2
大学数学基礎
文献あり

商空間の例

2065
0

I=[0,1]Rとおく.

Xを位相空間とする.I×X上の関係
(0,x)(0,x), x,xX
によって生成される同値関係Rcによる商空間,すなわち部分集合{0}×XI×Xを一点につぶして得られる空間(I×X)/({0}×X)X錐(cone)といいCXで表わす.
錐

錐の閉部分空間

XCXの閉部分空間
qCX({1}×X)={[1,x]xX}
と同相である.以下,この同相によりXCXとみなす.

  • qCX1(qCX({1}×X))={1}×Xτc(I×X)より,qCX({1}×X)τc(CX)である.
  • {0}×Xτc(I×X)であるから,命題5.7より,
    X{1}×XqCX({1}×X); x[1,x]
    が成り立つ.
球面の錐

n次元球面Snの錐CSnn+1次元球体Dn+1に同相である.実際,連続写像
I×SnDn+1; (t,x)tx
がコンパクト空間CSnからハウスドルフ空間Dn+1への全単射連続写像を誘導する.

閉部分空間の錐

非空閉集合AXの錐CACXの閉部分空間
CX|A:={[t,x]CXxA}
と同相である.

B:=qCX1(CX|A)=I×A{0}×Xτc(I×X)よりCX|Aτc(CX)であるので,命題5.4より同相
B/(Rc|B)CX|A
が成り立つ.また,Rc|B
(0,x)(0,x), x,xX
によって生成される同値関係に一致することに注意すると以下がわかる:

  • 包含写像I×ABは連続写像CAB/(Rc|B)を誘導する;
  • aAを取る.連続写像qCA:I×ACAおよび{0}×XCA; (0,x)[0,a]が貼り合わさって定まる連続写像BCAは連続写像B/(Rc|B)CAを誘導する;
  • これらは互いの逆写像である.

命題5.3より次を得る:

連続写像f:XYは,連続写像
Cf:CXCY; [t,x][t,f(x)]
を誘導する.Cffという.

懸垂

J=[1,1]Rとおく.

Xを位相空間とする.J×X上の関係
(1,x)(1,x),(1,x)(1,x), x,xX
によって生成される同値関係Rsによる商空間をX懸垂(suspension)といいSXで表わす.
懸垂 懸垂

懸垂の閉部分空間

位相空間Xの懸垂SXについて次が成り立つ:

  1. SXCX/Xとは同相である;
  2. CXSXの閉部分空間SX:={[t,x]SXt0}と同相である;
  3. CXSXの閉部分空間SX+:={[t,x]SXt0}と同相である;
  4. XSXの閉部分空間SX0:={[t,x]SXt=0}と同相である;
  5. 同相SXCXXCXが成り立つ.
  1. 同相写像
    I×XJ×X; (t,x)(2t1,x)
    が同相写像CX/XSXを誘導する(命題5.3).
  2. B:=qSX1(SX)=[1,0]×Xτc(J×X)よりSXτc(SX)であり,Rs|B
    (1,x)(1,x), x,xX
    によって生成される同値関係に一致するので,命題5.4より同相
    CXB/(Rs|B)SX; [t,x][t1,x]
    が成り立つ.
  3. (ii)と同様.ただし
    CXSX+; [t,x][1t,x]
    となる.
  4. 命題1と前段より明らか.
  5. 前段と命題5.15よりしたがう.
球面の懸垂

n次元球面Snの懸垂SSnn+1次元球面Sn+1R×Rn+1に同相である.実際,連続写像
J×SnSn+1; (t,x)(t,1t2x)
がコンパクト空間SSnからハウスドルフ空間Sn+1への全単射連続写像を誘導する.

n次元球体Dnの境界Sn1を一点につぶして得られる空間Dn/Sn1n次元球面Snに同相である.実際,
Dn/Sn1CSn1/Sn1SSn1Sn
が成り立つ.

閉部分空間の懸垂

非空閉集合AXの懸垂SASXの閉部分空間
SX|A:={[t,x]SXxA}
と同相である.

B:=qSX1(SX|A)=J×A{1,1}×Xτc(J×X)よりSX|Aτc(SX)であり,Rs|B
(1,x)(1,x),(1,x)(1,x), x,xX
によって生成される同値関係に一致するので,命題5.4より同相
SAB/(Rs|B)SX|A
が成り立つ.

連続写像f:XYは,連続写像
Sf:SXSY; [t,x][t,f(x)]
を誘導する.Sff懸垂という.

