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大学数学基礎
文献あり

商空間

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商空間

(X,τ(X))を位相空間とし,RX×XX上の同値関係とする.このとき,商写像qR:XX/Rによる等化位相τ(qR)を(Rによる)商位相(quotient topology)といい,位相空間(X/R,τ(qR))を(Rによる)商空間(quotient space)という.

商空間のT1

qR1(qR(x))=R(x)より,次は同値である:

  1. X/RT1空間である;
  2. 任意のxXに対してR(x)Xは閉集合である.

等化空間の普遍性よりただちに次を得る:

商空間の普遍性

Xを位相空間とし,RX×XX上の同値関係とする.また,Yを位相空間,f:XYを連続写像とする.このとき,任意のx,xXに対して
(x,x)Rf(x)=f(x)
が成り立つならば,連続写像f:X/RYであってfqR=fを満たすものがただ一つ存在する.
XfqRYX/Rf

(cf. 補題3.20)

定義より商写像は全射等化写像である.逆に,全射等化写像は次の意味で商写像である:f:XYを全射等化写像とする.このとき,X上の同値関係R(f)X×X
R(f)={(x,x)X×Xf(x)=f(x)}
で定めると,定理1より,全単射連続写像f:X/R(f)Yが存在することがわかる:
XfqR(f)YX/R(f)f
いまfは等化写像なので,f1f=qR(f)の連続性からf1の連続性がしたがう.よってf:X/R(f)Yは同相写像である.

全射連続開写像(resp. 閉写像)は全射等化写像であったから(命題3.3),ただちに次を得る:

f:XYを全射連続開写像(resp. 閉写像)とする.このとき
f:X/R(f)Yは同相写像である.

(積の商と商の積)

(Xλ)λΛを位相空間族とし,各λΛに対してRλXλ×Xλを同値関係とする.積空間X上の同値関係Rを次で定める:
R={(x,x)X×X | λΛ,(xλ,xλ)Rλ}.
このとき,各λΛに対して商写像qλ:XλXλ/Rλ写像ならば,同相
X/RλΛXλ/Rλ
が成り立つ.

仮定より,商写像族の積
q:=q:XλΛXλ/Rλ
は全射連続開写像であり,R(q)=Rが成り立つ.

商空間の普遍性より,次が成り立つ:

f:XYを連続写像とし,RX×X,SY×Yを同値関係とする.このとき,任意のx,xXに対して
(x,x)R(f(x),f(x))S
が成り立つならば,連続写像f:X/RY/SであってfqR=qSfを満たすものがただ一つ存在する.
XfqRYqSX/RfY/S

(商空間の推移性)

Xを位相空間,R,SX×Xを同値関係とする.このとき,RSが成り立つならば,X/R上の同値関係S/Rであって同相(X/R)/(S/R)X/Sが成り立つものがただ一つ存在する.

仮定より,連続写像idX:X/RX/Sが存在する:
XidXqRXqSX/RidXX/S
いま,idXqR=qSは全射等化写像であるから,idXも全射等化写像である(定理3.7の系).そこでS/R=R(idX)とおくと,同相(X/R)/(S/R)X/Sが成り立つ.

商空間の部分集合

Xを位相空間,RX×Xを同値関係とし,CX/Rとする.このとき,

  1. Cτ(X/R);
  2. q:=qR:XX/R:open;
  3. Cτc(X/R);
  4. q:XX/R:closed

のいづれかが成り立つならば,B:=q1(C)上の同値関係
R|B:=R(B×B)
による商空間B/(R|B)Cとは同相である.

仮定よりqC:q1(C)Cは全射等化写像である(命題3.9).よって
q1(C)/R(qC)C
が成り立つ.ところで,任意のx,xq1(C)に対して
(x,x)R(qC)(x,x)R|q1(C)
が成り立つので,結論を得る.

部分集合を一点につぶして得られる空間

Xを位相空間とし,AXを非空部分集合とする.このとき,X上の同値関係
R(A):=ΔX(A×A)X×X
による商空間をAを一点につぶして得られる空間といい,X/Aで表わす.

n次元球体Dnの境界Sn1を一点につぶして得られる空間Dn/Sn1n次元球面SnRn×Rに同相である.

連続写像
f:DnSn; x(2x1x2,2x21)
を考える.

  • xSn1f(x)=(0,,0,1)=:Nが成り立つ;
  • f|DnSn1Sn{N}は同相写像
    int(Dn)Rn; xx1x2
    と立体射影の逆写像
    RnSn{N}; y(2yy2+1,y21y2+1)
    の合成ゆえ同相写像である.

したがって,任意のx,xDnに対して
qDn/Sn1(x)=qDn/Sn1(x)f(x)=f(x)
が成り立つので,fは全単射連続写像f:Dn/Sn1Snを誘導する.いまDn/Sn1はコンパクトでありSnはハウスドルフであるから,fは同相写像である.

命題4の

Xを位相空間とし,ABXとする.このとき

  1. Bτ(X);
  2. qX/A:XX/A:open;
  3. Bτc(X);
  4. qX/A:XX/A:closed

のいづれかが成り立つならば,B/AqX/A(B)とは同相である.

  • C=qX/A(B)X/Aとおくと,ABよりB=(qX/A)1(C)が成り立つ.
  • R(A)|B=ΔB(A×A)が成り立つ.

商空間の推移性より次を得る:

「もうちょっとつぶす」=「はじめから全部つぶす」

Xを位相空間とし,A,BXとする.このとき,ABが成り立つならば,X/Aの部分集合qX/A(B)を一点につぶして得られる空間(X/A)/qX/A(B)X/(AB)に同相である.

商空間の推移性より
(X/A)/(R(AB)/R(A))X/(AB)
が成り立つので,R(AB)/R(A)=R(qX/A(B))を示せばよい.

R(AB)/R(A)R(qX/A(B))

(qX/A(x),qX/A(y))R(AB)/R(A)とする.このとき,qX/AB(x)=qX/AB(y)より
(x,y)R(AB)=ΔX((AB)×(AB))
が成り立つ.

  • (x,y)ΔXのとき,明らかに(qX/A(x),qXX/A(y))R(qX/A(B))が成り立つ.
  • (x,y)A×Aのとき,(qX/A(x),qX/A(y))ΔX/AR(qX/A(B))が成り立つ.
  • (x,y)A×Bのとき,zABを取ると,
    (qX/A(x),qX/A(y))=(qX/A(z),qX/A(y))qX/A(B)×qX/A(B)R(qX/A(B))
    が成り立つことがわかる.
  • (x,y)B×Aのときも同様.
  • (x,y)B×Bのとき,明らかに(qX/A(x),qX/A(y))R(qX/A(B))が成り立つ.

R(qX/A(B))R(AB)/R(A)

(qX/A(x),qX/A(y))R(qX/A(B))とする.このとき,qX/AB(x)=qX/AB(y)が成り立つことを示せばよい.

  • (qX/A(x),qX/A(y))ΔX/Aのとき,
    (x,y)R(A)R(AB)
    よりqX/AB(x)=qX/AB(y)を得る.
  • (qX/A(x),qX/A(y))qX/A(B)×qX/A(B)のとき,x,yBであってqX/A(x)=qX/A(x),qX/A(y)=qX/A(y)となるものが存在するので,前段とx,yABより
    qX/AB(x)=qX/AB(x)=qX/AB(y)=qX/AB(y)
    を得る.

商写像q:=qX/A:XX/Aについて,次が成り立つ:

  1. Aτ(X)ならば,qX/Aは開写像である;
  2. Aτc(X)ならば,qX/Aは閉写像である.

よってAτ(X)τc(X)ならば,Aを含むような任意の部分集合BXに対して,B/AqX/A(B)とは同相である.

任意の部分集合BXに対して
q1(q(B))={AB,ABB,AB=
が成り立つので,等化位相の定義より結論を得る.後半は命題4の系よりしたがう.

つぶしていないところはつぶれていない

Aτ(X)τc(X)ならば
(qX/A)(X/A)qX/A(A):XA(X/A)qX/A(A)
は同相写像である.

(qX/A)1((X/A)qX/A(A))=XAに注意する.

仮定よりq:=qX/Aは開写像(resp. 閉写像)であるから,補題3.8より,q(X/A)q(A)は開写像(resp. 閉写像)である.また,q(X/A)q(A)は明らかに全単射である.よって,全単射連続開写像(resp. 閉写像)q(X/A)q(A)は同相写像である.

XA(X/A)q(A)とは一般には同相ではない.実際,

  • X={0,1,2,3}
  • τ(X)={,{1,2},X}
  • A={2,3}τ(X)τc(X)

を考えると,{1}={1,2}(XA)XAは開集合だが,τ(X/A)={,X/A}よりq({1})(X/A)q(A)は開集合ではないことがわかる.

命題7の

XT3空間(たとえば局所コンパクトハウスドルフ空間)とする.このとき,任意の閉集合AXに対して,X/Aはハウスドルフ空間である.

商写像をq:XX/Aとおく.XAτ(X)より(X/A)q(A)τ(X/A),したがってτ(X/A)|((X/A)q(A))τ(X/A)となることに注意する(命題2.4の系).
x,yXとし,q(x)q(y)とする.

  • x,yAのとき,ハウスドルフ空間XAにおける相異なる2点x,yの交わらない開近傍のqによる像が,(X/A)q(A)における,したがってX/Aにおけるq(x),q(y)の交わらない開近傍を与える.
  • xA,yAのとき,Uτ(x,X),Vτ(A,X)であってUV=となるものが存在する.
    q1(q(U))=U,q1(q(V))=V
    より,q(U),q(V)X/Aにおけるq(x),q(y)の交わらない開近傍を与える.

接着空間

X,Yを位相空間,AXを部分集合,f:AYを連続写像とする.このとき,余積空間Y⨿X上の“関係
iY(f(a))iX(a), aA
によって生成される同値関係”,すなわち同値関係
R(λf(A){iY(λ)}×{iX(a)af1(λ)})
による商空間を(fによる/f接着写像とする)接着空間(attaching space, adjunction space)といい,YfXで表わす.fが包含写像であるときはYAXとも書く.また,商写像をqf:Y⨿XYfXとおく.
接着空間 接着空間

接着空間の普遍性

(定義3の記号のもとで)任意の位相空間Zと連続写像φ:YZ,ψ:XZであって
aA, φ(f(a))=ψ(a)
を満たすものに対して,連続写像φfψ:YfXZであって次の図式を可換にするものがただ一つ存在する.
AidAXfXqfiXψYqfiYφYfXφfψZ

余積空間Y⨿Xの普遍性より,連続写像φ⨿ψ:Y⨿XZであって
(φ⨿ψ)iY=φ, (φ⨿ψ)iX=ψ
を満たすものがただ一つ存在する.
YφiYZXψiXZY⨿Xφ⨿ψY⨿Xφ⨿ψ
仮定より,任意のaAに対して
(φ⨿ψ)(iY(f(a)))=φ(f(a))=ψ(a)=(φ⨿ψ)(iX(a))
が成り立つので,商空間YfXの普遍性より,連続写像φfψ:YfXZであって
(φfψ)qf=φ⨿ψ
を満たすものがただ一つ存在する.
Y⨿Xφ⨿ψqfZYfXφfψ
この写像が定理の主張を満たすことは明らかであろう.

位相空間Xの非空部分集合AXに対して,定値写像c:A{}による接着空間{}cXX/Aに他ならない,すなわち同相{}cXX/Aが成り立つ.Aが空集合のとき,R()=ΔX=R(idX)よりX/XとなるのでA=の場合を除外しなくてもよさそうなものだが,X/={}⨿Xと解釈したほうが都合がよいと [Switzer] に書いてあった.

以下,

  • X,Yを位相空間
  • AX閉集合
  • f:AYを連続写像

とする.

任意のCY⨿Xに対して

  1. iY1(qf1(qf(C)))=iY1(C)f(iX1(C)A);
  2. iX1(qf1(qf(C)))=iX1(C)(iX1(qf1(qf(C)))A)

が成り立つ.

D=qf1(qf(C))Y⨿Xとおく.

  1. yiY1(D)qf(iY(y))qf(C)cC, qf(iY(y))=qf(c)yiY1(C)f(iX1(C)A).
  2. xiX1(D)cC,qf(iX(x))=qf(c)xiX1(C)(iX1(D)A).
接着空間の閉集合

部分集合CY⨿XiX1(C)τc(X)を満たすとする.このとき次は同値である:

  1. qf(C)τc(YfX);
  2. iY1(C)f(iX1(C)A)τc(Y).

D=qf1(qf(C))Y⨿Xとおく.Aτc(X)よりτc(A)τc(X)に注意する.
iX1(D)A=(idAX)1(iX1(D))=f1(iY1(D))A
より
iX1(D)=iX1(C)f1(iY1(D))
となるので,iX1(C)τc(X)のとき
qf(C)τc(YfX)Dτc(Y⨿X)iY1(D)τc(Y)iX1(D)τc(X)iY1(D)τc(Y)
が成り立つことがわかる.

接着空間の開集合

開集合Uτ(X),Vτ(Y)f1(V)=UAを満たすとする.このとき,qf(V⨿U)τ(YfX)が成り立つ.

V⨿Uτ(Y⨿X)であるから,これがqf飽和集合であることを示せばよい.ところで,W=qf1(qf(V⨿U))Y⨿Xとおくと,補題9より
iY1(W)=iY1(V⨿U)f(iX1(V⨿U)A)=Vf(UA)=V,iX1(W)=iX1(V⨿U)f1(iY1(W))=Uf1(V)=U
が成り立つので,
W=iY(iY1(W))iX(iX1(W))=iY(V)iX(U)=V⨿U
を得る.

接着空間の部分空間
  1. Yは閉部分空間qfiY(Y)YfXと同相である;
  2. XAは開部分空間qfiX(XA)YfXと同相である;
  3. YfX=qfiY(Y)qfiX(XA)およびqfiY(Y)qfiX(XA)=が成り立つ.
  1. 写像(qfiY)qfiY(Y):YqfiY(Y)は全単射連続写像でありiY:YY⨿Xは閉写像であるから,qf|iY(Y)が閉写像であることを示せばよい.そこでCτc(iY(Y))とすると,iX1(C)=τc(X)であるから,
    iY1(C)f(iX1(C)A)=iY1(C)τc(Y)
    と命題10よりqf(C)τc(YfX)を得る.
  2. 写像(qfiX)qfiX(XA):XAqfiX(XA)は全単射連続写像でありiX|(XA):XAY⨿Xは開写像であるから,qf|iX(XA)が開写像であることを示せばよい.そこでUτ(iX(XA))とすると,qf1(qf(U))=Uよりqf(U)τ(YfX)を得る.
  3. 同値関係の定義より明らか.
閉部分空間の接着空間

閉集合X1τc(X),Y1τc(Y)f(X1A)Y1を満たすとする.このとき,f1:=f|X1AY1:X1AY1による接着空間Y1f1X1YfXの閉部分空間と同相である.

商空間Y1f1X1の普遍性より,単射連続写像g:Y1f1X1YfXであってgqf1=qfidY1⨿X1Y⨿Xを満たすものがただ一つ存在する.
Y1⨿X1idY1⨿X1Y⨿Xqf1Y⨿XqfY1f1X1gYfX
あとはgが閉写像であることを示せばよい(定理2.7の系).そのためには任意のqf1飽和閉集合C1Y1⨿X1に対してqf(idY1⨿X1Y⨿X(C1))τc(YfX)が成り立つことを示せばよい(命題3.6).そこでC1Y1⨿X1qf1飽和閉集合とする.このときiX11(C1)τc(X1)およびqf1(C1)τc(Y1f1X1)が成り立つので,命題10より
iY11(C1)f1(iX11(C1)A)τc(Y1)
を得る.ところで
iX1(idY1⨿X1Y⨿X(C1))=iX11(C1)τc(X),iY1(j(C1))f(iX1(idY1⨿X1Y⨿X(C1))A)=iY11(C1)f1(iX11(C1)A)τc(Y1)τc(Y)
が成り立つので,再び命題10よりqf(idY1⨿X1Y⨿X(C1))τc(YfX)を得る.

命題13の

Xを位相空間とし,X1Xをその閉集合とする.このとき,包含写像idX1X:X1XX1/(X1A)からX/Aの閉部分空間への同相写像を誘導する.

命題13をY=Y1={}, f=c:A{}に対して適用すればよい.

接着空間の正規性

X,YT4空間ならば,YfXT4空間である.

