これも思いついた話を後輩に話した奴をまとめています。de Rham複体と外微分を使うのでちゃんと知っときたい人は ココ を参照してください。一応ここでも軽く説明します。
最初にこの話のモチベーションを話しておきましょう。コーシーの積分定理は、ある閉領域$D$に対してある複素関数$f:\mathbb{C}\to\mathbb{C}$が正則であれば$\int_{\partial D}f(z)dz=0$という定理です。例えば単連結な(穴が開いていてない)領域$D$としたら、その境界$\partial D$上の2点でその周を分けて、二つの曲線$C_1,C_2$とします。つまり$C_1-C_2=\partial D$となっています。これを代入すれば
$$\int_{\partial D}f(z)dz=0\ \Leftrightarrow\ 0=\int_{C_1-C_2}f(z)dz = \int_{C_1}f(z)dz - \int_{C_2}f(z)dz \ \Leftrightarrow\ \int_{C_1}f(z)dz=\int_{C_2}f(z)dz$$
を得ます。実は複素関数も保存力の要件を満たしているわけです。保存力とは物理の話が分かりやすいと思いますが例えば重力場がありどんな経路で力を積分しても、+つまりどのような山道を辿ろうとも仕事量は同じであるように、ある力を与えるベクトル場の経路積分をしたときにどのような経路でも始まりと終わりが同じだったら積分の値が一致する、というベクトル場のことを言います。中学の時え~ほんと~となる事実の抽象化です。
この保存力とコーシーの積分定理には妙な類似性を感じないでしょうか。この類似性に解を与えたのがこの記事です。もともと学部2年のときになんとなくこうなんじゃとふわっとした理解を持っていたんですが、外微分とかde Rham複体の言葉を借りたら正確に意味付けを与えられたので、そのお話をできたらなと思います。
ベクトル場$\bm{F}$が保存力になるための必要十分条件を与えてる定理が実はあってポアンカレの補題と言う。
$\mathbb{R}^3$の単連結領域$D$で定義された滑らかなベクトル場$\bm{F}\in\mathfrak{X}(D)$について以下同値。
(1) $^\exists \varphi\in C^\infty(D)$ s.t. $\bm{F}=-\text{grad}\varphi$
(2) $\text{rot}\bm{F}=0$
(3) 端点が同じ滑らかな二つの曲線$C_1,C_2$に対して
$$\int_{C_1}\bm{F}\cdot d\bm{r}=\int_{C_2}\bm{F}\cdot d\bm{r}$$
3つ目の主張が保存力であることの要請だろう。また1つ目の主張の中の$\varphi$のことをポテンシャルエネルギーという。この定理は複体という概念を通すと味わい深い。複体とは加群の列を準同型で結んだものだ。加群とは要はベクトル空間の少し条件を緩くしたものと思えばいい。準同型で結ぶにも条件が必要で、二回合成が0にならなけばいけない。この話を理解するには以下の公式を知っていれば十分だ。
滑らかな関数$f:\mathbb{R^3\to\mathbb{R}}$を取る。
$$\text{rot}\circ\text{grad}f=0,\ \ \ \text{div}\circ\text{rot} f=0$$
暗記は嫌だなぁ…と思った方もいるかもしれないが、とんでもない。これほどまでに読み取りやすくて意味が深い式もそうないだろう。まずは定義域と値域を確認しよう。
$$\text{grad}:C^\infty(\mathbb{R^3})\to\mathfrak{X}(\mathbb{R}^3),\ \ \ \text{rot}:\mathfrak{X}(\mathbb{R}^3)\to\mathfrak{X}(\mathbb{R}^3),\ \ \ \text{div}:\mathfrak{X}(\mathbb{R}^3)\to C^\infty(\mathbb{R^3})$$
$C^\infty(\mathbb{R}^3)$は$\mathbb{R}^3$内の滑らかな関数で、$\mathfrak{X}(D)$は$\mathbb{R}^3$内のベクトル場としている。で、この空間らは足し算とスカラー倍に閉じているのでベクトル空間になる。また、これらを合成していき写像の列