X,Yを位相空間とする.X×I×Y上の関係
(x,0,y)(x,0,y),(x,1,y)(x,1,y), x,xX,y,yY
によって生成される同値関係Rjによる商空間をX,Y結(join)といいXYで表わす.
結

結の閉部分空間

X,Yを位相空間とする.このとき次が成り立つ:

  1. XXYの閉部分空間
    X0Y:={[x,t,y]XYt=0}
    と同相である;
  2. YXYの閉部分空間
    X1Y:={[x,t,y]XYt=1}
    と同相である;
  3. X×YXYの閉部分空間
    X12Y:={[x,t,y]XYt=12}
    と同相である;
  4. XYYXとは同相である.
  1. B0:=qXY1(X0Y)=X×{0}×Yτc(X×I×Y)よりX0Yτc(XY)であり,Rj|B0=R(pX)であるから,命題5.4より
    XB0/R(pX)X0Y; x[x,0,y]
    が成り立つ.ただしpX:B0Xは自然な射影である.
  2. (i)と同様.
  3. B12:=qXY1(X12Y)=X×{12}×Yτc(X×I×Y)よりX12Yτc(XY)であり,Rj|B12=ΔB12=R(idB12)であるから,命題5.4より
    X×YB12B12/R(idB12)X12Y; (x,y)[x,12,y]
    が成り立つ.
  4. 同相写像
    X×I×YY×I×X; (x,t,y)(y,1t,x)
    が同相写像XYYXを誘導する.
閉部分空間の結

非空閉集合AX,BYの結ABXYの閉部分空間
(X|A)(Y|B):={[x,t,y]XYxA,yB}
と同相である.

Z:=qXY1((X|A)(Y|B))=A×I×BA×{0}×YX×{1}×Bτc(X×I×Y)
より(X|A)(Y|B)τc(XY)であり,Rj|Z
(a,0,y)(a,0,y), aA,y,yY,(x,1,b)(x,1,b), x,xX,bB
によって生成される同値関係に一致するので,命題5.4より同相
ABZ/(Rj|Z)(X|A)(Y|B)
が成り立つ.

結と錐・懸垂

Xを位相空間とする.このとき次が成り立つ:

  1. D0XCX;
  2. S0XSX.
  1. 同相写像
    D0×I×XI×X; (0,t,x)(t,x)
    が同相D0XCXを誘導する.
  2. 連続写像
    S0×I×XJ×X; (s,t,x){(t1,x),s=1(1t,x),s=1
    は連続写像f:S0XSXを誘導する.また,閉被覆上の連続写像族
    [1,0]×XS0X; (t,x)[1,1+t,x],[0,1]×XS0X; (t,x)[1,1t,x]
    {0}×X上で貼り合わさって定まる連続写像J×XS0Xは連続写像g:SXS0Xを誘導する.こうして定まるf,gが互いの逆写像であることは容易に確かめられる.

結の結合性について

等化結と誘導結

Δn1={(t1,,tn)Rnti0,ti=1}Rnとおく.

X1,,Xnを位相空間とする.X1××Xn×Δn1上の関係
(x1,,xi1,xi,xi+1,,xn,(t1,,ti1,0,ti+1,,tn))(x1,,xi1,xi,xi+1,,xn,(t1,,ti1,0,ti+1,,tn)), xjXj,(t1,,tn)Δn1
で生成される同値関係による商空間をX1,,Xn等化結といい,X1Xnで表わす.また,(x1,,xn,(t1,,tn))の同値類をt1x1tnxnと書く.

同相IΔ1; t(1t,t)により,位相空間X,Yの結(定義3)と等化結とは同相である.

等化位相の普遍性より,各i[n]に対して写像
TXi=Ti:X1XnI; t1x1tnxnti
は連続である.したがってTi1(]0,1])X1Xnは開集合であるから,(qX1Xn)Ti1(]0,1])は等化写像である(命題3.9).よって,各i[n]に対して写像
ξXi=ξi:Ti1(]0,1])Xi; t1x1tnxnxi
は連続である.

X1,,Xnを位相空間とする.商集合X1Xnに写像族(T1,,Tn,ξ1,,ξn)による誘導位相を与えた空間をX1,,Xn誘導結といい,X1Xnで表わす.誘導結の元も同様にt1x1tnxnと書く.

  • 「等化結」および「誘導結」は(おそらく)本稿のみの用語である.
  • 位相の定め方より恒等写像
    id:X1XnX1Xn
    は連続である.

誘導結の結合性

誘導結の結合性

位相空間X1,,Xnの誘導結について,次が成り立つ:
(X1Xm)(Xm+1Xn)X1Xn, 1m<n.

X=X1Xm,X=Xm+1Xnとおく.