  • X,YT1性より,任意のyY,aA,xXAに対して
    qf1(qf(iY(y)))=iY({y})iX(f1({y})),qf1(qf(iX(a)))=iX(f1({f(a)})),qf1(qf(iX(x)))=iX({x})
    はいづれもY⨿Xの閉集合であるから,YfXT1空間である.
  • C1,C2YfXを交わらない閉集合とする.
    • Fi:=iY1(qf1(Ci))Yは交わらない閉集合であるから,Yの正規性より,Viτ(Fi,Y)であってV1V2=となるものが存在する(命題2.28).
    • 命題12よりqfiY(Vi)τc(YfX)であるから,Fi:=iX1(qf1(CiqfiY(Vi)))τc(X)となる.交わらない閉集合F1,F2Xに対して,Xの正規性より,Uiτ(Fi,X)であってU1U2=となるものが存在する.
    • Wi=qf(iY(Vi)iX(UiA))とおく.明らかにW1W2=であり,
      f((idAX)1(iX1(qf1(Ci))))iY1(qf1(Ci))Vi
      より
      Ciqf(iY(Fi)iX(FiA))qf(iY(Vi)iX(UiA))=Wi
      が成り立つ.あとはWiτ(YfX)を示せばよい.
    • 補題9より
      iY1(qf1(Wi))=iY1(iY(Vi)iX(UiA))f(iX1(iY(Vi)iX(UiA))A)=Viτ(Y)
      および
      iX1(qf1(Wi))=iX1(iY(Vi)iX(UiA))f1(iY1(qf1(Wi)))=(UiA)f1(Vi)
      が成り立つので,あとは
      (UiA)f1(Vi)τ(X)
      を示せばよい.
    • iX1(qf1(qfiY(Vi)))FiUiより
      qfiXidAX(f1(Vi))=qfiYf(f1(Vi))qfiY(Vi)
      となるので,f1(Vi)Uiが成り立つ.
    • また,f1(Vi)τ(A)よりUiτ(X)であってf1(Vi)=UiAとなるものが存在する.
    • よって
      (UiA)f1(Vi)=(UiA)(UiUiA)=(UiA)(UiUi)τ(X)
      が成り立つ.
命題14の

XT4空間ならばX/AT4空間である.

位相空間の貼り合わせ

包含写像による部分空間の貼り合わせ

Xを位相空間とし(A,B)をその開被覆(resp. 閉被覆)とする.このときXAABBとは同相である.

商写像をq:A⨿BAABBとおく.連続写像

  • fA:=qiA:AAABB
  • fB:=qiB:BAABB

についてfA|AB=fB|ABが成り立つ.命題4.9より(A,B)τ(X)と整合的な被覆であるから,命題4.5より連続写像f:XAABBが定まる.一方,包含写像について
idAXidABA=idABX=idBXidABB
が成り立つので,接着空間の普遍性より,連続写像g:AABBXが定まる.
ABidABBidABABqiBidBXAqiAidAXAABBgX
こうして定まるf,gが互いの逆写像であることは明らかであろう.

(A,B)が開被覆でなくても,(int(A),int(B))が被覆になっていれば十分である(cf. 命題4.9).

附:コサイクルによる位相空間族の貼り合わせ

X=((Xλ,τλ))λΛを位相空間族とする.また,各(λ,μ)Λ×Λに対して,

  • 開集合AλμXλ,ただしAλλ=Xλ;
  • 同相写像fλμ:AλμAμλ,ただしfλλ=idXλ

が与えられているとする.族f=(fλμ:AλμAμλ)(λ,μ)Λ×Λコサイクル条件
(λ,μ,ν)Λ×Λ×Λ,xAλμAλν, fλν(x)=fμνfλμ(x)
を満たすとき,fX上のコサイクルという(ことにする).

fX上のコサイクルとする.余積空間X~:=λΛXλ上の関係
R(f):={(x~,x~)X~×X~λ,μΛ, x~Aλμ,x~Aμλ,fλμ(x~)=x~}
は同値関係である.ただし位相的埋め込みiλ:XλXによりXλX~と見做している.

  • x~X~とする.このときλΛであってx~Xλとなるものが存在するのでfλλ(x~)=x~が成り立つ.したがって(x~,x~)R(f)を得る.
  • (x~,x~)R(f)とする.このとき,λ,μΛであって
    x~Aλμ,x~Aμλ,fλμ(x~)=x~
    となるものが存在する.コサイクル条件においてν=λとすることでfμλfλμ=idAλμとなることがわかるので,
    x~Aμλ,x~Aλμ,fμλ(x~)=x~
    すなわち(x~,x~)R(f)が成り立つ.
  • (x~,x~),(x~,x~)R(f)とする.このとき,λ,μ,νΛであって
    x~Aλμ,x~=fλμ(x~)AμλAμν,x~=fμν(x~)Aνμ
    となるものが存在する.したがって
    x~=fμν(x~)=fλνfμλ(x~)=fλν(x~)Aνλ
    が成り立つので,
    x~fνλ(Aνλ)=Aλν,x~Aνλ,fλν(x~)=x~
    すなわち(x~,x~)R(f)を得る.

fX上のコサイクルとし,X=X~/R(f)とおく.また,各λΛに対してqλ=qR(f)|Xλ:XλXとおく.このとき
(qλ)qλ(Xλ):Xλqλ(Xλ)τ(X)
が成り立つ.とくに

  • (qλ(Xλ))λΛXの開被覆であり,したがって
  • 位相空間Yへの写像f:XYが連続であるためには,任意のλΛに対してf|qλ(Xλ)が連続であることが必要かつ十分である.

qλが単射連続開写像であることを示せばよい(定理2.7の系).

  • 連続性は明らか.
  • x,xXλ,qλ(x)=qλ(x)とする.このとき,x,xXλ,(x,x)R(f)よりx=fλλ(x)=xが成り立つ.
  • Uτ(Xλ)とする.このとき任意のμΛに対して,qλfμλ=qμ|Aμλおよび
    UAλμ=Uqλ1(qλ(Xλ)qμ(Xμ))=qλ1(qλ(U)qλ(Xλ)qμ(Xμ))=qλ1(qλ(U)qμ(Xμ))
    より
    qR(f)1(qλ(U))Xμ=qμ1(qλ(U)qμ(Xμ))=fλμ(UAλμ)τ(Xμ)
    が成り立つ.(Xμ)μΛX~の開被覆であるから,qR(f)1(qλ(U))τ(X~)を得る.よってqλ(U)τ(X)が成り立つ.

Bを位相空間,U=(Uλ)λΛBの開被覆とし,Gを位相群とする.連続写像族g=(gλμ:UλUμG)(λ,μ)Λ×Λコサイクル条件
(λ,μ,ν)Λ×Λ×Λ,xUλUμUν, gλν(x)=gμν(x)gλμ(x)
を満たすとき,gGUコサイクルという(ことにする).

  • gλλ(x)=gλλ(x)gλλ(x)より,gλλ(x)=eGが成り立つ;
  • 前段より,gμλ(x)gλμ(x)=gλλ(x)=eGが成り立つ.

Bを位相空間,U=(Uλ)λΛBの開被覆,Gを位相群,gGUコサイクルとする.また,Fを位相空間とし,G×FFを(効果的な)連続作用とする.このとき,

  • Xλ=Uλ×F;
  • Aλμ=(UλUμ)×F;
  • fλμ:AλμAμλ; (b,y)(b,gλμ(b)y)

と定めると,f=(fλμ)(λ,μ)Λ×Λ(Xλ)λΛ上のコサイクルとなる.そこで

  • E~=X;
  • E=E~/R(f);
  • π:EB; [λ,b,y]b

と定めると,πは(Gを構造群とする)F束の構造を持つ.

q:E~Eを商写像とする.

射影

λΛに対して
pλ=idUλBpUλ:XλUλB
とおくと,連続写像族(pλ)λΛは連続写像p:E~Bを誘導する.また,
(e~,e~)R(f)(p)(e~)=(p)(e~)
が成り立つので,商空間の普遍性より連続写像π:EBが誘導される.
E~pqBEπ

局所自明化

bBとする.このときλΛであってbUλとなるものが存在する.そこで,同相写像(qλ)q(Xλ):Xλq(Xλ)=π1(Uλ)の逆写像を局所自明化
φλ:π1(Uλ)Xλ=Uλ×F
として取ればよい.これはπ1(Uλ)π1(Uμ)上で
φλ([μ,b,y])=(b,gμλ(b)y)
によって与えられる写像である.

変換函数

任意のλ,μΛ(b,y)(UλUμ)×Fとに対して
φλφμ1(b,y)=(b,gμλ(b)y)
が成り立つ.

参考文献

[1]
N. Bourbaki, General Topology Chapters 1--4
[2]
J. Dugundji, Topology
[3]
小松醇郎,中岡稔,菅原正博, 『位相幾何学 I』, 岩波書店
投稿日:20231029
更新日:20241014

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うすい
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