命題を示すにあたって
という恒等式を考える必要がありますが、これは不定方程式
の整数解
それは整数同士の割り算と同様に多項式同士にも除法の原理が考えられることに起因しています(このことは専門的な用語を使うと、整数環
詳しいことについては以下の証明を見てみればわかると思います。
多項式同士の割り算により
と計算していくと
このときこの計算を遡っていくことで
なる多項式
を満たすような多項式は(
で尽くされることもわかる。
いま
となるような多項式
つまり
とできることが示された。
またその他の解
が成り立つのでそのような
上の命題を使うことによってより一般に以下が成り立つことがわかります。
それぞれ互いに素な多項式
かつ
を満たすような多項式
またこのとき
が成り立つ。
またこれを
と展開することで以下の系が得られます。
異なる複素数
を満たすような複素数
ちなみにこの命題は数学的帰納法によっても示せます。
分母の次数についての帰納法で示す(次数が
が上のように分解できるとする。このとき
とおくと
が成り立ち、この右辺は仮定より部分分数展開できるため
も部分分数分解できることが示された。
上の証明から
のように展開係数が決定できることがわかりますが、これを繰り返すことで以下の公式が成り立つことがわかります。
多項式
とおくとある多項式
が成り立つ。
一般的な導出法を知っておいた方が有益なのでそれも書いておきましょう。
のような展開が存在することは先で示した通り。いまこの両辺に
と表せるので、この両辺を
を得る。
微分なども入っていて少しややこしいですが、高校数学程度なら指数がそれぞれ
とおくと
が成り立つ。
この展開公式は係数比較や互除法などの面倒な手順を省略できるだけでなく、一般の抽象性の高い有理式の部分分数分解も与えることができるという点で非常に便利な公式となっています。
の部分分数分解を考える。これの
と計算できるので
と展開できることがわかる。
の部分分数分解を考える。これの
と計算できるので
と展開できることがわかる。
ちなみに私は
とある記事
のコメントにて
という展開を導出したことがありますが、こういう有理数の範囲で因数分解できず、しかも次数が高いような場合ばっかりは展開公式でゴリ押すのはおすすめできません(不可能ではないですが...)。こういうのをいい感じに処理できる方法とかないですかねぇ。
上では分数式が部分分数分解を持つことやその展開係数が留数のように計算できることを示しましたが、何か、こう、もう少し有理関数特有の性質を利用した証明というのが欲しくなります。
ここで有理関数とはリーマン球面
という微分形式を考えてみましょう。するとコンパクトリーマン面上の留数定理より
が成り立ちます。
いま簡単のため
自明。
と表せるのでこの
と求まる。
が成り立つ。
十分小さい
を得る。
以上より
という部分分数展開が得られるわけです。ここで
が成り立つことは言うまでもないでしょう。
ちなみに同様の積分を考えることで一般の有理型関数にも部分分数展開を与えることができます。そのことについては
この記事
で解説しているので興味があればそちらも合わせてお読みください。