連続写像f:XXX1Xnの構成

写像f:XXX1Xnを次で定める:
x=r(t1x1tmxm)s(tm+1xm+1tnxn)rt1x1rtmxmstm+1xm+1stnxn.

  • i[n]に対して
    f1(Ti1(]0,1]))={TX1(]0,1])(TXiξX)1(]0,1])=(TXiξX)1(]0,1]),1imTX1(]0,1])(TXiξX)1(]0,1])=(TXiξX)1(]0,1]),m<inτ(XX)
    が成り立つ.
  • i[m]とする.
    • TX1(]0,1])上で,
      Tif(x)=rti=TX(x)TXiξX(x)
      より,Tifは連続である.
    • 任意のx:=0x1xXXε>0に対して,U:=TX1([0,ε[)τ(x,XX)でありTif(U)[0,ε[が成り立つ.したがってTX1([0,1[)上でもTifは連続である.
    • よってTif:XXIは連続である.
    • また,f1(Ti1(]0,1]))上で
      ξif(x)=xi=ξXiξX(x)
      が成り立つので,ξifTi1(]0,1])は連続である.
  • 同様にしてi{m+1,,n}に対しても,TifおよびξifTi1(]0,1])は連続であることがわかる.

よってf:XXX1Xnは連続である(命題2.18).

連続写像g:X1XnXXの構成

写像g:X1XnXXを次で定める:
x=t1x1tnxnr(t1x1tmxm)s(tm+1xm+1tnxn).
ただし,
r=t1++tm,ti={tir,r01m,r=0s=tm+1++tn,ti={tis,s01nm,s=0
とおいた.このとき,
TXg(x)=r=T1(x)++Tm(x),TXg(x)=s=Tm+1(x)++Tn(x)
より,TXg,TXgは連続である.

  • i[m]とする.このとき,
    TXi(ξXgTX1(]0,1]))(x)=TXi(t1rx1tmrxm)=tir=Ti(x)T1(x)++Tm(x)
    および
    ξXi(ξXgTX1(]0,1]))TXi1(]0,1])(x)=ξXi(t1rx1tmrxm)=xi=ξi(x)
    が成り立つ.したがってξXgTX1(]0,1])は連続である(命題2.18).
  • 同様にしてξXgTX1(]0,1])の連続性もわかる.

よってg:X1XnXXは連続である.

f,gが互いの逆写像であること

gf(r(t1x1tmxm)s(tm+1xm+1tnxn))=g(rt1x1rtmxmstm+1xm+1stnxn)={r(t1x1tmxm)s(tm+1xm+1tnxn),r,s00(1mx11mxm)1(tm+1xm+1tnxn),r=01(t1x1tmxm)0(1nmxm+11nmxn),s=0=r(t1x1tmxm)s(tm+1xm+1tnxn)
および
fg(t1x1tnxn)=f(r(t1x1tmxm)s(tm+1xm+1tnxn))=rt1x1rtmxmstm+1xm+1stnxn=t1x1tnxn
が成り立つ.

命題10の

位相空間X1,X2,X3の誘導結について
X1(X2X3)(X1X2)X3
が成り立つ.

等化結の結合性:コンパクトハウスドルフ空間の場合

誘導結のハウスドルフ性

X1,X2がハウスドルフ空間ならば,誘導結X1X2もハウスドルフ空間である.

x:=t1x1t2x2t1x1t2x2=:xとする.このとき,“x1x2とを結ぶ線分”と,“x1x2とを結ぶ線分”との位置関係(cf. 図5)に注意すると,

  • t1t1;
  • t2t2;
  • t1=t10x1x1;
  • t2=t20x2x2

のうち少なくとも一つが成り立つことがわかる.したがって,写像

  • T1:X1X2I; s1y1s2y2s1;
  • T2:X1X2I; s1y1s2y2s2;
  • ξ1:T11(]0,1])X1; s1y1s2y2y1;
  • ξ2:T21(]0,1])X2; s1y1s2y2y2

の連続性およびI,X1,X2のハウスドルフ性より,x,xは交わらない開近傍を持つ(補題2.22).

X1,,Xnをコンパクトハウスドルフ空間とする.このとき恒等写像
id:X1XnX1Xn
は同相写像である.

  • X1,,Xn,Δn1はコンパクト空間なので,X1Xnはコンパクト空間である.
  • 命題10,補題11より,
    X1Xn(((X1X2)X3))Xn
    はハウスドルフ空間である.

命題12の証明より次がわかる:X1,,Xnがハウスドルフ空間ならば,誘導結X1Xnおよび等化結X1Xnはハウスドルフ空間である.

命題12の

コンパクトハウスドルフ空間X1,X2,X3の等化結について
X1(X2X3)(X1X2)X3
が成り立つ.

