鏡映は、幾何学の基本的かつ重要な概念です。本記事は、この鏡映を様々な数学的構造の中で考察します。
各代数に対して、鏡映の数学的表現を導出します。特に注目すべきは、次元が上がるにつれて背後の代数的構造が変化する点です。
鏡映は、ある対象をある平面(鏡面)に関して反転させる幾何学的操作です。日常生活では鏡に映る像として経験されますが、数学的には非常に重要で基本的な変換の一つです。
ここで
右辺は、ベクトル
鏡映面は、
集合
鏡映の主な特徴:
鏡映の導出に必要となる内積について説明します。
ベクトル
内積の主な性質:
内積は、ベクトル間の角度
ベクトルの内積を視覚的に表すと、2本のベクトルの向きを揃えて長さを掛けた値となります。向きを揃えるには垂線を引いて交点を求めます。これを射影と呼びます。どちらのベクトルを射影しても結果は同じです。7shi-ip
特別な場合として、単位ベクトルとの内積が頻出で、鏡映でも使用されます。
鏡映は、様々な代数系の中で表現することができます。これらの代数系と幾何学の関係を理解することは、高次元空間や複雑な幾何学的操作を扱う上で非常に重要です。
主な代数系と対応する幾何学的空間:
これらの代数系を用いることで、鏡映をより一般的かつ抽象的に表現することができます。特にクリフォード代数は、次元に依存せずに鏡映を表現できるため、高次元空間や複雑な幾何学的構造での操作の理解を深めるのに役立ちます。
次章からは、各代数系における鏡映の具体的な表現と性質について詳しく見ていきます。クリフォード代数については、他の代数系を扱った後に、それらを統合する形で導入し、その統一的な性質を強調します。
複素数
複素数
複素数の実軸を
複素数の内積は、共役との積の実部から得られます:
2次元空間において、複素数
四元数
四元数
四元数は3次元と4次元が扱えますが、使い勝手がかなり異なります。まず扱いが簡単な3次元について見ていきます。
純虚四元数の内積は、積の実部の符号反転から得られます:
四元数の反交換性により、複素数のような共役が不要となります。
3次元空間において、純虚四元数
八元数
八元数
特定の巡回順序は480種類あります。どれを採用しても代数的な性質は同じなため、本記事では古典的な定義を採用します。7shi-480
これら7種類の積の組み合わせのそれぞれを三つ組 (triad) と呼びます。実部と1つの三つ組に閉じた部分代数は四元数と同型で、結合性を満たします。
八元数は7次元と8次元が扱えますが、使い勝手がかなり異なります。まず扱いが簡単な7次元について見ていきます。
結合性に注意すれば、基本的には3次元の四元数の延長線上で扱えます。
純虚八元数の内積は、純虚四元数と同じ形をしています:
導出過程は、項が多いだけで四元数と同様のため省略します。計算過程に2項の積しか現れないため、非結合性による影響を受けません。
純虚八元数の積の虚部は、特殊な空間構成により外積となります。7shi-ort
7次元空間において、純虚八元数
純虚四元数と同じ形をしています。導出も同様です。
八元数の非結合性により、一般的には
ただし、鏡映の合成では結合性が問題となるため、括弧を外すことはできません。例:
非結合性の影響:
四元数は名前の通り4成分あるため、4次元を扱うことが可能です。ただし実部と虚部では性質が異なることから、その扱いはやや複雑となります。
四元数が表すのは4次元ユークリッド空間です。4番目の次元は空間軸であり、相対性理論のような時間軸ではありません。時間軸を含むミンコフスキー空間を扱うには、双曲四元数やクリフォード代数など別の代数系が必要となります。7shi-hc
実部を含む四元数の内積を示します:
2行目の方が式の形としては対称性がありきれいですが、鏡映の計算ではステップ数が増えるため、本記事では1行目を使用します。
四元数
これを用いて内積を表現します:
この形が得られる積の組み合わせを探します。
交換子と反交換子を確認します:
反交換子を参考に、不要な項が含まれないように、共役の付け方を工夫します:
これを交換子と足し合わせれば、内積の2倍が得られます。
なお、
4次元空間において、四元数
これを使って計算を続行します。
3次元鏡映(純虚四元数):
4次元鏡映(一般の四元数):
4次元鏡映(一般の四元数):
7次元鏡映(純虚八元数):
四元数の実部を八元数の
この対応によって、7次元鏡映は4次元鏡映を特殊ケースとして含みます。
鏡映は内積に依存しているため、内積の等価性から示せます。以下では
本記事では
八元数では
八元数は名前の通り8成分あるため、8次元を扱うことが可能です。実部と虚部では性質が異なりますが、四元数での4次元と同様に扱います。
八元数が表すのは8次元ユークリッド空間です。すべての次元は空間軸であり、相対性理論のような時間軸は含みません。時間軸を含むミンコフスキー空間を扱うには、分解型八元数やクリフォード代数など別の代数系が必要となります。
八元数の内積は、四元数(4次元)と同じ形をしています:
導出過程は、四元数と同様のため省略します。計算過程に2項の積しか現れないため、非結合性による影響は受けません。
8次元空間において、八元数
四元数(4次元)と同じ形をしています。非結合性の影響を受けないことにより、導出過程は四元数と同様のため省略します。
7次元鏡映(純虚八元数):
8次元鏡映(一般の八元数):
これまでの章で現れた様々な次元での鏡映を統一的に理解する枠組みとして、クリフォード代数を導入します。
クリフォード代数
基底は反交換性
クリフォード代数
n次元ユークリッド空間は
実用上、クリフォード代数は、3次元における四元数の振る舞いに基づいて、任意次元に拡張したものとなります。例えば8次元を扱う場合でも、八元数のような非結合性に煩わされる心配がありません。
3次元は
クリフォード代数の内積は、純虚四元数と似た形をしていますが、符号が異なります:
クリフォード代数では基底が付かない実部に相当する部分をスカラーと呼びます。
任意次元のクリフォード代数において、ベクトル
クリフォード代数の式、任意の次元で統一的に成り立ちます。純虚四元数と似た形をしていますが、符号が異なります。
四元数における3次元鏡映
次元が上がるにつれて鏡映の式は以下のように変化しました:
別記事にまとめる予定ですが、2回の鏡映の合成は回転になります:
クリフォード代数は、これらの代数系での鏡映表現を統一的に扱う枠組みを提供します。これにより、任意の次元での鏡映や回転を一貫した方法で記述することが可能になります。
この性質は、以下の分野で重要な役割を果たします:
通常の鏡映とは符号を反転した式は、
ある対象をある直線に関して反転させる幾何学的操作
ベクトル
線対称な鏡映
この公式の幾何学的解釈:
クリフォード代数での線対称な鏡映は、ベクトル
線対称な鏡映の合成で回転を解釈すれば、マイナス符号を入れずに直接解釈できます: