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大学数学基礎
文献あり

はじめに

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  • これは位相の(余)誘導まわりの話を私なりに整理することを目的としたノートです.
    • 具体的な(反)例はあまり書いてありません.
    • 位相的性質の遺伝についても同様です.
  • 現在,とくに断りなく加筆・訂正しています.“工事中”の記事ということでご寛恕ください.
  • 何かお気づきの際はコメント欄で教えてくださると嬉しいです.

記号

対角集合

Xを集合とする.

  • ΔX:={(x,y)X×X | x=y}.
写像の制限・余制限

f:XYを写像とし,AX,BYとする.

  • f|A:AY; xf(x):制限;
  • f(A)Bのとき,f|AB:AB; xf(x);
  • fB:=f|f1(B)B:f1(B)B:余制限?.
恒等写像・包含写像

Xを集合とし,ABXとする.

  • id=idX:XX; xx:恒等写像;
  • idAB:=idX|AB:AB:包含写像.
開集合系・閉集合系・開近傍系

Xを位相空間とし,AX,xXとする.

  • τ(X)Xの開集合系;
  • τc(X)=τ(X)cXの閉集合系;
  • τ(A,X):={Uτ(X) | AU}Aの開近傍系;
  • τ(x,X):=τ({x},X)xの開近傍系.

直積・直和

(Xλ)λΛを集合族とする.集合
X:=λΛXλ:={x:ΛλΛXλ | λΛ, xλ:=x(λ)Xλ}
(Xλ)λΛ直積,積集合などという.各λΛに対して,写像
XXλ; xxλ
自然な射影といい,pλ,pXλで表わす.

f,g:XλΛXλを写像とする.このとき,任意のλΛに対してpλf=pλgが成り立つならば,f=gである.

xXとする.このとき,仮定より
λΛ, f(x)(λ)=pλ(f(x))=pλf(x)=pλg(x)=pλ(g(x))=g(x)(λ)
が成り立つので,
f(x)=g(x):ΛλΛXλ
が成り立つ.

(Xλ)λΛを集合族とする.集合
X:=λΛXλ:=λΛ{λ}×Xλ
(Xλ)λΛ直和,余積集合などという.各λΛに対して,写像
XλX; xλ(λ,xλ)
自然な入射といい,iλ,iXλで表わす.

f,g:λΛXλXを写像とする.このとき,任意のλΛに対してfiλ=giλが成り立つならば,f=gである.

ξXとする.このとき,λΛxλXλであってξ=iλ(xλ)となるものが存在する.よって
f(ξ)=f(iλ(xλ))=fiλ(xλ)=giλ(xλ)=g(iλ(xλ))=g(ξ)
が成り立つ.

同値関係と商集合

同値関係

Xを集合とする.直積X×Xの部分集合をX上の関係という.関係RX×Xに対して

  • RT={(x,y)X×X(y,x)R}
  • RΔT=ΔXRRT
  • RR={(x,z)X×XyX, (x,y),(y,z)R}

とおく.X上の関係RX×Xが3条件

  1. ΔXR:反射律
  2. RTR:対称律
  3. RRR:推移律

を満たすとき,RX上の同値関係(equivalence relation)という.

集合X上の関係RX×Xについて,定義3の条件はそれぞれ以下の条件のそれぞれと同値である:

  1. 反射律:xX,(x,x)R;
  2. 対称律:x,yX [ (x,y)R(y,x)R ];
  3. 推移律:x,y,zX [ (x,y)R(y,z)R(x,z)R ].

Xを集合とし,R0X×XX上の関係とする.このとき,
R(R0):={(x,x)X×X(xi)0in, x=x0,x=xn,i[n],(xi1,xi)R0ΔT}
R0ΔTを含むX上の同値関係である.R(R0)R0によって生成される同値関係という.

R0ΔTR(R0)は明らか.

  1. ΔXR0ΔTR(R0)が成り立つ.
  2. (x,y)R(R0)とする.定義よりXの点列(xi)0inであって
    x=x0,y=xn,i[n],(xi1,xi)R0ΔT
    を満たすものが存在する.このときXの点列(xni)0inについて
    y=xn0,x=xnn,i[n],(xn(i1),xni)=(x(ni)+1,xni)(R0ΔT)T=R0ΔT
    が成り立つ.よって(y,x)R(R0)を得る.
  3. (x,y),(y,z)R(R0)とする.このときXの点列(xi)0in,(xn+i)0imnであって
    x=x0,y=xn,z=xm,i[m],(xi1,xi)R0ΔT
    を満たすものが存在する.よって(x,z)R(R0)が成り立つ.

Xを集合とし,R0X×XX上の関係とする.このとき,
R(R0)={SX×XS:equiv. rel., R0S}
が成り立つ.

  • 補題3よりR(R0)RHSは明らか.
  • SX×XR0を含む同値関係とする.
    • ΔXSおよびR0TSTSよりR0ΔTSを得る.
    • したがってR0ΔTR0ΔTSSSが成り立つので,nZ2に関する数学的帰納法によりR(R0)Sが成り立つことがわかる.
  • よってR(R0)RHSが成り立つ.

Xを集合とし,(Aλ)λΛ,(Bλ)λΛXの非空部分集合からなる族とする.このとき,任意の(λ,μ)(Λ×Λ)ΔΛに対して
(AλBλ)(AμBμ)=
が成り立つならば,R0:=λΛAλ×Bλによって生成される同値関係R(R0)
R1:=ΔXλΛ(AλBλ)×(AλBλ)
に一致する.とくに任意の(非空)部分集合AXに対してΔX(A×A)は同値関係である.
!FORMULA[116][116448837][0] R(λΛAλ×Bλ)

R(R0)は各AλBλを“一点につぶす”同値関係である(cf. 定義4).

R1R0を含む同値関係である

明らかにR0R1が成り立つ.

  1. ΔXR1は明らか.
  2. R1TR1も明らか.
  3. (x,y),(y,z)R1とする.
    • (x,y)ΔX(y,z)ΔXのとき,(x,z)R1が成り立つ.
    • (x,y)(AλBλ)×(AλBλ)(y,z)(AμBμ)×(AμBμ)のとき,仮定よりλ=μとなるので,(x,z)(AλBλ)×(AλBλ)R1が成り立つ.

R(R0)=R1が成り立つ

SX×XR0を含む同値関係とする.また,λΛとしbλ,0Bλを取る.このとき,任意の(aλ,aλ)Aλ×Aλに対して
(aλ,bλ,0)R0S, (bλ,0,aλ)R0TSTS
より(aλ,aλ)Sが成り立つ.したがってAλ×AλSを得る.同様にBλ×BλSも成り立つ.よって
R1=R0ΔTλΛ(Aλ×Aλ)λΛ(Bλ×Bλ)S
が成り立つので,前段と補題4より
R1={SX×XS:equiv. rel., R0S}=R(R0)
を得る.

集合X上の関係λΛAλ×Bλによって生成される同値関係のことを指して,「関係
ab, aAλ,bBλ
によって生成される同値関係」などと書くことがある.

商集合

Xを集合とし,RX×Xを同値関係とする.各xXに対して
R(x)={yX(y,x)R}
とおく.このとき,以下は同値である:

  1. (x,y)R;
  2. R(x)R(y);
  3. R(x)=R(y).

xXに対して(x,x)RよりxR(x)が成り立つ.したがってXはいくつかのR(x)たちの非交和として表わせる.

(i)(ii)

仮定よりxR(x)R(y)が成り立つ.

(ii)(iii)

仮定よりzR(x)R(y)が取れる.

  • 任意のwR(x)に対して,(w,x),(x,z),(z,y)Rより,(w,y)RすなわちwR(y)が成り立つ.したがってR(x)R(y)が成り立つ.
  • 同様にR(y)R(x)も成り立つ.

(iii)(i)

xR(x)=R(y)より(x,y)Rが成り立つ.

Xを集合とし,RX×Xを同値関係とする.冪集合P(X)の部分集合
X/R:={R(x)P(X)xX}
を(Rによる)商集合(quotient set)という.全射
XX/R; xR(x)
を(Rによる)商写像(quotient map)といい,qR,qX/Rなどで表わす.また,商写像によるxXの像R(x)をしばしば[x]で表わす.

Xを集合とし,RX×Xを同値関係とする.部分集合SXであって商写像のSへの制限qR|S:SX/Rが全単射となるものを,同値関係R完全代表系(complete set of representatives)という.

  • X上の同値関係Rの完全代表系SXに対して
    X=xSR(x)
    が成り立つ.
  • (選択公理のもとで)全射qR:XX/Rは切断s:X/RXを持つ:
    qRs=idX/R.
    単射sの像s(X/R)Xは同値関係Rの完全代表系である.

参考文献

[1]
N. Bourbaki, General Topology Chapters 1--4
[2]
J. Dugundji, Topology
[3]
小松醇郎,中岡稔,菅原正博, 『位相幾何学 I』, 岩波書店
投稿日:20231029
更新日:2023121

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うすい
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