命題10(の系)と命題12より
X1(X2X3)X1(X2X3)X1(X2X3)(X1X2)X3(X1X2)X3(X1X2)X3
を得る.

錐と懸垂の可換性

コンパクトハウスドルフ空間Xに対して,同相
CSXSCX
が成り立つ.実際,D0,S0はコンパクトハウスドルフ空間であるから,命題9,命題7(iv)より
CSXD0(S0X)(D0S0)X(S0D0)XS0(D0X)SCX
を得る.

球面の等化結

非負整数m,nZ0に対して,同相
SmSnSm+n+1
が成り立つ.

mZ0に関する数学的帰納法による.

  • m=0のとき,命題9,例2より
    S0SnSSnSn+1=S0+n+1
    が成り立つ.
  • m>0のとき,
    SmSn(SSm1)Sn(S0Sm1)SnS0(Sm1Sn)S0S(m1)+n+1=S0Sm+nSSm+nSm+n+1
    が成り立つ.

等化結の結合性:局所コンパクトハウスドルフ空間の場合(未)

あやしくなってきた.

基点つき空間

  • 位相空間Xとその点x0Xの組(X,x0)基点つき空間(pointed space)という.
  • (X,x0),(Y,y0)を基点つき空間とする.連続写像f:XYf(x0)=y0を満たすとき,fを基点つき空間のあいだの連続写像といいf:(X,x0)(Y,y0)と書く.

以下,基点つき空間(X,x0)に対しては{x0}τc(X)を仮定する.

被約錐・被約懸垂

(X,x0)を基点つき空間とする.

  • I×Xの部分集合I×{x0}{0}×Xを一点につぶして得られる空間をX被約錐(reduced cone)といい,C^Xで表わす.被約錐はqC^X(0,x0)を基点とする基点つき空間とみなす.
  • J×Xの部分集合J×{x0}{1,1}×Xを一点につぶして得られる空間をX被約懸垂(reduced suspension)といい,ΣXで表わす.被約懸垂はqΣX(1,x0)を基点とする基点つき空間とみなす.

(X,x0)を基点つき空間とする.このとき次が成り立つ:

  1. 被約錐C^XCX/C{x0}に同相である;
  2. 被約懸垂ΣXSX/S{x0}に同相である;
  3. Xは閉部分空間qC^X({1}×X)C^Xに同相である;
  4. ΣXC^X/Xに同相である;
  5. C^Xは閉部分空間ΣX±:={[t,x]ΣX±t0}に同相である;
  6. Xは閉部分空間ΣX0:={[t,x]ΣXt=0}に同相である;
  7. 同相ΣXC^XXC^Xが成り立つ.
  1. {x0}τc(X)よりC{x0}qCX(I×{x0})が成り立つ(命題2).いま(0,x0)I×{x0}{0}×Xであるから,命題5.5より
    CX/C{x0}((I×X)/({0}×X))/qI×X/{0}×X(I×{x0})(I×X)/(I×{x0}{0}×X)=C^X
    が成り立つ.
  2. {x0}τc(X)よりS{x0}qSX(J×{x0})が成り立つ(命題5).よって,命題4,命題5.5より
    SX/S{x0}(CX/X)/qCX/X(qCX(I×{x0}))CX/qCX(I×{x0}{1}×X)=((I×X)/({0}×X))/qI×X/{0}×X(I×{x0}{1}×X)(I×X)/(I×{x0}{0,1}×X)(J×X)/(J×{x0}{1,1}×X)=ΣX
    が成り立つ.
  3. B:=qC^X1(qC^X({1}×X))=I×{x0}{1}×Xτc(I×X)よりqC^X({1}×X)τc(C^X)である.また,R(I×{x0}{0}×X)|B=R(I×{x0})であるから,命題5.4より
    X{1}×XB/(I×{x0})qC^X({1}×X)
    が成り立つ.
  4. 前段より
    ΣX(I×X)/(I×{x0}{0,1}×X)((I×X)/(I×{x0}{0}×X))/qI×X/(I×{x0}{0}×X)({1}×X)=C^X/qC^X({1}×X)C^X/X
    を得る.
  5. B:=qΣX1(ΣX)=J×{x0}[1,0]×Xτc(J×X)よりΣXτc(ΣX)である.また,R(J×{x0}{1,1}×X)|BJ×{x0}{1}×Xを一点につぶす同値関係であるから,連続写像I×XB; (t,x)(t1,x)は連続写像C^XΣXを誘導する.また,連続写像
    J×{x0}C^X; (t,x0)[0,x0][1,0]×XC^X; (t,x)[t+1,x]
    が貼り合わさって定まる連続写像BC^Xが逆写像を誘導する.ΣX+についても同様である:
    C^XΣX+; [t,x][1t,x].
  6. 前段より
    XqC^X({1}×X)ΣX0τc(ΣX)
    が成り立つ.
  7. 前段と命題5.15よりしたがう.
球面の被約錐