$$0\to C^\infty(\mathbb{R^3})\xrightarrow{\text{grad}}\mathfrak{X}(\mathbb{R}^3)\xrightarrow{\text{rot}}\mathfrak{X}(\mathbb{R}^3)\xrightarrow{\text{div}}C^\infty(\mathbb{R^3})\to0$$
が作れるだろう。また上の命題から2回合成したら0になるのでこれは複体となるわけだ。これをde Rham複体と呼ぶ。ポアンカレの補題の単連結という仮定はトポロジー的な仮定であり、しかもこの複体にある条件を追加するのだ。$\text{rot}\circ\text{grad}f=0$から$\ker\text{rot}\supset\Im \ \text{grad}$ということはすぐわかるが、単連結性を仮定すると、$\ker\text{rot}=\Im \ \text{grad}$が成立してしまう。$\ker\text{rot}$から元を取る、つまり$\text{rot}\bm{F}=0$となる$\bm{F}\in\mathfrak{X}(D)$を取ると直ちに$\bm{F}\in\Im \ \text{grad}$が言えてしまうのだ。これはこの仮定なしには成立するとは限らない。
この主張を図式でまとめてみよう。$\bm{F}\in\Im \ \text{grad}$ということは$^\exists \varphi\in C^\infty(D)$ s.t. $\bm{F}=-\text{grad}\varphi$と言うことなので以下のようにまとめることができる。
$\xymatrix@C=25pt@R=4.5pt{ 0 \ar[r]& C^\infty(\mathbb{R^3}) \ar[r]^{\text{grad}} & \mathfrak{X}(\mathbb{R}^3) \ar[r]^{\text{rot}} & \mathfrak{X}(\mathbb{R}^3) \ar[r]^{\text{div}} & C^\infty(\mathbb{R^3}) \ar[r] & 0 \\ &-\varphi \ar@{|->}[r] \ar@{(-}[u] &\bm{F} \ar@{(-}[u] \ar@{|->}[r] & 0 \ar@{(-}[u] \\ }$
かなりきれいな形でまとめられただろう。このように代数トポロジーを使ってきれいにまとめることもできるのだ。これとコーシーの積分定理を結び付けなければならないので、$\mathbb{C}$と$\mathbb{R}^2$を同一視して、アナロジーを考えてみよう。そのために必要なのが全微分だ。
全微分は大学でやる中でわからないランキング1位の物だがそれも当然だ。あの定義の中には平均的な数学科の2年生が授業で初めて触れて一発でわかる人が稀な概念が含まれている。とりあえず計算だけできるでも全然恥じることはない。一応定義を与えておくと、ある滑らかな関数$f:\mathbb{R}^n\to\mathbb{R}$に対して全微分$df$が定義され、各点$p$においての微分写像$(df)_p$の双対写像を言う。つまり$df:\mathbb{R}^n\ni p \mapsto (df)_p\in T^*\mathbb{R}^n$なのだが、まあ理解することは難しいだろう。(詳しくは ココ で説明している) 計算だけを追ってみよう。
$$df=\frac{\partial f}{\partial x} dx + \frac{\partial f}{\partial y} dy + \frac{\partial f}{\partial z} dz$$
この式をじっと眺めると$\qty(\frac{\partial f}{\partial x}, \frac{\partial f}{\partial y}, \frac{\partial f}{\partial z})\cdot \qty(dx,dy,dz)$と言う風に内積で書かれたような式に見えてこないだろうか。しかも$dx,dy,dz$が標準基底であれば、まさに$\text{grad}$だろう。ということは$\text{rot}$も同様に全微分を続けていけばうまく作れるのでは?という発想に至って、例えば$f(x,y,z)dx + g(x,y,z)dy + h(x,y,z)dz$と言う形のものを全微分することを目指してみよう。
$$\qty(\frac{\partial f}{\partial x}dx+\frac{\partial f}{\partial y}dy+\frac{\partial f}{\partial z}dz)dx + \qty(\frac{\partial g}{\partial x}dx+\frac{\partial g}{\partial y}dy+\frac{\partial g}{\partial z}dz)dy + \qty(\frac{\partial h}{\partial x}dx+\frac{\partial h}{\partial y}dy+\frac{\partial h}{\partial z}dz)dz$$
このとき困っちゃうのが$ dx$とか$dy$らの積を考える必要がある。詳しくは同様に
ココ
で話しているが、交代性を満たすように定義するといい。つまり$x,y,z$を$x_i$と表記すると$dx_i\wedge dx_j=-dx_j\wedge dx_i$として定義する。入れ替えればマイナスがつくということだ。こう定義しておくと嬉しいのが$i=j$のときである。
$$dx_i\wedge dx_i=-dx_i\wedge dx_i \ \Leftrightarrow\ dx_i\wedge dx_i=0$$
を得られてしまう。これをもとに計算すると
$$\qty(\frac{\partial f}{\partial x}dx+\frac{\partial f}{\partial y}dy+\frac{\partial f}{\partial z}dz)\wedge dx + \qty(\frac{\partial g}{\partial x}dx+\frac{\partial g}{\partial y}\wedge dy+\frac{\partial g}{\partial z}dz)dy + \qty(\frac{\partial h}{\partial x}dx+\frac{\partial h}{\partial y}dy+\frac{\partial h}{\partial z}dz)\wedge dz$$
$$= (-f_y+g_x)dx\wedge dy + (-g_z+h_y)dy\wedge dz + (-h_x+f_z)dz\wedge dx$$
となる。すごく$\text{rot}$と似てないだろうか。完全に一致していないが、それについても
ココ
に言及した。とりあえず納得しておこう。この積をウェッジ積や外積という。また交代性を満たしてほしいのは命題2みたいな状態になってほしいからだ。詳しくは先ほどのURLへgoだ。この計算を外微分$d$という。関数$f:\mathbb{R}^3\to\mathbb{R}$を全微分した後に外微分をしてみる。
$$df=f_x dx + f_y dy + f_z dz$$
$$\begin{array}{rcl}
\leadsto\ d(df) &=& (f_{xx} dx + f_{xy} dy+ f_{xz} dz)\wedge dx \\
&&\ + (f_{yx} dx + f_{yy} dy+ f_{yz} dz)\wedge dy + (f_{zx} dx + f_{zy} dy+ f_{zz} dz)\wedge dz \\
&=& (-f_{xy}+f_{yx})dx\wedge dy + (-f_{yz}+f_{zy})dy\wedge dz + (f_{xz}-f_{zx})dz\wedge dx \\
&=& 0
\end{array}$$
これが命題2の状況を満たしてくれているのだ。
さて、なぜこの計算をしたかというと、ポアンカレの補題を$\mathbb{C}\cong\mathbb{R}^2$で見てみたいからだった。ベクトル場$\bm{F}=(F_1,F_2,F_3)$としたとき、$\text{rot}F=0$と言う条件を満たすとき保存力というわけだが、これを外微分の言葉で書けば$d(F_1dx+F_2dy+F_3dz)=0$と表せる。
さて二次元のときはどう計算できるか。まず関数$f:\mathbb{R}^2\to\mathbb{R}$を全微分すれば$f_xdx+f_ydy$となり、それの一般化$f(x,y)dx+g(x,y)dy$を外微分すると
$$d(f(x,y)dx+g(x,y)dy) = (f_x dx+f_ydy)\wedge dx + (g_x dx + g_ydy)\wedge dy$$
$$ = f_y dy\wedge dx + g_xdx\wedge dy = (-f_y+g_x)dx\wedge dy$$
となる。二次元の場合は$dx\wedge dy$しかいないのである。
ここまでの話を理解できれば最後の話を理解する準備はできた。ちなみに$f_xdx+f_ydy$や$dz\wedge dx$のような形を1次微分形式や2次微分形式という。
最初に正則性の定義を確認しておこう。複素関数$f:\mathbb{C}\to\mathbb{C}$が複素微分可能とは以下の極限が存在することとして定義する。
$$\lim_{h\to0}\frac{f(z+h)-f(h)}{h}$$
注意しないといけないのは$h$は複素数だから0に近づく通りが複数あることだ。この極限が存在すれば$f$は一次近似ができて$a\in\mathbb{C}$が存在して$f(z)=f(z_0)+a(z-z_0)+O^2(|z-z_0|)$と表せる。これの一次近似部分を実部と虚部で分ける。つまり$a=a_1+a_2i, \ z-z_0=x+yi$として複素関数を$f(z)-f(z_0)=u+vi$すると
$$u+vi = (a_1+a_2i)(x+yi)+O^2(|z|) = a_1x-a_2y+i(a_1y+a_2x)+O^2(|z|)$$
$$\leadsto\left\{\begin{array}{rcl} u &=& a_1x-a_2y + \mathrm{Re}O^2(|z|)\\ v &=& a_1y+a_2x + \mathrm{Im}O^2(|z|) \end{array} \right. $$
この式を$x,y$偏微分して考えている点に制限すればコーシー・リーマンの関係式が手に入る。
$$a_1 = \frac{\partial u}{\partial x} =\frac{\partial v}{\partial y},\ \ \ a_2=-\frac{\partial u}{\partial y} = \frac{\partial v}{\partial x}$$
この式が偉いのは複素微分可能なことの必要十分条件を与えてくれることだ。$x,y$を$z,\overline{z}$に変数変換すると
$$\qty(\begin{array}{c}
\frac{\partial}{\partial z} \\
\frac{\partial}{\partial \overline{z}}
\end{array}) = \qty(\begin{array}{cc}
x_z & y_{z} \\
x_{\overline{z}} & y_{\overline{z}}
\end{array})\qty(\begin{array}{c}
\frac{\partial}{\partial x} \\
\frac{\partial}{\partial y}
\end{array}) = \frac12\qty(\begin{array}{cc}
1 & -i \\
1 & i
\end{array})\qty(\begin{array}{c}
\frac{\partial}{\partial x} \\
\frac{\partial}{\partial y}
\end{array})$$
$$\leadsto \frac{\partial}{\partial \overline{z}}(u+vi) = \frac12\qty(\frac{\partial}{\partial x} + i\frac{\partial}{\partial y} )(u+vi) = \frac12\qty(\frac{\partial u}{\partial x} - \frac{\partial v}{\partial y}) + \frac i2\qty(\frac{\partial v}{\partial x} + \frac{\partial u}{\partial y}) = 0$$
という計算過程で$f$が複素微分可能であることの必要十分条件として$\frac{\partial f}{\partial\overline{z}}=0$が得られる。これ条件があればコーシーの積分定理が導ける。適当な閉領域$D$に対して
$$\int_{\partial D}f(z) dz = \int_{\partial D}(u+vi) d(x+yi) = \int_{\partial D}(udx-vdy) + i(vdx+udy)$$
これの実部と虚部それぞれにグリーンの公式を適応すれば
$$\int_{\partial D}f(z) dz = \int\!\!\int_{D}(-u_y-v_x)dxdy + \int\!\!\int_{D}i(-v_y+u_x)dxdy = \int\!\!\int_{D}\qty{-(u_y+iv_y) + i(u_x+iv_x)}dxdy$$
$$\leadsto \int_{\partial D}f(z) dz = \int\!\!\int_{D}i\qty(\frac{\partial}{\partial x}+i\frac{\partial}{\partial y})f dxdy = \int\!\!\int_{D}i\frac{\partial f}{\partial \overline{z}} dxdy$$
となり正則性から$\int_{\partial D}f(z) dz=0$が言えてしまう。最初に述べたようにこの式は非常に保存則と類似しており、裏側にいる関係を理解したいように思える。
ちなみに保存則にある単連結性が複素関数の場合いらないためより強い主張をしている。
ここでストークスの定理やグリーンの公式を統合した定理に言及しておこう。主張を書いておく。
$D$を$\mathbb{R}^2$上の領域で$\partial D$が単純閉曲線とする。このとき$D$上滑らかな関数$f,g:\mathbb{R}^2\to\mathbb{R}$に対して以下成立。
$$\int_Cf dx+g dy = \int\!\!\int_D\qty(-\frac{\partial f}{\partial y} + \frac{\partial g}{\partial x})dxdy$$
$D$を$\mathbb{R}^3$上の領域で$\partial D$が単純閉曲線とする。このとき$D$上滑らかなベクトル場$\bm{F}:\mathbb{R}^3\to\mathbb{R}^3$に対して以下成立。
$$\int_{\partial D} \bm{F}\cdot d\bm{r} = \int\!\!\int_D\text{rot}\bm{F}\cdot d\bm{S}$$
この定理と外微分を結び付けてみる。$fdx+g dy$を外微分したものは以下のように計算できた。
$$d(fdx+gdy) = (f_x dx+f_ydy)\wedge dx + (g_x dx + g_ydy)\wedge dy$$
$$ = f_y dy\wedge dx + g_xdx\wedge dy = (-f_y+g_x)dx\wedge dy$$
凄くグリーンの定理と似ていないだろうか。ベクトル場$\bm{F}=(F_1,F_2,F_3)$を$F_1dx+F_2dy+F_3dz$とみなして、これを外微分すれば$\text{rot}$との類似物を得られたのだった。つまりこの定理は外微分したときにどうなるかを記述している定理なのだ。これを書き直してみよう。
$D$を$\mathbb{R}^n$上の領域で$\partial D$が単純閉曲線とする。このとき$\mathbb{R}^n$上の一次微分形式$\omega$に対して以下成立。
$$\int_{\partial D} \omega = \int_D d\omega$$
$n=3$のときこれの1次微分形式を2次微分形式に変えればガウスの発散定理にすることもできる。つまり1次微分形式の箇所は$k$にも一般化できるが今回は十分だろう。
最後の話に使うのは$k=0$のとき、つまり$\omega$が滑らかな関数のときだ。勘違いしてた。しかも$D$が曲線のときを考える。少しこの仮定から外れてしまうがこの場合でも成り立つ。$\partial D$は曲線の端っこであるから二点しかない。さらに滑らかな関数$f:\mathbb{R}^n\to\mathbb{R}$の外微分は$\text{grad}$に対応するわけだった。この$\text{grad}f$を曲線$D$上で積分すると、端点で決まるということも成り立つ。曲線を$D:[0,1]\to \mathbb{R}^n$としておくと以下が成り立つ。
$$\int_D \text{grad}f \cdot d\bm{r} = f(D(1))-f(D(0))$$
これを外微分で書けば、
$$f(D(1))-f(D(0)) = \int_{\partial D}f =\int_D df$$
全くストークスの定理と同じ形をしているのがわかるだろう。
さて本題に戻ろう。まず滑らかなベクトル場$F$が単連結領域で$\text{rot}=0$を満たしているとき、ポアンカレの補題よりあるポテンシャル関数$\varphi:\mathbb{R}^n\to\mathbb{R}$が存在して$\bm{F}=\text{grad}\varphi$を満たすわけだった。これは外微分を用いて$\bm{F}=d\varphi$と書けるだろう。$\bm{F}$を一次微分形式とみなしてストークスの定理を適応すると、保存力の満たしてほしい要件は次のように示される。
$$\int_{\partial D} \bm{F}\cdot d\bm{r} = \int_{\partial D} \bm{F} = \int_{D} d\bm{F} = \int_{ D} d(d\varphi)$$
二階外微分すれば0になるのだったから、これで単純閉曲線上で保存力を線積分すれば0になることが示される。ここで大事なのは
単連結領域だから$\bm{F}=\text{grad}\varphi$とできて、$d\bm{F}=d(d\varphi)=0$
という事実である。これが複素関数ではどうなってるかを見れば、最初の疑問が解決されそうだ。今回の疑問に置いて積分したいものは複素関数 $f$であるがストークスの定理を適応するのだから、微分形式とみて$fdz$を積分するんだという心持をしておこう。これの外微分を計算すると
$$d(fdz)=\qty(\frac{\partial f}{\partial {z}} dz + \frac{\partial f}{\partial \overline{z}} d\overline{z})\wedge dz = - \frac{\partial f}{\partial \overline{z}} dz\wedge d\overline{z}$$
あれ?となっただろうか。もし正則性を仮定していれば$\frac{\partial f}{\partial \overline{z}}=0$が成立してくれて$d(fdz)=0$が言えてしまうのだ。保存力のときのように$^\exists \varphi\in C^\infty(\mathbb{R}^2)$ s.t. $fdz = d\varphi$を言わなくても
正則性の仮定だけで$d(fdz)=0$を自動的に満たしてくれる
のだ。まとめておこう。もし正則な複素関数$f$について領域$D$の境界で線積分$\int_{\partial D}fdz$をストークスの定理で計算すると
$$\int_{\partial D} fdz = \int_D d(fdz)$$
となり、正則な一次微分形式$fdz$の外微分が必要だが
$$d(fdz)=\qty(\frac{\partial f}{\partial {z}} dz + \frac{\partial f}{\partial \overline{z}} d\overline{z})\wedge dz = - \frac{\partial f}{\partial \overline{z}} dz\wedge d\overline{z}=0$$
であるから線積分は$\int_{\partial D} fdz = \int_D d(fdz)=0$から0となる、ということだ。
これをde Rham複体で見直してみる。$\mathbb{R}^n$上の$k$次微分形式を$\Omega^k(\mathbb{R}^n)$と表記する。$n=2$のとき$k>2$なら生成元は$dx\wedge dy\wedge dy$のような同じ元をウェッジしたようなものしか現れず交代性から0になってしまうので、$k>2$に対して$\Omega^k(\mathbb{R}^2)=0$である。また0次微分形式を滑らかな2変数関数全体とするとde Rham複体は次のように書ける。
$\xymatrix@C=25pt@R=4.5pt{ 0 \ar[r]& \Omega^0(\mathbb{R}^2) \ar[r]^{d} & \Omega^1(\mathbb{R}^2) \ar[r]^{d} & \Omega^2(\mathbb{R}^2) \ar[r] & 0 \\ &&fdz \ar@{(-}[u] \ar@{|->}[r] & 0 \ar@{(-}[u] \\ }$
つまり正則性を仮定するということはde Rham複体の1次微分形式の外微分を0写像であると決めてしますような仮定なのだ。そりゃ、トポロジーに大きな制限が掛かるだろう。$C^1$なら解析的とかね。
数学やってる人は抽象化が正義!みたいな人多いように感じます。でもこういう、コーシーの積分定理って保存力に似てるよなぁ…と素直な疑問を持ってそれを探求することで、裏側にある構造が浮き彫りになるわけです。それをもとにして抽象化されたものを見たほうが豊富な事項を含んだ構造としてとらえられると思っています。ぜひ具体例にも目を向けたいものです。
参考
・神保道夫, "複素関数入門"
・千葉逸人, "ベクトル解析からの幾何学入門"