n次元球面Snの被約錐C^Snn+1次元球体Dn+1に同相である.実際,Snの基点をx0Snとすると,連続写像
CSnDn+1; [t,x]tx+(1t)x0
はコンパクト空間C^SnCSn/C{x0}からハウスドルフ空間Dn+1への全単射連続写像を誘導する.
!FORMULA[325][1004258240][0]をつぶす C{x0}をつぶす

球面の被約懸垂

n次元球面Snの被約懸垂ΣSnn+1次元球面Sn+1R×Rn+1に同相である.

Snの基点をx0Snとする.写像f:SSnSn+1
f([t,x])={(1(1t)x+tx02,(1t)x+tx0),t0(1(1+t)xtx02,(1+t)xtx0),t0
で定める.fqSSnが連続なのでfは連続である.連続写像fは,SS±nCSn(命題4)を例6の写像によりDn+1{0}×Dn+1R×Rn+1に押しつけたものを同相写像
Dn+1Sn+1({xR±x0}×Rn+1); z(±1z2,z)
で“左右に膨らませる”写像である.したがって,fはコンパクト空間ΣSnSSn/S{x0}からハウスドルフ空間Sn+1への全単射連続写像を誘導する.
!FORMULA[344][-1977159728][0]をつぶす S{x0}をつぶす

命題13,例6,例1より
ΣSnC^Sn/SnDn+1/SnSn+1
を得る.

被約錐と被約懸垂の可換性

基点つき空間(X,x0)に対して,同相
C^ΣXΣC^X
が成り立つ.

単位閉区間I=[0,1]はコンパクトハウスドルフ空間なので
idI×qΣX:I×J×XI×ΣX
は全射等化写像である(定理4.11の系).したがって,合成
q:=qC^ΣX(idI×qΣX):I×J×XC^ΣX
は全射等化写像である(定理3.7の系).また,同値関係R(q)は部分集合
(I×J×{x0})({0}×J×X)(I×{1,1}×X)
を一点につぶす同値関係である.同様に
q:=qΣC^X(idJ×qC^X):J×I×XΣC^X
は全射等化写像であり,
R(q)=R((J×I×{x0})(J×{0}×X)({1,1}×I×X))
が成り立つ.よって,同相写像
I×J×XJ×I×X; (s,t,x)(t,s,x)
が同相
C^ΣXΣC^X
を誘導する.

楔和

((Xλ,xλ,0))λΛを基点つき空間の族とする.余積空間X上の関係
(λ,xλ,0)(μ,xμ,0), λ,μΛ
によって生成される同値関係による商空間,すなわち部分集合{(λ,xλ,0)λΛ}を一点につぶして得られる空間を((Xλ,xλ,0))λΛ楔和(wedge sum)といい,X,λΛXλなどで表わす.楔和はqX(λ,xλ,0)を基点とする基点つき空間とみなす.

余積空間の結合性(resp. 可換性)より,楔和の結合性(resp. 可換性)がしたがう.

楔和の普遍性

((Xλ,xλ,0))λΛを基点つき空間の族とする.基点つき空間(Y,y0)への連続写像族f=(fλ:(Xλ,xλ,0)(Y,y0))λΛに対して,基点つき空間のあいだの連続写像f=λΛfλ:XYであって
λΛ, fqXiλ=fλ
が成り立つものがただ一つ存在する.

余積空間の普遍性より連続写像(f):XYが定まる:
XλfλiλYX(f)
いま
λΛ, fλ(xλ,0)=y0
より,
qX(x)=qX(y)(f)(x)=(f)(y)
が成り立つ.よって,商空間の普遍性より連続写像f:XYが定まる:
X(f)qXYXf
このfが条件を満たすことは明らかであろう.

楔和のハウスドルフ性

((Xλ,xλ,0))λΛを基点つきハウスドルフ空間の族とする.このとき,楔和Xはハウスドルフ空間である.

X=X,q=qXとおく.命題3.19よりXはハウスドルフ空間である.

x,yX,q(x)q(y),とする.xyXのハウスドルフ性よりx,yXの交わらない開近傍U,Vτ(X)が存在する.また,X=λΛiλ(Xλ)より,λ,μΛであってxiλ(Xλ),yiμ(Xμ)となるものが存在する.

xiλ(Xλ{xλ,0}),y=iμ(xμ,0)のとき

xiλ(xλ,0)より,それぞれの交わらない開近傍U0,V0τ(X)が存在する.そこでU=UU0iλ(Xλ{xλ,0}),V=VV0λλiλ(Xλ)とおくと,
q1(q(U))=Uτ(x,X), q1(q(V))=Vτ(y,X), UV=
より,
q(U)τ(q(x),X), q(V)τ(q(y),X), q(U)q(V)=
が成り立つ.

xiλ(Xλ{xλ,0}),yiμ(Xμ{xμ,0})のとき

U=Uiλ(Xλ{xλ,0}),V=Viμ(Xμ{xμ,0})とおくと,
q1(q(U))=Uτ(x,X), q1(q(V))=Vτ(y,X), UV=
より,
q(U)τ(q(x),X), q(V)τ(q(y),X), q(U)q(V)=
が成り立つ.

(X1,x1,0),,(Xn,xn,0)を基点つき空間とする.このとき
X1Xn=i[n]{x1,0}××{xi1,0}×Xi×{xi+1,0}××{xn,0}X1××Xn
とおくと,これは(x1,0,,xn,0)を基点とする基点つき空間であり,楔和i[n]Xiと同相である.

商写像をq:XXとおく.

  • i[n]に対して
    Xi={x1,0}××{xi1,0}×Xi×{xi+1,0}××{xn,0}
    とおくと,これはX1××Xnの閉集合であるから,(Xi)i[n]X1Xnの有限閉被覆である.そこで各i[n]に対して連続写像fi:XiX
    fi(x)=q(i,xi)
    で定めると,これらはXiXj={(x1,0,,xn,0)}上で貼り合わさって連続写像
    f:X1XnX
    を定める.
  • i[n]に対して連続写像gi:XiX1Xn
    gi(xi)=(x1,0,,xi1,0,xi,xi+1,0,,xn,0)
    で定めると,(gi)i[n]は基点つき空間のあいだの連続写像族なので,楔和の普遍性より連続写像
    g:XX1Xn
    が定まる.

こうして定まるf,gが互いの逆写像であることは明らかであろう.

縮積

(X1,x1,0),,(Xn,xn,0)を基点つき空間とする.X1××Xnの部分集合
i[n]X1××Xi1×{xi,0}×Xi+1××Xn
を一点につぶして得られる空間をX1,,Xn縮積(smash product)といい,X1Xnで表わす.縮積はqX1Xn(x1,0,,xn,0)を基点とする基点つき空間とみなす.

  • とくにn=2のとき
    XY=(X×Y)/(XY)
    となる.
  • 積空間の可換性より,縮積の可換性がしたがう.
  • X1,,Xnが正則空間ならば,縮積X1Xnはハウスドルフ空間である(命題2.27,命題5.7の系).
  • X1××Xnが正規空間ならば,縮積X1Xnは正規空間である(命題5.14の系).
縮積と被約錐・被約懸垂

(X,x0)を基点つき空間とする.このとき次が成り立つ:

  1. (S0,1)との縮積S0XXと同相である;
  2. (I,0)との縮積IXは被約錐C^Xに一致する;
  3. (S1,s)との縮積S1Xは被約懸垂ΣXと同相である.
  1. 連続写像
    S0×X={1}×X{1}×X=X⨿Xcx0⨿idXX
    は連続写像S0XXを誘導する.連続写像XS0X; xqS0X(1,x)が逆写像を与える.
  2. IX=I×{x0}{0}×Xより,
    IX=I×XI×{x0}{0}×X=C^X
    が成り立つ.
  3. 連続写像f:(J,1)(S1,s); tsexp(π1(t+1))は同相J/{1,1}S1を誘導する.また,定理4.11の系よりg:=f×idX:J×XS1×Xは全射等化写像である.したがってqS1Xg:J×XS1Xは全射等化写像であり,
    R(qS1Xg)=R(J×{x0}{1,1}×X)
    が成り立つことがわかるので,同相
    ΣX=J×XJ×{x0}{1,1}×XS1X
    が成り立つ.
    J×Xf×idXqΣXS1×XqS1XΣXS1X

基点つき空間のあいだの連続写像の族(fi:(Xi,xi,0)(Yi,yi,0))i[n]は連続写像
f1fn:X1XnY1Yn
を誘導する.

i[n]に対して
(f1××fn)(X1××Xi1×{xi,0}×Xi+1××Xn)Y1××Yi1×{yi,0}×Yi+1××Yn
が成り立つので,命題5.3より結論を得る.

(X,x0),(Y,y0)を基点つき空間とし,x0Aτc(X),y0Bτc(Y)とする.このとき次が成り立つ:

  1. (A,x0)(B,y0)の縮積ABXYの閉部分空間と同相である;
  2. Xがコンパクトハウスドルフ空間である(resp. Yが局所コンパクトハウスドルフ空間である)ならば,同相(XY)/(AY)(X/A)Yが成り立つ.ただし,X/AqX/A(x0)を基点とする基点つき空間とみなす.
  1. XYτc(X×Y), (A×B)(XY)=ABであり,仮定よりA×Bτc(X×Y)であるから,命題5.13の系より結論を得る.
  2. 補題19より,連続写像qX/A×idY:X×Y(X/A)×Yは連続写像qX/AidY:XY(X/A)Yを誘導する.仮定よりqX/A×idYは全射等化写像であるから(定理4.11の系),qX/AidYは全射等化写像であり(定理3.7の系),したがって同相
    (XY)/R(qidY)(X/A)Y
    が成り立つ.
    X×YqX/A×idYqXY(X/A)×Yq(X/A)YXYqX/AidY(X/A)Y
    ところで,同一視AYXYのもとで
    R(qX/AidY)=R(AY)
    が成り立つことがわかるので,結論を得る.

(X1,x1,0),,(Xn,xn,0)を基点つき空間とし,各i[n]に対してAiXixi,0Aiなる部分集合とする.このとき,f:=i[n]qXi/Ai:i[n]Xii[n]Xi/Aiが等化写像ならば,同相
X:=X1××Xni[n]X1××Xi1×Ai×Xi+1××XnX1A1XnAn
が成り立つ.

任意のxX1××Xnに対して
xi[n]X1××Xi1×Ai×Xi+1××Xnf(x)i[n]X1A1××Xi1Ai1×{qXi/Ai(xi,0)}×Xi+1Ai+1××XnAn
が成り立つので,全射連続写像fは全単射連続写像
f:XX1A1XnAn
を誘導する:
X1××Xnfquoti.X1A1××XnAnquoti.XfX1A1XnAn
いま,仮定よりfは等化写像なので,逆写像f1は連続である.

命題21の仮定が成り立つための十分条件として,たとえば次のものがある:

  • X1,,Xn1がコンパクト空間であり,X1/A1,,Xn1/An1がハウスドルフ空間である;
  • n=2で,Xi,X3i/A3iがともに局所コンパクトハウスドルフ空間である.
縮積の結合性

(X,x0),(Y,y0),(Z,z0)を基点つき空間とする.

  1. X,Yはコンパクトハウスドルフ空間;
  2. Y,Zはコンパクトハウスドルフ空間;
  3. X,Zは局所コンパクトハウスドルフ空間

のいづれかが成り立つならば,同相
XYZX(YZ)(XY)Z
が成り立つ.

全射連続写像

  • q0:=qXYX:X×Y×ZXYZ;
  • q1:=qX(YZ)(idX×qYZ):X×(Y×Z)X(YZ);
  • q2:=q(XY)Z(qXY×idZ):(X×Y)×Z(XY)Z

を考える.

  1. q1は全射等化写像である.また,qXYはコンパクト空間X×Yからハウスドルフ空間XYへの全射連続写像であるから,q2は全射等化写像である.
  2. (1)と同様.
  3. Xが局所コンパクトハウスドルフ空間であることからq1が,Zが局所コンパクトハウスドルフ空間であることからq2が全射等化写像であることがしたがう.

いづれも定理4.11の系および定理3.7の系による.さらに,R(q0),R(q1),R(q2)はいづれも
R(({x0}×Y×Z)(X×{y0}×Z)(X×Y×{z0}))
に一致するので,恒等写像が所期の同相を誘導する:
X×Y×Zidq0X×(Y×Z)idq1(X×Y)×Zq2XYZX(YZ)(XY)Z

多重懸垂

(X,x0)を基点つき空間とする.非負整数nZ0に対して
Σ0X=X,ΣnX=Σ(Σn1X), n>0
と定める.このとき,任意のnZ0に対して
ΣnXSnX
が成り立つ.実際,命題18より
Σ0X=XS0X
であり,n>0のとき,S1,Sn1がコンパクトハウスドルフ空間であることから
ΣnX=Σ(Σn1X)S1Σn1XS1(Sn1X)(S1Sn1)XΣSn1XSnX
が成り立つ.

命題22により命題14の別証明が得られる:

命題22の

基点つき空間(X,x0)に対して,同相
C^ΣXΣC^X
が成り立つ.

I,S1はコンパクトハウスドルフ空間であるから,命題18と合わせて
C^ΣXI(S1X)(IS1)X(S1I)XS1(IX)ΣC^X
を得る.

命題22は次の形に一般化できる:

縮積の結合性

(X1,x1,0),,(Xn,xn,0)を基点つき空間とし,m[n1]とする.このときX1XmまたはXm+1Xnが局所コンパクトハウスドルフ空間ならば,同相
X1Xn(X1Xm)(Xm+1Xn)
が成り立つ.

  • qn:X1××XnX1Xn
  • qm:X1××XmX1Xm
  • qnm:Xm+1××XnXm+1Xn
  • qm,nm:(X1Xm)×(Xm+1Xn)(X1Xm)(Xm+1Xn)

を商写像とする.仮定よりqm×qnmは全射等化写像であるから(定理4.11の系),合成q:=qm,nm(qm×qnm)は全射等化写像である.同値関係R(q)X1××Xnの部分集合
(i[m]X1××Xi1×{xi,0}×Xi+1××Xm)×Xm+1××XnX1××Xm×(i[nm]Xm+1××Xm+i1×{xm+i,0}×Xm+i+1××Xn)=i[n]X1××Xi1×{xi,0}×Xi+1××Xn
を一点につぶす同値関係に一致するので,
X1Xn=X1××XnR(q)(X1Xm)(Xm+1Xn)
が成り立つ.
X1××Xm×Xm+1××Xnqm×qnmqn(X1Xm)×(Xm+1Xn)qm,nmX1XmXm+1Xn(X1Xm)(Xm+1Xn)

命題23の証明よりつぎがわかる:任意のm[n1]に対して,全射連続写像qm×qnmは全単射連続写像
X1Xn(X1Xm)(Xm+1Xn)
を誘導する.

円周の縮積

n個の円周S1の縮積はn次元球面Snに同相である.実際,S1は局所コンパクトハウスドルフ空間であるから,命題23とnZ1に関する数学的帰納法により
S1S1nS1(S1S1n1)S1Sn1ΣSn1Sn
が成り立つ.

縮積と被約懸垂

(X,x0),(Y,y0)を基点つき空間とする.

  1. Xはコンパクトハウスドルフ空間;
  2. Yは局所コンパクトハウスドルフ空間

のいづれかが成り立つならば,同相
Σ(XY)ΣXY
が成り立つ.

全射連続写像

  • q1:=qΣ(XY)(idJ×qXY):J×(X×Y)Σ(XY)
  • q2:=qΣXY(qΣX×idY):(J×X)×YΣXY

を考える.J=[1,1]はコンパクトハウスドルフ空間なので,q1は全射等化写像である.

  1. qΣXはコンパクト空間J×Xからハウスドルフ空間ΣXへの全射連続写像なので,q2は全射等化写像である.
  2. Yの局所コンパクト性よりqΣX×idYは全射等化写像なので,q2は全射等化写像である.

R(q1),R(q2)はいづれも
R(({1,1}×X×Y)(J×{x0}×Y)(J×X×{y0}))
に一致するので,恒等写像が所期の同相を誘導する:
J×(X×Y)idq1(J×X)×Yq2Σ(XY)ΣXY

命題24の

(X,x0),(Y,y0)を基点つき空間とする.X,Yがともに局所コンパクトハウスドルフ空間ならば,同相
ΣXYXΣY
が成り立つ.

命題24と縮積の可換性より
ΣXYΣ(XY)Σ(YX)ΣYXXΣY
が成り立つ.

球面の縮積

非負整数m,nZ0に対して,同相
SmSnSm+n
が成り立つ.実際,命題18,例7とmZ0に関する数学的帰納法により
SmSnΣSm1SnΣ(Sm1Sn)ΣS(m1)+n=ΣSm+n1Sm+n
が成り立つ.或いは例9と命題23より
SmSn(S1S1m)(S1S1n)S1S1m+nSm+n
を得る.

参考文献

[1]
N. Bourbaki, General Topology Chapters 1--4
[2]
J. Dugundji, Topology
[3]
小松醇郎,中岡稔,菅原正博, 『位相幾何学 I』, 岩波書店
投稿日:20231114
更新日:2023121

この本を高評価した人

高評価したユーザはいません

この本に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

うすい
56
11920
位相空間論に興味があります.

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中

現在のページ

商空間の例
  1. 懸垂
  2. 結の結合性について
  3. 等化結と誘導結
  4. 誘導結の結合性
  5. 等化結の結合性:コンパクトハウスドルフ空間の場合
  6. 等化結の結合性:局所コンパクトハウスドルフ空間の場合(未)
  7. 基点つき空間
  8. 被約錐・被約懸垂
  9. 楔和
  10. 縮積
  11. 参考文献
前のページへ
6 / 7
次のページへ
前ページへ
New Spaces from Oldの表紙
次ページへ